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2023年12月にあらためて「世襲3代目の政治屋」の弊害のひどさを,自民党の安倍晋三や麻生太郎を観ながら,この希望のもてない日本国を代表する政治家2人として解剖する

 ※-1 本稿を記述するにあたり断わっておきたい点

 a) 本日(2023年12月18日)にかかげてみたこの「上記の標題」のなかには,多分,岸田文雄をくわえるのは当然である。だが,実は,この記述の初出が2014年7月23日であったため,岸田文雄は俎上に載せられなかった。

 しかし,同じ「世襲3代目の政治屋」であってもその「格付け」をあえて意識して語るとしたら,安倍晋三と麻生太郎に対比させる岸田文雄に向けては,いくらかでも,はっきり識別できそうな別の要因(関連の指標)があった。ということで,岸田文雄も以下の記述中において,まったく言及されないわけではない。

 大枠としてはまず,日本という国家体制のなかで安倍晋三と麻生太郎が占めてきた「支配階層における位置づけ」に関心が湧くが,この2人はいずれも日本のエスタブリッシュメント(政治経済社会集団としての支配層一群)のなかでは,いちおう最上層を占めている。

 しかし,岸田文雄の場合は彼らに比較したら,そこまで位置づけるための連関が希薄であり,安倍晋三や麻生太郎に匹敵する条件・背景はもちあわせないとみてよい人物である。もっともそのように指摘した点を理由に,岸田文雄をここでは取り上げないという理由に挙げているのは,ひとまずはただ便宜的な説明にしかならない。

 だがまた,岸田文雄は現在まだ現役の首相であるという条件を配慮にいれるとしたら,以上のごとき説明(岸田文雄には言及していない点)にも,いちおう根拠になりうるかもしれない。

 さて,この2023年の12月になると世間における最大の話題は,自民党政権全体に浸潤している汚染物質(金物によるそれだが),つまりパーティ券裏金問題である。

 安倍晋三政権(2012年12月26日に成立・発足した第2次政権以降)の代になると,すっかり「旧態依然である自民党の体質そのもの」,これを換言すると金権政治の「汚職的な基本体質」は,そもそもが森 喜朗の政権時から始まっていたわけであったが,いまとなってみれば,自民党の全身そのものから垂れ流し状態になっていた「汚汁的の政治体質」を,嫌というほどにまで露骨に表現する問題となっている。

 庶民の目線からみても問題だらけの政権党,自由民主党の本性は,いっそう明白に理解されるようになった。いわゆる「いまだけ,カネだけ,自分だけ」の国会議員たちの集合体としての自民党政権になっていたゆえ,国民のための為政など期待する理由などわずかもありえない現政権になっていた。

 岸田文雄が2021年10月4日に総理大臣になってから主に推進してきた政治路線は「増税」⇔「防衛費2倍」⇔「原発推進」などに分かりやすく表現されているように,自分自身の政治理念や政策目標をもたない,つまり政治家としては意味不明な「世襲3代目の政治屋」の采配ぶりによく現出されていた。

 「世襲3代目の政治屋」として一番まずかったその采配のひとつが,自分の息子「翔太郎(当時31歳)」を首相秘書官に抜擢した人事に表わされていた。日本国首相のそばで使える秘書官に自分の息子を据えるという人事が,国民側の目線にどのように映るかさえよく分かっていない岸田文雄は,この一事からして,首相失格であった。

 b) さてこの12月,大手各紙による「世論調査の結果」がそろそろ出そろってきた。それらをざっと拾って紹介すると,こうなっていた。日付は順不同で紹介する。

 ★-1 「『首相早く辞めて』58% 「野党期待できぬ」78% 朝日世論調査」という『朝日新聞』本日(2023年12月18日)朝刊の記事は,冒頭をこう書き出していた。

『朝日新聞』2023年12月世論調査

 朝日新聞社が12月16~17日に実施した全国世論調査(電話)によると,岸田首相に首相を「続けてほしい」と答えた人は28%で,「早く辞めてほしい」という人が58%を占めた。

