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ざっくりと分かる外資規制 ー「コア業種」というだけで海外のアクティビストから政府が守ってくれるわけではないです

本日は保有銘柄の決算数値のアップデートと課題分析をしていました。私の場合、投資先銘柄の過去10年の財務と株式指標をエクセルで四半期決算の都度、整理しているのですが、仕事でバタバタしており、FY23の1Qの決算整理のアップデートが出来ていませんでしたので、来たる2Q決算に備えての分析作業になります。2Q決算後の決算短信と決算説明会資料を見て、各社のIR部門にメールと電話で追加質問をするようにしています。

さて、前回、外資規制のコア業種について次のようなことを説明しました。

外国金融機関がコア業種に認定された上場企業の株式を取得する場合の免除基準は次のとおりで(一般免除基準といいます)、この基準を遵守する限り、1%以上の株式取得において事前届出は不要となります。
1 外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しない
2 指定業種に属する事業の譲渡・廃止(合併、分割等含む)を株主総会に自ら提案しない
3 指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしない

少し分かりにくいかも知れませんので、説明をかえますと、役員提案や事業譲渡等の物言う株主的行動をする目的で海外投資家がコア業種の株式を1%取得する場合には、財務省への事前届出と許可が必要ということです。

とすると、「当社はコア業種の企業に認定されたので、海外のアクティビストから当社は狙われる可能性が低下した!」と考える上場会社の担当者もいるようにも思えます。しかし、これは大きな間違いです。

まず、2や3の文言を注意深く読むと「指定業種に属する事業」とされており、これが非常に大事なポイントです。例えば、A事業、B事業、C事業の3つの事業セグメントのある上場会社があるとします。この会社が、A事業についてコア業種の認定を受けたとします。

この場合、海外の投資ファンドがB事業やC事業について、事業売却を求めてきた場合、上の3つの基準の「2」には該当しません。

あくまで「2」では、「指定業種に属する事業」という限定がついて、この事業について、一定の株主提案などをすることが事前届出(その後、役所での審査)の対象となるのです。従い、このケースでは、海外投資家は、事前届出は免除されます。

そもそも現実には、A事業の製品・サービスの全てが指定業種の認定を受けることは稀で、A事業の中の、さらに特定の製品・サービスについてコア業種の認定を受けるのだと思います。この場合、事前届出が必要なケースは更に狭くなると言えます。

外資規制ですが、政府は、海外のアクティビストから日本の上場企業を全て守ろうという意図はないかと思います。

勿論、国防や国のインフラに関わる重要企業(三菱重工、東京電力はじめとした日本の産業の根幹を担う超重要な一部の企業といったところでしょうか)は守るという意思はあるのでしょうが、コア業種に認定された700~800社には、国の産業の根幹に勿論何らかの関係はあるものの「国の基幹産業のド真中」とは言えない企業が多いかと思いますが、これらの多くの企業を政府が「断固として守る」という意図は普通に考えれば無いかと思います。

例えば、重工メーカーの航空機のエンジン等に使用されている部品を製造している部品メーカーなども多くあるかと思いますが、この部品メーカーが外資規制で守られるかというと微妙です。

だって、部品メーカーなどは何らかの形で国のインフラ等に係る部品を製造していることが多いのですが、沢山存在する部品メーカーをいちいち政府が守っていたら、きりがありません。また、部品メーカーが何を製造しているかなど政府の担当者が細かく把握していないケースも大です(東芝、三菱重工が何を製造しているかは誰でも分かりますが、部品メーカーなどマイナー過ぎますので・・)。だから、突然、海外の投資ファンドが出現しても政府が守るということはあまり期待できないように思います。

国の産業のド真ん中の重要企業でない限り、外資規制で政府に守ってもらうことなど期待しない方がよいかなと思います(普段から、自社の製造する部品がいかに国防に必要不可欠なものであるかを、管轄する省庁の担当官にインプットしておけば守ってくれるかも知れませんが)。