見出し画像

「動物福祉」を求める投資会社の株主提案 ー はじめて見るケースですね。米国では急増のようですが


わかもと製薬への株主提案

本日の日経新聞にアニマルウェルフェアを求める株主提案が日本でも出始めたということで、わかもと製薬に対する投資会社の株主提案の記事が次のとおり掲載されていました。

実際にわかもと製薬の株主総会の招集通知を見ると第6号議案に「実験動物の動物別購入頭数の開示を定款目的事項へ追加する定款一部変更の件」として、動物別購入頭数を開示するよう定款変更を求めています。提案の理由は次のとおりです。

動物実験は、3Rの原則という国際的な動物実験の基準理念を遵守した上で行われています。3Rの原則は以下 のように3つのRに基づいています。
・Reduction:使用する動物数を削減すること
・Replacement:代替法を利用すること
・Refinement:実験による動物の苦痛を軽減すること
3Rの原則に基づいた取組をどのように実施しているかについての情報開示は、透明性を高め、消費者や投資 家からの信頼を得る上で重要と言えます。例えば、Reductionについては、実験動物頭数のように理解しやすい 内容であることが多く、具体的な数値や削減率を通じて取組状況を確認することができます。また、 ReplacementやRefinementのように、論文やデータの理解に専門的な知識を要するものまで情報開示の内容は 多岐にわたります。3Rの原則の遵守に向けた取組が不足している企業に投資するリスクは大きくなる一方で、十分な取組をしている企業に対する投資リスクは低減すると解されます。そのため、提案株主は、当社が3Rの原則に継続的に取り組んでいる姿勢を明らかにすることを通じて、動物福祉の観点から当社へ投資するリスク(株主資本コスト) の低減が見込まれ、それが当社の株主価値の向上に繋がると考えます。そこで、3Rの原則の遵守に関し、実験動物について動物別購入頭数の開示を行うことを、既に定款に存在する動物実験に関する号に追加することを提案します。そして、当社には、定時株主総会前に提出される有価証券報告書、株主総会参考書類、及びウェブサイト上で実験動物別購入頭数を毎年開示していただくことに期待しま す。

国際的な基準理念の3Rの原則が守られるよう透明性を高めてもらうことを求めているようです。
これに対して、わかもと製薬の取締役会は次のとおり反対の意見表明をしています。

取締役会としては、本議案に反対いたします。当社は開発時の実験の内容に応じて実験動物を購入しており、定期的・大量購入をするものではありません が、動物の愛護及び管理、法令順守の観点から、「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に 関する基本方針」(以下、厚生労働省指針)に基づき、社内の動物実験に関する規程を定めております。 詳細については、当社研究開発活動に関するホームページにて、動物実験に対する取組みとして開示しておりま すが(下記)、当社としては、既に動物実験に関する計画書及び結果を社内の専門委員会が科学的根拠に基づく 妥当性、動物への福祉、3Rの原則等への遵守について審査する体制を構築しており、動物実験に関する組織と 責任を明確にしております。(https://www.wakamoto-pharm.co.jp/company/development/) さらに、これら管理体制について、定期的に自己点検及び評価を実施しており、2022年2月22日には、厚生労 働省指針への適合性に関して一般財団法人日本医薬情報センターより4度目の認定を受けております。 今後も当社においては、動物実験について、動物の愛護及び管理、法令順守の観点から適正に取り組んでまいる 所存です。 その上で、取締役会は、こうした課題は、株主の皆様から信認を受けた取締役が、その時々の環境に合わせて柔 軟かつ多様な経営判断を行い、機動的に各種の方針や施策を実施(また必要に応じて変更)し、かつ、開示して いくべき事柄と考えております。 従って、本提案のように、会社の組織・運営の基本的事項を定める定款において、実験動物の動物別購入頭数の 開示等の特定の経営課題に関する個別具体的な方針に関する事項を定める必要はなく、むしろ定款に記載をする ことで取締役会による柔軟かつ機動的な判断を制約する可能性があると考えております。 よって、取締役会は本議案に反対いたします。

ESGの広がりに伴い専門的な株主提案が増えますね

私はこの分野は全くの門外漢ですので、今回の株主提案をどう判断すれば良いかよくわかりませんが、新聞記事によれば米国では動物福祉の株主提案は急増しているようですね。投資会社は、この株主提案でわかもと製薬の企業価値がどう向上すると見ているのでしょうか。
多分、これによりESG投資の金が向かうことを期待しているのかも知れません。けど多くの機関投資家の議決権行使担当者は、今回の株主提案をどう判断すれば良いのか判断に迷うのではないでしょうか。動物福祉に精通している国内機関投資家は少ないと思います。
いずれにせよ、企業価値向上という名の下に今後とも色々な株主提案が増えるかも知れませんね。