社会福祉士 第35回過去問解説 福祉行財政と福祉計画 問題42~48 (のんびり社会福祉士講座1224更新)


問題42  次のうち、厚生労働省に設置されているものについて、正しいものを1つ選びなさい。

1  子ども・子育て会議
2  障害者政策委員会
3  中央防災会議
4  孤独・孤立対策推進会議
5  社会保障審議会 ※正解
【解説】
選択肢にあるような会議は、いわゆる審議会と言って、国(地方地自体も一緒です)が政策を立案するにあたって、専門家に意見を聞く、難しく言うと諮問する会議になります。まずは選択肢の会議そのものがあるかという点で言うと、調べましたが全ての会議は存在します。次に厚生労働省以外に、どの省庁に会議が設置されているかという点で、気にすると、あとは内閣府です。内閣府は内閣総理大臣のもとにおかれて、特に政策的に重要な内容や、人権、複数の省庁にまたがる事項(政策調整)に関するを管轄しているとイメージしてください。そのため1~4は全て内閣府に設置されています。それぞれ政策に紐づく法律がありますが、社会福祉士試験ではそこまで出題されていないように思います。
 1の子ども・子育ても厚生労働省が中心でしょうが、企業の取り組みは経済産業省が関係するでしょうし、特に少子化が進む中では重要な政策のひとつになります。✕
 2の障害者政策についても、バリアフリーなどは国土交通省も関係します。
 3の防災こそ、多くの省庁にまたがると思います。✕
 4の孤独・孤立対策も厚生労働省だけでなく、文部科学省にとっても大きな問題だと思います。✕
 5の社会保障審議会は、もとは社会保障制度審議会で1948年から設置された歴史ある審議会です。そのもとにいろいろな部会があり、厚生労働大臣の諮問に応じて、社会保障制度の横断的な基本事項などを調査審議する会議です。〇

問題43  次のうち、福祉行政における、法に規定された都道府県知事の役割として、正しいものを1つ選びなさい。

1  介護保険法に規定される居宅介護サービス費の請求に関し不正があったときの指定居宅サービス事業者の指定の取消し又は効力の停止 ※正解
2  老人福祉法に規定される養護老人ホームの入所の措置
3  子ども・子育て支援法に規定される地域子ども・子育て支援事業に要する費用の支弁
4  社会福祉法に規定される共同募金事業の実施
5  「障害者総合支援法」に規定される自立支援給付の総合的かつ計画的な実施
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
【解説】
少しまわりくどい問題です。選択肢のポイントを書き換えて、判断していく必要があります。
1、居宅介護サービス指定権者は誰か?取消や停止をすることができるのは指定権者のみとなります。➡都道府県。〇
2、養護老人ホームの措置権者は誰か?➡市町村。✕
3、費用の支弁(支払いのこと)をするということは、地域子ども・子育て支援事業を実施するのが誰か?そもそも地域子ども・子育て支援事業とは何か?➡市町村が行う、保育所ではないいろんな子育て支援事業。✕
4、共同募金事業の実施者は誰か?➡社会福祉法人(各都道府県)共同募金会
5、自立支援給付は誰が実施するのか?➡市町村。✕
 以上のようにいったん選択肢が問いたいことを翻訳します。
あわせて、行政的な措置や実施する主体は、都道府県と市町村が主になります。国の仕事もありますが、数は少ないです。
 市町村と都道府県の事務の違いを押さえておくと、実際に覚えていない事業であっても回答できる場合があります。
 市町村…直接市民にサービスが支給される。
 都道府県…入所施設など建物系、人材確保や研修系。後方支援や環境を整えるものが多いです。

問題44  「令和4年版地方財政白書」(総務省)に示された民生費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  民生費の歳出純計決算額の累計額を比べると、都道府県は市町村より多い。
2  民生費の目的別歳出の割合は、都道府県では生活保護費が最も高い。
3  民生費の目的別歳出の割合は、市町村では児童福祉費が最も高い。※正解
4  民生費の性質別歳出の割合は、都道府県では人件費が最も高い。
5  民生費の性質別歳出の割合は、市町村では補助費等が最も高い。
【解説】
歳出歳入は行政用語なので、歳出➡支出、歳入➡収入と捉えて問題を解きましょう。歳出については、事業名とペアにして覚えるといいです。
1、市町村が民生費が多い。児童手当です。✕
2、生活保護費は全国統一で生活保護法に基づく事務になり、国が3/4、地方自治体が1/4です。また、生活保護の実施期間は市などの福祉事務所ですし、都道府県が直接、生活保護の実施機関になっているのは郡部福祉事務所だけですので、最も高いということはないです。✕
3、市町村は児童手当です。これが子育て世帯全体に給付するため、金額が大きくなります。〇
4、国でも市町村でも人件費の割合が最も高いと批判されると思います。もし、この選択肢が正解ならどうなるのかという想定をすると選択肢の吟味に役立つと思います。✕
5、補助費は実費に対して、いくらかの割合を支給するものになり、多くのいろいろな補助金がありますが、建物に対する補助金の額が大きいです。市町村は補助する側というより、事業実施をする側が多いです。補助金は国や都道府県が実施する側になることが多いです。✕