 岸田内閣の支持率は今回23%で,不支持率は66%と,2012年12月に自民党が政権に復帰して以降,支持率は最低,不支持率は最高を更新した。

 註記)『朝日新聞』2023年12月18日 5時00分,https://www.asahi.com/articles/ASRDK7QC6RDGUZPS00B.html

『朝日新聞』世論調査

 ★-2「岸田内閣支持17%=裏金疑惑で続落,不支持58%-自民支持も2割切る・時事世論調査」『時事通信』2023-12-14 15:02,https://sp.m.jiji.com/article/show/3121265

『時事通信』2023年12月世論調査

 時事通信が〔12月〕8~11日に実施したこの12月の世論調査によると,岸田内閣の支持率は前月比4.2ポイント減の17.1%となり,2012年12月の自民党政権復帰後の調査で最低を更新,初めて1割台に落ちこんだ。

 自民党政権の支持率が2割を下回るのは,民主党政権が誕生する直前に調査した2009年9月の麻生内閣(13.4%)以来となった。

 内閣支持率が政権維持の「危険水域」とされる2割台以下となるのは5カ月連続で,政権復帰後の最低更新は3カ月連続。自民派閥の政治資金パーティー券収入をめぐる裏金疑惑が支持率低下に拍車をかけているもようだ。

 不支持率も3カ月連続の悪化で,前月から4.9ポイント増の58.2%。不支持率が5割を上回るのは2カ月連続で,政権復帰後の最悪を更新した。

 自民の政党支持率も政権復帰後の最低を更新。前月比0.8ポイント減の18.3%で,2カ月連続で2割を下回った。

 補注)例の「青木の法則」で計算(足し算)すると,内閣支持率17.1%+18.3%だから35.4%で,政権維持が困難となる目安の比率50%を大きく下まわったことになる

 ★-3「岸田政権支持率が『危険水域』入り 政治資金問題で 自民政治資金問題」『日本経済新聞』2023年12月17日 14:00,12月17日 17:54更新,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA159PF0V11C23A2000000/

 日本経済新聞社とテレビ東京の12月の緊急世論調査で岸田文雄内閣の支持率が26%に下落した。政権維持の「危険水域」と呼ばれる水準に入った。「政治とカネ」の不祥事は歴代政権でも支持率の底抜けをもたらしており,先行きは険しさを増している。

 この『日本経済新聞』の報道に関連させては,同紙が実施してきた世論調査の時系列図表を紹介しておきたい。26%が内閣「支持率」,68%は内閣「不支持率」の数値。

26%と68%という比率は右側に離れて記入されていたので
ここでは2023年12月付近に移動させて表記した

 ★-4「内閣支持下落16% 裏金疑惑『重大』81% 毎日新聞世論調査」『毎日新聞』 2023年12月18日朝刊,https://mainichi.jp/articles/20231218/ddm/001/010/097000c

 この『毎日新聞』の世論調査については,記事現物を充てて紹介することにしたい。内閣の支持率と不支持率ともに一番きびしい数値を出している。

『毎日新聞』2023年12月18日朝刊1面

 ★-5「内閣支持22%,過去最低を更新 裏金疑惑,自民も下落20%台」『共同通信』2023年12月17日,https://www.47news.jp/10276452.html も最後に追加しておく。

「自浄能力がない」自民党


 本ブログ筆者は,安倍晋三の第2次政権以降,菅 義偉政権,岸田文雄政権の流れ全体は「より密着した政治体質の3政権」として進行してきたと観ている。安倍晋三の為政はこの日本の政治と経済を,完全に「非先進国」あるいは「脱(落)一流国」にしたと判断せざるをえなかった。

 なにせ「世襲3代目の政治屋」としての「マゴ・ボンボンたち」が,自分たちだけは1人前(一丁前)のつもりで,総理大臣をよくこなしてきたと思っていたらしいが,実際に担当させてその結果とみたところ,安倍晋三はみごとなまで「この国を衰退途上国」に転落させ,菅 義偉は強面の割には「外交にはほとんど手をだせない首相に終わていた」

 現在の岸田文雄となると,世襲政治態勢がはびこる日本の政治世界のなかでは,「岸田文雄もその該当者となった1人の立場」で首相の仕事をになっているせいか,自民党的なゾンビ為政を全然変身させえないできた。

