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IAEA(世界原子力機関)と日本の「東電事故原発」事情の共存が意味するもの

【前 論】 東電福島第1原発事故現場から排出される汚染水は浄化したとはいっても,「処理水という名の汚染水」である事実になんら変わりなしという事実,そしてこの事実をを認めない原子力ムラ的な欺瞞。

【参考画像】

ドイツは2023年4月15日をもって全原発を廃炉にした

 汚染水を処理水といいかえたところで,「放射性物質に汚染されつくした事故原発の基本特性」をめぐる諸困難の実在じたいは,なんら否定できない。しかし,太平洋に流しこんでしまえば,あとはオボロと思いこみたいらしいが,すべてノープロブレムという具合になるかどうかは,保証のかぎりではない……。
 付記)冒頭の画像は,IAEAグロッシ事務局長画像。『東京新聞』2023年7月8日から借りた。

 「汚染水⇒処理水」の問題を惹起・派生させている事故原発に固有であった問題は,太平洋へそれを放出ないしは排出をするといった作業手順をめぐってであるならば,いままで,なにかと騒がれてきた「風評対策そのものの次元」に方途にかぎっては,意図的に局限化あるいは矮小化できるかもしれない。

 しかし,そうした始末のあり方は,「問題の本質」から視線をそらさせようとする東大話法ばりの説明であった。トリチウムという化学物質の害悪性(放射性)を意識したうえで,さらにくわえていえば,別の何種類もの有害な物質が,まだ「各種の核種11種類」として現実に残存しつづけている事実は,まさしく観過できない重大問題であった。

 その事実は,「汚染水⇒処理水」のなかにまだ残っている「放射性物質:汚染の原因物質」が問題であるにもかかわらず,その風評被害の問題性だけを意図的に前面に押し出し,特筆大書的に強調する世論誘導法は,事故を起こした「原発そのものの〈問題性〉」を,ありのままに対象化するかたちで認識しようとする,まともで正当な立場からすれば,人びとの関心をはぐらかすための世論誘導策にしかない。

 直近における関連の報道としては,たとえばつぎの諸記事があった。

 「処理水 張れぬ 海水浴場 政府放出方針 嘆きの夏-風評対策に海域データ公表 ⇒・福島・茨城 観光客回復なるか」『毎日新聞』2023年7月15日朝刊。

海水浴と汚染水

本ブログのこの記述中で問題とすべきの文言は,「放出前後で科学的根拠に基づいたデータを公表することが重要」と断られていた点に求められる。この〈科学的根拠〉ウンヌンという口調そのものが,そもそもトリチウムに関した認識として判断するとき,「異説から投じられる議論」に対してまともに反証を繰り出せないでいた。

 そのうえで,処理水のなかには「そのほかの核種11種類」までが完全に除染できないまま,だからあとは,それらをともかく薄めて海洋に排出すれば文句あるまいみたいな〈発想〉になっていた。ここですでに「なにをかいわんや」の次元の話題が隠せずに露呈していた。

 つまり,科学的な根拠にもとづく判断だというにはおぼつかない,そのまた以前の,もとより根拠の明解ではなかった予断,もしくはそれ以前に「安全神話」の残滓を除去できていないなかで,

 トリチウム以外の核種11種類は,ALPSという装置を利用して除去できなかった分については,これを希薄してその濃度を薄めてから排出すると,どこかの誰かが都合よく決めていた。そのさい,人体には有害ではないはずだという論法になってもいた。

 ここで,関連する記事をいくつか挙げる。

 ★-1 まず,「北海道ナマコ 価格に異変,処理水巡り 中国の動向影響か」『毎日新聞』2023年7月14日朝刊,という記事が出ていた。

 同じく食べものの関連の記事では,「EU,日本食品規制撤廃 福島産など,来月めど」『日本経済新聞』2023年7月14日夕刊,という報道もなされていた。この新聞報道は,その内容は地球の向こう側の国々にまで伝わっていた。

 ★-2 また「海洋放出 香港に説明 外務省 IAEA方向基に」『毎日新聞』2023年7月13日朝刊,という記事も出ており,問題の規模が全世界的な範囲にまで及んでいることを教えていた。

