Mの話

これは俺が中2の時の話で、勿論昭和5X年の話である。

うちのクラスにMと言う男がいた。
割といじめられてる側の人だった。

その頃、うちの市内で放火が頻発していた。
同時期にMが葬りがよく、クラスの何人かを連れて奢っていた。
中学生の奢りだから、駄菓子屋やゲーセン程度だった。
中学生は喫茶店は禁止だったし、飲酒なんかは誘われた面子見てもありえんてぃって感じだった。

ある日、授業中に担任と生活指導の教師が、急に現れた。何の授業かは覚えてないが、担任の受け持ち科目では無かったのは確かである。
そして、その場からMが呼び出された。
そして、そのままMは教室には戻って来なかった。
翌日、Mの姿は教室に無かった。
と言うより、それからもうMは登校して来なかったのである。

どうやらその当時の市内での放火犯が、Mだったらしい。単独犯かどうかは分からないが、少なくともうちのクラスではMだけが犯行に関与していた。
盗みに入って、そのまま放火していたらしい。
だからMの羽振りがよく、奢っていられたのだろう。
噂では、Mはそのまま少年院送りになったらしい。
中学卒業までに戻って来なかったし、その後も地元での目撃談は皆無である。

この事件で得したのは、Mから奢ってもらってた人たちである。
彼らは勿論盗んだ金とは知らなかっただろうから、善意の第三者ではある。
でもあいつら得したよな、とはみんなで話していた。

Mがまだ存命か鬼籍に入ってるか、それは分からない。
と言うより、教室から連れ出されて以降の彼の目撃談は、皆無だから。
ま、俺の知り合いが目撃したり話を耳にしてないだけなんだろうね。

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