原子力村は昔「原発は炭酸ガスを出さない」などと世間に向けて愚昧な虚説を喧伝した(2)
昔「原発は炭酸ガスを出さない」といいだし,のちに「その稼働中は出さない」と変えたと思ったら,つぎは,原発は実は「稼働中はほとんど出さない」という具合に変転させてきた(豹変してきた)ごとき,
「原発は炭素ガスを出さない」という言説なりに「フラフラした説明」は,原子力村がいかにデタラメな言説を吐きつづけてきたか,その証左のひとつをみずから提供した。
なお「本稿(2)」は,2022年12月28日に初出であったが,本日2023年9月19日に更新することになった。 この更新では,前半部分にとりあえず以下の記述(※-1の追加)をおこなうことにした。
付記)冒頭の画像は本文中に引用した文献から借りた。
その前に本日の『毎日新聞』朝刊1面に原発事故関連の記事が出ていた。本論になんらかの深い関係がありうる記事。
※-1 「福島原発事故の放射能汚染に向き合って」『日本キリスト改革派灘教会』http://nada-reformed-ch.sakura.ne.jp/ から
以下に紹介するのは,http://nada-reformed-ch.sakura.ne.jp/cms/wp-content/uploads/『福島原発事故の放射能汚染の現実に向き合って』-本文.pdf である。この文章には執筆の日付が明記されていないが,読みとれる範囲からは2022年のものと受けとっておく。
まず,図解2点をいきなり紹介したい。このうち上の図解は,あくまで日本の国土(国内の陸地)が放射能に汚染された経路と時期を説明している。そして,下の図解については太平洋沿岸側の方向には,東電福島第1原発事故現場から放出された放射能は,その総量の8割近くにもなっていたという「事実」がみのがせない。
この図解2点のうちとくに後者は,この日本が東電福島第1原発事故によって汚染された各地域のその状況を総合的に教えている。こちらの図解のなかの「左上部分に記入されている文章」を取り出した文面が以下であるが,当時における「東日本の γ 線空間線量率図」を表現している。
この図解を載せてあったこの文章は,末尾に移ってだが,その註記のなかでこうも説明していた。
福島第1原発の事故で汚染されたのは東日本の陸上だけではあり ません。実は,放射性物質の約8割は太平洋上に流れこんでいました。東北沖で “トモダチ作戦” として支援活動していたのが,米空母ロナルドレーガン ,
当時,艦内では放射能アラームが鳴り響いていました。乗組員の兵士らはいま,続々と放射能による健康被害を訴え ,死者は9人になっています。そして米兵ら400人以上が東電などを訴えています(註記の14頁)。
本日2023年9月19日にこの「本稿(2)」を旧稿を復活,再掲するかたちでの記述に進むまえに,あの『トモダチ作戦』によって放射性物質の被害を受けたアメリカ兵たちの立場が,いったいどうなっていたのか,というその後も継続している問題をとりあげた最近作が公刊されていたので,これを紹介しておくにしたい。
エィミ・ツジモト『隠されたトモダチ作戦-ミナト/ヨコスカ/サンディエゴ-』えにし書房,2023年8月がその新刊書であった。
ここでは「No. 1916 日本の,非常識で不道徳で違法な放射性廃水の海洋投棄」『耕助のブログ 賀茂川耕助のブログです』2023年9月17日も併せて紹介しておき,そのツジモト『隠されたトモダチ作戦』に関して,すでにアマゾンの書評を借りるかたちで,その内容をしることにしたい。
https://kamogawakosuke.info/2023/09/17/no-1916-日本の、非常識で不道徳で違法な放射性廃水の/
a) 出版元の宣伝文句
3・11,東日本大震災における米軍の「トモダチ作戦」に参加した兵士たちは,フクシマ原発事故によって被曝していた! 被曝による健康被害に苦しむ彼らは東京電力等に対して裁判を起こしたが,公訴はむなしく棄却される。
その背後にあった不都合な真実を,膨大な資料と緻密な取材によって明らかにする問題作。 被害を訴える元米兵らを支援する「小泉基金」を創設した小泉純一郎元首相によるインタビューほか,図版・資料も多数収録。
b) アマゾン書評の発言
今日の時点,2023年9月19日でこのレビューは5点寄稿されているが,以いずれも5点満点の評価をくわえた書評になっていた。以下,そのうちから,参照できる3点のレビューを引用する。
★-1「『国際礼譲』と言う名の暴力・殺人」2023年9月11日
ニュースを見ると,日本が処理水を海洋投棄すると流れていて〔←原文どおりだが,多分「書かれていて」あるいは「流れていって」か〕度肝を抜かれた。
しかも,しばらくしたら「中国」の猛抗議などを中国国内での不動産価格暴落や就職難の背景があり,まるでそのガス抜きのため日本の処理水投棄に反対していると捉えかねない報道の仕方に,また強い不快感を覚えた。どうしてこうまで,日本のマスコミは「政府」に迎合するようなニュースをいつまで流すつもりなのか。
