2022.10.23、私たちは何処にいるか?!今年のアルビ簡単まとめ&最終節展望

アルビレックス新潟J1昇格&J2優勝おめでとうございます!

2位を追走する横浜FCが日曜日(10.26)にヤンツー金沢に敗戦した結果、1節を残してアルビレックス新潟のJ2優勝が決定しました。たしかに「勝って優勝」できなかったのは残念ですが、「ここまでの積み重ね」の結果の優勝です。
さて、そうすると最終節の町田戦は「来年のJ1だけを見て良い試合」になります。そこで、「ここまで」を超簡単に振り返るとともに、来年のJ1に向けての「期待」を書いておこうと思います。

4節秋田戦まで:「前線の並び」で昨年を超えようとしたアルビ

2021シーズン、アルベルト監督のチーム改革で一時はJ2トップに立ったアルビレックス新潟。しかし、残念ながら各チームが新潟対策を施してくると行き詰まり、残念ながら昇格はなりませんでした。
ただ、アルベルト監督が導入したポゼッションサッカーは、新潟に根付きつつあります。それを継承しつつ、昨年度の失速を超えること。それが新監督に就任した松橋さんに課せられた使命でした。

ここで松橋監督は「前での圧力」を高める為に「並び」を変えます。
この前年、2021年10月12日の日本代表vsオーストラリア代表戦で、日本はそれまでの4-2-3-1から「4-3-3(4-1-4-1)」に変えて一気に最終予選の悪い流れを一転します。もちろん、これに倣った訳ではないでしょうが、新潟も2022シーズンから、4-2-3-1を「4-3-3(4-1-4-1)」と並びを変えて、より前線の圧力を高めようと考えます。高というアンカーを任せられる選手もあり、4-3-3は当然考え得る昨年を超えるためのソリューションです。しかし、キャンプ時のコロナ禍による出遅れもあり、なんと最初の4節で3分け1敗と出遅れます。秋田戦の敗戦を一つの契機として、新潟は「並び」を戻して、別の解決方法を試みます。

5節甲府戦から:「並び戦術」を戻して「個人(小グループ)戦術」に舵を切るアルビ(1)

5節甲府戦からアルビレックス新潟は「並び」を昨年と同じ4-2ー3-1に戻します。
これを採用する利点はすぐに明確になります。
それは「後方からのビルドアップが安定し、かつ多様になった」こと。
昨年の「ボランチが落ちる3バック」から、「GKが守備ラインに加わる3バック」に変化することで、新潟は「実質フィールドプレイヤー11人」で戦うことになります。

そうなると、最終ラインからのボールの受け口は「SB+ボランチ」(第一の受け手)の4枚になり、4-3-3よりも1枚増えます。そして、後方が安定すると、縦パスも「狙って出す」状態に持っていきます。
昨年の新潟対策は、「前からプレッシャーを掛け、縦に蹴らせて回収する」という方法が基本でした。しかし、今年の新潟は小島が入った最終ラインが安定(藤田や阿部もラインに入りましたが、小島はそれを上回り、更に千葉・舞行龍とのコンビのレベルも上がったので安定感が増しました)すると、「相手に食いつかせ」て縦パスを狙うことも可能になりました。
新潟の縦パスの威力は昨年より上回り、相手のDFラインは強いプレッシャを受けます。

新潟の第一の受け手(+最終ライン)は、いくら引いても(下がっても)大丈夫。下がって食いつかせる余裕があります。
一方で第二の受け手の裏抜けの圧力が高まります。
そうすると、第一の受け手(下がる)と第二の受け手(上げる)の間に「ギャップ」が生じます。ここを上手く使うことが、(たぶん)並びを昨年に戻した松橋監督の、しかし「前への圧力を高める」戦術につながっていきます。

※新潟の縦深攻撃(食いつかせる攻撃)については、これもまた長文の解説を書いていますので、そちらもご覧ください。
https://www.facebook.com/shozo.koide/posts/pfbid0CvzRFLpwAPP538vxqVdu2oF5wXbwmGKuWZtREoPsfmhJwcUda7JnPzSX9EjG8A3El

5節甲府戦から:「並び戦術」を戻して「個人(小グループ)戦術」に舵を切るアルビ(2)

もともと、「ポジショナル(5レーン)」では、「ハーフスペース」を生かす発想があります。4-3-3ではこのハーフスペースに「インナーハーフ」を配置します。(新潟では高木+伊藤)
ところが4-2-3-1のオリジナルのポジションではこのハーフスペースに立つ選手がいません。つまりオリジナルのポジションからスペースが生まれます。

更に先ほど見たように、後方のビルドアップが安定してくると「第一の受け手(下がる)」と「第二の受け手(上がる)」の間にギャップ(スペース)が生まれます。

4-2-3-1のオリジナルポジションから生まれる「横のハーフスペース」と、後方からの安定したビルドアップで生まれる「縦のハーフスペース」、この交点であるスペース(仮にホットスポットと呼びます)選手たちの個性の組みあわせによって自由に使うという戦い方が徐々に定まってきます。

