GS-012⃣

森本哲郎「日本語 表と裏」からの出題。

問一 接続語。
ア   直前がL40「九〇%以上の人がみな同じ『中流』階級に属しているなどと思っている国は、他にない」となっており、これに「( ア )、私はこれに異存があるわけではない」が続く。さらにL42「貧富の差がなく、国民の所得が平等に近いということは大いに結構なことである」と続くのだから、「当然に」といったニュアンスの「むろん」を入れる。
イ   L45「各人の意見までが同じでなければならぬという道理はない」のに、L46「同質社会は、とかく考え方までが同じでなければならぬように思い込ませてしまう」と反対になっているので、逆説の「ところが」を入れる。
ウ   直前がL56「日本人にとっては、仲間外れほどつらい仕打ちはない」となっており、L57「( ウ )、仲間外れになるということは、日本人でなくなるような気にさせられることだからである」という理由につながっているので理由導出の「なぜなら」を入れる。
エ   直前のL64「『私が思っていたとおり』という預言者的な」と直後L65「自信に満ちあふれた立場の表明」は類義。よって換言の「つまり」を入れる。
オ   直前のL65「『あなたをはじめ、みんながそう思っているように』『世間一般の人たちが考えているように』自分もそう思う、という意味の『やっぱり』なのだ」が理由。L68「( オ )、マイクを差し出されて意見をただされたときに、ほとんどの人が『やっぱり』をつい連発してしまう」という結果につながるので順接の「だから」を入れる。

問二 語彙。
a     「奇異」=普通とようすが違っていること。不思議なこと。
b     「異存」=反対の意見や、不服な気持ち。異議。
c     「世間体」=世間に対する体裁や見栄。

問三 適文補充選択。線部延長すると「二月の末頃に強い風が吹くと、天気相談所に『この風は春一番か』という問い合わせが殺到するそうだが、それは、【 A 】。」となる。選択肢はすべて理由の文になっているので、「天気相談所に『この風は春一番か』という問い合わせが殺到する」理由を入れる。L16「同じことは『梅雨明け宣言』についてもいえよう」とあり、「梅雨明け」についても「春一番」と同様である。これに関しL17「梅雨が明けたことをわざわざ宣言するというのは、日本人がみなそれを期待しているからなのだ。だからその期待に応えなければならないのである」と説明されており、「期待」という語が二回出てくるのでキーワード。類似表現を探すとL1「日本人の特質は、つねに何かを予想し、予期している」と説明されている。
1    × 「農作物の成長」の話題に繋げる根拠なし。
2    × 「厳しく寒い冬が終わってほしい」という話題に繋げる根拠なし。
3    ○
4    × 「自分の予想の正しさを周囲に認めされたい」とする根拠なし。

問四 適語補充選択。
B    まずL22の接続語<しかし>や列挙構文を表すL22「もうひとつ」によって、文章構造がL4~21とL22~81で分かれていることを確認。L4「このことは、おそらく日本という風土、その自然環境と無関係ではあるまい」から始まっており、ずっと風土的背景が説明されている。
C    線部延長すると、「しかし、『やっぱり』にはもうひとつ、【 C 】的な背景がある」となる。直後が指示語「それ」になっており「【 C 】的背景」を受けている。L23「それは日本の社会が世界でも珍しいほどの同質社会であることだ」となっており、以降は社会的背景の説明である。ちなみにL24「地球上の多くの国々は民族と国民とが必ずしも重なっていない」ことがL25「ソビエトや中国やインドやアメリカ合衆国」といった例を挙げて説明されており、日本の社会と他国の社会が対比的に説明されているので、こちらから逆流してもよい。

問五 説明選択。線部延長すると「日本的な合意というものが、他の国の人々から奇異な目をもって見られているようだが、そのような暗黙の合意が成り立つというのも、この国が同質社会であるゆえだ」となる。指示語「そのような暗黙の合意」で「日本的な合意」を受けているので同意表現。「暗黙の合意」とは「口に出さないで黙っているのに合意できること」。半ば語彙力だけで判定可能。
1    × 「お互いの心の中を予想し合っていること」を「暗黙の合意」と言っているのではない。
2    × 「自分たちがみな平等であると思っていること」を「暗黙の合意」と言っているのではない。
3    × 「多数の意見で物事を決めようとすること」を「暗黙の合意」と言っているのではない。
4    ○

