WS-161️⃣

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」から。巣鴨の過去問。香蘭、法政第二、栄光、洗足、甲陽、ラ・サール、愛光などで出題。

問一 ⑥説明記述。指示語の展開。線部延長すると「でも難波さんは、これを単なるネガティブな状況とは受け取りません」となる。指示語「これ」はL7「こうした状況」を指す。L7「はたから考えれば、こうした状況は100パーセントネガティブなものです」と説明されているので、一般的にはマイナス。しかし、難波さんはそうは受け取らない。「こうした状況」は連体詞を伴う指示語なので、指示内容は原則として前にある。よって指示内容はL4「一人暮らしの難波さんがパックの中身を知るには、基本的に開封してみるしかありません」という状況を指す。字数制限が厳しいので余計な修飾語句は削る。
<「これ」の直接的内容>
L4「パックの中身を知るには、基本的に開封してみるしかありません」
→開封するまで、パックの中身が分からない③+③
A.開封するまでパックの中身がわからない(こと。)

問二 理由抜き出し。「何」で問われているので答えは名詞。線部延長すると「<つまり>難波さんは、見えないことに由来する自由度の減少を、ハプニングの増大としてポジティブに解釈しているのです」となる。文頭に要約・まとめの「つまり」があるので前後の内容は同義。また設問文に「難波さんの言葉から」という条件もあるので、L11~14までで探す。
〈抽象〉L15「見えないことに由来する自由度の減少をハプニングの増大としてポジティブに解釈している」
↓                    ↓
〈具体〉L4「パックの中身」がわからない状況をL10「『くじ引き』や『運試し』」をしていると思い、L10「楽しむ」こと
難波さんのセリフL11「残念というのはあるけど、今日は何かなと思って食べたほうが楽しいですよね。心の持って行き方なのかな」とあり、難波さんがL13「楽しめる」のはL12「心の持って行き方」のせい。

問三 理由選択。問二と関連。線部は「最初にこうしたユーモアに触れたとき、私は本当に頭がくらくらするような衝撃を受けてしまいました」とあり、指示語「こうしたユーモア」が指すのは問二で見たL15「見えないことに由来する自由度の減少を、ハプニングの増大としてポジティブに解釈」するL18「ひっくり返し」のこと。具体的にはパスタソースによるL10「運試し」、回転寿司によるL19「ロシアンルーレット」、自動販売機の「おみくじ装置」化など。筆者が「衝撃」を受けた理由は線③直後。接続語「なぜなら」に注目。L37「<なぜなら>、私が思い込んでいた障害者のイメージとあまりにもかけ離れていたから」。線③の「衝撃」を受けた結果、L44「新鮮」に感じていることが分かるので、意味段落(L36~48)を読むと、L44「まず、障害のある人の発言で笑う、という経験が新鮮でした」やL46「見えない人が場を盛り上げ、自分がそれに乗っかるような形になった。その関係が新鮮でした」とあり、筆者の先入観が覆されていることが分かる。
ア   ○
イ   × 「視覚障害者」が「場が暗くならないように気を遣ってくれること」に「驚いた」のではない。
ウ   × 「自分も日常生活の中で今まで以上に楽しむことができる」が根拠なし。
エ   × 「視覚障害者」は「話し上手になる努力をした」ことを知るのはL49「関わりが深く」なってから。

問四 接続語。
A    直後が「木下路徳さん」の具体例なので「たとえば」
B    直前は、L49「視覚障害者で話し上手な人」の話。 B を挟んだ後は、L68「単に見えない人の話の巧さというだけでは説明がつきません」と否定文になっているので、内容が反転。よって逆説の「しかし」。
C    直前の「福祉的な視点」と、直後の「『情報』的な視点」が並立。よって「あるいは」。

問五 説明選択。指示語の展開。線部延長すると「その快感は、(見えない人に限らず、)誰にとっても自信につながるものです」となる。線④の指示語「その快感」は、直接的にはL63「笑いをとることに成功すると、少なくともその一瞬は確実に場を支配することができ」ることを指す。直前の形式段落でL61「ラジオパーソナリティみたいにしゃべれたら、楽しく過ごせるんじゃないか」と喩えられている。これはL55「話術」によってL63「場を支配すること」。この言い換えがイの「言語によってその場の主役になった」。ウで比較の<よりも>が使われているが、本文で比較はなされていないので不適。
ア   × 「人の心まで」が言い過ぎ。L63「少なくとも一瞬は確実に場を支配することができ」る、とあるので、「支配」できるのは「場」に限られる。
イ   ○ 「その場の主役」とあるので適合。
ウ   × 「ラジオの語り<よりも>」とあるが、両者は比較されてはいない。
エ   × 「好意をもたれた」が根拠なし

問六 ⑥理由記述。文末「ものであるから。」指定。線部延長すると「日々の生活の中で出会う思い通りにならない状況や、どうにもならない現実を、難波さんは実際に『運試し』のようなものとして楽しんでいる」となる。「日々の生活の中で出会う思い通りにならない状況」の具体例はL68「パスタソース」のレトルトパックの中身が分からないことや、L19「回転寿司」、L25「自動販売機」など。これらの性質をまとめる。線⑤の「思い通りにならない状況」がL85「困難な状況」と言い換えられている。L89~95の形式段落において前述のL89「レトルトパックや自動販売機」を例に説明しているので、これらの性質を読み取る。
<原因/性質①/見える人にとって>
 L89「均一なレトルトパックや自動販売機のシステムは、言うまでもなく見える人が見える人のために設計したものです」
 →見える人が見える人のために設計したものである③
<結果/性質②/見えない人にとって>
 L90「見えない人を排除しています」
 →見えない人を排除するものである③
A.見える人が見える人のために設計した、見えない人を排除する(ものであるから。)

問七 語彙。「垣間見る」=物のすきまから、こっそりとのぞき見る。また、ちらっと見る。物事の様子などの一端をうかがう。「垣(=家や庭の区画を限るための囲いや仕切り。垣根)の「あいだ」から「見る」ということ。

問八 心情選択。線⑦の直後が指示語なので続けて読む。すなわち「やられた! その手があったか!」という感じ。その 心地よさが笑いの原因でした」となる。線⑦の時の心情がL85「痛快」=L88「心地よさ」。その原因となるL85「彼らのユーモア」とは、具体化すればL81「パスタソースや自動販売機で運試しをする生き方」のこと。これを健常者である筆者は思いつかなかったので「やられた! その手があったか!」と感じている。
ア   × 「どんなに」が強意表現。また「笑うことも忘れないこと」に感心しているのではない。
イ   × 「目の見える自分<よりも>」といった比較はなされていない。
ウ   ○
エ   × 「批判」はしていない。

問九 脱語挿入選択。線部延長すると「健常者がいわば    中身どおりのソースをパスタにかけているかたわらで、/難波さんはそれを遊びのツールとしても捉えている」となり、健常者と難波さんの対比。指示語「それ」が指すのは「パスタソース」。これを難波さんは「遊びのツール」としても捉えるが、健常者はどんな風に捉えるかを読み取る。    には「遊び」と対比的な内容が入る。
ア   × 「これ見よがし」=得意になって人に見せびらかしたり当てつけがましくしたりするさま。
イ   ×
ウ   ×
エ   ○ 

問十 説明選択。本文内容推定。消去法。
ア   × 「健常者はその生活を邪魔しないように」が不適
イ   × 「健常者の理解とは関係なく」が不適
ウ   × 「視覚障害者の『日常』がどのようなものかは関係なく」が不適
エ   ○
 

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