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ゆるキャラ【読切超短編小説】

限界寸前の市があった。

人口流失が止まらず、
過疎化に伴い財政は悪化。
当然、バス等も廃線が決まり、 
悪化していく一方。

過去作られたショッピングモールは、
今では廃墟と化し、
呪われているような状態。



「これではいけない」と、
市の広報職員が立ち上がり、
各地の伝承をもとに、
ゆるキャラを作り上げた。

偶然、全国1位となり、
観光客や移住者も増え、
この市は大発展を遂げる。



しかし、実はこのゆるキャラ
決してゆるいものではなかった。

広報とはそう言うものだが、
広報職員がイケイケなタイプだったので、
よく調べなかったためだ。

この土地に深い怨念を持つ、地縛霊。
これが彼の正体である。



ゆるキャラ等に祭り上げられ、
どんな復讐をしようか考えていたが、
そんなことは
ゆるキャラランキングに関係ない。

フォルムが良かったのか、
あろうことか全国1位に。

すると、周りの対応も違ってくる。
握手や、写真撮影を求める人々。
子供達からの絶大な支持。
テレビ出演。

初めて味わう、
自分を受け入れてくれる感覚。

存在しているだけで、
人の役に立ち、
感謝され、ちやほやされるのだ。
冷遇されてきた分、心に染みる。



彼はまんざらでもなくなってきた。
この日のために、
俺は地縛霊としてやってきたのではないか。

少し単純なタイプなのだ。
ストイックとも言える。
そのおかげで、
地縛霊で居続けられたと言うもの。

彼は本物のゆるキャラとなり、
当然恨みや呪いは解け、
この市は発展したのだった。

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