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機関投資家の議決権行使基準 - 野村アセットマネジメント


野村アセットの取締役選任議案

9月末の実質株主調査を企業各社は外部行業者を起用して作業中かと思います。9月末時点の株主をベースに来年の総会議案での賛否シミュレーションをする企業もあるかと思いますが、その際には機関投資家各社の議決権行使基準を理解する必要があります。

今回から、時々、主要な機関投資家の議決権行使基準について解説をしたいと思います。とはいえ、株主総会の議案も種々あるますので、新聞でも良く話題になる取締役選任議案に関して、ROE等の業績基準にフォーカスして簡単に説明していきたいと思います。

今回は野村アセットマネジメントの議決権行使基準です。以下になります。

https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy.pdf?20231124

取締役選任の業績基準を簡単に整理すると次のような内容になります。

  • 直近3期連続して株主資本利益率(ROE)が 5%未満かつ業界の 33%ile 未満の場合、取締役会がモニタリング・ボードであり、かつ経営改善努力が認められる場合を除き直近3期以上在任した会長・社長等の取締役再任に原則として反対

  • 「業界の 33%ile」は、TOPIX(東証株価指数)を構成する上場企業を対象と し、東証 33 業種分類に基づく。但し、計算された値が 0%未満の場合は0%とする

  • 「経営改善努力が認められる場合」とは、以下の①及び②のいずれかに該当する場合をいう。但し、①及び②のいずれの場合も、直近3 期の当期純利益の合計がマイナスの場合を除く。①直近期の経常利益(経常利益が報告されていない場合は税引前利益、以下同様)又は当期純利益が、前期比で増加している。②直近期の経常利益又は当期純利益が、3期前比で増加している

野村アセットの特徴

野村アセットもROE5%を反対の基準にしており、数値基準自体は多くの機関投資家の基準と概ね同じです。ただし、他の機関投資家と大きく違うのは、モニタリング・ボードの場合とそうでない場合で基準の適用が違う点です。モニタリング・ボードに該当する場合には、基本的にROE5%基準が適用されなくなるということです。

となると、ROEが5%を下回る状況が3年続く企業は、「当社はモニタリング・ボードか?」というのが気になるところですが、ここは8つほど以下の要件を掲げており、これらを全てクリアすることが必要です。

①取締役の人数が5名以上20名未満 ②社外取締役が過半数 ③社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会(法定・任意を問わない)を設置し、社外取締役が議長に就任 ④女性の取締役が取締役の人数の10%以上 ⑤買収防衛策を導入していない ⑥政策保有株式を過大に保有していない ⑦監査役会設置会社の場合、取締役の任期  ⑧支配株主がいる場合、取締役会議長は社外取締役

数は多いですが、➁の社外取が過半数である点や③の委員会の議長が社外取である点を除けば、モニタリング・ボードに該当するハードルは高くないように思えます。委員会の議長が社外取の企業は、結構多いのではないでしょうか。

野村アセットは行使基準の改定時期が早い

野村アセットは運用機関の中のガリバーであることを標榜しており、他社よりだいぶ早く議決権行使基準の改定を行うことで有名です。来年の総会ではROEの基準を8%に上げるかどうかなどが気になります。

来年の総会の議決権行使基準は、例年どおりですと年内には公表されると思いますので(昨年は野村アセットは11月改定)、アップデートされ次第、紹介したいと思います。

機関投資家の議決権行使基準が個人投資家・個人株主にとって参考になります

今回は野村アセットの議決権行使基準でしたが、個人投資家・個人株主の方は、機関投資家各社の議決権行使基準を是非参考にしてみて下さい。

株主総会で取締役選任議案に賛否をする時、ほとんどの個人の方は判断の基準はなく、結果、全員に賛成するケースが多いと思います。けど、個人株主も議案をきちんと判断して、総会運営に意思を反映すべきと私は考えます。その際に機関投資家の基準を参考にして同じ基準で賛否を判断してもよいかなと思います。

機関投資家は毎年、かなりの労力を割いて、議決権行使基準の改定作業を行います。グローバルの資本市場の動向、日本の資本市場の動向、アセットオーナーの見解など様々な要素を考慮して、会社で議論して決定します。それだけに大手機関投資家の基準は資本市場のスタンダートと言えます。是非、個人投資家や個人株主の方は、自分の投資先企業の株主総会議案も機関投資家と同じような視点から議決権行使をするとよいと思います。

とうことで、引き続き、各社の基準を紹介・説明をしたいと思います。

本日は以上になります。記事を読まれてお気づきのことやご質問、ご感想など何かありましたら、コメント又はnoteのトップページの一番下の「クリエイターにお問い合わせ」からお気軽にご連絡を頂ければと思います。