問題45  社会福祉に係る法定の機関・施設の設置に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  都道府県は、地域包括支援センターを設置しなければならない。
2  指定都市(政令指定都市)は、児童相談所を設置しなければならない。※正解
3  中核市は、精神保健福祉センターを設置しなければならない。
4  市は、知的障害者更生相談所を設置しなければならない。
5  町村は、福祉事務所を設置しなければならない。
【解説】
 機関の設置についてのイメージを持つと理解しやすいと思います。
 市町村…身近な施設
 都道府県…専門的な施設、権限が強い施設(児童相談所の一時保護、措置など)
 これらの間に、選択肢の地方自治体が入ってきます。
 町村 ➡市町村 ➡市(中核市) ➡市(政令指定都市) ➡都道府県
1、地域包括支援センターは民間でも設置可能、人口2~3万人にあたり1か所が目安。✕
2、児童相談所は都道府県、政令指定都市に設置義務。大阪では大阪府と大阪市、堺市にそれぞれ独自の児童相談所(名称は児童相談所とはなっていませんが)を設置しています。最近のトピックとしては、特別区と中核市は設置できる(※しなくてもいい)となったので、東京の特別区は独自に設置する区が何か所かあるのと、中核市でも徐々に設置していっています。中核市は人口20万人以上の市がなることができます。〇
3、精神保健福祉センターは精神障害者保健福祉手帳の等級判定をするなど、専門的で権限のある施設です。✕
4、知的障害者更生相談所は専門的な施設です。✕
5、町村は福祉事務所は設置できるです。そのため福祉事務所がないので、生活保護については、都道府県が代わりに福祉事務所を設置しています。✕

問題46 次のうち、都道府県地域福祉支援計画に関して社会福祉法に明記されている事項として、正しいものを2つ選びなさい。

1  社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項 ※正解
2  重層的支援体制整備事業の提供体制に関する事項
3  地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
4  福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項 ※正解
5  厚生労働大臣が指定する福利厚生センターの業務に関する事項
【解説】
都道府県は直接市民に接する事項は取り扱わないと考えてもらってよいです。直接市民に関わる支援者を支援する立場です。
1、資質向上に関する事項、ひらたくいうと研修です。〇
2、それっぽいですが、重層的支援体制整備事業自体が目指す目標として掲げられていますが、義務ではないので、義務ではないものが社会福祉法に明記されているとは思えません。✕
3、住民の参加の促進に関する事項、直接住民に関することなので、✕
4、基盤整備は〇
5、厚生労働大臣が指定しているので、都道府県のところに明記されているのは不自然です。✕

問題47 次のうち、法律で市町村に策定が義務づけられている福祉に関連する計画として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく高齢者居住安定確保計画
2  健康増進法に基づく市町村健康増進計画
3  自殺対策基本法に基づく市町村自殺対策計画 ※正解
4  再犯の防止等の推進に関する法律に基づく地方再犯防止推進計画
5  成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画
【解説】
福祉に関する計画でのポイントは、市町村か都道府県か?と義務か努力義務か?任意かです。法律的に言うと、義務は「しなければならない」、努力義務は「務める」、任意は「できる」です。また、いきなり義務になる計画よりかは、任意➡努力義務➡義務という流れがあったり、また緊急で対応しないといけない場合は、いきなり義務になったりします。
1、は「できる」の任意です。✕
2、は「務める」の努力義務です。✕
3、は2006年自殺対策基本法ができ、2016年に市町村自殺対策計画は義務化されました。〇
4、は「務める」の努力義務です。✕
5、は「務める」の努力義務です。✕
ざっと書きましたが市町村によって、濃淡があるような事象については、具体的な努力義務になって、自殺のようなどこの地域であっても起こりうる事象は義務を定めて、全国的に取り組むという理解でいいと思います。 

問題48 次のうち、法律に基づき、福祉計画で定める事項として、正しいものを1つ選びなさい。

1  都道府県介護保険事業支援計画における地域支援事業の見込み量
2  都道府県障害者計画における指定障害者支援施設の必要入所定員総数 
3  市町村子ども・子育て支援事業計画における地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保及び資質の向上のために講ずる措置に関する事項
4  市町村障害福祉計画における障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に関する事項 ※正解
5  市町村老人福祉計画における老人福祉施設の整備及び老人福祉施設相互間の連携のために講ずる措置に関する事項
【解説】
市町村…直接市民にサービスが支給される。
 都道府県…入所施設など建物系、人材確保や研修系。後方支援や環境を整える。
 以上を基本に、選択肢をみていきます。
1、地域支援事業は直接市民へのサービスになるので、市町村です。✕
2、市町村と都道府県のひっかけだけでなく、「障害者計画」と「障害者福祉計画」のひっかけがあります。障害者と計画の間に「福祉」が入るだけでちょっと意味合いが変わってきます。障害者計画は中長期的な計画になり、具体的なサービスや入所施設の定員総数などは「障害者福祉計画」で定めます。✕
3、人材確保、研修は都道府県になります。✕
4、直接市民サービスの提供に関することなので市町村です。〇
5、施設の整備は都道府県。✕

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