 ★-3 さて,「全漁連『放出反対変わらず』 原発処理水で経産省に」「東電社長『真摯に対応』」『日本経済新聞』2023年7月15日朝刊,という記事が出ていたのは,従前,この全漁連の同意がなければ処理水の放出はしないと約束していた国側が,この約束を一方的に違えた「最近の事情」に関する報道として,であった。

 しかし,以下に紹介する議論のなかにも登場するが,IAEA(国際原子力機関)の代表者とて,きわめて無責任に,つまり「日本の問題は日本の責任で・・・」という姿勢で発言していた事実に注意しておきたい。

 日本政府とIAEAとは,おたがいにお手玉ごっこよろしく,相手側に責任があるのが,今回の処理水問題に関する基本線だといいたげであった。つまり,双方が無責任であったゆえ,なにやらモチャモチャする関係ばかりが醸し出されていた。なんとはなしにどこかに流れていくに任せていくつもりなのである。

 以前,参照したことがある『東京新聞』2023年7月8日の記事,「原発処理水の放出にお墨付き… IAEAは本当に『中立』か 日本は巨額の分担金,電力業界も人員派遣」からとなるが,この記事内の小見出しのみを抜き出して羅列してみる。なにかみえてくるものがあるはずである。

  ◆ 「権限のあるIAEA」
  ◆ 巨額な拠出金 日本の分担率は10%超」
  ◆ 「職員をたくさん送り,存在感を確保する」
  ◆ 被災者からの疑問
  ◆ トリチウム処分「海洋放出は安上り」
  ◆ 規制委を「独立」と評価するが…
  ◆ 「公正な第三者機関にはなり得ない」
 

 ※-2『日刊ゲンダイ』の2023年7月15日 15:10 に掲載された記事 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326037)に接した。

 この※-2では,『日刊ゲンダイ』のこの記事を引照する前に,議論の前提になる関連の論点を提示しておきたい。

 この記事は,処理水であっても本質では汚染水にかわりない事実を踏まえていうことになっているが,それでも「放射性物質:核種」の何種類を,いかにも「よりキレイに処理できた水である」かのように語る(騙る)かたちを採り,つまりだいぶいいつくろっている点,換言するとそこに伏在するて「本質的なゴマカシ」を摘出している。

 要は,通常に稼働・操業させている原発から仕方なく漏れているトリチウムだけでなく,事故を起こした原発からの場合は,トリチウム以外のいくつもの核種が,つまりは,事故を起こしたがために原発の内部から流出してくる何種類もの放射性物質を含んだまま,太平洋に放出(放流)することになるゆえ,問題がないなどというほうがどうかしている。

 ところが,そのあたりに関して説明が必要な点が,どういう基準なのかはっきりさせないまま,いいかえれば,科学的根拠が明解ではない勝手な理由づけ(つまり屁理屈)をもって,ともかくあとは薄めて放出すれば問題ないとした,ずいぶんひどい非科学的な説法で,太平洋への排出を合理化できたつもりであった。

 ともかく,「汚染水⇒ALPSでより浄化した・キレイになった」から「放出するのだ」という思考回路は,その中身にどのような問題があるとかないとか詮議する以前に,ともく放出は実施するといった強行姿勢ばかり目立っていた。

 放射性物質の核種11種類であるが,これらをトリチウム以外にも含有する汚染水であっても処理水に衣替えしたうえで,これをさらに薄めて太平洋に流しこめば,「融けて流れりゃみな同じ」といった要領を使えるし,それでもってこれから10年以上もかけて,その作業をおこないつづけという予定を立てている。

 どのみち,最初の汚染水を一定基準にまで除染し,処理水と呼べる程度まで薄めていけば,問題なく放出できるという手順を決めていた。そうなのであれば,それが「濃い処理水であっても」また「薄い汚染水であっても」,ともかく,みんなそれぞれに一定の基準まで薄めておけば,あとは太平洋へ流しこんでしまえば「一丁上がり!」,ノープロブレムということにあいなるらしい。というか,薄めもしないで一気にドボンと太平洋に流せばいい……。

 以上のように表現した疑問はもっとも素朴でかつ自然な指摘である。東電側は貯水槽を設置する場所がもう足りなくなるので,どうしてでも処理水を海洋に放出したいと決めこんでいた。国家側の関係省庁・指導機関もなんだかんだいいながらも,「それでいい」という基本姿勢である。

