ミヒャエル・ハネケ『タイム・オブ・ザ・ウルフ』を観て。意図的に作り上げられた自然状態のなかで。
映画批評、ハネケの『タイム・オブ・ザ・ウルフ』についてです。
なにかの壊滅的なできごとが地球(あるいはヨーロッパ)に到来して、そのために突如として原始生活に陥ったひとびとを描いた映画です。ハネケらしく「なぜそうした災害が生じたか。また、それはどういう災害であるか」という部分は映画にはありません。本来「主人公の立たされた状況の理由」として働くであろうその箇所は、映画の構成上、意図的に省かれています。ほかの多くのハネケ映画でも良く見られる技法ですが、フランツ・カフカの多くの