 岸田文雄に期待されている今後の役回りは,もしかすると「自民党・葬儀委員長」という任務かもしれない。

 

 ※-2 2014年7月23日という一昔前の時期に議論してみた「自民党の総裁:首相の品位と骨柄」,それも安倍晋三と麻生太郎という「日本国を代表する◉流政治家2人」に固有の問題

 
 この※-2の記述するにあたり,つぎの要点3つをあげておきたい。

 要点1 無思想で頑迷の世襲政治屋としての安倍晋三と麻生太郎

 要点2 いうにこと欠き,他党を「アカ呼ばわり」し,レッテル貼りした安倍晋三風に極悪の欠陥思考回路

 要点3 時代錯誤にだが,殺し文句のつもりだったのか「民主党は左翼だ」とわめいていた安倍晋三の幻想的かつ想像妊娠的な他党非難

  ★ 左翼「的」ということだけで,批判の対象にする,その無知蒙昧 ★
     -無知ネトウヨ程度の社会認識と政治感覚のはしたなさ-

 だいぶ以前になるが,2010年6月8日のニュース報道は「『菅〔直人〕内閣は左翼政権』安倍・麻生両元首相が批判」という見出しで,つぎのような記事を書かれていた。

 過去に自民党が崩壊していく終末過程において,安倍晋三および麻生太郎という,きわめつけに低劣な骨柄であった〈元首相〉たちが産みだされていた経過事情を念頭に置き,読んでほしい。

 先回りしての補注)その安倍晋三を総裁に戴いた自民党が,2012年12月から再び政権を奪回し,この男が日本国の首相の座に就いていた。その後における日本の政治・経済がどのように推移してきたか,ここでは直接こまかに触れない。

 この国においてはいま,まさしく,人口減少の長期的趨勢が走行中である。しかし,少子高齢社会の現実がこのさき,解決されるような展望などまったくできず,これへの抜本的な対策もない状況のなかで,ただひとつ『「憲法解釈変更」による集団的自衛権行使容認』といった軍事関係の,それも,安倍晋三個人の「自我の情念」にもとづく「支離滅裂な目標実現」だけは,一生懸命にとりくまれてきた。

 安倍晋三が「首相の器」として受けている人物評価は,個人的な資質や性向そのものを中心に,

  a)「幼稚と傲慢」(小沢一郎評)や
  b)「バカ」(宮台真司,三橋貴明,適菜 収の評),
  c)「支離滅裂」(豊下楢彦・古関彰一の評)

などと極言されていたけれども,まったくに的中の評言であった。しかし,この折り紙付きの,いわば「定評のあった『大◉◉者』のこの国の首相」が第2次政権になって以降,「7年と8カ月」もの長期間,この国の舵取り(!?)をしてきたために,この国は完全に「滝『壺』のどん底」に吸いこまれたかのごとき惨状を呈する転末になっていた。

 この記述を更新しているいまの時点(2023年12月18日のこと)は,すでに日本国・民をそのどん底に蹴落としたごとき為政を「まっとうしてきた」安倍晋三のことを,すでに故人になった人物とはいえ,一国の最高指導者になった者に対する評価であるからには,よりいっそう厳正かつ緻密な分析をくわえたものにしておく必要があった。

 母方の祖父の政治家:岸 信介の実力には足元にも及ばなかった,この祖父の爪の垢を煎じて飲ましたところで,なんら効果は期待できるはずもなった「晋三の真の価値」だったから,すでにその政治屋としての真価はすでに白日のもとにさらけ出されていた。

 現行における選挙制度には問題(欠陥)があるとはいえ,このように「相当に稚拙」で「決定的な容量不足」のめだち,その器量において欠陥だらけの世襲3代目政治家が,人口1億2千数百万を擁する国家の最高責任者であった「歴史的事実」には,本当に心底から戦慄させられてきた。しかも,その結末が現状(2023年12月段階)においてどのようになっていたかは,まさしく観てご覧のとおりになっている。

