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転売で儲けるはリスクが高し

 転売行為というものが一つの社会現象となり、人気のある商品は販売日には各種オークションサイトやオンラインネットショップには、価格を高くした形で販売しております。

 今回の記事はその転売行為がいいか悪いかを問うものではありません。もしも、お小遣い稼ぎに転売をしたいな~と考えられている方や、すでに少しだけ始めている方向けへの注意喚起記事となっております。簡単そうに見える転売商法の落とし穴をご紹介していきたいなと考えておりますので、ご覧ください。最後には転売がなぜダメとされているのかの理由もお伝えしますね。

①そもそも、転売で損をするとは?

 転売行為って結局定価で買って、高値で販売するだけだから損をすることなんてなくない? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこには大きな落とし穴があることを見落としていませんか? それは、売れないということです。買ってみたはいいものの……なぜか、売れない。そして残るは大量の在庫のみ……。
 転売行為はそもそも物を仕入れるところから始まりますので、物を仕入れるためには少なからず資金がかかってきます。そこが、無駄になるだけでなく、売れなければ自宅には在庫が、そして、そもそも仕入れるためにかけた時間や販売するためにパソコンの前に座っていた時間など、もったいない時間が多くあります。
 転売そのものは必ずしも儲かるわけではないということを理解する必要性があります。いやいや、何を当たり前のことを、と思われているかもしれませんが、これからお話しすることはこの内容が前提と立っていること、そのこの前提があることを知っているはずなのに、まるで忘れたかのような人が多く損をしているからあえて説明をさせていただきました。

②商品知識


 とにかく人気のある商品、今ブームの商品を仕入れればいいだけの話ではないのか……と思われるかもしれませんが、実はそのように甘く見ていると大きな落とし穴があります。
 例えば、今『コーヒー豆』がすごく熱い!! とSNSやTVで謳っていたとしましょう。上記の法則でいくのであれば、とにかくコーヒー豆を仕入れればいいじゃん、と思われるかもしれません。ですが、もしもはやっているのが『コーヒー豆』の特定の種であったならば……? 皆さんもご存知の通り、コーヒーには多くの種類が存在します。キリマンジャロ・ブルーマウンテン・コナ……そのほかに希少種とされるコピ・ルアク等々。また、同じ種であったとしても等級というものが存在し、本当に人気なのは等級が高いものであったら? さらにはコーヒー豆の等級というのは国によって表し方が違います。さらには、もしもシーズンによって変わってくるのであれば?
 ただ、『コーヒー豆』一つをとってもこれだけの情報量が少なくとも必要となってきます。人気だ、さっそく買おう!! としてそれが成り立たないのはこのようにきちんと情報を精査する必要性があり、そうしなければ大量の在庫を抱えることになるからです。
 実例を挙げていきましょう。今現在(2022年4月)では少し人気も落ち着いてきましたが、それでも強い人気を誇るポケモンカード。昨今ポケモンカードの新商品が販売される度に各種ショップから商品が消えていき転売されていました。そんな中、2021年7月9日に販売されました『ファミリーポケカ』も多く転売されているものを当日確認できました。しかし……こちらの商品、タイトルに『ファミリー』とついている通り家族でできる、ポケカデビューにピッタリという謳い文句でした。つまり、従来からのファンはあまりこの商品に興味関心は持たず、余っていたら買おうかなという程度の認識でした。収録されているカードも強力なものは少なかったということもあります。その結果、すぐに転売価格は暴落。誰も高い値段で買おうとしませんから。さらに、そもそも転売が成り立つのはショップにないからという部分も。従来のファンと転売を行う人たちとが合わさって市場からなくなるケースが多くあるわけですから、転売を行う者たちだけでは到底ショップから消え去るということはありません。ただ、『ポケモンカード』だから、という安易な考えを行ったばかりに商品知識がないあまり、大損をかいてしまうということがあるわけです。

