日本の大学が壊れていく現況をめぐりその原因分析など(1)
※-1 日本の大学が低空飛行している現状
最初にいきなりつぎの新聞全面広告を紹介する。
東京国際大学が,ジャパンハンドラーズの〔その〕代貸格の1人を招待して今年開催する「毎年恒例の国際シンポジウム」は,今回で第11回目の開催となる。今年の論題は「日本と世界の在り方を問う Japan around The World ~日本と世界 Part8~」ということである。
a) 学部実員で7千名の学生をかかえる程度の東京国際大学(旧名は国際商科大学で1965年設立)が,大金をかけてたった1日(実質半日程度)を費やす日程で,アメリカのジャパンハンドラーズとして有名な1人,ジョセフ・ナイと,
最近においては世界的な問題となっている「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争に関して,メディア・マスコミへの露出度が最高度の状態を継続している小泉 悠,
そして,「米日安保関連法制」の成立・施行(2015-2016年)にさいしては,弁護士資格を活かしてなのか,憲法には集団的自衛権を認めうる条文があったなど,まさしく曲学阿世の本領を発揮した自民党元国会議員高村正彦
との3名を講師に呼んで,いったいなにを議論させるのか興味深いところである。
結局のところ,いままでのジャパンハンドラーズたち主導になる
「Japan のオマエたちは,ああしろ! こうしろ!」
という指図にしかなりえなかったこの東京国際大学のシンポジウムが,はたしていかほどに,米日政治関係論に跨がって潜在する真相,現実問題の究明に関して,国際政治学的に貢献しうる実質があるというのか,いまひとつ判然としていなかった。
もしも,本ブログ筆者の子どもがこの東京国際大学に在籍しているとしたら,とりあえず大学法人側にはその旨抗議したくなる。つまり,この国際シンポジウムのために費やされる大学予算の無駄づかいが,それも毎年のように繰り返されている実情は,あらゆる意味で無意味だといって異議を申仕立てたくなる。
要は,しかも「もしもその効果を狙っていたとしても,日本の政治にとって実質的にたいした意味のない,むしろ有害無益の催し物は,もうたいがいにしたらどうか」といいたくもなる。
ところで,ジョセフ・ナイの講師料(報酬)はいくらか? 1千万円は最低でも支払うのではないか? 小泉 悠へのそれはいくらか? 1百万円と推定しておく。高村正彦は3百万円くらいか? また,日本経済新聞社への広告出稿代はいくらかかっていたか? こちらはこちらで相場の値段があった。くわえて,開催場所のパレスホテルのショバ代(会場設営経費)はいくらか?
なかでももっとも肝心なことがらは,このシンポジウムの「費用対効果」いかんにあた。この催し物を開催してきた東京国際大学の評判は,こういったシンポジウムじたいを毎年やっているという以外のなにかを,この場合しかも,なんらかのかたちでもって,これは有形・無形を問わずという意味にもなるが,どのくらい獲得・達成できていたのか? より具体的に説明したことがない。
b) 河合塾の最新情報を参照すると,東京国際大学の偏差値・入試難易度は,つぎのようになっている。2023年6月現在のまとめで,2024年度入試を予想する数値である。
▲ 入試難易度は偏差値としてBF~37.5 である。
補注)偏差値のBF(ボーダーフリー)とは,不合格者がほとんどいないなどの理由のため,偏差値の合格ラインを設定できないことを指す。世間では偏差値がBFの大学をBF大学という。
学部ごとの偏差値は,以下のとおりである。これは河合塾が公表する偏差値・合格難易度情報を参考にしている。
言語コミュニケーション学部の偏差値は BF~35.0
人間社会学部の偏差値は BF~35.0
国際関係学部の偏差値は BF~35.0
経済学部の偏差値は BF~37.5
商学部の偏差値は 35.0
医療健康学部の偏差値は 35.0
共通テスト得点率は,35%~49%
ここで,参考にまで東京国際大学に近く,似た偏差値を出している,それも関東地方に立地する上武大学の場合を,参考にまで紹介しておく。この大学もまた,最底辺に生息する大学の1校である
▲ 上武大学の偏差値は,BF~37.5
学部ごとの偏差値は,以下のとおりである。