この本のタイトルは「隠されたトモダチ作戦」とあり,先の福島原発事故のアメリカ兵の活躍の背景などのことが書いてあるのかと思ってページを進めたが,そこには福島原発が誘致された当時の背景や,他国の「廃棄物」処理の考え方など多岐にわたって,いまなお日本国内ではほとんど報道されない情報が書いてあった。
しかも,「トモダチ作戦」で被爆したアメリカ兵が,健康被害による医療請求を東京電力にもとめた裁判の記録も紹介されていた。兵士達の臨場感溢れる事故当時の証言や,現在も進行中である兵士たちの病状もありな〔ど〕読んでいて,つい感情移入してしまい怒りや惨めさ,そんなことがあっても日本が好きという兵士の心に感情がひどく揺さぶられた。
読み進めながら毎日使うエネルギー,とくに電力について,いやそもそも日本という国についてもう一度深くといなおす必要を強く感じている。
最近いろんな場面で陰謀論や日本の国力低下のための日本いじめなどと,議論をすり替えて現実をみようとしない人が多くなった印象を受ける毎日だが,根拠を余すことなく掲載し,広く周知させようとする作者に心から敬意を評したい。
★-2「表題なし」2023年8月20日のレビュー
「トモダチ作戦」の事実に「知る」ことの大切さをあらためて実感。
7月に本書を予約注文し……(この間省略),早速,読み始めるのだが,隠されているのは「トモダチ作戦」に従事して被曝した米兵たちのことだけでないことに驚いた。「作戦」に共同で従事した自衛隊員の健康被害の有無,福島での被ばくの実態そのほか,隠されている闇の深さをつぎつぎと思いしらされることになる。
東日本大震災における原発事故が決して「想定外」の事故でなかったことも,事故後の対応の錯乱ぶりもさることながら,本書では原爆から「原子力の平和利用」への転換にまつわる歴史を振り返りつつ明らかにし,その過程で形成された「原発村」に群がる利権の姿も描き出される。
その利権優先によって引き起こされたのが「フクシマ」であり,被曝したアメリカ兵たちの痛々しい証言は,みずから「炭鉱のカナリア」として,いまなお隠蔽されている危険をわれわれに告げつづける。
補注)参照用としてだが,つぎの原子力村概略図を紹介しておく。
アメリカでの裁判を不可能にさせたのは「国際礼譲」という,初めてみる言葉だった。トランプ・安倍政権の意向に地裁が配慮し,それまでの判決を逆転させたのだ。
さらに驚くのは,本書において豊富な資料が巻末に掲載されている。日本政府が米国裁判での「情報開示」から逃げるためにおこなった卑劣な「アミカス・キュリエ(法廷助言)」の全文。また,そのために東電に雇われた100名以上もの「弁護士」たちの費用は,日本国民がしらないまま負担させられていることになる。
また,英国の海洋放射能研究者T.D.ジョーンズ氏による「海流に乗るトリチウム汚染水・東京近海の太平洋沿岸まで汚染の可能性」と題する論文も掲載。30年以上に及ぶ調査・研究により,放出されたトリチウムが環境中の有機物質に取りこまれ「有機トリチウム」と化し,魚介類の検査では食物連鎖により海水中のトリチウム濃度の約6,000倍という高レベルの濃縮が起こるという。
さらにはこの海洋放射能が飛沫やエアロゾルにより大気中に運ばれ,地上生物に取りこまれ,肺呼吸による被ばくを引き起こす可能性があるとも指摘されていた。「基準」の40倍以下に薄めるから「科学的に安全」などとはけっしていえないのである。岸田政権は今月末にも海洋放出を実行しようとしている。本当にそれでいいのか。本書はこのこともわれわれ,日本人に鋭く問いかけている。
★-3 「守られなかったトモダチ作戦の兵士」2023年8月12日のレビュー
早い段階で予約注文し……届き,開いてみると小泉元総理の「序言」が目に飛びこんできた。そしてページ右下にはQRコードがあった。驚いて,あてるとアメリカでの「記者会見」動画が飛び出してきた。小泉氏が渡米して兵士たちと面会した一時期,マスコミが涙の会見と流して物議を醸したようだが,今回の動画でその様子を理解した。
読み進むにつれ「命」の尊厳を守られなかった兵士たちのために,立ち上がった元首相から隠されたトモダチ作戦の真意をしることになる。
フクシマ原発事故における,SPEEDI(緊急迅速放射能影響予測ネットワーク・システム)を活用しなかったミスに,マイナンバーカードからもわかる日本の実務能力の劣化を重ね合わせた。〔その後〕12年経過し,AIも進化しても,操作するのは人だ。
ミスをしない人はいない。
「黒い雨」に対して「白い手」に被爆地広島の象徴である岸田首相(皮肉を込めて)と肩を組むバイデン大統領を思い起こした。円安でインバウンドの解禁が,汚染水放出前の「日本」大セールのように思えてならない。
災害列島日本に54か所の原発がある。
政府の地震調査研究推進本部は災害列島日本は,内陸直下活断層による地震に警戒をと,活断層で地震が発生する危険度を,そして警戒を促している。フクシマ原発事故と,原発再稼働はその地域だけの問題ではない
そして,原発村の功罪。
著者は惜しげもなく,世に晒した。その勇気に心から敬意を表したい。その身が安全であることを,切に願う。(各引用終わり)