③商品と旬


 少し大量に仕入れてしまったけど、まぁゆっくり販売させていけばいいか、そんな風に考えているとここにも罠があります。
 例です。上記の『コーヒー豆』の転売を引き続き行おうとしましょう。実は『コーヒー豆』は栽培をしたその瞬間から酸化を始めていき、あまりにも長期にわたり放置されていると風味が下がってしまいます。ですので、多くのコーヒーでは開封後はお早めにお飲みくださいという注釈があるんです。そんな、劣化した『コーヒー豆』を市場より高い値段で購入しようと思う方がいらっしゃるでしょうか? いませんよね。正規の値段で購入したいです。
 実例をあげましょう。2017年4月カルビーから販売される人気のお菓子『ピザポテト』が販売中止となりました。昨年の台風によるジャガイモ不足が主な原因です。そのニュースが飛び込むと同時に、転売行為が多く見受けられましたが、6月カルビーから販売を再開する旨が発表されました。つまり、約一か月の間は転売で利益を得た方もいらっしゃるでしょうが、それ以降は全く見向きもされないという事態に……。さらには、お菓子ですから、避けきれないのが賞味期限。賞味期限切れのお菓子。もはや適正価格どころか格安で売られていたとしてもご遠慮願いたいですよね。
 このように、一部の商品は販売期間を逃してしまうと一気に売れなくなってしまうものです。まぁ、深く考えるまでもなくクリスマスを超えてしまったケーキは値崩れしますし、閑散期のホテルや旅館が価格を抑えて提供していることからも、転売に限らずどんなものにでも販売時期というものは存在するということです。

④転売と情報戦

 転売それはすなわち情報戦です。どんな人でも特定のジャンルを全て知っているということはあり得ません。ですので、そこで重要になってくるのが情報です。
 またしても『コーヒー豆』を例にしてみましょうか。例えばこのような噂がSNSで流れたとしましょう。今年の冷夏で来年度の栽培が少なくなるかもと……。もしくは、『コーヒー豆』によって健康になりうるある成分が新たに発見されたと。はい、その瞬間からこの情報を得た人物は購入を焦ろうとしたりため込もうしたり、転売しようとしたりとするかもしれませんが……もしもこの情報が完全なデマ、又は勘違いであったとしたら? はい、この瞬間にもまた値段が崩れてしまいますよね。
 実例です。2011年に販売されたカードゲームの始祖として名高いマジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)の拡張パック(新しいカードの入った新商品)『ドラゴンの迷路』が販売されました。そして時をを超えて2021年、Twitterにてこのような文言が。
『は?転売ヤーがドラゴンの迷路買い占めに走ってんの??? 今店舗に残ってるドラゴンの迷路が枯れたらプレイヤーもコレクターも困って転売ヤーが儲かるだけじゃん。 店舗はドラゴンの迷路に購入制限を設けるべきだろ』(一部絵文字省略)
投稿主によると『ドラゴンの迷路』が店舗から消えておりどうやら転売されているとのこと。それを受けリプライ欄や引用リツイートとして同じく怒りの旨をツイートしたり、残念がるツイートをしたりする人が……。しかし、これらの情報、全て『嘘』だったのです。
 実は『ドラゴンの迷路』は収録されているカードの使い道が薄く、福袋には毎年入れられるほどの在庫があまった不人気商品でした。しかし、真相のほどはわかりませんが、ネットの情報に踊らされてしまった一部の方が真に受けてしまいネットで高値で転売をしようとして……残ったのは大量の在庫でした。
 こちらの事例に関しまして罠にはめようとする意志を感じられるものでしたが、しかしながら恣意的なもの、恣意的じゃないものにかかわらずこのようなリスクを背負う必要性があるわけです。

⑤法律


 そもそも転売行為がグレーとされている理由として法律があります。皆様ご存知の通り古物店というものは古物商許可を申請する必要性があります。もちろん、不必要になった商品をリサイクルショップに売るだけであるのであれば、問題ないのですが……商品を仕入れて売る、という転売行為に関しては許可が原則必要となってきます。もちろん、それらを全て取り締まれるほど警察も万能ではありませんが、いつかピンポンとインターホンが鳴らされ、気が付くと、3年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは両方が課されてしまうかもしれません。
 また、チケットの転売行為通称『ダフ屋』はチケット不正転売禁止法として法整備もされています。2019年に施行され、『嵐』のコンサートチケットを転売していた保育士の女性が逮捕されましたよね。
 それだけではありません。日本には一定以上の所得があった場合は確定申告を行い税を納めなければなりません。しかし、申告漏れをした場合は、追徴課税が課されることも。国税庁は転売を行い所得を行っているものに対しても追徴を行うことも公表されています。ハッキリ言いましょう。追徴課税はかなり高額です。下手をすれば利益の多くを失うどころかマイナスになってしまうことでしょう。相手は国です。逃げることはできません。これは、個人的感情、モラルの問題ではなく日本社会における決まりです。