 本日の話題〔ここでは2014年7月段階の事案であったが,今日の2023年12月18日になっても,より深く妥当する議論〕は,ひとまず,彼ら:自民党の「世襲3代目の政治屋」たちが以前,政権を失っていた時期に関したものとなる。

 民主党が政権を握っていた時期〔2009年9月~2012年12月〕,2人目の新しい首相として登場した菅 直人を,必死になってけなすための〈レッテル貼り〉を,安倍晋三や麻生太郎は口にしていた。その紋切り型の決めつけ文句が「菅〔直人〕内閣は左翼政権」であった。

 しかしながら,この口撃はまことに方腹痛い発言であった。極右に位置する者は「これ以上の右側」にはなにもみえていないゆえ,左側しかみえないことになってしまい,他者は全員「サヨク」だという,近視眼的ではなく遠視眼的な思考(自分の足元が全然みえていないそれ)しかできなくなっていた。

 --2010年6月8日のニュース報道からは,つぎの「『菅〔直人〕内閣は左翼政権』安倍・麻生両元首相が批判」という記事をとりあげ,関連する部分を参照しておく。

 菅内閣が発足した2010年6月8日,自民党の安倍晋三,麻生太郎両元首相から「左翼政権」との攻撃が相次いだ。自民党は民主党を「労組依存」と批判してきたが,市民運動出身の菅直人氏の首相就任で「左」批判をエスカレートさせた。ただ,自民党内からは「そんな論争に国民は関心がない」(中堅)と冷めた声も出ている。

【参考画像】-国会内での安倍晋三の不規則発言,その悪相ぶり-

品があるとかないとかいった水準からは
無縁だった安倍晋三君の言動

 急先鋒は安倍氏だ。8日の講演で,北朝鮮による拉致事件の実行犯とされる辛 光洙(シン・グァンス)容疑者の釈放運動に菅氏が携わったとして「史上まれにみる陰湿な左翼政権」と主張。1999年の国旗国歌法成立に反対したことをとり上げ,「君が代,日の丸をおとしめてきた人物が首相になりおおせた」と述べた。

 2010年7月23日の補注)この安倍晋三は日本の憲制史上,まれにみる劣悪な資質を発揮してきた政治家:首相であった。いま,日本の国民・市民・庶民(住民)側の迷惑・被害は,頂点に達しつつある。

 例を挙げれば,アベノミクスの疑問。原発の被災地・被災者に対する不十分な救済措置。消費税8%(!)。集団的自衛権行使容認に反対の国民が過半である。それのに,憲法解釈変更でもって,しかも閣議決定という手法で,国民の立場を無視して,それを決めていた。

 補注)消費税は2019年には10%へとさらに引き上げられていた。 2023年10月1日からはインボイス制度も始まるということで,現在の岸田文雄朱書は「増税メガネ」と呼ばれる始末。

 麻生氏も自民党の参院選候補予定者の事務所開きで「市民運動といえば聞こえはいいが,これだけの左翼政権は初めてだ。(自民党との)対立軸がはっきりした」と述べた。二人の元首相らには保守層を固めることで,自民党再生の足がかりにしたいとの狙いもあるようだ。

 2014年7月23日の補注)この麻生太郎は,ミゾウユウな〔この漢字のもとの字体はあえてここに書かないでおくが〕漢字力の持ち主であったことは,まだ記憶している人も多いと思うが,この太郎も一時期,日本国の首相を本当にやっていた時期があったのだから,まさしく未曾有の驚きをもって回顧せざるをえない事実であった。

 ただ,自民党は前回2007年のの参院選で保守色の強い安倍政権が惨敗した。参院議員の1人は新政権批判について「争点設定が下手だ。生活の話をしないと」と手きびしい。

 2014年7月23日の補注)安倍晋三は新政権(2012年12月発足)のもとでは,集団的自衛権行使容認に関する議論ではだいぶ工夫を(パネルを多用し,具体例を挙げるなど)していた。

 だが,その主張じたいの「ためにしてきた」具体的な議論の中身については,安倍晋三には「支離滅裂な軍事関係の知識しかない事実」が指摘されている。  

 たとえば,豊下楢彦・古関彰一の共著『集団的自衛権と安全保障』岩波書店,2014年7月18日は,冒頭の「はしがき」からして,安倍晋三に特有であるそのような支離滅裂性を指摘・批判していた。  