c) このエィミ・ツジモト『隠されたトモダチ作戦-ミナト/ヨコスカ/サンディエゴ-』えにし書房,2023年8月を読むことは,この「トモダチ」などといささかふわついた名称を付された「対・原発事故作戦」が実は,アメリカ〔帝国〕が日本という「実質属国」のために作戦行動をした結果,米兵のなかから深刻な被曝者を出したという「歴史の事実」を,日本に住むわれわれ庶民に対して「3・11」を,「けっして忘れるな!」と警告を送っている。
この本はどう読んでみても,われわれが原発に反対する理由・事情しか読みとれない。原発のいったい,なにがいいのか分からない。同じ1基100万キロワット / 時の発電装置・機械ならば,最新のLNGガスを焚いて発電する火力発電のほうが,よほど熱交換比率が高い(最近では2倍ほどの効率にまで上昇していr)ゆえ,いまどきに,危険がいっぱいの原発にこだわる理由・必然性など,どこにもみつからないはずである。
d) 火力発電燃料のなかでもっとも炭酸ガスの排出量が少ないのが,このLNGガスを使用する発電方式である。ネット上にはたとえば,つぎのようなLNGガスを燃料とした発電がすでにおこなわれていた事実が紹介されている。3年前から商用運転を介した発電所である。
さきに強調しておくが,この福島天然ガス発電所の「発電端効率」は約61%(低位発熱量基準)だから,原発の熱交換比率に比較するとそのほぼ倍になる。
かといって,この種の発電所にも絶対に事故が起きないという保証はない。しかし,原発のような深刻かつ重大な「放射性物質の放出・拡散」によって発生させてしまう「独特で特殊な事故」は起こさない。
同じ発電所同士の大事故だとしても,放射性物質の介在の「ある・ナシ」が,それら事故のあいだに「質的に隔絶した」,つまり「それぞれ事故の程度そのもの」が「極端にまで異質であるがために発生させる深刻度の相違」として,ある意味では,その比較すら許さない「その差」をもたらす。この事実はすでにわれわれが体験してきた。
e) 参考にまでいえば,東電福島第1原発の1号機は46.0万kW/時の性能,2・3・4号機はそれぞれ78.4万kW/時の性能であった。1号機と2号機のそれを合計すると,124.4万kW/時の性能であった。原発という発電方式の使い勝手の悪さはさておき,こういう比較もできる。
原発はそもそも熱交換比率(発電性能)が3分の1しかない。となると,東電福島第1原発の場合,いうまでもなく,その3分の2の熱量は太平洋から海水を引きこみこれを冷却水に当てて熱交換していたが,LNGガスを燃料となる発電所の倍もの熱量を外部環境に放出して(捨てて)いる,つまり非常に効率の悪い発電装置・機械なのである。
いまどき原発のように熱交換比率の悪い,低性能の発電機を新造するという技術精神が理解できない。それでも世界中でこの複雑で面倒で危険でやっかいな原発を発電方法に採用するという情勢は,多分,核兵器の製造を念頭に置いているからだと観察するほかない。
日本の場合は,明言する・しないとにかからず,れっきとしてその仲間の一国であった。
f) ともかく,原子炉は,ヤカンもどきなのだが,非常に難物の原子炉のなか組みこまれた配管に水を通して,さらにそのなかで《悪魔の火》である核燃料をわざわざ焚いて作った高熱の蒸気でタービンをまわし,電力を生産させるという「技術とその経済」の仕組は,人類史上もっとも愚かなエネルギー獲得の方法であった。
ともかく,自分たちの生命どころか地球環境を根幹が破壊しつつある原発のなにがいいのか,この原発に「☺ スキ・マーク」をたくさん付けて喜ぶ「大の着く愚か者たち」がこの世界には,まだ大勢いる。しかも彼らはいままで原発の安全性を神話として語らねばならないほど,実際のところでは,その異様なる危険性を十分承知であった。承知だったからこそ神話が必要とされてきた。
ところで,レベル7の最高度になる原発の大事故が,以後,どの国の原発であれ再発させたぶんには,この地球はボロボロのクタクタの状態にまで,放射性物質によって汚染されることになる。
g) エィミ・ツジモト『隠されたトモダチ作戦-ミナト/ヨコスカ/サンディエゴ-』のなかには,東電が原発を導入する時期,社長であった木川田一隆も登場していた。この木川田は《原発の悪魔性》をよくしっていた経済人であったが,結局,原発を導入する時期,東電の社長になっていた。
なお,本日,この記述するさいウィキペディアをのぞいてみたところ,前段のごとき木川田一隆の経歴に関した「原発にまつわる出来事」は,全体の記述量が少ないせいもあってか,なぜか全然触れていない。
⇒ 前段の記述は,https://ja.wikipedia.org/wiki/木川田一隆 を参照しての指摘である。
※-2「原発は炭酸ガスを出さない」などと宣言していた珍説
昔,原子力ムラに安全神話があった時代には「原発は炭酸ガスを出さない」という伝説があった。その後だいぶ時が経ってからだが,原発は「稼働中に炭酸ガスは出さない」という具合に,その一部が修正されていた。
