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レアモデル列伝-18   Cow catcherとは何ぞや

 ダルノーズとCow catcher、ダルノーズと言ってもダルビッシュ有の鼻ではない、カウ・キャッチャーと言っても元近鉄バッファローズの捕手ではない。
ここではLola T 260のフロント周り。ダルノーズと風の抵抗と加勢に付いて記述した。
 1971年Can AmにLolaワークスはBob Marston設計の新しい8.1ℓエンジンの  T 260を開発、ドライバーはJackie Stewart、運用はCarl A. Haasという組み合わせで参戦した。車の特徴はダルノーズ(blunt nose)(先端がすとんと落ち、ダウンフォースは少ないが空気抵抗も小さく、車体姿勢は安定した操縦性が得られる)。Targa Florio 等のテクニカルなコースには大きなPorsche 917は不向き、908の様な小さく軽い車が有利、そのため1968年頃から計画され1970年に908/03が実戦配備された。

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1/43 Spark製(SP)、 Porsche 908/03  フロントがストンと落ちた元祖ダルノーズ

 ただ、T260は908と比べフロント高が結構上までいっている、これはブラフ・ノーズコーンと言われる、このブラフはポーカーのブラフではなく「水辺に面した切り立った崖・岬」を指す語義もあり、崖っぷちの様なものらしい。確かに空気抵抗は少ないらしいのだが、ダウンフォースも少ないようで、フロントがどんどん変わっていく、それをこの年のノーズ変化を示しながら考察したい。

 第1戦のMosportに出てきたT260は人々に衝撃を与えた。1970年を走っていたLola T220はPeter Revsonが駆って優勝こそなかったが、第8戦のDonnybrookeでは2台のMcLarenを押し退けpole positionを得て、71年は期待ができると思われていたが、まるっきり変わった形とドライバーがJ. Stewartで参戦した点(T220はこの年T222に変わり風戸裕がセミワークスとして年間を通して参戦した)。
J. Stewartは予選でpole positionを獲得したが、決勝では3位であった。

IMG_2410のコピー

1/43   SP製、奥は1970年 P.RevsonのワークスLola T220、手前は1971年 風戸裕のLola T222、両車ともフロントはウエッジシェープ

 第2戦のSt. Joviteでは予選2位であったが、決勝は優勝しその後の期待が膨らんだ。なおこのレースで風戸裕は6位入賞を果たした。

 第3戦と4戦はLolaからMcLarenに移籍したP. Revsonが優勝、J. Stewartは3戦を完走するもサスペンショントラブル、4戦はpole Positionを取ったがギアトラブルでDNFあった。

 第5戦のMid-OhioでJ. Stewartは予選3位であったが決勝では2回目の優勝であった。

 第8戦のEdomontonではフロント形状を変更し下方がウイング様に変更、リアウイングが後方に移動、予選3位だったが、ハンドリングの悪化で決勝2位であった。

08 Edmonton Modelのコピー

1/43 Kyosho製、フロントがウエッジ様に変更され、ウイングが後方に移動した

 第9戦のLaguna Seca、フロント形状は再び変更され、ノーズコーンの前方に大きなウイングを備えた。予選は4位であったが、決勝では2位となった。このウイングは“Cow catcher”と揶揄される様になった。

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1/43 奥はMarshe Models(MM)製、大手小売店で長い間店番していた品、手前はSP製、当時は前後長に規制はなかったらしい

IMG_3473のコピー

前述の3台のフロントとリアの変化、結構苦労していた様だ

ところで“Cow catcher”って何?、写真の北海道最初の蒸気機関車であった弁慶号が取り付けていた先端の器具(参考写真)

弁慶号機関車(7100形式)

 第10戦のRiversideでは予選3位であったが、オイルトラブルでDNFとなり、J. Stewartはシーズン3位を手土産にCan Amを後にした。

 なお風戸裕は19得点でシリーズ10位であったが、彼より上位は皆其々のワークスであり、彼はプライベートのトップにあり、彼のCan Am挑戦は終了した。

 1972年T260の予備2台はTom HeyserとReine Wissellに売却され参戦したが、大した記録は残していない。1973年Bob Nagelが購入しMosportで3位、Riversideで4位となり他に3回の6位があり総合でシリーズ5位となっている。
もう1台はJohn Gunnが購入して6戦と7戦に参戦したがシリーズは0点で名前が記載されていない。

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1/43 Midlantic Models製、スポンサーのRoman Brioは化粧品のメーカーらしい

Cow CatcherのないSparkのモデルと今回のモデルは色が若干異なるが、こんなことは他のモデルでも良くある

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1/43 左SP製、右Midlantic Models製、この色の違い、メーカー間では良くある、モデルメーカーの設計者は実際の色と感じた色を比べ、より感性に引掛かる色を選ぶので異なるのは当たり前だ

IMG_4338のコピー

1/43 SP製 1973年Bob Nagelが購入しMosportで3位となったモデル、73年の第1戦は、拙書「事実は小説よりも奇なり-6〈たかが1勝、されど1勝〉」の中にでてくるCharlie Kempの初優勝のレース、Mark DonohueやGeorge FollmerのPorshe 917/30/10も参戦しているレースで予選10位・決勝3位(1位より3周遅れではあったが)は立派だ

 結局、T260はJ. Stewartの腕があっての結果と、その後はPorsche 917/10と917/30が大活躍したのも結果に表れている。

参考文献
Pete Lyons CAN-AM Motorbooks International 1995

ジョー・ホンダ スポーツカー・スペクタクルズ No.11   カンナム1970 Part-02 No.11   株式会社モデルファクトリーヒロ 2015.10.21

ジョー・ホンダ スポーツカー・スペクタクルズ No.12   カンナム1971   No.12  株式会社モデルファクトリーヒロ 2015.11.21


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