 関連してはさらに,大橋巨泉(1934-2016年)が当時,つぎのように語っていた。

 「スリカエやコジツケに満ちた安倍首相の集団的自衛権会見, この男に祖国を任せて良いのか」 『週刊現代』2014年6月7日号,コラム〈大橋巨泉の今週の遺言〉から引用する。

 去る〔2014年〕5月15日,安倍晋三首相は記者会見をおこなって,集団的自衛権の説明に懸命だった。ボクは旅行中の宿の部屋で,全容をみた。紙芝居のようなパネルを使っ て,「平易に叙す」ことを心掛けたようだが,その内容たるや,「大ウソ」や「スリカエ」に満ちていて,みていて気持ちが悪くなった。率直な感想は,「この人は本当に悪い人だな」である。

大橋巨泉の安倍晋三批判

 だから,前掲の最新作,豊下楢彦・古関彰一『集団的自衛権と安全保障』岩波書店(岩波新書),2014年も,安倍晋三によるこうした紙芝居的な説明は幼稚であって,問題の本質をまったくわきまえない「支離滅裂」と断罪していたのである。

安倍晋三の集団的自衛権「解説」パネル

 そもそも,安倍晋三が説明しているつもりの「そのような想定」による集団的自衛権の行使が,はたしてありうるかについては,アメリカ側が完全に否定しているとまで断言していた。

 以上の内容についてくわしくは,同書(新書判,¥820-)を読むことを薦めておきたい。豊下楢彦は集団的自衛権の問題に関しては,専門研究者として適切な議論・究明・批判をおこなっている。

 こうしたなか,谷垣禎一総裁は揺れている。〔ここでは,2010年の話に戻るが→〕6月7日には記者団に「内閣のメンバーを見ると非常に左翼的な政権になるのでは」と強調。だが,8日に「左」批判の真意を問われると「漠然たる印象で,今後どうなるかはよくみていきたい」と発言を後退させた。

 注記)「『菅〔直人〕内閣は左翼政権』安倍・麻生両元首相が批判」『朝日新聞』2010年6月8日20時17分,http://www.asahi.com/politics/update/0608/TKY201006080380.html

 

 ※-3 左翼じたいがいけないというなら右翼じたいもまたいけないはずである-反面教師同士だとしてそういえるのでは?-

 ここでは「左翼」ということば=表現がポイントである。「左翼」ということじたいがいけない,という前提に立っている。このことば:「左翼」だけををもって,相手を非難・攻撃すれば,民主党政権を貶められると考えているらしかった「元首相2人:安倍晋三と麻生太郎」の浅慮・単純さ・短絡ぶりが,ひときわめだっていた。

 昔風にいえば,それは,なんでも気に食わない相手は「アカ呼ばわり」して相手をやっつけるという単純・稚拙な攻撃の方法であった。つまり,レッテル貼りであり,問答無用の人身攻撃のための手法である。「いけない」から「いけない」という理屈しか,そこにはない。

 たとえていうと,日本共産党の支持者でなければ『しんぶん赤旗』は読んではいけないといわんばかりの「頑迷さ」が,狂い咲きしたかのように宙を舞っていた。

 晋三や太郎はなかんずく,「北朝鮮」と「君が代・日の丸」のセットをもちだし,民主党はこれらに関して問題のある政党・政権だといいたいのである。これかあれかと問題を極端に単純化し,ともかく,一般大衆〔ミーハー〕受けしそうな「単細胞」的な煽動の方法を採っている,これがミソである。

 補注)安倍晋三は首相だった長期間,北朝鮮事項,とくに拉致問題を餌にして日本国民の関心・支持をもらっていたが,この問題に対してまともに,国際政治の解決すべき論点として取り組んだ形跡はなかった。安倍は拉致問題を悪用してきたに過ぎない。