そして最近になってだが,原発は稼働中には「炭酸ガスほとんど出さない」という具合に,またもやその〈定義〉みたいな〈説明〉を基本から変更し,崩してしまった言説が披瀝された。
要は「原発は炭素(炭酸ガス)を出さない」といってきた「説明」をめぐっては,日本政府当局:経済産業省などが形成する原子力村に特有であるデタラメ言説が記録されてきた。
1) 原発は炭素(CO2 )を出さないのではなく,出す事実に依然変わりはない。それとともに,地球環境に対してはじかに排熱する装置・機械であるから,温暖化の問題に大いに影響を及ぼしている。
原発の問題を擁護するためになのか,「炭酸ガスを排出しない・する」といった次元に議論を誘導(矮小化)する話法は,完全にマヤカシにしかなりえない便法であった。
つぎは,2022年12月28日の『日本経済新聞』朝刊の記事に小さな記事として,つぎの関連する報道があったことから,紹介する。
現在の原子力規制委員会は「原発の新増設」に対して,本当のところ「水先案内人の働き」を果たすために,つまり「国家の利害から規制をする立場」にいる。
しかし,つぎに紹介する「特定非営利活動法人(認定NPO)原子力資料情報室の立場」は,原発には真っ向から反対の立場から言論活動を展開しており,原子力規制委員会の方針・政策・指導と噛みあえるところがまったくない。
2) 原子力資料情報室による「原発推進反対」の理由,その批判と主張はきわめてまっとうである
a)「【原子力資料情報室声明】時代錯誤の『原発蘇生アクションプラン』は撤回を」2022/11/30,https://cnic.jp/45958
この 2) の a) に引用した原子力資料情報室の原発反対論は,たとえば大手紙や通信社,そしてテレビキー局などが実施する世論調査に訊かれる立場の側にある国民たちに関していうと,この種の原発反対論の内容を,もとからほとんどしらない。
以上のごとき原発反対論の中身を少しでもしりえれば,最近,とくに「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争のせいで急激に値上がりしたエネルギーの価格に驚いた庶民たちであっても,原発の新増設に賛成する世論に傾く傾向・理由などありえなかった。
b) ところが,原子力ムラのいいかげんな説明,たとえば「次世代革新炉」と称する原子炉のその「革新性」そのものの「技術水準の低調さ:嘘っぽさ」,つまり,革新という用語を充てるほどでは全然ありえない「原発のウソ的な新型(!?)」である「本当の事実」は,一般にはほとんどしられていない。
ウクライナ侵略戦争をきっかけに発生した「エネルギー価格高騰という経済事情悪化」と「革新を偽称するその次世代原子炉」との組み合わせになる「トリック的な説法」は,素人のわれわれには目眩ましとなる言説として,いくらかは有効かもしれない。
原発に関する基礎知識を必らずしも備えているわけではない庶民の理解を,その目先だけでごまかし,たぶらかしておくための「原発問題の大幅な論点ずらし」が,現に試行されつつある。
岸田文雄政権の展示した「最悪なる電力政策」の見地は,すなわち,原発問題(原子力という電源)のもつ固有で不可避なる「困難な諸問題」には触れないまま,ただひたすらに世論を原発推進の方向にもっていこうと画策している。
考えてもみよ,「ウクライナとロシア間の戦争状態」が10年先までつづくわけがない。この見通しも踏まえれば,いまどき原発推進の立場・イデオロギーを,原発問題の基本理解がもとから欠落していた「現首相の立場」が提示した「原発の新増設」というエネルギー政策は,度しがたい時代錯誤である。
※-3「稼働中にはCO2 がほとんど出ない原発」などと珍妙なる奇説の発言をしだした『日本経済新聞』の原発推進派としての屁理屈の「論」,その荒唐無稽
さて『日本経済新聞』2022年12月25日(日曜日)朝刊「〈社説〉エネ政策転換は国民理解得て進めよ」は,前項で述べたごとき,短見的でしごく制約されていた「原発観」を,国民たちのあいだにもたせようとする意図をこめた,すなわち「日本経済新聞社らしい論説」を掲載していた。
補注)なお以下の記述は,この日経「社説」をとりあげ論及していく行間に,いろいろと「関係する議論」を随時に挿入しつつ記述している。論旨の筋道は通しているつもりであるが,論点があちこちに寄り道した展開になるので,その点は事前に理解を乞うしだいである。
--エネルギー政策の大きな転換である。政府は〔2022年12月〕22日にまとめた脱炭素社会へ向けた基本方針で,これまで「想定しない」としてきた原子力発電所の建て替えや,運転期間の延長を明記した。
2011年の東京電力福島第1原発事故以来,政府は原発の新増設の議論を避けてきた。現実を直視し,建設に踏み出すのは評価できる。ただ,決定プロセスは丁寧さに欠けた。今後の具体策の肉づけは,国民の理解を十分にえつつ進めてほしい。
◆ 現実直視し,原発を活用 ◆
エネルギーや気候変動問題は切迫度を増している。ロシアのウクライナ侵攻は世界の分断を広げ,エネルギー価格高騰と需給逼迫を招いた。日本も他人ごとでは済まされない。
