2回の妊娠の合間の話①

暗い話ばかり書くのは自分自身も辛かったので、気分転換に趣味的なことを書きたい。そうは言っても、1回目の妊娠で息子を死産してから次の妊娠をするまでの人生で1番精神的にダメージを負っていた時期の話である。
全てを一気に書ききれないのでナンバリングし、また気が向いたときに②を書くかもしれない。

ネイルについては死産時の描写があるので苦手な人は読まないで。


●長い旅行、飲酒

死産後、私は産後休暇で急に時間ができた。夫の方も、驚いたことに死産でも忌引きができたようで有給休暇等も使いながらかなり長く連休が取れた。

産後の診察でOKが出たので夫婦で約1週間旅行に行くことにした。
夫と自分のいずれかが土地勘ある数箇所に立ち寄り、土地ごとにその近くにいる友人と約束して会うことができた。妊娠中は体調が悪かったため友人と会うことはなかったので久しぶりに人と話したような感覚だった。もともと妊娠のことを報告していなかったが、事情を説明するためにも、近況報告も兼ねて友人には死産したことを伝えることにした。心配されてしまったけれど、他にも話すことはたくさんあり、楽しく過ごすことができて友人達に本当に感謝している。
ホテルの部屋、近辺のお店等でほぼ毎日飲酒していたと思う。外での酒の提供規制が緩和されている時期で本当に良かった。夫も自分も酒に強く飲酒が好きで、また飲酒できるのが嬉しかった。夕方に会った友人とは外で飲み、その後夫が合流したり、夫が夫の友人と飲んでいるところに私が合流することもあった。
旅行中に宿泊していた老舗ホテルのバーで夫と2人で飲むこともあった。お酒もおつまみも美味しいバーだったので、2人で普段頻繁には飲まない良いウイスキーをそれぞれの趣味で注文して楽しく飲んでいたところ、店員さんに声をかけられ、メニューに載っていない珍しいウイスキーを薦められた。それほど歳もいっていないカップルがウイスキーばかり頼んで余裕そうに飲んでいたのが目立ったのだろうか。他のウイスキーとそれほど変わらない価格で提供してもらい、こんなこともあるんだな、と忘れられない経験になった。

旅行しながら翌日のホテルを予約する等、綿密な計画を立てず、ゆっくり友人と会い、慰安旅行なので温泉ばかりに行き、子供がいたらできないであろうことをたくさんすることができた。

●手芸

社会人になってからやらなくなっていたが、子供の頃はよくやっていた。そのため何も考えずに時間を潰す趣味として手芸がちょうど良かった。

まずフランス刺繍をやった。図案ですら自分で考えたくなかったため刺繍キットを購入した。
久しぶりだったので色々な手法が網羅されている基本ステッチキットをやったのだが、これがとても良かった。なかなか時間を使うし楽しかった。自分で何かを作ることが楽しいということを思い出すことができた。
また、手芸屋さんの刺繍コーナーによくある12か月別の図案のキットのうち死産した月のキットを1つ購入し、すぐに取り掛かった。生産性があることが久しぶりにできたと感じることができたのか、完成させることでようやく1回目の妊娠が終わった気がした。

刺繍をしているうちに、やはり自分で考えた図案を刺繍したくなり、さらに実用的なものを作りたくなってきた。髪留めの飾りとして刺繍をしたり、小物入れを作ったりと、おもに自分が使うものを色々作った。どのようなものを作っていたかは別記事で書くかもしれない。
刺繍の図案のみではなく型紙も考えるようになり、精神的ダメージを負ったことで使うことを抑制していた頭をリハビリしているような感覚だった。

●ネイル

死産時の描写があるので苦手な人は読まないで。

突然ではあるけれど、自分の見た目で1番好きな部分は私の場合は手だ。それに加えて、自分で自分の顔は見えないけれど自分の手は自分でも見ることになるので顔面よりも手に気を使うという自分勝手さによって、妊娠前もジェルネイルをネイルサロンでやってもらっていた。そのままでも綺麗なのだが、やはりさらに綺麗にされた爪が視界に入るとテンションが上がるし、爪の保護にもなる。
それでも妊娠中はいつ手術を行うことになるかわからないため除去してもらった。死産となったのであらかじめ除去していたのは正解だった。

死産後は定期的にネイルサロンに行くことすら億劫になっていたのですぐに再開しなかったが、職場復帰後しばらくしてネイルをする理由が追加されてしまった。無意識に視界に入る自分の手から息子を思い出し、仕事どころではなくなってしまうようになっていたのである。

分娩後の息子対面の際、息子は布団のように布をかぶせられてお花と一緒に綺麗に箱に入れてもらっていたが、手が見えるように出されていた。5本の手の指は既にできていて爪のようなものもあり、綺麗に揃えてもらっていて、とにかくとても綺麗な手だった。自分や夫に似ているところを探す気は全くなかったが、あまりにも自分の手とよく似ていたので、遺伝はすごい、と思っていた。

これにより自分の手と息子を関連づけることになってしまった。職場復帰前は、自分の手を見てぼーっと息子を思い出していたが、さすがに仕事中にあの光景を思い出すのはまずかった。
そこでネイルサロン通いを再開することにした。妊娠前に通っていたところには申し訳ないが、妊娠したことを話していたので死産後に行くのは躊躇われ、別のネイルサロンに行くことにした。以前は、ピンクや白など目立たない落ち着いた色を選択していたが、自然の爪から遠い色にしてもらうようになった。幸い、仕事での規則にネイル禁止とはないし、接客する仕事ではないので問題なかった。結果、狙いどおり手を見ただけで息子を思い出すことを減らし、仕事のモチベーションを上げることに成功した。

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