 最近の日本社会は「左翼」,それもどちらかというと「サヨク」とカタカナで書き,このなかには,自分が気に入らない「他者の思想・立場」を一括りにしてほうりこまれる。もっとも,最近において左翼といえるほどの政治社会的な勢力が確たる存在としてみいだせるかといえば,これがあまりパッとしない。
 
 補注)関連した類似語としてこのごろは「反日」という言葉がよく使用される。自分の意見に合わない,反対する奴は「反日」の立場だという論法にもなりえない論法が,けっこうはやっていた。

 その理屈にしたがっていえば,鈴木宗男は佐藤 優は,日本に居るな,ロシアに移住しろというヘリクツが動員されそうだが,そこまでいうのであれば,日本国の外務省はアメリ本土に庁舎を移す必要もありそうである。

 日本共産党でさえ現在では,天皇・天皇制を否定しない立場である。戦前・戦中・敗戦後においてさんざんに天皇制の神国体制から圧政を受け,徹底的に弾圧されてきたこの伝統ある左翼政党の日本共産党が,天皇制度を認める立場しか保持できていない。

 この実情は実に奇妙な政治世界の構図である。天皇を批難すると共産党への投票が減ってしまうという心配が,そうした共産党の基本姿勢を採らせる最大の理由である。

 出所)敗戦直後,日本共産党が公表していた新憲法の骨子は,つぎの関連資料を参照されたい。これは当時,日本共産党が公表した「新憲法の骨子」である。天皇・天皇制のことは一言も触れられていない。

 「主権は人民にあり」と謳っていた。しかし,いまだにこの日本は「主権在君」の国にもみえる側面を残したままである。

日本共産党が敗戦直後に提示した憲法の精神

 さて,サヨク〔だからといって「殺し文句」のつもりで〈アカ呼ばわり〉する〕ということばの用法が,いまだにこの国ではなされている。誰でも彼でも気に入らない者は攻撃し,排除するために重宝されているのである。

 前段で指摘された「反日」という用語が,いまではその代替品になってもいるが,いずれも他者を攻撃するさいに多用・乱用・誤用されるのは,それなりにとても便利な含意を発揮しうるからである。

 つまり,サヨク(ハンニチも同じだが)ということばは,このなかになんでもかんでも,それも問答無用・没論理的に「相手を誹謗するための材料」を一括的にほうりこんだ便利な凶器として使われている。これが,他者を排撃するために悪用されている。その意味で「サヨク(左翼)」ということばは,不当にも狭隘に偏倚した中身でしか使用されていない。

 前述に指摘したが,昔よく使用された「アカ呼ばわり」と同じ効用が,この「サヨク」,そして「ハンニチ」ということばにも同様に期待されているわけである。

 しかし,よく考えてみたい。安倍や麻生が叫ぶように「左翼(サヨク)」という用語を使うのであれば,「右翼(ウヨク)」じたいも,相当にけしからぬ「陣営=側」とみなされ,非難・攻撃されるべき政治的な思想・立場となるほかない。そのように,決めつけ的に規定されてもよいはずである。

 左側も右側もどっちもどっちで,「偏向している事実そのもの」に変わりはない,という理屈も立てられようが,こうした発想法は「自分の脳細胞」で考え判断する能力をすでに放棄あるいは喪失していたものたちに特有の性向だ,と断定されてよい。

 だが,安倍晋三や麻生太郎はあえて意図して単細胞的に考え,しかも二項対立的に割り切って単純にしか発言できていなかった。

  「サヨク(左翼)=悪」対「ウヨク(右翼)=善」

といいたいらしい。しかし,以上のごとき「観念的・一方的な・図式的・教条的」な,しかも没論理の主張は,まともな政治精神・社会常識を反映した理屈にはなっていなかった。

 要は,サヨクがいけないのであれば,ウヨクもいけないということになるほかない。思想・立場には左(革新)も右(保守)もあってよい。もちろん,その軸足が前(前衛)にも後ろ(後衛)にもあっていい。なにもいけないこと,悪いことはない。それじたいとしては,ならばである。

 イギリス政治における従来の2大政党である「労働党=左,保守党=右」において,保守党が労働党を指して「左翼」と形容したところでかくべつの意味はない。当然のことを当然にいったまでである。

 そして,逆にも同様であり,「右翼」の立場を「右翼だ」といって指摘する以上に,なんらかの意味をこめて非難しようとしたところで,そこからなにか特別の意味が生まれるのではない。神経過敏ないしは神経衰弱の病状が出ている,ということにしかならない。

 相手方の思想・立場を寛容の精神で受けとめられない「狭量な世襲政治屋」の「世間しらず」『坊や』たちが,与党(その後野党になった,つまり当時の民主党)に対して,主観的な思いこみでレッテル貼りをしていた。これを真に受けるほど,この国の庶民の政治意識は低いのか?

