悲しい歌を優しく歌う

高校から大学と毎月の楽しみはどのCDを買うかだった。
高校時代は地元の音楽ショップ、大学時代はタワーレコードに行って、CDを視聴して、吟味して吟味してこれという一枚を買っていた。
自宅に帰って、ミニコンポにCDを滑り込ませて、アルバムのメインとなる一曲を鳥肌を立てながら聞いていた。
たまに調子に乗って4枚なんて買うと、どれも中途半端にしか聞かず、やっぱり一枚を厳選しないとだめだななんて思っていた。
それから早20年、音楽はアマゾンのサブスクやYoutubeで聴くようになった。
それこそ中学生の時に、音質が大事だからとメタルのカセットテープを買ってCDから録音してウォークマンで聴いていたのに…。
まぁモスキート音も聞こえなくなってきたこの耳に音質も無いよななんて言い訳したり。
音楽をたやすく手に入れられるようになってしまったからか、ただただ年を取って興味が無くなってしまったからか、もう新しい音楽家(ミュージシャン)を探そうともしなくなった。
そして聞くのは、昔の音楽達。
厳選されたCD達も引っ越しの繰り返しの中で捨ててしまったが、今ではちょっと検索すれば合法的にネット上で簡単に聞くことができる。
それらを聞くと、当時のイメージが少しだけフラッシュバックする。
深夜の大学の屋上からの景色、アパートの窓から見える大雪に埋もれる家並み。
その時の正確な感情までは思い出せないけれど、最高の世界だった。
これから20年後、今を象徴する音楽を持たない僕の記憶はどうなるのだろうか。昔の曲を聴いて、いつまでも40年前のイメージを浮かべているのだろうか。
それが悪いとも悲しいとも思わないけど。

表題はwyolica。
悲しい歌を優しく歌う。
いい音楽家だ。


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