誰かがホットスポットに入る。ホットスポットに入った選手が空けたスペースを別の選手がまた使う。また最初にホットスポットに入った選手も、しばらくするとそのスペースを離れてホットスポットを空ける。そして、そこに・・・
そういったバスケットボールの球回しのような攻撃が新潟のスタイルとなってきます。これが出来るのは、どのような体勢で受けても(まるで手でボールを扱うバスケのように)ボールをキープできる新潟のボールキープ力のなせる技。昨年に比べても「どのような体勢で受けてもボールをキープできる技術」は高まっており、寺川さんの言う継続の力を感じました。

また、新潟が7月下旬から8月上旬に一時停滞(1敗2分け)の後、31節以降はこのホットスポットに左は島田や星、右は高や秋山が積極的に絡んでいきます。それによって島田のアシストや星の得点が生まれてくるわけです。

最終節への期待:3バックとホットスポットを攻略するCBs

さて、ここまで見てきたように、新潟の戦術は「並び」(フォーメーション)を変えずに、スペースの使い方を「個人と個人間の組みあわせ」で変えることで戦術的な幅をつくり出しました。

しかし、J1の守備は強力、「個人と個人間の組みあわせ」で打破するには、「強力な個」(と並行してのコンビネーションの熟成)が必要ですが、これは「アルビの財力」ではなかなか期待できません。
そこで「並び」でもバリエーションをみせて欲しい。そこで試して貰いたいのが(いや試す必要はないので、完全に個人的な願望です)「3バックのテスト」です。

3バックは容易に5バックに変わるので守備的なイメージもあります。だからJ1の攻撃を耐えるために3バック・・・ということも考えられます。
しかし、ここでは「攻撃のオプションも考えた戦術的バリエーションとしての3バック」を考えています。

ハーフスペースでは、特に「ポケット」の攻防が鍵を握ってきました。ただし、ポケットは最も守備の強度が厳しく、新潟で攻めきれるのは難しいでしょう。
そこで「ホットスポット」の重要性は今年にも増して重要になると思いますが、当然相手の守備強度も今年の非では無いでしょう。ここで奪われて逆襲される恐さもあります。今年のようにFWとMFのボール交換でホットスポットを攻めることの難しさとリスクは、来年の大きな課題になると思います。

そこで、ここにボールを運ぶ運び手として「舞行龍、千葉」の攻め上がりを「攻撃の重要なキッカケ」とするような3バックが上の図です。
トーマス・デンというスピードとカバーリングに長けたCBをセーフティーとして、その分で左右のCB(舞行龍、千葉)を積極的に前に出していくイメージです。広島の3バックや、牧野のいた頃の浦和、バイスの京都などのイメージでしょうか。
現在的なCBは、一昔前のボランチ(二昔前の10番)のように、プレッシャーが高まるサッカーの中でより「後ろから組み立てるゲームメイカー」的な役割を求められています。もちろん舞行龍や千葉はその役割を「縦バスを入れる」ことで果たしていますが、それだけでなく「ドリブルによる持ち上がり」も含めて期待しているのがこの3バックです。

もともと千葉は機を見てのドリブルによる攻め上がりをみせていましたが、それもハーフウェイから数メートル前進した位置まででした。舞行龍もそれくらいの所まで行けば縦パスを出していました。
実はここ数試合の舞行龍は、そのラインを越えて積極的に攻撃に絡んで、時には流れの中で最前線まで攻め上がっており、相手に混乱を与えています。このような戦術的バリエーションを持つことは、来年J1を戦う上で重要になるのではないかな・・と思っています。

「積み上げる」ことの重要さが身に染みた新潟。次の積み上げが楽しみだ。

ここで少し長いが、サッカーダイジェストWeb2022年10月17日の野本桂子さんの記事を引用します。

だが、この年(注2020年)はコロナ禍による約4か月のリーグ中断の影響で終盤が異例の連戦となり怪我人が続出。最後の4戦を全敗し、11位でシーズンを終えた。

 決して満足な結果ではなかったが、どんな時でもスタイルを貫き続けた監督のもとで、チームは確実に成長を遂げた。毎日の練習で繰り返されるロンドは、1年後には速度・精度ともに劇的に上達していた。

 その様子を見た寺川能人強化部長は「毎日同じことを続けると、こんなにも上手くなるんだ」と継続の効果を実感。また、新卒選手を「新潟のサッカーがやりたいから」との理由で獲得できたことも踏まえ、この方向性で進むことへの手応えを確信。アルベル監督の続投を決意した。

https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=118799

来年の積み上げは当然「個としての選手の積み上げ(早い話が移籍)」が大きいでしょう。しかし、それだけではなく「チームの並び戦術」としての積み上げも必要になると思います。そして、「移籍選手のいない今」だからこそ「並び戦術の可能性」が最終戦に見られたらな・・・というのが私の期待なのです。

いずれにしろ、J1昇格とJ2優勝を決めた2022年シーズンも最終節を残すのみ。今年の集大成であり、同時に来年につながる戦いを期待してビッグスワンを埋めましょう。

そうだ!
この最終節にビッグスワンを埋めることこそ、サポーターが来年にできることを示すチャンスです!


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