 原発事故を起こしたとなれば《悪魔の火》を燃料に焚く発電方式が,より非常にやっかい事態を巻き起こす事実は,とくにチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日),そしてその四半世紀あとにさらに起きた東電福島第1原発事故(2011年3月11日)によって,現実のものになっていた。

 いずれの原発の深刻・重大事故も,人類史にとってみれば戦慄すべき,極度の恐怖を与えた各発電装置の深刻な故障であった。しかもさらに恐ろしいことには,人間側の制御が不能となる事態を招いていた。「魔法使いの弟子」の師匠は,しかし,この地球上には1人もいないことは忘れていけない。

 ところで,「プーチンのロシア」によるウクライナへの侵略戦争が始まって以来,火力発電用の燃料価格が高騰したのを理由に挙げて,原発コストの優位性をまたぞろ短期的な視野狭窄の観点から強調する者が,雨後の筍ではないがまたぞろ湧き出てきた。(もっとも直近の報道ではLNGはだいぶ値下がりし,安定してきた)

 だが,原発コストとの比較・吟味において「事故発生にともなう放射性物質の危害」をコスト計算に入れずに,また,通常は技術経済的になされていくべき廃炉工程からじわじわと湧いてくる新しい公害経費的な事後計算すらも考慮しないその比較は,

 後出しジャンケン風にいずれは膨大に出現する「原発コスト」側の大々的な不利性を前もって計算することにならざるをえず,「原発会計」領域においては発生が確実であるその『泥沼的な未来』は,いまから確実に透視できている。この事実に目をつむった片落ちの議論は,現実逃避を意味する。

 ここで『日刊ゲンダイ』2023年7月14日, https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326037 の記事が議論していた汚染水なり処理水の「汚さや危険性」は,素人であるわれわれの立場であっても,よくしっておく必要があった。以下に訊いてみたい。

 ※-3 「中国は海洋放出に猛反発! 福島原発『処理水』と『汚染水』認識のズレはどこに?」 『日刊ゲンダイ』2023年7月14,

 これは,ASEAN(東南アジア諸国連合)日中韓3カ国の外相会議で,福島第1原発の処理水をめぐり,中国が科学的根拠にもとづかない主張をおこない,林 芳正外相が反論したという出来事に関した『日刊ゲンダイ』の検証記事であった。

 --中国外務省によると,王 毅氏が「核汚染水」と発言したという。「言葉」でもめるのも大人気ないと思うし,あまり本質的ではないのだが,騒ぎになっている以上,白黒を付けなければならない。

 福島原発「処理水」と「汚染水」〔に関する問題の〕認識のズレ?〔か,否〕少し違う,科学的にはどちらが正しいかだ。

 なお,前段直前までの被引用文は,『日刊ゲンダイ』の記事そのものからではなく,「ちなみに,私は,これまで『汚染水』といいつづけている・・・」と書いていた,この記事の執筆者自身の別の文章からのそれあった。

 ということで,ここから以下が『日刊ゲンダイ』の記事抜粋,そしてさらにその人が議論した記述がなされている。適宜に読みやすくする記述となるように若干の補正・工夫をくわえて,以下紹介していく。

 a)「国際基準と国際慣行にのっとり実施する」

 ASEAN(東南アジア諸国連合)と日中韓の外相会議で,日本の福島第1原発「処理水」の海洋放出計画をめぐり,林 芳正外相(62歳)が声を荒げる場面があった。林氏の発言は,会議に参加している中国外交トップの王 毅政治局委員(69歳)が「汚染水」と発言。海洋放出に反対姿勢を示したことに対して抗議する意味もあったとみられる。

