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堀口切子を世界へ。伝統を残すため各国の文化に調和させていくコンサル手法

 伝統を残していくには、その土地の文化に合わせて変化をさせる必要があります。堀口切子のコンサルティングを担っているのは堀田卓哉さんです。堀田さんは「職人さんや伝統工芸を海外に発信したい」という想いから、日本の魅力を世界に発信していくコンサルティング会社を経営しています。
 堀口切子とはどこで出会い、何を感じたのか。共に堀口切子を創ってきたともいえる堀田さんに、堀口切子への想いを伺いました。

株式会社Culture Generation Japan 代表取締役 CEO 堀田卓哉
 日本の伝統工芸を中心に、モノづくり中小企業の海外展開を支援している株式会社Culture Generation Japanの代表を務める。伝統工芸技術を活用したコラボレーション商品開発や事業開発コンサルティングなど、日本の伝統文化を広める活動を通して、過去から未来へ、日本から世界へ、伝統のバトンをつないでいる。

■Christian Diorも魅了。堀口切子のブランド源泉とは

約6年間堀口切子の海外販路開拓の支援を行なっているとお聞きしました。まずは堀口切子との出会いについて教えてください。
 初めて堀口さんとお会いしたのは、僕が独立して初めてかかわったプロジェクト「Tokyo Crafts & Design」※1 です。堀口さんに参加事業者として入っていただき、若い日本のデザイナーと「モアレ」※2 というプロダクトを作っていただきました。
 その「モアレ」をもって海外の展示会に出たことで、Christian Diorにて取り扱っていただくことができたんです。僕にとっても、初めて海外の大きなブランドに買ってもらった成功事例ですね。

※1「Tokyo Crafts & Design」とは
 現代のライフスタイルに合った商品のアイデアを必要とする伝統工芸の職人と、工芸の魅力を知り自らのアイデアやデザインを生かしたいと考えるデザイナーとが「協働」して、新たな伝統工芸品を創出するプロジェクト。
https://www.tobikan.jp/tokyo-crafts-design/about.html

※2「モアレ」とは
 規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のこと。今回のプロダクトでは上と下で違うカットが施されており、上から見るとぼやけたように見える。

▲ Tokyo Crafts & Design で堀口さんとデザイナーさんが作成した「モアレ」

その展示会がきっかけで一緒に仕事をすることになったのですか?
 そうですね。堀口さんから「もっと海外展開に挑戦したい」というご相談をいただいて、そこから一緒にプロジェクトをやっているって感じです。堀口さんの「海外に出たい!」という想いは打算的じゃないんですよね。「やりたいからやる」という真っ直ぐさがあります。僕はそんな堀口さんが好きで、「堀口徹さんを応援したい」という気持ちから一緒に仕事をしているのかもしれません。

では堀口切子というブランドに惹かれたのではなく、堀口さん自身へ魅力を感じているんですね。
 ブランド価値の源泉はフィロソフィーや理念であって、商品がきれいとかデザイン性が高いとかは表面的だと思っているんです。職人さんの場合、自分たちの手で作っているので、その人の姿勢や物の考え方がフィロソフィーであって、それを応援したいなって思える人と長くお付き合いしたいと思っています。
 僕は、伝統工芸を伝統のまま売っていっても難しい側面があると思っています。伝統を大事にしつつ現代に合った形に、伝え方とか表現の仕方を変えなきゃいけない。それはまさに堀口さんがやろうとしていることだし、作品にも商品にも表れているなと思っています。そこが堀口さんの魅力なんですよね。


■「和食カットグラス」として海外展開をはかる


そんな堀口切子をどのように海外に発信していったのですか?
 日本のものを海外に出そうとするとき、「とりあえず展示会に出よう」ってなりがちなんですが、お金がかかるので気軽に出展できるというものでもないんですよね。堀口切子の場合は「どうやって海外に出たらいいんだろう」という方針について、まず1年間くらい時間をかけて検討しました。

1年間!かなり長いですね。そのあとはどうしたんですか?
 まずは堀口切子を「和食カットグラス」=和食を最も美しく飾ることのできる硝子商品、というポジショニングで打ち出していこうという方針になり、ロンドンの和食のお店に営業活動に行きました。当時は、絶対にいけると思っていたのですが、「すごく綺麗だけど、これは使えない」と言われてしまいました。なぜかというと、ヨーロッパは階級社会なので、お皿を洗う係が決まっていて、彼らは残念ながら高額の器の価値を知らないので、1日何個も壊してしまうんです。だから「使ってみたいけど、使えない」って言われてしまって。うまくいかず堀口さんと一緒に落ち込みましたね笑 でも、地道な営業活動を諦めずに続けて、和食のシェフの方から「VIP向けのお皿を作って欲しい」とか、「写真撮影用のお皿を作って欲しい」という特注のお話しをいただくことも増えてきて、一人一人ファンを作っていくのが大事だなって改めて思いました。

地道なファン作りが大切なのですね。
 そうですね。一昨年だと、堀口さんとイギリス在住のガラスの研究家の方と非常にアカデミックなトークイベントを行ったんです。堀口切子がターゲットとする知識層の方々が100人以上集まってくれて、堀口さんに想いを語ってもらうということをしました。その結果、さらに堀口さんのファンが増えて、ようやく常設の小売店も決まりました。それがまた嬉しかったですよね。堀口切子さんとのビジネスは、ずっと順調に行ってきたかどうか言われるとそうではなくて、紆余曲折してきたので、僕自身は大事な関係性だなと思っていますね。

■おわり

 取材を通し、堀口切子のコーポレートメッセージ「Observe(残す)」について、誰よりも考えている方は堀田さんだと感じました。伝統をこれからの未来に残していきたい。そう考える堀口さんと堀田さんだからこそ、堀口切子はここまで多くの人達に愛されるブランドになったのかも知れません。
 記事にまとめた堀口切子について以外にも、日本や伝統工芸についてのお話をたくさん伺いました。日本がこんなにも好きだ、残していくべきだ、と語る方に、今まで私達は会ったことがありません。私達が生まれ育った日本の魅力を、次の世代へ残していきたいと感じた貴重な時間でした。

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