問六 ⑧理由記述。線部延長すると「しかし、同質社会というものは、だからといって、必ずしも手放しで気楽な社会というわけではない」となる。続けてL35「同質社会には同質社会なりの圧力がある」とあり、これが直接的な理由。「同質社会なりの圧力」が説明不足なので展開する。L36「その圧力とは、同じでなければならぬ、ということ」に説明されている。こことL46「同質社会は、とかく考え方まで同じでなければならぬように思い込ませてしまう」が類義表現なので、これ以降に二つ目の理由。結論はL55「仲間外れにされてしまう」から。この言い換えが「白い目で見られる」で、これを含むL54「人並み外れた意見というのは白い目で見られるから」から、その条件が「人並み外れた意見」を言ってしまうこと、言い換えればL48「世間体」を気にしないことだと分かる。厳密には理由が並立しているのではなく、理由①の結果が理由②という構造だが、理解のしやすさを重視する。
<理由①>
L35「同質社会には同質社会なりの圧力があるのだ」
→同質社会なりの圧力があるから
<「同室社会なりの圧力」の説明>
L36「その圧力とは、おなじでなければならぬ、ということ」
→同じでなければならないという圧力
<理由②>
L55「仲間はずれにされてしまう」
→仲間はずれにされる
 ※「白い目で見られる」は同様に配点するが、慣用句なので言い換えるべき。
<条件>
L49「世間体を気にするというのは、自分が人並み外れていはしないかどうか、という臆病なまでの配慮といっていい」
L54「人並み外れた意見というのは白い目で見られるから」
→人並み外れた意見を言うと/世間体を気にしないと
A.同質社会は、各人の意見が同じでなければならないという圧力を生み、人並外れた意見を言えば、仲間はずれにされてしまうから。/仲間はずれにされることを恐れるため、世間体を気にして、同じでなければならないという圧力が同質社会にはあるから。

問七 脱文挿入選択。脱文の内容は「日本の場合は民族と国民とがほぼひとつ」となっており、その文頭が接続語<ところが>なので直前には「日本の場合」と対比となる内容がくる。すなわち「他国の場合」について述べられているはず。また結果として日本の場合は「たいへん気楽な社会」となっており、これと対比となる内容を探しても良い。「民族と国民」という語がL24「地球上の多くの国々は民族と国民とが必ずしも重なっていない」にもある。この段落の最後はL27「民族が異なるということは、言語や宗教や習慣がちがうことであり、したがってそのような社会では人間関係が極めて複雑である」と説明されており、ここまではL24「地球上の多くの国々」の説明。これに対し、続くL30「他国に見られるような民族的な軋轢はこの国にはない」とあり、指示語「この国」が指すのは日本だと分かるので〈 1 〉に入れる。

問八 説明選択。線部④の指示語「この言葉」の内容はL73「『やっぱり』、あるいは『やはり』という慣用語」。これに関してL73「『やっぱり』、あるいは『やはり』という慣用語こそ、何より日本的な性格を正直に告白している言葉」と説明されており、その意味するところは「やっぱり」がL71「世間のみなさんと同じように自分もそう考えます、ということを弁明する強調詞」ということ。すなわち「やはり」の背景に「世間」がいるということ。
1    × 「自分の考えの正しさを周囲の人に訴えたがる日本人の性格」が根拠なし。
2    × 「責任の所在をあいまいにするため」ではないし、「多くの人を漠然と主語にして意見をのべる」わけでもない。
3    ○
4    × 「自分の意見ではなく他人に押し付けられた考えであることを表明している」のではない。

問九 ⑧説明記述。問四と連関。「日本人」が「予想し、予期している」ことの背景を説明する。「背景」という語をキーワードに探す。また論説文で大事なのは最初と最後。今回は最初を見ることで解答要素が見つかる。L22「もうひとつ」という語から、列挙構文だと分かるので、背景は二つ。「風土的背景」及び「社会的背景」のままでは説明にならない。これらを展開した上で、日本人が「予想し、予期している」ものを説明する。
<原因①/背景①/「風土的背景」の説明>
L6「風月はまことに規則正しく循環している」
→四季が規則正しく循環している
<結果①/風土的背景が日本人に与えた影響/日本人が「予想し、予期している」こと①>
 L12「四季が均等に分かたれ、歳月がきわめて規則的にめぐる風土では、何もかもがはっきり見通せる」
→先の気候を見通せる生活を送ってきた/先の気候を予期(予想)する
<原因②/背景②/「社会的背景」の説明>
L23「日本の社会が世界でも珍しいほどの同質社会であることだ」
→日本は同質社会である
<結果②/社会的背景が日本人に与えた影響/日本人が「予想し、予期している」こと②>
L48「世間体を気にするというのは、自分が人並外れていはしないかどうか、という臆病なまでの配慮といっていい」
→自分が人並外れにならないよう、世間の目を気にして生きるようになる/相手の考えを読み取ろうとする/相手の考えを予想(予期)する/世間がどう考えるかを予想(予期)する
A.四季が規則正しく循環しているので、先の気候が見通せる生活を送ってきたことと、同質社会の中で、自分が人並外れにならないよう、世間の目を気にして生きてきたこと。

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