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健康マインド(謳われた明治生まれの女性❗)「智恵子抄」③

映画で智恵子を演じた女優は、原節子・岩下志麻です。
高村光太郎役は山村聰・丹波哲郎ですね。

1967年公開 中村登監督作品

高村光太郎の(智恵子抄)に加えて、佐藤春夫の(小説智恵子抄)を下敷きにしています。
(智恵子抄)は智恵子が自失してから光太郎が謳った作品ですので、光太郎に出会う前の智恵子は映画やドラマで観ないと判りにくいですよね。
裕福な酒蔵に生まれて、当時の女性としては最高の教育を受け、西洋画に魅せられて夢を描いていたのに、父親の死や実家の破産で経済的に困窮したなかでの光太郎との同棲❗
(統合失調症)の病名もない頃の精神の衰弱、自殺未遂。

(光太郎の愛情は智恵子の救いにならなかったのか❓)これが疑問ですよね。
あれだけの言葉と愛情を与えられたから、肺結核で病死するまで命を紡いでいられたのでしょうか❓

光太郎の愛情は負担にはならなかったのでしょうか❓
今となっては、判らない事も多いですが、高村光太郎にとって智恵子は唯一無二の創作の泉だった事は確かです。
高村光太郎も智恵子と同じ肺結核で亡くなりますが、大東亜戦争時に戦争協力詩を量産した事を自責して隠遁生活を送ったとの事ですので、智恵子亡き後創作の泉は枯渇したのでしょうね。

智恵子と光太郎

私には高村光太郎は智恵子を謳う歌人としての存在です。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉(のど)に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓(さんてん)でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

このレモン哀歌の二人はあまりに純粋な存在です。


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