一方,化石燃料の燃焼で出る二酸化炭素(CO2 )などによる長期的な気温上昇は続いている。温暖化が原因とみられる猛暑や豪雨などの異常気象が頻発し被害は広がっている。エネルギー供給不安と気候変動という「2つの危機」への対処は待ったなしだ。
補注)ここで少しだけ注意しておきたい。はたして,「化石燃料の燃焼で出る二酸化炭素(CO2 )などによる長期的な気温上昇」という文言には,基本的に注意が必要であった。
ここでは,つぎのように分析と批判をおこなってみたい。しばらくこの補注の議論となるので,『日本経済新聞』社説はそのあとにまた,引用するていさいを採る。
さて,「化石燃料の燃焼で出る二酸化炭素(CO2 )などによる」⇒「長期的な気温上昇」という〈定説〉的な見解については,以前から強力な異論が提示されていた。
a) そのひとつが,広瀬 隆『二酸化炭素温暖化説の崩壊』集英社,2010年や,同『地球温暖化説はSF小説だった-その驚くべき実態-』八月書館,2020年のごとき,原発反対・廃絶論者による批判・反論である。
広瀬 隆がとくに強調したのは,
☆「正統派の代表的な詐欺師リーダーたち=IPCC(1988年に発足していた Intergovernmental Panel on Climate Change)の一派
☆ このIPCCの狂信者たち(グレタ・トゥンベリ,レオナルド・ディカプリオなど)
☆ 無知であるための妄信者たち,つまり多くの新聞社,雑誌社
☆ 根拠のない嘘に流される無関心な人間(=大多数の日本人)
などは,そのIPCCが発表してきた「地球の気温」そのものが「大都市中心の温度測定結果」から導かれたヒートアイランド現象を集めたデータであり,地球の温度は20世紀に上昇していない事実をしらない点であった。
また,広瀬 隆は,室田 武(一橋経済学部教授 2019年没)がCO2 温暖化説は「原子力産業の陰謀」だと述べていた点にも言及していた。
補注)以上の議論を聞いて,ここでこういう事実を思い出した。日本の気象庁に関係する話である。ここでは「よりによって」『日本経済新聞』に掲載された記事からの引用となる。
★ 東京の気象観測地点,北の丸公園に 最低気温 1.4度低く ★
=『日本経済新聞』2014年10月3日 22:17,https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG03H1E_T01C14A0CC1000/ =
気象庁は〔2014年10月〕3日,東京・大手町の同庁本庁舎に置いている気象観測地点を12月2日から北の丸公園(千代田区)に移すと発表した。移転に伴い過去のデータをもとにした気温などの平年値も変更。年間の最低気温はこれまでより 1.4度低くなる。
現在の大手町の観測点は1964年から現在の場所に置かれている。庁舎が港区内に移転するが,「大手町との距離が近く,将来も周囲の環境が変わる可能性が低い」との理由で,観測点は約900メートル離れた北の丸公園に置くことにした。
気象庁は過去30年の気象データをもとに平年値を定めているが,北の丸公園での今〔2014年〕年3月までの2年間の観測データをもとに変更した。アスファルトの道路やビルに囲まれた大手町に比べ,北の丸公園の方が気温が低い傾向があり,年間の平均気温は16.3度から15.4度に下がる。夏より秋や冬の方が差が大きいという。(日経の引用はここでいったん終え,だいぶ後段で再びつながる)
b)「化石燃料の燃焼で出る二酸化炭素(CO2 )などによる」⇒「長期的な気温上昇」という地球温暖化に対する異論は,気象学に関連して「地球の歴史を長期的な視点から考える」識者の唱える反論であった。
こちらについては別に,つぎの記述を引用しておく。この説明は前項の a) と共通する内容にもなっていた。気象庁の話も出ている。
c) 植草一秀の『知られざる真実』2022年12月27日から
この記述のなかで植草一秀は,こう書き出していた。
夏に猛暑が続くと温暖化が叫ばれるが,冬に記録的な寒波や豪雪が発生しても温暖化懐疑論は叫ばれない。〔2022年〕12月に早くも大雪被害が相次いだ。米国では氷点下50度を超える寒波が吹き荒れている。
米国中部と北部の一部地域で気温が急降下し,強風と吹雪をともなう酷寒が襲っている。イリノイ州シカゴで氷点下53度,テネシー州メンフィスで氷点下54度を記録した。米国気象庁も「生命を脅かす寒さ」として警告を発している。
地球温暖化仮説が唱えてきたストーリーとは逆の現実が広がっている。南極の海氷も南極大陸を覆う氷も増え続けている。シロクマの総数も2005年から2015年にかけて増加を示している。
そもそも地球の気温は10万年周期で大きく変動している。地球の公転軌道変化,自転軸変動の影響で大きな気温変化が生じていると考えられている。
この気温変化は化石燃料の消費量変動とは関係がない。
地球の気温変化に大きな影響を与えるものとして,これ以外に,太陽活動の変化,宇宙線の変化,これに伴う地球の雲の変化などが指摘されている。(以下,割愛)...
