国際生物学オリンピックまでの道 ~第1回 予選対策~

※今回の記事は、高校生活の前半に作成した文章の引用を多分に含みます(恐らくこの時期に作成した文章の方が初学者の視点に立っているため)。
※主な想定読者層は中1~高2(受験勉強をしていない暇人)です。受験生は受験勉強に励みつつJBOの過去問を解いてください。

予選対策で目指すこと

・高校生物を理解する
・競技生物の形式に慣れる
・予選を受ける

予選は小学生でも中一でもとにかく受けましょう。はじめは散々な点数かもしれませんが、生物学オリンピックの問題は解くことに意義があります。

とりあえず申し込んでください
日本生物学オリンピック (jbo-info.jp)



勉強法(高校生物編・初期)

※キャンベル生物学の利用を推奨する意見が多いですが、個人的にはこの時点でキャンベル生物学に踏み込むのは早いと思います。
まずは高校生物から受験生物への流れを完璧にしましょう。

高校生物の教材や塾、勉強法は巷に溢れていますが、生物学オリンピックを受験する人は独学で教科書・参考書・資料集を読み込むことが多いです。
そこで、以下の文章は高校生物に関わる書籍の読み方に特化しています。
ただし、自然演繹に慣れていない時期に制作した文章のため、経験的な/ChatGPT的な(他の競技科学基準では「頭の悪い」)アプローチでの課題解決を試みています点をご了承ください。

~以下、高1冬に制作した文章より~

教科書や参考書を数周して、高校範囲の標準問題集をすらすら解ける程度まで持っていくのが理想。
(ここまで出来れば本選でも十分に戦える)

教科書・参考書・問題集の使い方

1周目:分からなすぎて疑問も持てないので、まずは読破を目指す。少し知っている内容の理解に努める。
2周目以降:後に記すポイントを意識して読む。読むたびに初めて知ることがあるからずっと飽きない。
全部の分野と知り合ったら、別の書籍をざっと読んで苦手分野を補完する・新しい価値観を得る(参考書には語り方の癖があるため)。
問題集:受験年の春をめどに、知識アウトプットの練習に解く。私は電車の中で一周し、解説を参考書代わりにした。

私は横着なので、机に向かってペンを握るより立ち読みの方が多かったです。でもおかげで集中して問題を解く癖がつき、処理の手数をなるべく減らして問題を解くことや、答えに至った思考法の理解に繋がりました(一度答えを覚えないと採点すらできないが、根拠を明確にして問題に解答すると覚えやすいため)。

参考:自分の使用書籍
1冊目→Amazon.co.jp: 改訂版 日本一詳しい 大学入試完全網羅 生物基礎・生物のすべて : 大森徹, 伊藤和修: Japanese Books
(ここに過去問を挟んだ)
2冊目→Amazon.co.jp: 生物問題集 合格177問【入試必修編】 (東進ブックス 大学受験) : 田部 眞哉: Japanese Books


※追記:使用書籍に関するアドバイスはネット上に結構落ちているので、そちらをご参照ください。何度でも言いますが、受験生物(共テ生物8割・最難関校程度)の対策が一番の予選対策だと思っています。
また、最近は「チャレンジ!生物学オリンピック」という書籍が販売されている模様です(私は試し読みしかしていないので確かなことは言えませんが、初期の段階ではややレベルが高い気がします)。

教科書・参考書の読み方

・読んだページの内容や、単語の定義を自分の言葉で説明できるように読む。疑問に思ったことを調べる(見開き1ページに質問3つぐらい出る。本気でやると1節に30分ぐらいかかる)。
・語句定着後は、教科書に書いてあることから現象を説明する練習だけでなく、現象を教科書に書いてあることだけで説明する練習を頭の中で行う(辞書の逆引きの要領)。研究者がどうやってその事実を発見したかに思いを馳せてみる。
・教科書の内容を頭に入れるための読書もバランスよく行う。単純暗記しないように気を付けて、暗記した事柄の背景などを多角的に覚える。


教科書の知識が定着しないときは~斜め読みのすゝめ~

教科書は知識を得るために最適な構成であり、適切な読み方で順番に読めば読み終わるころには必要なことが全てわかるようになる。
…はずなのですが。なぜ世の教科書は一工夫二工夫無いと読めないんでしょうか。

考えうる要因

①教科書が現象ありき
 教科書ってそういう所ある。現象の裏の関係が見えてこない。

②書き手と読み手の常識が違いすぎる
 教科書を書いている人はその分野に詳しすぎるが故に、我々とは一線を画している可能性。

 特に理系学問は、我々の生活感とはだいぶ遠い所にあります。数学や物理の数式で表された世界がそのよい例ですが、生物学でも単語の使い方や繋げ方が普段私達の話す日本語とあまりにも違う(しかも気付かずに読み進めることが可能である)ので、常識のずれは致命的なものになってしまいます。

対策:教科書ナナメ読み

①ランダムに開いた(目に留まった)ページを読んで、納得いくまで読む
 →必要事項のページを読んで…と、芋づる式に知識を伸ばす
因果関係を逆になぞりながら理解ができるのが特徴。
○知識が扱いやすい形で頭に入る
△因果関係を逆になぞっているため、本質を見失いやすい