 「処理水」か「汚染水」か,認識のズレはどこにあるのか。

 ひとつのヒントになるのは,2020年12月の衆議院東日本大震災復興特別委員会において交わされた質疑だ。

 立憲民主党の玄葉光一郎議員(59歳)は「ALPS(多核種除去設備)処理水というのは,ほかの原発から出ているトリチウムと同列に論じていいのかどうか」と質問。

 これに対し,当時の江島 潔経産副大臣(66歳 = 自民党)は,ALPS処理水について,

 「溶融した核燃料に直接触れている水が由来であります。したがいまして,核分裂で生じた核種を含んでいるということは事実」としたうえで,

 「(核燃料の)再処理工場というものから出てくる排水には,同じく核分裂で生じた核種が含まれている」

 「トリチウムにくわえまして,セシウム,放射性ヨウ素,それからカーボン14等々,福島第1原発のALPS処理水に含まれる核種と同じものが確認をされている」と答弁。

 同委員会に出席していた東電副社長も,「損傷した燃料に触れた水という点では,通常の原子力発電所で発生いたします液体廃棄物に含まれない放射性物質が含まれております」と説明していた。

【参考資料】-汚染水に含まれる放射性物質-

処理水=汚染水

 b)「政府や東電の二転三転した対応も近隣諸国の不信感に…」

 日本共産党の高橋千鶴子議員(63歳)は,処理タンクで液漏れやさび,硫化水素の発生などのトラブルが続いた事実を挙げ,「事故炉を通した水であること,トリチウム以外に62種の放射性物質があり,濃度や組成はタンクによって均一ではないこと,タンクのなかで有機結合型トリチウムの発生も確認されていること,こうしたことから,通常運転時に放出されるトリチウムと同一視することはできない」と断言。

 さらに「そもそも,基準,基準といいますけれども,事故炉に対して総量規制を取っ払ってしまっていること,再処理工場はもっと高いからというなにかすごい答弁がございましたけれども,数万倍も高い濃度のトリチウムを放出するといわれている再処理工場には,濃度基準さえない」と指摘していた。

 この時の質疑をそのまま受けとると,福島原発の「処理水」をたどると,ネット上でみられる「他の原発の処理水と同じ」とはいいがたく,再処理工場で粉砕された核燃料に触れるなどした「排水」に近いようだ。

 もっとも,それでも政府や東電はALPSの処理を重ね,IAEA(国際原子力機関)のOKもえたから「処理水」と主張したいのだろう。

 ただ,一方で,この問題を振り返ると,もともとALPS処理後に残るのはトリチウムだけといわれていたはずが,その後,ほかにも放射性核種が含まれており,(排出)基準を上回るものも多いということが発覚して,大騒ぎとなったのは記憶に新しい。

 政府や東電のこうした二転三転した対応が,中国など近隣諸国の不信感を招く要因になった面は否めないのではないか。

 以上で『日刊ゲンダイ』の記事からの抜粋は終わる。

 c) 福島事故原発由来の,海洋放出をしようとし,海水で希釈した「あの液体」は,「処理水」なのか「汚染水」なのか。科学的にはどちらが正しい表現なのか。参考までに記しておくと,「汚染」の対義語は「浄化」「洗浄」とある。

 IAEAはどう捉えているのか。国際基準に則るというなら,IAEAの定義ではどうなのかを調べるのがよさそうだ。

 d) IAEAによる汚染(放射能汚染)の定義:(以下はウィキペディアから抜粋)

  1. 表面上,または固体,液体,気体(人体を含む)内の放射性物質,または,それを生むプロセスで,その放射性物質の存在が意図しないか望ましくない場合。

  2. ベータおよびガンマ線と低毒性(low toxicity)。アルファ線の場合は0.4 Bq/cm2を超える量,またはほかのすべてのアルファ線の場合は0.04 Bq/cm2を超える量の放射性物質が表面に存在する場合。

 2. については,この定義は国際輸送規則上の定義であって,その数値以下であっても,1. の科学的定義が考慮されなければならないとしている。

 またとくに,汚染の語には意図しないということを含意している場合があり,汚染の語は単に「放射能の存在」を示すにすぎず,「関連する危険有害性の大きさ」を示すものではないとしている。

 以上は,ウィキペディアから抜粋引用であった。

 e) IAEAによる汚染(放射能汚染)の定義で,とくに上の 1. の科学的定義にしたがえば,「汚染水」をALPSによって一定量の放射性物質を除去したとしても,意図ぜずして混入した放射性物質が残っている以上は,その危険有害性の大きさにかかわらず「汚染」水ということになろうか。

