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私の自慢の父ちゃん!

父親の、11年前からあるインスタグラムのアカウントを、たまたま見つけた。投稿内容は、飼い猫と、父の趣味の野球やアイドルなどの投稿と、私たち子供の、姉妹の成長を喜ぶ投稿だった。父親は2年前、ステージ4の癌が見つかってから今まで、転移したのを見つけは抗がん剤治療、手術を繰り返し、つい一昨日、心臓近くの肺にも転移していることが分かったらしい。心臓近くとなると、手術で摘出することが難しく、抗がん剤治療になる。

私にとっての「父親」像は、よく分からないものだった。家にいるときはいつも肩身が狭そうで、休日は外出してあまり家に居ない印象だった。「父親」という肩書きをなしにすると、「よく分からない人間」だった。

だが、この11年間を、父親のインスタグラムの投稿で振り返ってみてみると、父親はとても愛情深い人だったのかもしれない、と思った。

私が写っている投稿は、公園に行って遊具で遊んでいたり、音楽にのって踊っていたり。いつかの、私が贈った「かたたたきけん」。初めてのボーリング、初めての雪遊び、初めての補助輪なし自転車、初めての徒競走の一等賞、初めての野球観戦、初めてのちょうちょ結び。

投稿に添えてあった文章は、
「長女と初めてのアイドルのライブ。一生の記憶に残るといいな」
「(肩たたき券を)貰ったことも嬉しいけど、俺の字の下手さが似なくて良かった」
「どうか長女が、クラリネットと漫画に没頭しすぎませんように」

すべてがすべて、成長を喜ぶひとことが添えられている訳ではないけれど、それでも十分、私たちを愛してくれていたのだと、父親は「父親」だったのだと、やっと気づかされた。

父ちゃん、私覚えてるで。大阪へ高速乗って、ピンクの軽走らせて、コンビニの鮭おにぎり食べながら、ももクロのライブ連れてってくれたよなぁ。

野球観戦も、ルールとかなんも分からんくて、野球そっちのけで、妹と一緒におやつとゲームに一生懸命だった。

庭でプールしてくれたときも、暑い中ひとりでフレームプール膨らませて、ベランダからバケツに入れた水ひっくり返して私たちに思いっきり被せて、涼ませてくれたなぁ。

休日は家族みんなで髪切りに行って、散髪の待ち時間は近所の公園のブランコソムリエして、帰りは大体イオンか公園寄ってくれてたよなぁ。

父ちゃんは、父ちゃんやった。中学校くらいから、話す機会が減ってきて、父ちゃんという人間の形が、よく分からなくなってた。

父ちゃんは、実家に帰るたび、なんだか小さくなっていくように感じる。
もっと早く気づくべきだった。親不孝な娘で、ごめんなさい。

私は、あなたという人間を、あなたの人生を心から尊敬しています。毎日、家族のために働いてくれてありがとう。幼稚園から高校まで、学校に通わせてくれてありがとう。私の父親でいてくれてありがとう。

多分、父ちゃんはこの文章を読んだら、鼻で笑って余計なひとことを言うのだろうけれど、ただ、どこかに残しておきたかった。

治療が終わったら、山登りに行こう。体力には自信がないけど、頑張ってついていくよ。

父ちゃんはいつも、歩くのが速いから。父ちゃんの背中は、私が追いかける背中やで。その背中は、私にとっては、いつまでも目の前にあって欲しい背中やで。

生きてください。絶対に生きてください。癌なんかに負けないでください。

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