黒江-路地と時間と立体迷路-
僕は和歌山県に住んでいるんだけど、地元に黒江という街があります。僕の大好きな街です。古くは漆器の生産で栄えた街で、プラスチックで出来た食器が全盛の今でも、地場産業として細々と頑張っている。
つまり、昔から大した発展はしていません。結果的に、ここには昔の街並みが残っていて、いちおう観光のようなことができます。
当時のまま区画整理されていない街並みは、理不尽にねじ曲がり、一つの路地の向こう側から、更に違う路地が現れます。角を曲がって進んでいくと路地は道なりに迂回し元の角にもどってきたりもします。
構造としては、迷路以外の何物でもありません。ただ、それだけでなく、街の一部は山肌に造られていて、路地の片側が民家の玄関先なのに、もう片側が別の家の屋根だったりもします。こうなると単なる迷路ではなく、街は巨大な立体迷路へと変化します。
おまけに、この街には様々な様式の建物が混在している。建てられた時代が違うからなのでしょうが、煉瓦造りもあれば、板塀の建物もある。
一つの建物の中でも、まるで時代を継ぎ足したように、一階と二階が別々な建築様式だったりする。あたかも、時代すらが迷ってしまったようにも思えます。
取り立てて特別なものはありませんが、ぜひこの街を訪れてみて下さい。時間の流れまでもが迷ってしまった迷宮を、探索できるかも知れません。
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