 ということで,

 科学的には,「汚染」された水は「汚染水」であり,これを「処理水」といおうとも,「汚染」された水であるから「汚染水」に変わりはない。

 こうしてみると,「処理水」という表現は,恣意的に「汚染」を隠すために作られた悪質な造語といえる。

 すなわち,プロセス的には「汚染」水に「浄化」処理を施した,いわば「浄化処理水」なのだろうが,除去できない放射性物質が残る以上「浄化水」あるいは「浄水」とはいえない。

 結論的には,「汚染水」を浄化処理で放射性物質を除去しきれなかった「不完全浄化処理水」ということになる。

 f) 政府と東電は,「不完全浄化処理水」を(完全を装って)「処理水」といっていることになる。だから,科学的には,「汚染された水」という実態は変わらない。

 「汚染水」という表現こそが科学的であり,「処理水」と表現するのは,もはや科学とは無縁の「詭弁」の類いだろう。

 政府や東電のこうした「人を騙そうとする」ような対応が,日本国民だけではなく,「中国など近隣諸国の不信感を招く要因になった面は否めないのではないか」

 --ここまでの議論についていえば,本ブログ筆者もいままで,汚染水も処理水も本質面で決定的に区分しうる根拠がみいだせないと考え,その区分を「名称以外には認めていなかった」。

 以上に紹介した説明・解釈は,その理解・認識を,論理にかなっていた,筋が通っていたという意味で,十分に納得がいくものである。

〔記事に戻る→〕 「汚染水」にはトリチウム以外の核種が含まれていることは,日刊ゲンダイの本記事からも分かるとおり,政府,東電ともに認めている事実であり,正常に運転されている原発から排水される冷却水と同列で語ることは,明かに「非科学的」といえる。

 林 芳正外相は,「国際基準と国際慣行にのっとり実施する」というが,IAEAの報告書は前文で,「福島第1原発の処理水の海洋放出は日本政府の『国家的決定』だとし,「この報告書は政策の推薦でも,裏書きでもない」と強調している。

 同報告書はまた,扉ページの声明で,報告書の提示した見解は必らずしもIAEA加盟国の見解を反映しているわけではなく,「IAEAとその加盟国は,この報告書の利用によって引き起こされるいかなる結果に対しても責任を負わない」と強調している。

 さらには,「福島の放射能処理水は飲用や水泳が可能で他国の原発排水と同じく危険がない」などといった,IAEAのグロッシ事務局長の提出する包括報告書を「科学的」として信用する,「非科学的」なその神経は疑われて当然であるう。

 審査を依頼されて,「内容に責任をもちません」という報告書を出す方も出す方だが,受けとる方も受けとる方だ。

 中国政府から,「飲めるんであれば,日本国内で飲料水として使ったらどうだ」といわれて,「飲めるんじゃない」と口をまげていった奴がいるみたいだが,絶望的に情けなくなる。(引用終わり)

 一般財団法人水俣病センター相思社のホームページ https://www.soshisha.org/jp/about_soshisha/history/minamata_appeal いわく,

 「いま,水俣病闘争の経過を振返って見て,『ゼニは要らぬ,水銀を飲め』と迫った叫びがどうしようもない重さをもって甦って来る」と。

東電福島第1原発事故をめぐってもそれでは,汚染水を薄めたはずの処理水を「引用や料理に使用する」のも一案である。処理したのだから安全に薄まっているというその水である。太平洋に流すまでもあるまい。もったいない点は,膨大な経費をかけて作った「処理水」である事実からしても,説明するまでもあるまい。

 元東電会長・社長のとくに勝俣恒久は,株主代表訴訟で1人あたり4兆円を超える金額もの損害賠償を請求された。敗訴していた。勝俣もまた,これからは毎日,その処理水を飲料水や料理用の水に当てたらよろしいのではないか。風呂に使えばより効率的に利用できるし……。

 東電福島第1原発事故を起こすまでの日本の各地域で管轄していた各電力会社は,いつもそろい踏みで,百%以上の確信を明示しつつ,原発は「安全・安心・安価」だと唱え,これに疑義を呈したり批判したりするものを,まるでハエを叩きつぶすかのようにして排除し,弾圧してきた。