⑥利益について

 さて、ここからは計算の問題です。
例題:ある商品Aをヤフオクにて転売するとします。ヤフオクの手数料は公式サイト記載の非プレミアム会員の出品者が落札価格の10%とします。また、送料は一律700円とします。
 商品Aを1万円で10個仕入れました。これを倍の価格2万円で転売したとします。その結果の利益は
式:【20000ー10000ー(20000×0.1)ー700】×10=73000

となります。7万3千円、いいお小遣いじゃん!!と思われるかもしれませんが、計算外として仕入れ時にかかる移動費(ガソリン代や電車代)やネットでの販売ですので電気代、なにより時間を使います。さらには、前述通り売れ残るリスクもあります。もしも、1個でも売れ残ると、55700円、5個売れ残ってしまった時点で利益はマイナスです。4個でも3800円ですから……、まぁもろもろ含めるとこの時点でマイナスでしょうか。
 この計算式を見た受えで、不確実性の高い73000円の利益って魅力的に見えますでしょうか?
 もう一度聞きます。これら、述べました全てのリスクを背負ってまでの7万円の利益……本当に魅力的に見えるでしょうか? ご慎重に判断をしていただくことを願います。

⑦結び:転売がなぜダメとされているのか。


 転売行為は結局消費者のもとにたどり着くからいいじゃないか!!   本当に欲しい人がお金を多く払ったとしても手に入れられる、こちらの方が健全だ! と主張される方もいらっしゃるかもしれません。ですが、それは大きな間違いです。そもそもが古物商としての法律に違反しているという点もですが、業界としてみても転売を行うことで発生するマイナスが看過できないところまで来ています。
 例えばとある業界の商品を2万円まで使おうと考えている人がいたとして、適正価格で商品を購入できればその他付属品にお金を使うことが出来ますよね。その人気商品単体だけで完結しているように思えて、実はその商品をよりよくするためには付属となるものも集めたいとなる人も。しかし、2万円という縛りの中転売価格から購入するとそういった商品を購入できなくなります。つまり、企業側としては2万円まるまる入るところが、マイナス何千円となるわけですし、それが一人二人ではなく何百、何千といるのであればその経済的損失は大きなものになりますよね。こう言った付属品を購入を転売される方が補填されるのでしょうか? 決してそうとは言えないでしょう。
 さらには、この2万円には消費税などの税も加味されてのもの。しかし、転売が絡むことで正常に動くはずであった税収入が幾分か減ってしまいます。つまるところ、これは国家としての損失にもつながりますので、いやホビー商品、ブランド商品に興味ないし、という方にとっても無視できるものではないですよね。
そして、ある商品を追いかけていた人が適正価格で購入できなくなり、ついていけなくなれば、離れて行ってしまいます。そうすると先の付属品の購入はなくなりますし、今後人気が落ち着いたり供給が増えた際にその人達の分の損失は高くなりますよね。そこを加味したうえで、私たちは問題ない。悪ではないといえますでしょうか?
 ついでに言えば昨今の感染症問題で一時期マスクの高額転売やアルコールの高額転売が話題になりました。健康被害にかかわるものにまで手をだし、『本当に欲しい人たちのもとに届ける仕事!』と胸を張って言えますでしょうか。私はきっぱりとNOを突きつけたいと思います。
 また、昨今では『転売』ではなく『せどり』と名乗っている方もいますが、本質的には変わりませんし、仮に違いを求めた場合は『せどり』はいわば発掘的な役割があります。古書店などで眠っている、価値が間違われていたものや、実は一部の界隈で人気があるにもかかわらず、それが見つけられていないが為に埋もれていた商品をマニアたちのもとに届けることが出来る、というのであれば『本当に欲しい人たちのもとに届ける仕事!』といえるでしょう。
厳しい意見を言いましたが、私が言いたいのは一つだけ。転売で楽して稼ごうとすると痛い目を見る確率が高い!!これにつきます。



 最後に調べてほしいことや気になること等、記事にしてもらいたい内容などがありましたら椿ツバサまでご連絡いただければ幸いです。ネタを募集しております。
 それではまた、別の記事でお会いいたしましょう。

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