ビジネス情報学部の偏差値は 35.0~37.5
看護学部の偏差値 BF
共通テスト得点率は, 35%~54%
また,東京国際大学において学部学生の総定員は7260名であるが,2023年5月1日現在で,在籍する実員は6769名であり,同時点での定員充足率は93.23%であった。
そのうち1565名(科目等履修生,交換留学生を含む)が留学生とのことである。ひとまず,上記「人数の内数」と解釈しておく。科目等履修生が留学生に含まれるのかどうか疑問なしとしえないが,ここでは追及しない。
c) 世界のなかでの日本の大学
「QS世界大学ランキング 2024,東大28位…国内大学は軒並みランクダウン」『ReseEd』2023.6.29 Thu 13:00,https://reseed.resemom.jp/article/2023/06/29/6687.html から以下を引用する。抜き書き的に参照した。
世界的な高等教育評価機関の英国クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds:QS)は2023年6月27日,世界大学ランキング2024を発表した。国内の大学は国際性の指標で苦戦。トップの東京大学は総合28位,京都大学は46位で,いずれも前年より順位を下げた。
QS世界大学ランキング 2024では,「マサチューセッツ工科大学(MIT)」が12年連続でトップを維持。ついで
2位「ケンブリッジ大学」
3位「オックスフォード大学」
4位「ハーバード大学」
5位「スタンフォード大学」
これらトップ5校のうち,3校がアメリカの大学,2校がイギリスの大学となった。
アジアでは,「シンガポール国立大学」が8位と躍進。アジアの大学ではQS世界大学ランキング開始以来初となるトップ10入りを果たした。ついで17位「北京大学」,25位「清華大学」,26位「シンガポール南洋理工大学(NTU シンガポール)」「香港大学」と続く。
日本は,TOP 200 の顔ぶれはほぼ変わらず9校がランキングしたものの,軒並み順位を下げた。
国内〔大学〕の順位は,こうであった。
28位 「東京大学」(前年23位)
46位 「京都大学」(前年36位)
80位 「大阪大学」(前年68位)
91位 「東京工業大学」(前年55位)
113位「東北大学」(前年79位)
164位「九州大学」(前年135位)
176位「名古屋大学」(前年112位)
196位「北海道大学」(前年141位)
199位「早稲田大学」(前年205位)
唯一,ランクが上昇した「早稲田大学」は,雇用者の評価(24位),雇用結果(87位)において国際的に高い評価をえている。(引用終わり)
以上のような世界全体における大学順位付けは,欧米中心の評価基準にならざるをえない性向(クセ)があるとはいえ,それなりに参考になる評価を下してはいる。
さてそこで,東京国際大学がジャパンハンドラーズの面々(今回はそのうちのナイ1人だけだが)を中心に,日本経済新聞社も協賛しての『国際シンポジウム』は「日本と世界の在り方を問う」といった題目で,2023年10月20日に開演されるが,その様子についてはのちにまた,日経が自作自演的,自画自賛的に報道するところになるはずなので,その時まで待とう。
はたして,この国際という字を関したシンポジウムが実際には,いかほどに日本の政治や外交に有意義な貢献を果たしうるか,本ブログ筆者にはほとんど予測不可であった以前に,そもそも理解不能なことがらであった。
d) 『日本経済新聞』2023年9月21日夕刊に出ていたつぎの記事は,画像資料で紹介しておきたい。
このあまり面白くはない記事につづけて,同じ『日本経済新聞』2023年9月23日朝刊1面の冒頭記事を紹介したい。見出しは「私大再編へ撤退後押し 自主的縮小で補助金増,600校の5割,定員割れ」となっていた。
早い話,日本の大学がすべて国立と公立なのであれば,この再編の問題はそれほど困難ではないと考えられるが,私権のからむ学校法人の問題となるゆえ,今後においてはそれこそ後始末的な高等教育機関の整理・統合は,おいそれと具合にはいくまい。
とりわけ,中小企業まがいに規模の小さい学校法人が経営する大学同士を合併・縮小させつつ存続を図らせるがごとき撤退戦略の問題は,いまからすでに,ゴタゴタした紛争を惹起させること請け合いである。