 もっとも,高木仁三郎や小出裕章(熊取六人衆の1名)のように反骨の精神と正義の基本姿勢を心えていた人物たちは,2011年3月11日に発生した東電福島第1原発事故を予見する立場から警告を発しつづけていた。

 1986年8月の時点で『東京に原発を!』集英社文庫を刊行した広瀬 隆はさらに,東電福島第1原発事故が起きてしまう前,その半年ほど先行して『原子炉時限爆弾』ダイヤモンド社,2010年8月も公刊していた。

 その後も広瀬は,あたかも怒り狂ったかのように反原発の立場から,非常に多くの講演をこなす姿を披露しつづけていた。
 

 ※-4 小出裕章が原発に反対する理由-原子力ムラはいまだに強力な共同体として存在する

 以下の記述はウィキペディア「小出裕章」に依拠しているが,本ブログ筆者なりの補足をくわえている。

 福島第1原発の事故後も,政府・電力会社・経済界などからは,定期検査などで止まっている各地の原発の安全性を確認したうえで原発を再稼働しようという声が高まっていたし,現在もその方向性は絶対的な勢力集団の強力な意向として実在するし,その方途は常時,エネルギー政策において反映されている。

 小出裕章は著書のなかで,「安全な原発などはなく,安全性を確認できるようなことは金輪際ない」と述べている。また,政府・電力会社・経済界などが原発再稼働に向かおうとする理由を大きく4つ挙げている。

 ▲-1 独占企業である電力会社は,原発を作れば作るほど,稼働すればするほど儲かる仕組みになっている。

 補注)電力は自由化された商品になっているが,現実はこの▲-1にかぎりなく近い現況にある。

 ▲-2 原子炉の製造を三菱重工,東芝,日立などの大企業が担い,そのまわりに “原子力ムラ” の住人である政治家,官僚,地方自治体,関連企業が群れ集まり,原子力利権を分けあう構造を手放すことができない。

原子力ムラ相関図
原子力町構成図

 補注)ところが,その後において日本の原発を製造できる上記の3企業は生産コストの面で急激に上昇してしまった。

 というのは原子力規制委員会が取り決めた安全基準などにしたがい原発を製造・販売するとなれば,2010年代途中までは1基(100万キロワット時ほどの性能の原発)の価格が5千億円から,なんとその倍,1兆円に急上昇したため,政府の支援があってもとくに海外諸国への売りこみでは,そのほとんどが不調・不成立に終わっていた。

 東芝などはアメリカ企業から原発事業部門を「ババ抜き」の要領で買収するという大失策を犯した結果,その後における経営不振を招き,実質「東芝解体」と指称される事態にまで至った。 

【参考記事】

 最後にこういう問題に触れておく。 “原子力開発=核兵器開発” なのであり,日本の政府は一貫して核兵器をいつでも製造できる態勢を維持することに努めてきた。その国策を, “たかが原発事故” くらいで変更は絶対にしない・できないと思っている。

 悲しい事態だが,原発交付金,補助金などによって財政の首根っこを押さえられている地方自治体は,雇用の問題もあり再稼働を容認せざるをえない。

 以上のごとき最近における原発事情を多少でもしれば,岸田文雄が首相になってからだったが,なにゆえ「原発の再稼働,新増設」を唱えだしたか,その背景が理解できそうである。

 この岸田文雄という首相は,安倍晋三に劣らず「▲の中は空洞であった」ゆえ,そのところにはなんでもかんでも潜りこませる度量(?)があった。

 以下に,安倍晋三が,第1次政権時の2006年12月であったが,日本の原発に事故などありえないと国会で質疑応答した事実に関連する画像資料,および,吉井英勝の著書『国会の警告無視で福島原発事故』東洋書館,2015年からは,その国会での質疑応答に関係するその該当箇所を画像資料にして紹介しておく。

吉井英勝 対 安倍晋三
吉井英勝『国会の警告無視で福島原発事故』

 安倍晋三は2013年に,東電福島第1原発事故現場では「アンダーコントロール」だと,例によって大ウソを吐いていた。この元首相の頭の中はそのときすでに,特殊な「意味不明の物質」に冒されていたのかなどと,同情的に忖度してあげるほかないのか,と同情してみる。

アンダーコントロール?

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