d) 以上の記述につづけてさらに,『東京新聞』からつぎの関連した記事を紹介する。
♥ 猛暑でも涼しい千葉・勝浦に熱視線 観測史上一度も猛暑日がない理由とは? ♥
=『東京新聞』2022年7月6日 17時42分, https://www.tokyo-np.co.jp/article/187951 =
勝浦が涼しい……。〔2022年〕6月下旬以降,全国的に記録的な猛暑に襲われるなか,気象庁の観測データで最高気温が一度も30度を超えなかった千葉県勝浦市が注目を集めている。夏はこれからが本番。涼しさが同市の魅力のひとつになりそうだ。
6月26日から30日の5日間,勝浦市の最高気温は26度前後が続いた。28日のみ27.7度まで上がったが,この日を含めて最低気温は20度を切った。県内では船橋市,木更津市など6カ所で今夏〔2022年〕の最高気温を記録した7月1日も,なぜか勝浦は27.7度にとどまった。
銚子地方気象台によると,理由は複合的だ。平地ではコンクリートやアスファルトからの照り返しで猛暑になりやすいが,勝浦は平地が少なく緑が多い分,気温が上がりにくい。さらに最近の海水温は21から22度と低め。涼しい海側からの風が入ることも影響している。
もっとも,海風が流れこむのは南隣の鴨川市もそう変わらない。ところが同市は連日30度を超える真夏日を記録し,6月27日には36.3度と猛暑日に。確かに平地はやや多めだが,同気象台の担当者は「観測地点が勝浦よりも(海から見て)奥にある。海岸沿いで測れば同じことになる」とみる。
〔ここでようやく,日経「社説」に戻る ↓ 〕
エネルギー自給率の低い日本は太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用を最大化すべきだ。稼働中にCO2 がほとんど出ない原発を含め,あらゆる電源を活用するのは理にかなう。基本方針は日本経済新聞が9月に出したエネルギー・環境提言と合致する。
補注)この「稼働中にCO2 がほとんど出ない原発」という日経的な表現は,原発という施設・設備と「その稼働する工程」の「全体」を鳥瞰して判断するに,「ほとんど無意味に近い」し,しかも決めつけの中身であった。つまり,原発が環境に放出する「排熱の問題をとらえて議論した発言」にはなりえていなかった。
それは,単なる片言隻句のたぐいである。そもそも,原発という発電装置・機械は,稼働中であっても外部からの電気供給が常時確保されていなければならないという特性からして,工学技術的には奇妙な機構であった。稼働しなければ炭酸ガスを出しにくいという論法も,いささかならず珍奇性に走りすぎてきた。
〔日経「社説」に戻る→〕 ただ,課題は多い。これから建設する原発は,安全審査を通れば21世紀の終盤まで使いつづけることになる。政府の方針も「将来にわたって持続的に原子力を活用する」と明記した。
子孫の代まで影響する重要な政策転換なのに,骨子は経済産業省の会議で9月以降,数回議論しただけで固まった。ネットで中継したとはいえ「いつの間にか決まった」と感じる人は多いだろう。
補注)この日経社説の論調は,このたび政府が突如としてぶち上げたところの,原発再稼働どころかその新増設までいいだした「原発政策の方針転換」に関して,
日本経済新聞社の立場(「原発推進派」で原子力ムラの成員)であったにしても,岸田政権のやり方そのものがいささか先走りすぎているのではないか,という反応をみせている。
〔記事に戻る→〕 2021年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画は「可能なかぎり原発依存度を低減する」としていた。原発に関してはこれにとらわれすぎると動きがとれない。見直しが必要なら正面から検討してはどうか。
原発の建設・運用は兆円単位の投資を要するうえに,事故が起きれば巨額の損害賠償が生じるリスクを伴う。使用済み核燃料の最終処分地も決める必要があるが,メドはたっていない。再処理工場の稼働も遅れに遅れている。
こうした問題の解決に政府が前面に立つというが,具体的にどう実行するか示してほしい。
補注)このあたりの段落は,現状日本における原発政策の混迷ぶりにいちおうは気を使った指摘になっている。かといって『日本経済新聞』の立場からする「寸止めの議論」にしかなっていなかった。議論の仕方が中途半端。
〔記事に戻る→〕 新方針にもとづき,原発の運転期間はこれまで最長で60年だったのを事実上,延長できるようになる。安全性を大前提に既存の原発も最大限使うのは妥当だ。
補注)この「妥当だ」といういいぶんに「妥当さ」は感じられない。いままでにおける日本原発史が記録してきた「大小・数々の事故」に鑑みれば,「安全性を大前提」に,本当にしたらよい,などいった「仮定の議論」はできるわけがない。
この付近の論点をめぐっては,この社説を全文読んだあとに「原子力情報資料室」に反論させてみるが,完璧といってもいいほどに「その反論が提示されている」。
〔記事に戻る→〕 運転期間をめぐっては原子力規制委員会の山中伸介委員長が指示する前に,水面下で経産省と規制庁が必要な法改正などの検討を始めていたという。規制と推進の分離が疑われるような不透明な進め方は避けるべきだ。