いきなり大胆にいうことになる。いまの日本の大学はその3分の2は要らない。偏差値55に達しない大学はすべて廃校処分にしたほうがよい。つぎの数値は関連する正規分布上の数値である。
偏差値 上位 % 何人に1人か
56 27.43 3.6
55 30.85 3.2
54 34.46 2.9
53 38.21 2.6
もちろん,偏差値だけでは計測も評価もしにくい学問・研究の分野・領域はあるので,そのあたりはひとまずあえて気にしない発言である。
コンビニやファミレスの店長の仕事に就くのに大学卒である必要は必ずしも必要はない。そのほかの実学的な勉強をしていたほうが,よほど「生産的でありうる」。大学でなくとも学べる技術・仕事は,いくらでも与えられている。
補注)人手不足の業種は各種各様にあるが,たとえば流通業での大型トラック運転手,交通・観光業での路線バスおよび大型バスの運転手が極端に不足している。また農水産業のなり手が非常に少なく,食糧問題の今後にはすでに黄色信号が点っているような状態である。
それら以外にもあれこれと少子高齢社会の人口構造を反映させたかっこうで,いろいろな労働力不足が生じている。大卒の人間そのものを作るために大学経営が流行っていた時代は,とうの昔に終わっていた。
にもかかわらず,大量の大学が設置・運営されていながら,いまごろにもなって「分野ごとに必要な労働力の不足」に焦りだしている構図・状況は,誰の責任というよりはまず最初に政治のそれである。18歳人口の減少そのものよりも,それ以前の問題があった。
〔→本ブログ筆者・記事本文に戻る〕 いまの日本の大学は,ムダとみなすほかない大学学部4年間の教程を提供している学科も多く,その有益性・効率性に関してはほとんどゼロにひとしい「高等(?)教育」しかなしえていない教科もある。あるいは,もとより初めから “それが無理である” ほかない「非一流の,二流以下の大学」が多すぎる。
最初に触れた東京国際大学の場合,まるで国際シンポジウムを開催するためにこの大学があるのか,とまで思わせるに十分だった要素がないとはいえまい。
e)「学費・教育費 大学生の仕送りの平均額はいくら?【最新版】」『AllAbout マネー』https://allabout.co.jp/gm/gc/489824/,2023年9月24日 検索。
大学生の仕送り金額の平均はいくらでしょうか? 教育費の総仕上げといえる大学は学費も高額ですが,下宿となるとさらに家賃などの仕送りが必要になってきます。いったい,いくらくらい親は仕送りをしているのでしょうか?
教育費の総仕上げは大学や専門学校などの高校以降に進学する時の学費でしょう。高校までとは違い,高額の学費が必要になってきます。と同時に,自宅から遠く離れたところが進学先になると,さらに仕送りも必要になってきます。
この仕送りの平均はどのようになっているのでしょうか。今回は,東京私大教連が2020年4月に首都圏の私立大学・短期大学に入学した新入生の家計負担をまとめた「私立大学新入生の家計負担調査 2020年度」をもとに紹介します。(以下は簡単に引照する)
☆-1 仕送りの平均 月8万2400円。過去最低だった2018年度より700円も下がっている。
☆-2 1994年度の仕送り平均,12万4900円! 仕送り額平均で金額が一番高かったのは,1994年度の12万4900円。この1994年度と比べると,2020年度の仕送り額は4万2500円,34%も減少した。
☆-3 家賃平均6万4200円,仕送り額の8割近く。仕送り額に占める家賃の割合は,なんと77.9%。ほぼ8割と,この割合は過去最高。
ちなみに,1986年度では,仕送り額に占める家賃の割合は33.7%,家賃の平均は3万4700円で,仕送りの平均は10万3000円。ちょうどバブル時代のこのころは,家賃も抑えられ,仕送り額も多く,いまの学生とはまったく違う仕送り事情であった。
補注)途中だが,つぎの消費者物価指数の変遷を併せて考慮してみたい。この指数が上昇しているなかでの,前後する話題であったから,これはもうたまらない経済環境の悪化ぶりになっていた。
☆-4 1日あたりの生活費は607円! 仕送り額から家賃を引いた生活費は,1万8200円と,これも過去最低。
