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大学に行かせてくれた親のこと

私の地元はものすごい田舎だ。
人口密度の低さは全国トップレベル、
土地だけはたくさんあるが人はほとんどいない。

だから、幼稚園から小学校、中学校、高校まで
ほとんど同じメンバーで過ごして、
役場とか農協とかに就職して、
地元の先輩か同級生か後輩と結婚する、
そういう人生なんだと思っていた。


実際、うちの両親はそれぞれ地元の高校を出て
父は地元企業、母は信金に勤めて
仲間内で出会って結婚していた。

友達の親が母の友達だったり、
父の元カノだったりする、
とても狭いコミュニティ。


中学生の頃まではなんの疑問も持っていなかった。(それ以外知らないのだから当然だが)

私も姉も勉強が得意な子どもだった。
学年に2〜3クラスしかない小さな中学校だが
学力テストではだいたい学年の3位以内に入っていた。

だから、地元の高校よりも上のレベルを目指さないかと
面談の度に担任の先生から言われていた。

両親は、断固反対した。


うちの両親は、テストで学年1位をとっても褒めてくれたことはなかった。

そうやって傲慢になるのはよくない、
勉強ができることと頭が良いことは違う、
本当に大切なのはきちんと仕事が出来ることだ。

これは、両親もその親から言い聞かせられてきたことなのだと思う。


わたしも両親の言いたいことはなんとなくわかった。

テストで間違いたくない、
という完璧主義と、
誰にも負けたくないという負けず嫌いで
ゲームをクリアするくらいの気持ちで勉強していた。

おそらく、そういう自分を見透かされていたんだと思う。


高校に進学してからは部活に集中して
学力も下がったが
国立大学なら行けると担任から勧められた。


なんやかんやあり、両親は大学に進学させてくれた。
(すでに姉も大学に通っていた。)

両親ともに高卒で就職していたが
本当は大学に進みたかったし
地元から離れて就職したかった、と聞いたのは
ずっと後のことだ。


おかげさまで、姉も私も大卒としてそれなりの職に就き
それなりの収入を得ることが出来ている。


両親は、一度も勉強しなさいとは言わなかったし、
テストで良い点を取っても褒めることもなかった。


でも自分たちが進みたかった道を子供たちが望んだとき、
何も言わずに学費を出して進学させてくれた。


国立大学とはいえ同時期に二人、それぞれ一人暮らし、奨学金無しで通えたのは
父の稼ぎと信金出身の母の資産運用が無ければできなかった。


しっかりやりなさいとも、
女だから勉強しなくて良いとも、
なにも言わなかった両親。


私は、娘に何も言わずに送り出すことが出来るだろうか。


学力格差の話題を聞くたびに、あの頃の両親の思いを想像してしまう。

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