補注)「原発推進の立場にある官庁」と「規制を担当している官庁」とが,このように癒着したかっこうで,つまり「規制と推進の分離が疑われる不透明な進め方」をすでに,裏舞台で根回し的に堂々と実行してきた。
両機関のあいだにアウンの呼吸があってもなくてもだが,日本の原子力行政は「警察と泥棒集団」が同居するだけでなく,いっしょになって働いている始末まで望見できる。
〔記事に戻る→〕 政府は今回の基本方針について,広く意見を集めるパブリックコメントを実施する。だが,それだけでは不十分だ。
福島第1原発事故を経験した日本では,原発への不安や電力会社への不信感が根強い。物事をていねいに進め多くの人が納得感をえられるようにしなければならない。
補注)さて,日経社説としてのこの段落の文章も,とても興味深い。
まず「原発への不安や電力会社への不信感が根強い。物事をていねいに進め多くの人が納得感をえられるようにしなければならない」というけれども,原発(原子力というエネルギー)の問題)を基本的に初歩からでも理解できた人が,この原発体制に賛成などするわけがない。
いうところの「物事をていねいに進め多くの人が納得感をえられる」といったたぐいの「原発観」への期待については,こう断わっておく。
それらの「多くの人が納得感」の問題だと,あえて表現はしてみたところで,現実に「原発の危険性・有害性・無用性」に対峙させらてきたわれわれの体験に即して判断するに,無難である結論としては,原発「不要・撤廃=廃絶」論しか出てこない。
しかも,原発の場合は廃炉以後にも難題が山積状態である。東電福島第1原発事故があらためて明確しつくしたはずの問題であったが,原発はつぎのような「事後の鬼門」とでも形容すべき「至難・重大・深刻な課題」を,いまだに残したままである。
▲-1 最終処分場選定の問題はいまだになにも解決する見通しすらない。⇒「解決度=ゼロ」
▲-2 東電福島第1原発事故の被災者に対する損害賠償の案件が完全に解決・処理できていない。⇒「解決度=現在進行中のまま」
▲-3 廃炉の問題がとりわけヨリ深刻な原発の事後処理問題として残されたままである。なかでも東電福島第1原発事故「現場」の後始末は,はたしてあとどのくらいの年数をかけることになるのか,誰にも解答できない難問である。⇒「解決度=ゼロ」
以上のごとき「原発問題のアポリア」--アポリアとは解決のつかない難問のこと。ギリシア語の原義は通路または手段のないことを意味する。アリストテレスによれば,解決しがたい事柄を指し,一つの問いに二つの相反した合理的解答のある状況を意味する。現代では放置できない論理的難点をさす--が,原子力ムラ側(もちろん岸田政権のことだが)から提示されていない。
〔ここでまた日経「社説」に戻る ↓ 〕
◆ 対話集会で信頼醸成を ◆
すぐにでも原発の安全かつ有効な利用へ向けた国民との対話集会を開いてはどうか。政府,自治体,電力会社,原子炉メーカー,原子力規制委などが参加し各地で継続的に実施するのが望ましい。
建設する次世代革新炉はどれだけ安全なのか。避難計画はどう変わるのか。疑問に答え,率直に意見交換することで信頼関係も醸成されよう。
政府の基本方針ではグリーントランスフォーメーション(GX)に官民で総額150兆円を投じる絵を描く。民間投資の呼び水となる20兆円を政府が負担し,そのために2023年度からGX経済移行債(仮称)を発行する。
財源として排出量取引や賦課金など,排出するCO2 に価格付けするカーボンプライシングを導入する時期を明記した。脱炭素のインセンティブとしても重要であり着実に実行してほしい。
政府の脱炭素化への取り組みは,これまでスピード感に欠けていた。もっと早くから洋上風力発電や蓄電池の開発・利用,送電網の整備などを加速していれば,エネルギー不足のリスクを軽減できたはずだ。
大規模な投資を無駄にすることなく,日本の競争力向上につなげなければならない。(日経「社説」引用はここですべて終わり)
以上の『日本経済新聞』の意見・主張に対しては,つぎの原子力情報資料室の異説・反論を対置させれば,ほぼ99.99%は論破可能である。※-4として引用する。ここまですでにだいぶ記述をしてきたので,この ④ をもって「本稿(2)」はひとまず終わりにしたい。
※-4「【原子力資料情報室声明】原発の『運転期間延長』案を撤回せよ」『原子力資料情報室』2022/10/11,https://cnic.jp/45796
〔2022年〕10月5日,原子力規制委員会の定例会合で山中〔伸介〕委員長は,原子炉等規制法が定める「原発の運転期間は原則として40年,ただし,特別の場合に限って1回の20年延長が認められる」とのルールを撤廃する経産省案に対して,「運転期間は原子力の利用のあり方に関する政策判断である。規制委員会が意見を述べる事柄ではない」と言明し,原子炉等規制法からの削除を容認する姿勢を示した。他の4委員からも異論は出なかった。
補注)なおこれに付けくわえてだが,原発じたいが稼働していなかった保守点検や行政指導などのために停止・休止していた期間もその「20年延長」に付加することになっていた。この山中伸介原子力規制委員会のいいぶんは徹底的に詭弁であった。