この1日あたりの生活費が一番高かったのは1990年度で2460円。下宿生の生活がかなり苦しくなっている状況が分かる。
この金額では生活することが困難。
最近の学生はアルバイト代で生活しているようですが,かなりアルバイトをしないと生活が成立しない。生活費を稼ぐためにアルバイトをしすぎて,学業がおろそかになるということは避けたい。学業とアルバイトをうまく両立させて,充実した学生生活を送ってほしい。(引照終わり)
といったところで,なんの気休めにもならないが,こうした学生生活の実態のなかに入りこんでさらに,学生たちの人生行路に好ましからぬ影響を与えてきたのが,日本学生支援機構の貸与型奨学金であった。
この奨学金のあり方が,若い人びとの人生旅立ちに不必要にも大きな荷物(借金:ローン)を背負わせてきたなれば,奨学金と名ばかりであって,消学金なのだとダジャレ的にいいかえたほうが,よほど似合っている。
「少年老いやすく学なりがたし」などといったことわざでさえ,まったく縁がないかのような酷な負担が,日本の大学生たちに強いられている。
f)「理系女性の割合日本が最下位」『日本経済新聞』2023年9月18日朝刊31面「社会」
もっとも,この記事の内容に関しては,つぎのような関連する記事も日経は報じていた。
これまでの日本の文教政策としての大学路線は,コストの論理や一時期騒がれた文系学部廃止論にみられたように,おおよそ「教育は百年の大計」という理念・観点とは大きくかけ離れた,それも思いつきの大学「改革」ばかりがなされてきた。その結果,その多くがかえって大学そのものを疲弊させてしまい,おまけに活力を失わせる顛末を生み,大学本来の使命・哲学を押しつぶす役割したはたしえなかった。
18歳人口が激減していくこれからの時期,その傾向とは均等のとれた大学規模へと遅滞なく向かう適宜な縮小化計画とともに,時代の先端をいくべき学部・学科の構想が強力に必要なときに,最初のほうでとりあげた問題,つまり私大がこれからドンドン倒産するほかない時期がいよいよ本格的に始まるというのに,これに対して国家側の講じる文教政策があいもかわらず,日和見的な発想でもってのみ目先でちょろちょろするのみで,まともな将来展望すら提示しないで,単にいまを過ごしている。
20世紀から21世紀にかけて,その金属疲労的な耐性を完全に失ってきた日本の大学である。防衛費をGDP比率で2%にすると決められるならば,それ以上に予算の配分を投入するのが「教育が百年に賭ける期待」であるはずである。
戦闘機のF35の1機分の予算で,あるいは,オスプレイという未亡人製造機と皮肉られるヘリコプターまがいの中型機1機分のそれでも,文教政策の特定の部分は改善・向上できる分野がある。なによりも,消費税10%の過半を大企業の内部留保に流入させる前に,その1%でも文教費にまわすことである。
もっとも,現在の首相はそのあたりの方途をまともに考えているようには全然思えない。自身が首相である立場をいかにしたら長く保持できるかということにしか関心のない「世襲3代目の政治屋」に,なにかを期待できそうな気配はもともとなかった。彼には,文教政策の発案を期待したところで,どうやら無理難題であった。
トンデモな首相自身がこのいまや貧乏国で,経済3流そして政治4流になった現状を軌道修正しようとするための「頭脳も才気ももちあわせていない」ときたら,一般庶民は絶望的な気分になって,ただ滅入るだけである。
日本のとくに「世襲3代目の政治屋」による国家の為政が,安倍晋三の第2次政権と岸田文雄の政権の時期と合せると,実質でもう10年近くにもなった。
このままいったら,森嶋通夫が『なぜ日本は没落するか』(岩波書店,1999年)という予測は,自民党風のデタラメ政権,この甘チャン首相たちによって,いままさに実現させられつつある,としかいいようがなくなった。
【断わり】 本稿は1回分でさらに記述するつもりでいたが,以下につづける中身がだいぶ長いものとなって残っているので,ひとまず「本稿の続編」に譲ることにした。
その続編の「本稿(2)」は,つぎの住所(アドレス)である。
⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/n79d560b0ce8b
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