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「隠れ教育費」を読む


2023年4月、息子が晴れて小学校に入学。
9年間の義務教育期間に突入し、もうすぐ1年経とうとしています。

日本において「義務教育は無償」であると言われていても、入学の際にはそれなりのお金がかかりました。
家計簿を見ると、

55,495円

ランドセル代も入れてなので、相当安いほうだと思います。
昨今ランドセル代だけで、これ以上の値段がするでしょう。

我が家では支出を抑えるために、ピアニカ、体操服はメルカリで中古や格安品をゲット。子どものセレモニースーツと靴はお下がり。本用かばん、上履き入れ、その他細々した布製品は幼稚園時代のものを再利用&足りないものは作製。

それでも諭吉が5枚飛んでいきました。

入学してからも、給食費(56,000円/年)、学校費(27,050円/年)が口座から引き落とされ、
計83,050円

公立小学校に1年間通うのに、
55,495円+83,050円=138,545円かかりました。

「義務教育は無償なんだから、すべて無償にしろ!」という乱暴なことは言いませんが、「これってどうなの?」と思うことも多々ありました。

以前から気になっていた本

いろいろな気づきがありました。


1.隠れ教育費とは

勉強するために必要なえんぴつ、ノートなどの「モノ」から部活動、修学旅行、給食などのような「コト」にかかるお金のこと。
集金額は数百円から数万円までバラエティにとんでいるが、年間平均で

小学校6年間 508,600円(年平均:約84,700円)
中学校3年間 422,800円(年平均:約140,900円)

「隠れ教育費」 20ページ

結構な額です。

2.「これってどうなの?」と思ったもの。

息子の通う小学校は指定品がほぼなく、比較的自由に選べました。

モヤモヤしたのは算数セットとピアニカ。
新品だと算数セットで3,000円、ピアニカで6,000円ほど。ピアニカは中古で同じ型番のものを1,800円で購入。算数セットは新品を購入。
モヤモヤポイントは、どちらも2年ほどしか使わないこと。どちらも学校備品でよくない?

小学校でも一人1台タブレットを配布。小1なので、まだ家に持ち帰ったことはありませんが、授業では使用しているそうです。
時代はデジタルだな~と感慨深い一方で、いまだに紙の配布物が多い。学級だより、保健だより、参観日のお知らせ、市教委からのお知らせetc〜。都会に住む友だちから聞いた話では、その子の娘が通う公立マンモス校では連絡事項はほとんどメールだそう。

学校で使われる紙も、一律徴収金として私費負担にされる部分が多い。学級だよりは学級の紙(私費)を使い、学校だよりは学校の紙(公費)を使うという分け方となっている学校もあると聞く。

「隠れ教育費」104ページ

お便り系の配布物は教師がPCで作成したものをわざわざプリントアウトして、何百枚と印刷し、子供に配布し、家庭で一度見たら捨てられることのほうが多い。PCで作成したものをPDFにでも落として、各家庭にその都度メールすればいいだけではないのか。お金も紙資源も教師の労働時間も節約できるのに、なぜしない?

3.少子化対策として大学無償化?or給食費無償化?

去年息子にかかった教育費のうち給食費は56,000円、実に全体の約40%になります。
この「給食費」だけでも義務教育期間中は無料にできたら、家計としては大変助かります。

現在、学校給食は、学習指導要領上では「特別活動」に位置している「学級活動」の一部として明記されている、(以下略)

「隠れ教育費」185ページ

もはや現在において、教育活動として給食があることはまちがいない。憲法に規定された義務教育無償の原則に照らせば、少なくとも義務教育期間は給食費についても無償であるべきといえる。

「隠れ教育費」186ページ

給食に関わる経費のすべてが保護者負担ではなく、人件費、施設費、水道光熱費などは公費、保護者の負担している「給食費」は「食材費」(学校給食法11条および施行令2条)を指すとのこと。

給食は、1食辺り300円ほどで栄養バランスもよく、毎日違ったメニューを提供してもらえる。給食を通して、子供が苦手なものが食べられるようになったり、最近では外国メニューのような家庭では作らない料理が出てきたり、親としては感謝だらけです。

ただ昨今「子供3人目から大学無償化」などの政策を聞くたびに、ソウジャナイ感が強いです。少子化対策としての大学無償化がまかり通るなら、義務教育期間中の給食費無償化のほうがよっぽどインパクトがあるのでは。

給食費
小学校6年間 248,500円
中学校3年間 146,000円

「隠れ教育費」135,137ページより抜粋

計394,500円

行くかどうか分からない大学のことより、必ずお金がかかると分かっていることに公費をかけるべき。

給食費を除いた場合の教育費は
小学校6年間 508,600-248500=260,100円
中学校3年間 422,800-146,000=276,800円

義務教育9年間で
536,900円
ひと月あたり
4,971円

約5,000円

学校備品として用意できるもの(算数セットなど)、紙資源の削減等、節約をもっとしていけば、義務教育の無償化にかなり近づけそう。

4.数百円の重み

(略)貧困や私費負担の現状への無理解ゆえに、「数百円程度」が積み重なる私費負担の重みや、その必要性の程度を見直すという課題の存在を見過ごしているということがある。

「隠れ教育費」235ページ

教育費がかかるとはいえ、自分の家庭はその金額を払えるわけで、数百円を払うことさえ苦しい家庭のことを、意識していませんでした。

低所得者向け「就学支援制度」があることは知っていますが、さまざまな問題があるそうで、

· 給付額
· 給付費対象家庭の限定性(端的に「足りない」、「いきとどいていない」)
· 給付金の流用(「別のことに使ってしまう」)
· 申請主義の弊害(「申込みが面倒くさい」、「制度そのものを知らない」)
· 自治体間格差(「隣の市なら保障されるのに」)

「隠れ教育費」237ページ

(略)「無償」とは、教育というサービスにかかる費用を家庭に渡す「現金給付」ではなく、教育というコトやそれに必要なモノを直接子どもたちに届ける「現物給付」という形式を指すものとされている。権利保障の程度は経済的理由により左右されるべきものではないし、権利保障は〈金で買う〉ものではないからだ。

「隠れ教育費」239ページ

親によっては、裕福な家庭でも給食費の未払だったり、低所得家庭でも教育に熱心でなかったら、面倒くさいからとわざわざ就学支援制度に申し込んだりせず、もし申し込んだとしても私用に流用したり。どのパターンでも子供に非は無く、お金を払えないことで教育を受ける機会を逃してしまうことは、してはならない。

5.最後に

「教育にはお金がかかる」といつ頃から言われ始めたんだろうか。

自分は小中高と公立、大学も国立。塾や通信講座など一切したことがなく、学校での勉強のみ。習い事は数年通ったそろばんくらい。かかった教育費はかなり安いほうだと自覚しています。
それでも大学4年間だけでも授業料で約200万円。それだけのお金を親に出してもらっている。「200万円で大学でしか味わえないたくさんの経験をしてきなさい」と言われたのを覚えています。

子どもの教育のため、と言われると大抵の親はついつい財布の紐が緩みがち。それにつけ込むかのように、「このCDを聞けば英語がペラペラに」、「この塾に入れば有名大学に」などと教育産業がつけ込んでくる。

義務教育期間であっても、年間授業料だけで200万円する私立小中などザラにある。

しかし公立の小中学校に限って言えば、そこは憲法にあるように、

義務教育は、これを無償とする

日本国憲法26条2項後段

少しでも無償化に近づくように、お金のあるなしで、教育を受ける機会を子どもたちから奪わないように、絶え間ない努力をしていく必要性を痛感しました。

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