 結局,安倍と麻生は「左翼であることじたい」が好ましくない立場である,といいたいかのような口調で語っている。「いうにこと欠いて」苦しまぎれの他党批判なのである。だが,両名の教養のなさ・学識の不足を逆に,正直に告白したことは確実になっていた。

  よくいわれる文句にこういうものがある。--「私は君の意見に賛成しない。しかし,君がそれをいう権利は,命にかけても守ろう」。これが安倍晋三や麻生太郎になると,こうなる。「私は君の意見に賛成しない。だから,君がそれをいう権利は,命にかけてもつぶす」。愚の骨頂である。

 本心でなくとも,政治家はいちおうは,「私は君の意見に賛成しない。しかし,君がそれをいう権利は,命にかけても守ろう」といっていなければならない〔はずである,と思われる〕。

 サヨクがいけないなどと単細胞的に決められる人たちは,ウヨクもまたいけないと断言しておかねばならない。この程度の初歩的にも健全な政治・社会認識をもちあわせない自民党政治家(世襲政治家)たちがいる。この彼らに特有である単細胞的な頭脳の組成には,あらためてがっかりさせられる。

 こんな〈オボッチャン〉ちゃま連中を2代つづけて,自国の首相に戴いてきた日本,なぜかとっても恥ずかしい。

 2023年12月18日の補注)なお,この以上の段落は2010年6月時点の話題として書かれていた。いずれにせよ「2度あることは3度あった」とも書いてあったが,本当のそうなっていた。

 つまり,そんな〈オボッチャン政治屋〉が,であったが,菅 義偉が1年間ほど首相の座に就いたあと,こんどは岸田文雄が首相になっていた。2021年10月4日の出来事であった。

 しかし,本日は2014年7月23日である(これは,1度目の更新の記述として断わっていた日付であったので念のため)。梅雨が空けて数日経ったばかりであるが,問題にとりあげたお坊っちゃま政治家の安倍晋三が2度目の首相になってから,もう1年半が過ぎている。実質では国民の2割ほどの投票率しかもらっていない自民党のこの内閣総理大臣,その存在感たるや「年がら年中,梅雨景色」という印象であった。

 

 ※-4 2014年7月23日「付論」-思想弾圧に向っている安倍晋三-

 「2013年6月24日(月)パロディー封殺を狙う安倍政権の危険性(マッド・アマノ)」という見出しの記事があった。

 安倍政権がなにをいまさら「パロディー封殺?」と怪訝に思うかもしれないが,実は水面下で確実にそうした対策が遂行されているということを,ぜひしってほしい(といって,この記事の段落が2014年の時点なりに記述されていた)。

 註記)「パロディー封殺を狙う安倍政権の危険性」『マッド・アマノのパロディー・ブログ』2013-06-24 16:34:49,https://ameblo.jp/parody/entry-11559626983.html

マッド天野画像

 補注)マッド・アマノ(まっど・あまの)は,1939年東京都生まれ,東京芸大美術学部工芸科卒業。パロディー作家・パロディスト,『週刊パロディータイムズ』編集長。

権力批判を許さない国は民主主義とは
無縁の国家体制にある
ロシアはその典型

 補注)安倍晋三はこういう人間であった。マッド・アマノに対しては「私は君の意見に賛成しない。だから,君がそれをいう権利は,命にかけてもつぶす」という姿勢を有していた。

 これをロシアの場合でいいかえると実際,該当者はいつの間にか消されている場合が多い。2023年中になっても,プーチンが政敵,あるいは自分に批判を向ける人間を抹殺する行為は絶えていない。