原子力規制委員会のこの対応姿勢は,工学的な技術原理(観)として受けとめるならば,「完全に逆立ちした発想」であるか「寝そべった姿勢」。想像を絶した奇想天外の発想がまかり通っている。
仮に,人間は「睡眠時間が1日のうち8時間ある」から,寿命(余命の計算)もその分引いて計算してくれというごときであって,まるで八方破れの意見で横車を通したかのような主張も,関連して認められていた。
それこそ本当のバカあつかいされたとしても,なんの疑問も湧かないごとき,つまり「原発に限定された技術管理・観」ならば,なぜかこのようにして「原発問題になると突如浮上していた」。
まったく言語道断というべきか,法外の非常識と受けとめるほかない「岸田政権:原子力村勢の方針決定」が登場していた。
〔記事に戻る→〕 「40年ルール」はあの悲惨な東京電力福島第1原発の核事故を教訓として,2012年6月に導入されたものである。2011年3月,メルトダウンに至った福島第1原発の3基の原子炉のうち1号機はまもなく40年目を迎えるところだった。事故の収束も見通せないまま11年半あまり経つが,いまだ,「緊急事態宣言」は解除されてはいない。
進行中の経産省の原子力小委員会では,「安全を第一に」を大多数の委員が異口同音に繰り返しながら,原発の再利用へかじを切ろうとしている。再開された国会審議の場でも,野党に問われて〔2022年〕10月7日,岸田首相も同じ「安全を第一に」と答弁をした。
それならば,問う。「安全第一」をどうやって確認できるというのか。
原発の心臓部というべき「原子炉(圧力)容器」は中性子照射脆化(ぜいか)という危険症状をどう避けるかが最大の問題である。一般に原子炉容器にも用いられている金属は使用期間が長くなると原子炉内を飛び交う中性子を浴びつづけるため,脆化が進む(脆くなる)が,その程度を非破壊検査でしる技術はない。
補注)この指摘は原子力工学者であれば周知の事実である。だが,なぜか,以上のごとき議論のなかで少しも話題にされていない。要は,原発の技術問題,工学的にもっとも注意していなければならない事項から,完全に「逃げている」のである。
それでいながら「安全第1」というセリフだけは口にしている。こうなると噴飯モノどころか,東電福島第1原発事故現場をまともに思いだせる者であれば,これは「激怒必至」だと形容してよかったやりとりが,国会内でなされていたことになる。
よほど脳天気な連中の会話だったのか,以上のように指摘・批判される原発「観」の上で平然とあぐらをかいている。
〔記事に戻る→〕 原子炉容器の中に挿入された幾つかの監視試験片を定期検査中に取り出して脆化の様子を調べることによって推量するのが唯一の方法だが,これが必ずしも当てにならない。
2007年に制定された電気技術規定「JEAC 4201-2007」は,この方法を用いるさいの規範だが,原子力安全・保安院(当時の規制機関)によって是認(エンドース)されて,適用されてきた。
その後,2015年に,この規範に基本的な誤りがあることがわが国の指導的な専門家たちによって指摘された。原子力規制委員会・規制庁もそれを認めている。だが,一向に改善されないまま,すでに7年が過ぎた。
また,脆化の状況を調べるはずの監視試験片は数が限られているため,頻繁に劣化状況が確認されているわけではない。
運転期間が長期化すれば脆化が進展するにもかかわらず,監視試験片の不足も課題になる。
試験済み監視試験片を再生利用するというが,再生できる量も限られ,さらに結局はなんらかの加工をくわえた形になるため,同等のものとはいえない。
「安全を確認する方法がない」ことを示しているのだ。
もし,原発の活用を図るのであれば,日本列島に住むすべての人びとは,原発の存在というリスクを抱えて生きざるをえない。ただし,もし,原発をやめるならば,このリスクをゼロにすることができる。
原子力規制委員会と政府は,業界の意を汲むか,国民の意に沿うか,判断を迫られているのだ。少なくとも,「運転期間延長」案は撤回すべきである。(引用終わり)
なお,原発に関した歴史でいえば,最初は30年くらいにその耐用年数を想定していた。しかし,そのうちなんとはなしに40年に増やされていた。さらにまた60年にまで延長された。
しかも,稼働していなかった期間はそれから引き算していいとまでいいだした。この工学の原理からは完全に縁遠くなった発想は,想像を絶するほどの技術「感」であった。
そのような原発の技術的な対応を政策として連続していったら,日本でまたもや原発の大事故が起こらないとは限らない。南海トラフ巨大地震がもうすぐ発生すると恐れている最中に,いったい原発推進派はなにを妄想しているのか?
南海トラフ巨大地震に襲来されたさい,日本の原発に大事故が起こらないと,どこの誰が自信をもっていえるのか? 神様であるまいに……。森 喜朗がかつてだったが,サメの脳みそを振り絞っていわく「日本は神の国なるぞ」と。
大丈夫か?
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