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【日記】京都と花と小説と ③保津川下りに行ってきた!

保津川下りを小説に

 昨年は長編・短編含め、七作の小説を文学賞に応募した。そのうち、一作は京都文学賞の一次選考を通過、もう一作は京都キタ短編文学賞の最終候補作にノミネートされた。だけど、どちらも入選しなかった。

 小説を書き始めて二年なので、その割にはいい成績だと思う。でも、入選を逃したのはやっぱり悔しい。
 芥川賞受賞の故・田辺聖子さん、玄月さん、直木賞受賞の朝井まかてさんを輩出した大阪文学学校で一年半学び、今も天狼院書店のプロ小説家養成講座「オーサーズ倶楽部」で、がんばっている。
 だけど、自分の小説にはなにかが足りない。それがなんなのかまだ見えてこない。純文学、エンタメ、どちらにもふり切ることもできないでいる。ずっともやもやしたままだ。

 今後の方向性について、ひとつだけ決めていることがある。京都文学賞にリベンジしたいのだ。多分、わたしはずっと京都を書いてゆくと思う。京都を舞台にするというよりは、京都に暮らす人たちを書いてゆきたい。その上で、京都文学賞に挑戦することは、わたしにとって重要なのである。

保津川下りの舟と紅葉

 じゃあ、どういうことを題材にしたらよいのか。
 よくお世話になっている鍼灸師さんは、前に嵐山に住んでいたことがあると言う。
「トロッコに乗ると、運転手さんが途中で保津川下りの船頭さんに手を振るんですよー。で、船頭さんも振り返してくるんです」
 その話を聞いてわたしは一閃した。わたしも嵯峨野トロッコ列車に乗ったことはあるが、秋の紅葉ライトアップを見るためだった。夜だから保津川下りの舟は運行していなかったのだ。
 鍼灸師さんが話したその風景は様になる。それが書きたい。そう思ってわたしは保津川下りと嵯峨野トロッコ列車について調べ始めた。その結果、保津川の船頭を主人公にする物語が思い浮かんだのだ。 

新緑の季節の保津川下り

 だけど、本やネットで調べるだけではわからないこともある。第一、保津川下りの船頭とトロッコの運転手が手を振り合うところなんて、実際に見てみなければどうしようもない。それに、主人公は船頭である。保津川下りを体験しなければならない。未体験なのだ。
 わたしは保津川下りを運行している保津川遊船企業組合に手紙をしたためた。手紙を出してすぐ、組合の担当者の方から電話とメールをいただき、取材に協力してくださるということで、保津川下りの舟に乗せていただくことになった。
 慌てて「明日、行きます!」と返事をしたので、ご担当の方も驚かれた様子だった。

青碧の保津川をゆく高瀬舟

 お話は30分ほどで舟に乗る。特別に一番前のいい席をご用意いただき恐縮した。だけど、ビデオや写真に収めるにはものすごく助かる。舟が出発すると、感謝しつつビデオを回し始める。船頭さんは三名。櫂こぎと竿さしと舵取りをそれぞれ担当される。保津川のガイドとしての役割もあるらしく、櫂こぎの船頭さんがトークを展開される。川の瀬に浮かぶ水鳥の名前や、ゆく先に現れる大きな岩の名前、特徴のある景観の説明など、ユーモアを交えて話される。竿さしの方の竿を使った大胆なパフォーマンスもあり、笑いや拍手が起こる中、舟は白い水しぶきを上げて川を下る。この日は水量が少ないというお話だった。

今から出発!一番前の白いニット帽がわたしです

 舟はおよそ一時間半で渡月橋に到着する。病気持ちに冬場の川下りはいささか堪えたが、船頭さんのリズム感のあるトークのお陰もあって、楽しくあっという間に時間が過ぎた。
 かくして、わたしは小説家プロ養成講座の先生に、あらすじ原稿を提出するべく執筆を始めた。すでに提出して講評を待っているのだが、先生はかなり厳しいこともおっしゃる。だから今、わたしは戦々恐々としながらブログを書いている。いや、逆だ。そんなときに、ブログを書けるなんてのんきにも程がある。 

渡月橋付近

 今回の取材はとても有意義だった。想像だけで小説は書けない。ビデオを撮るだけでなく、保津川下りをしっかり五感で感じ取ることができた。もちろん、ここで働く方々の想いも垣間見た。いい小説が書ける気がする。
 保津川遊船企業組合の船士の皆さま、本当にありがとうございました。桜の季節にまた乗りにゆきます。

【追記】
第7回W選考委員版公募ガイド「小説でもどうぞ」に選外佳作で掲載されました!
タイトル「お熊さん」です。よろしければご一読ください。


☆今日のビデオ
京都・春の保津川下り/産経ニュース

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