 日本の場合で安倍晋三の場合になると,前段のごときマッド・アマノの芸術作風になる風刺漫画絵は,耐えきれない作品だと大いなる不満を抱き,権力の座からこれを弾圧(追放・抹殺)しようと画策した。

 前段に註記した原文から引用する。

 --文部科学省の文化審議会著作権分科法制問題小委員会という,やけに長ったらしい名称の特別委員会がある。これを「パロディワーキングチーム」という。このパロディワーキンクチームが2013〔平成〕25年3月にまとめたA3・33ページからなる報告書の冒頭の「序」には,こんな記述がある。

 「現行著作権法には,著作物のいわゆるパロディとしての利用を明示的に対象とする個別権利制限規定はないが,デジタル・ネットワーク社会のなかで,多くの著作物が創作され,また,流通されている現状等にかんがみ,著作物のパロディとしての利用について,著作権等の権利処理ルールの明確化を求める意見や,権利制限の対象とすることが必要ではないかとの指摘がなされている」

 さて,ここで注意すべきは「著作権等の権利処理ルールの明確化を求める意見」とあるが,いったい,求めているのは「誰」なのか,ということだ。一番肝心なところを曖昧にしているのはなぜか。求めているのは,とりもなおさず「自民党政権」そのものだからではないのか,と私は推察する。

 いいかえれば,こういうことだ。「権力を茶化したり,コケにする,パロディー的表現は広く大衆受けする。理屈より感性や情緒に訴え,笑いを誘うため,権力にとっては不都合な表現手段といわざるをえない」。広く著作権違反を取締まる,ということなら分からないでもないが,あえて「パロディー」に絞ったところに裏があるのだ。

 もう一度報告書をみてみよう。「本ワーキンクチームは平成23〔2011〕年度に文化庁が委託研究として実施した「海外に置ける著作物のパロディの取り扱いに関する調査研究報告所を踏まえ,パロディに係わる諸外国の現状について有識者よりヒアリングをおこない,各国の法制度や議論の状況等整理をおこなった」

 さらに21ページには「関連する裁判例及び学説」の項目で私が被告となった「モンタージュ写真事件」の記述がある。実名入りの記述ではないが,明らかに,これは私と原告の写真家・白川義員氏との間で16年間の長きに渡っておこなわれた,いわゆる「パロディー裁判」であることは間違いない。

 ここで重要なことが抜け落ちていることを指摘しておこう。第二審の高等裁判所の判決は私の主張を認めて,批判された者はパロディーを受忍しなければならない,とし,パロディーに軍配を上げた。

 さてさて,ここへきて,なぜ安倍政権は「パロディー封殺」の挙に出たのか? それは2004年の参院選に遡る。自民党のポスターを私〔マッド・アマノ〕が茶化した。これに対して自民党は怒った。

 私宛に「通告書」という恫喝をかけてきたのが,安倍晋三幹事長(当時)だった。「パロディー封殺」は,自民党政権を裏でコントロールする闇の権力の存在を抜きにしては考えられない。

 いま,わが国は徹底した言論弾圧の時代に突入した。参院選で自民党・公明党が圧勝したら〔した!〕,私たちの権力に対する批判は不可能になる。さて,どうする?

 註記)有料メルマガ・まぐまぐ!「マッド・アマノの『世界は嘘ばっかり』」2013年6月24日(月)配信。http://www.mag2.com/m/0001598646.html この住所(アドレス)は削除されていて,現在は参照不可。。

 註記)引用は,http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2013/06/post-8ba6.html より。〔 〕内補足は筆者(引用者)。この住所(アドレス)も削除されていて,同上。

 補注)最後の記述・引用,「わが国は徹底した言論弾圧の時代に突入した」というくだりは,安倍晋三の第2次政権以降になると,ほぼ現実のものとして現出していた。その結果どうなっていたか?

  冒頭で触れたごとき内容に関連しては,安倍晋三の死後,自民党が解党の危機を迎えたかのような日本の政治情勢が,いま(2023年12月現在)われわれの目前で繰り広げられている。

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