②①の過程で印象に残った単語や語句を頭の中に積む
 自然に覚える分に任せてOK。
○他の場面で見た時に、その現象が思い出せる
(単語をブックマーク化する)

③心の余裕があるときに、通読
→因果関係を正しい順番をなぞることで、①で知った現象を理解することができる

この「うんちくとして知る→教科書で理解する」の繰り返しで、かなり効率よく情報が頭に入ります。特に時間がある人、論理的思考の土台が育ちきっていない人にお勧めです。

~以上、高一の冬に作成した文章~

勉強法(競技生物編・初期)

予選受験の初期では、自分のレベルをはるかに超えた問題を解くことになるため、実力十分の時とは異なったアプローチが必要になります。以下では、そのようなアプローチの一例を述べます。

~以下、高1冬・高2夏に作成した文章より~

過去問演習(早めに行おう)

自分は問題傾向の把握&日常学習のモチベ上げに解いた(早くに最近の問題で遊び過ぎて夏は問題傾向の大分違う2012年まで遡る羽目になった。良い子は真似しないでね!)。
一つの分野をしっかり学習したらその部分の過去問を解き、うろ覚えの分野の過去問を参考書片手に解き、過去問から生物学の大事な考え方をすべて吸収できるように努めた。

省エネ解法の例(非推奨)

①背景知識を持っている条件節をベースに適当な仮定を立てる
②適当な仮定は考察で詰まる。問題文全体を読んで見落としている条件がないか確認する
←自分の手に負えない場合は、すぐ次の問題に進み、後で条件を整理してから再着手する。
すると案外簡単に解けることもあるので、悩むよりは手を動かそう
③出題者の意図に沿うように考察する
(答を絞るための条件が露骨なヒントになっていることも多い)

※最初に立てた仮定がミスの温床となることの多い解法なので、キャンベル1周~レベル以上の知識力を持つ人(前年代表候補等)は控えた方が良い
(それで予選落ちした人・しかけた人を(自分含め)結構な数知っています)

1点でも多く取るためのお気持ち

【正攻法パート】
・問題文に示された条件からなるべく多くの事を読み取り、自分の答えの根拠が成立する条件を考える。
・楽しむ心を忘れない。初見意味不明の複雑な問題にもあきらめず食らいつく。迷ったら手を動かす。
・文章をよく読む。過去問などを通して、自分に多いミスの特徴を掴んでおく。
・過去問を解くときは、正解した問題についても解説を読む(問題文の3倍ぐらい情報量がある)。

【大声では言えない(?)パート】
・思考の手数を省略するために、定型語彙を持っておく。
(解説の通りに全問解いていたら初心者はすぐ時間切れになる)
・知識不足の人が得点できる試験問題の大半は「実験考察」。
問題文に与えられた情報を都度書き出して条件を整理すると突破口が見つかることが多い。
・選択肢も問題の一部(思考の誘導になっている、出題意図が読める)。

・頻出の記号と回答全体における記号のバランスにはなんとなく癖がある(計算問題では端の値は答えになりにくい、C,D,G,E,(F)は多いがJは滅多に見ない、Kはもっと見ない、同じ文字の答えが登場しやすい等)。
自分の答え優先ですが、山を張るときには過去問の答えの記憶の蓄積から決めると正答率が上がる…気がする。迷信やジンクスの域。

JBO2年目以降の予選対策

ここまでの節では、初心者視点で試験問題を相手に足掻くための訓練について述べてきました。
以降は、「国際大会レベルの実力をつけるための練習問題」という視点から予選の問題を分析します。

JBO予選は、基本的に生物試験の典型題を網羅した設計です。
1問1問のレベルはIBOの一問一答と同等~やや高めに設定されていますが、高校生物の内容から類推できるように選択肢での誘導が付与されています。

JBO予選はIBOを含む生物試験の典型題を網羅しているため、IBOや受験生物対策にも便利です。時短演習するのが特に良いと思っています(持論)。
私は国際大会前、JBO予選を(設問の誘導を拾わずに)60分で解き終える訓練をしていました(毎回予選突破ギリギリの得点だった)。

国際大会の理論試験対策はこちらの記事もご覧ください。
国際生物学オリンピックの理論試験ってどんなもの?|地中海 (note.com)

ただし、JBO予選では高校生物の内容から読解力のみで解答を類推させることに注力するあまり、生物学的な実情の反映が曖昧になっている、いわゆる”悪問”が時折含まれます。問題数が国際大会に比べて少ないため、確率的な得点変動が大きくなる傾向もみられます。
その結果、問題形式に独特の癖が生じるため、予選落ちを免れるには例え生物学の実力があろうともプライドを捨てて足掻きに行く必要があります。

落ちることを防ぎつつ実力をつけつつ、まずは基礎の定着を確実に目指ましょう。多少遠回りなやり方でも、ここで実力をつけることがそのまま本選、ないしは大学以降の生物学習に繋がっていきます。
がんばってください(締め、むずかしい)。

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