WS-111⃣

吉橋通夫「どろん」 芝中の過去問。
 
問一 語彙。
A    「船/舟をこぐ」=居眠りをする。
B    「清水の舞台から飛び降りる」=思い切る。大きな決断をする。
C    「嘘八百」=多くの嘘。全くのでたらめ。

問二 説明選択。易問。比喩の意味を読み取る。線①の主語は親方で、「仁王さま<みたいに>」と喩えられている。親方が喩えられているのだから、親方のセリフや行動が根拠となる。「仁王」は金剛力士。寺門の左右にあって、その忿怒の形相で仏敵を払う守護神。ゆえに正義と(悪人にとっては)恐怖、また力を表す。親方の行動としてL26「答えられずに、顔をそむけたとたん、平手が、ほおにとんできた」とあり、発言としてL29「足腰立たんようにしてやる」というセリフがある。さらにL54「頭の先から足の先まで、レンガと粘土まみれになれ!」というセリフからドジ吉をL78「まっとうな」人間に更生させようとしていることが分かる。
ア   × 親方の「怒り」はドジ吉が「裏切ろうとした」からではない。
イ   × ドジ吉の「卑怯さを悲しく思っている」場面ではない。
ウ   ○
エ   × 「お花のため」ではなく、主にドジ吉のため。
オ   × 「警察が来るまで」に限られないし、捕まえてほしい訳でもない。

問三 説明抜き出し。対比。設問文の「ぬすっと」がキーワード。また「どのような人間」で問われているので「人間」もキーワードにできると解きやすい。具体的とあることに注意。線部内の指示語「そんなもん」はL44「官軍と幕府軍のいくさで、二親をなくし、屋台のだんごや、畑の大根なんかをぬすんで生きのびたんや」という親方を指す。親方は(生きるために)仕方のない状況において一時的に盗みをしており、ドジ吉はこれを「ぬすっと」とは言えないと思っている。親方と対比されるのはドジ吉であり、ドジ吉は自分自身を「ぬすっと」だと思っている。「ぬすっと」に関連する語としてL76「かすめとって」があり、これを含むL75「親方や花ちゃんの気持ちはうれしい。<でも>自分は、それに甘えられる人間ではない。物心ついたときから、人様の物をかすめとってきたのだ。」から抜き出す。

問四 理由抜き出し。問三と関連。親方の説得に対し「け、けど……」と言ってしまうドジ吉のためらいの理由を探す。L56のセリフ「むりや……おらにはできひん(=できない)」を受けているので、これをキーワードに本文を読むと、L78に「でも、できることなら、まっとうな暮らしをしたい。ただ、自分にそれができるのか、まったく自信がない」という表現が見つかる。「自信がない」から「ためらっている」という因果関係。

問五 説明抜き出し。線部の気持ちは「するどい目」という様子から、ドジ吉に対して厳しいもの(マイナス側)になっている。この時、巡査はドジ吉を捕まえようとしている。これが変化するので、変化後の気持ちはプラスで、捕まえる気がなくなっているはず。巡査の気持ちは「目」に表れることになるので「巡査」、「目」をキーワードに読み進める。また巡査の気持ちの対象がドジ吉であることもヒントになる。L183「巡査が出ていく」とあるので、この前までが探索範囲。変化後はL177「巡査の目に、やわらかい光がやどった。」から始まり、ここから抜き出せる。

問六 理由選択。問五と関連。「誰の顔も見られず」とあるので、相手がいる。ゆえにイは外す。ここで顔を見られない相手は花ちゃんや親方、お上さんなので相手が巡査になっているウも外れる。L119~の内容で自らの素性がバレ、L125で「―もう、終わりや……。」と思っているのでエが選ばれる。またL150~の内容で花ちゃんにかばわれていることが分かるのでオ。線部の「うなだれて」という表現から気持ちを推定しても良い。
ア   × 「みっともなかった」原因は、「年下の花ちゃんに気を使わせていること」ではない。
イ   × 対象が自分になっている。
ウ   × 対象が巡査になっている。
エ   ○
オ   ○
カ   × 時間の誤り。「親方に一人前の職人になると約束」するのはこの後。

問七 説明抜き出し。13字指定。「どんな存在」と問われているし、ドジ吉にとっての「花ちゃん」の言い換えを探すのだから、文末は「存在」ないし名詞。線部内の「勇気」「どんぶりばち」「いっぱい」がキーワード。L62の親方のセリフ「正吉、勇気を出せ。何も清水の舞台から飛び降りろとは言わん。どんぶりばち いっぱいの勇気をふりおこしてみろ。いっしょにささえてくれる者が、きっとおる」から抜き出す。

問八 ⑩心情記述。70~80字指定。心情複数パターン。設問文にある通り「正吉」に呼び名が変わっていることが2つ目の気持ちのヒントになる。「頭を下げた」という動作から一つ目の気持ちを固定し、それに理由付けをする形で考えるか、心情変化の型を用いて解くこともできる。
<「ドジ吉」という呼び名の意味/変化前/背景>
L148「お目見得盗をたくらんでいたスリの少年」
→ドジ吉は元スリであった
 ※内容が<背景>と重複するのでいずれかに配点する。
<気持ち①/「頭を下げた」にあらわれた心情/変化後①>
 L203「おおきに……ありがとうございました」
→感謝②
<理由/きっかけ>
L137「この者をかばわれる」
L148「まっとうな人間に育てたい」
→自分をかばってくれた/自分の更生を応援してくれる/自分をまっとうな人間に育てようとしてくれる②
<背景>
 L123「巡査が親方に説明する」
→自分の素性を知ったにも関わらず/自分が元スリだと分かったのに②
<気持ち②/変化後②>
 決心/決意②
<「決意」の内容/「正吉」という呼び名の意味>
 L210「あやまちを償う勇気を、花ちゃんから、どんぶりばちいっぱいもらったような気がします」
→これから人生をやり直す/過ちを償おうと思う/真人間になろうと思う/更生しようとする/レンガ職人になろうと思う②
A.素性を知ったにも関わらず、自分のことをかばってくれた親方たちに感謝する気持ち。またこれから真人間になろうと決心する気持ち。/スリであった「ドジ吉」から、レンガ職人「正吉」に生まれかわろうと決意すると同時に、足を洗う機会を与えてくれた親方家族のやさしさに心から感謝している。

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