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ざっくりと分かる外資規制 ー「当社は外資規制のコア業種だから買収リスクなし」ということではないです 。コア業種とは?

本日は仕事が休みで、4連休となります。とは言え、子供たちは学校で妻は一日仕事ですので、家で一人、四季報や企業の決算説明会資料をじっくり読んだりして過ごしています。

先日の新聞報道でドイツが外資規制を強化したとありました。中国企業による敵対的買収を想定しての強化だと思いますが、日本でも2021年に外資規制が大きく改正されています。

当時、私は事前警告型の買収防衛策の更新更新を検討しており、「今回も更新しようかな?それとも廃止するかどうしようかなあ?」と考えてる最中に、外資規制が改正される方向という情報が入りました。「外資規制も踏まえて買収防衛策は検討しないとマズイぞ」と思い、10年以上付き合いのある某大手法律事務所のアドバイスも踏まえながら、初期段階から外資規制の改正についてかなり深く調べた経緯があります。

と、前置きが長くなりましたが、米国や欧州の外資規制が強化されると、中国企業などの買収ターゲットは日本に向かう気がします。「日本は外資規制が海外より緩く、技術力の高い会社も多いので買収しやすいぞ」ということです。結構水面下ではその動きがあるようですね。ということで、本日は外資規制についてざっくりと解説したいと思います。

まず21年改正の外資規制ではじめて出来た言葉に「コア業種」というのがあります。コア業種に該当する会社も多いので、言葉自体は知っている方もいると思いますが、「コア業種=敵対的買収があっても政府が守ってくれる」という感覚でいる方も多いと思います。けど、実はこれは間違いです。まずは、「コア業種とは何であるか?」について説明いたします。

コア業種とは、武器、航空機、宇宙関連、原子力関連、軍事転用可能な汎用品、サイバーセキュリティ関連、一定の電力、ガス、通信、上水道、鉄道業、石油業等が該当します。これらに該当する事業を営む企業がコア業種の銘柄に該当し、21年の当初は約500社程度の上場企業が該当しましたが、その後数が増え、直近では700社~800社あると思います。「そんなに多いの」という感覚ですね。

次に、では、コア業種に該当するとどうなるのでしょうか?

外国投資家がコア業種の企業の株式を1%以上取得する場合には、国への事前届出が必要になります。ただし、外国投資家の別により、投資家が一定の基準を遵守する場合には、事前届出が免除されます。

外国金融機関がコア業種の株式を取得する場合の免除基準は次のとおりで(一般免除基準といいます)、この基準を遵守する限り、1%以上の株式取得において事前届出は不要となります。

  1. 外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しない

  2. 指定業種に属する事業の譲渡・廃止(合併、分割等含む)を株主総会に自ら提案しない

  3. 指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしない

次に外国事業会社がコア業種の株式を取得する場合は、一般免除基準に加えて、次の上乗せ基準を遵守する場合、10%未満の株式取得は事前届出免除されます。

  1. コア業種に属する事業に関し、取締役会又は重要な意思決定権限を有する委員会に自ら参加しない

  2. コア業種に属する事業に関し、取締役会等に期限を付して回答・行動を求めて書面で提案を行わない

ざっくりといいますと、要するに純投資である場合、海外投資家はこれまでどおり事前届出といった煩雑な手続は必要なく株式の取得が出来ますが、物言う株主(アクティビスト)のような行動をする場合、外国投資家は事前届出をして国の審査を受けるということになります。

では、「当社はコア業種に認定されたので、海外のアクティビストから狙われなくなった!」と喜ぶことが出来るのでしょうか?

これは企業の一番関心の高いところであり、勘違いしている企業や経営トップの方も結構多いと思います。でも答えをいますと「違います」となります。このあたりを次回説明したいと思います。