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セブン&アイ・ホールディングスがカナダの大手コンビニから買収提案 ー 同業の事業会社による同意なき買収のシミュレーションが大事です


今回のお話のポイント

本日の日経新聞の一面に買収提案の記事が大きく掲載されていましたね。これについて本日はお話をしたいと思いますが、サマリーは次のとおりです。

  1. セブン&アイ・ホールディングスが海外の同業他社から買収提案を受けたようです

  2. 今後は海外事業会社による日本企業の買収も増えるでしょう

  3. 上場企業は、突然の買収提案に備えて経産省の「企業買収における行動指針指針」に沿った対応のシミュレーションをしておくことが大事です

海外企業による日本企業への同意なき買収案件が出ましたね

本日の日経新聞の一面に大きく記事が出ていましたが、株式会社セブン&アイ・ホールディングスが海外の同業他社から買収提案を受けたようですね。セブン&アイは次のとおりプレスリリースを公表しています。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_material_/localhost/ja/release_pdf/2024_0819_ir01.pdf

抜粋すると次のとおりです。

当社が、アリマンタシォン・クシュタール社より内密に、法的拘束力のない初期的な買収提案を受けている ことは事実であり、当該提案を検討するために当社取締役会において取締役会議長であるスティーブン・ヘイ ズ・デイカスを委員長とし、独立社外取締役のみにより構成される特別委員会を組成しております。株主の皆 様をはじめとする当社ステークホルダーの利益の最大化を図る義務を果たすべく、特別委員会は、当該提案を 当社のスタンドアローン計画及び当社の企業価値を向上させる他の選択肢とともに、慎重かつ網羅的に、しか し速やかに検討し、その後当社としてアリマンタシォン・クシュタール社に返答する予定です。なお、当社取 締役会及び特別委員会は、アリマンタシォン・クシュタール社からの提案を受け入れ若しくは拒否するか、同 社と議論を開始するか、又は代替的取引を進めるかに関し決定しておりません。

セブン&アイのプレスリリースより抜粋

経産省が「企業買収における行動指針指針」(企業買収指針)を制定してから、国内の事業会社による同意なき買収は少しずつ増えていますが、これまで海外企業による同意なき買収はなかったかと思います。

多分、海外企業は日本で同意なき買収がどの程度受け入れられるか様子見をしていたように思えます。けど、最近の国内企業による案件や同意なき買収に賛同する国内機関投資家の様子などを見て、日本でも同意なき買収への抵抗がなくなってきたと判断したのだと思います。

上場企業は企業買収指針に即した事前シミュレーションが大事です

今回の記事を受けて「当社も対応を検討しないと」と騒いでいる会社も意外に多いと想像します。けど、新聞に出てわちゃわちゃ騒ぐのではなく、「こういうことも普通に起こるよね」ということをトップマネジメントは普段から十分に理解・対応しておく必要があります。取締役会で社外取締役から指摘されるので、至急対応を検討するという会社もいるとは思いますが、これでは情けないですね。

ということをここで言っても仕方ないのですが、いずれにせよ企業としては、同意なき買収は今後も増えるので、有事の際にバタバタして対応が後手にまわり、また、専門家と言われる業者が有事の際に沢山登場して、彼らを複数起用して高いコンサルフィーをとられ食い物にされないよう心掛けが肝要です。

では企業は何をやるべきかということですが、同意なき買収がなされた場合には、買収対象会社が行うプロセスは企業買収指針にしっかりと書かれています。まずはそれに沿って、取締役会では何をすべきか、また、特にキーとなる社外取締役は何をすべきかを社内できっちりとポイントを整理して、全取締役で共有しておくことが大事です。このあたりは以前に以下の記事でも書いておりますので、ご覧頂ければと思います。

同意なき買収が開始された場合には、現実には専門家やコンサルを起用することは必須です。けど、何も知らないで起用するとコンサルらの言うがままになり、仮に買収提案を退けたとしても、膨大なコンサル費用がかかり業績に大きなマイナスインパクトということにもなりかねません。

あくまで業者を起用するのは会社であり、会社の専門部署や関係部門が対応の大きな幹をしっかりと把握して、その上で枝葉の細かいところを業者に任せて常に会社サイドが全体をハンドリングするというスタンスが大事です。