WS-132️⃣

石原千秋「未来形の読書術」からの出題。頌栄ベース。同箇所が清風でも出題。同文章の別の箇所が早稲田、渋渋、海城、品女、獨協埼玉他でも出題されている。

問一 漢字

問二 語彙
a    「趣味が高じる」…「高ずる」は「程度がひどくなる。つのる」という意味。よって「趣味が高じる」は「趣味の程度がひどくなっている」ということ。

b    「ともすると」=どうかすると。場合によっては。

問三 接続語。
1    直前は「見栄を張るのにもいろいろ屁理屈がいる」ことを認めている。直後は「見栄がなくなったら、ぼくは教師としても、研究者としても終わり」なので、L17「専門外の本を買って、自分はこれだけ世界が広いと、自分自身に見栄を張る」。よって前提を受けての逆説になるので、「そうであっても」という意味の「それでも」を入れる。
2    直前でL21「本を借りるときにはそれに名前を書き込む仕組みになっていた」ことが説明され、これは背景に当たる。直後ではL22「手当たり次第に借りまくって、ろくに読みもしないで返却していた」のだから、見栄をはるための行動が書かれている。よって、前述の事柄を受けて、次の事柄を導く「そこで」を入れる。
3    直前は前提となるL39「何かはよくわからない」という内容。直後はL39「実際に読んでもわからないかもしれない」という実際の行動なので順接。「そして」を入れる。
4    直前はL42「こうありたいと願っている未来形の自分」で、直後はL43「いまよりは成長した自分」なので意味内容は同じ。よって要約・まとめの「つまり」を入れる。

問四 説明抜き出し。設問文に「具体的」とあることに注意。線部延長すると「この年になればまさかそんなことはしないが、その代わりに自分自身に見栄を張るようになったわけだ」となる。指示語「そんなこと」が指す内容は、筆者が大学生の頃にしていたL21「分かりもしないギリシャ哲学あたりから手当たり次第に借りまくって、ろくに読みもしないで返却」(具体)することで、「友人」に対しL24「知的な見栄」を張っていたこと(抽象)。L26「この年になればまさかそんなことはしない」とあるので、現在はこれをしない。L26「<その代わりに>自分自身に見栄を張るようになった」のだから、現在は「友人」のような他人ではなく、自分自身に対して見栄を張るようになったということ。キーワードは「見栄」。L18「専門外の本を買って、自分はこれだけ世界が広いと、自分自身に見栄を張るのである」が見つかる。「専門外の本を買って」が具体的行動だが「こと」に繋がらないので、同義表現を別の箇所で探す。L7「それは、自分自身に対する見栄のようなものかもしれない」とあり、指示語「それ」の指す具体的な行動を抜き出す。L1「ぼく自身は、自分に関わりのない世界がこんなにもたくさんあると思いたくないために、いつも必要以上、能力以上の本を買ってしまう」から抜き出す。
 単純に線部の「自分自身に見栄を張る」をキーワードにL7「それは、自分自身に対する見栄のようなものかもしれない」を見つけ、指示語「それ」の指示内容であるL2「いつも必要以上、能力以上の本を買ってしまう」という行動を抜き出す方が早い。

問五 説明選択。実質的には指示語の展開。線②の指示語「そういう『若者』」の内容はL30「精神的な『若者』」であり、彼らはL30「いつもいまの自分に不満を抱えている。だから、理想の自分へ『成長』しようともがく」。これを受けて、線②「『大人』はそういう『若者』を温かく見守るものだ」と結論づけている。線②の「見守る」という語がア、ウには残っているが、イ、エでは言い換えに失敗しているのでこの時点で二択。
ア   ○
イ   × 「精神的な『老人』」は指示語「そういう『若者』」の指示内容ではない。よって、「精神的な『老人』」に対して「大人は後に続く者たちを大切にするものだ」とはならない。
ウ   × L29「現実にへたりこんだ精神的な『老人』」はL29「いまの自分に満足している若者」で線②「そういう『若者』」とは異なる。
エ   × 「もがく若者」をみっともないとは評価していない。また「その若さをうらやみ」も根拠なし。「無条件で」も強意表現なので言い過ぎ。

問六 説明選択。線部延長すると「だからこそ、『本を読みなさい』という言葉はいかにも学校空間的なお説教に聞こえてしまうことにもなる」となる。「学校空間」をキーワードに読み進めるとL59「しかし、読む本を決めて読書を強制されると、あなたはイライラするだろう。それは、読む本を決めて読書を強制することは、こういう自分になりなさいと未来形のあなたを学校空間が決めることだからだ。だれでも未来の自分は自分自身で決めたいと思っている。そこまで学校空間に縛られたくはないと思っている」が見つかるので、この内容と適合する選択肢を選ぶ。
ア   × 根拠なし。
イ   × 「偉人の伝記を読むべき」とは書かれていない。
ウ   ○
エ   × 「読書感想文まで強制される言葉」が「学校空間的なお説教」の内容ではない。

問七 適語補充抜き出し。線部延長すると「信頼は常に【 ④ 】をしている」となる。L69「過去形の信頼はあるのだろうか」という問題提起に対する答えが、直後のL69「信頼する人に自分の秘められた『過去』を話すことがある。<しかし>、それは過去に戻りたいから<ではなくて>、よりよい未来を生きたいからにちがいない」となっている。つまり「過去形の信頼」はない。ゆえにL71「信頼は常に【未来形】をしている」ことになるので、L42、L46、L49、L61、L103の「未来形」を抜き出す。
または「信頼」をキーワードに形式段落の内容を把握する。L67「<つまり>、あなたはその先生にあなたの未来の一部を預けてもいいと考えたのである。信頼するということは、相手に未来を預けることだ」とある。これはL71「よりよい未来を生きたいから」なので未来志向。ゆえにL72「【未来形】をしている」ことになる。

問八 説明選択。指示語の展開。2つ選ぶというのがヒントになっている。「こういう要素」に当たる部分が2つあるのだから、両者は同じレベルで並んでいることになる。線部延長すると「『読めば分かる』と思うからその本を買うという心理は、いくぶんかはこういう要素を含んでいるのだろう」となる。つまり「知っている」と思うことが書かれている本を買うのはどのような気持ちからなのかという理由を読み取る。L85「否定的な感じを持ったときには多分買わない人が多いに違いない。どうしてだろうか」という問題提起があり、その答えはL87からの形式段落にある。L87「それは、僕たちが本によって自分を肯定してほしいと思っているからではないだろうか」とあり、ここが一つ目の理由。これを言い換えたのがL87「<言い方を変えれば>、ぼくたちは本によって自己確認をしたいと思っている」なのでウが選べる。これに続きL89「<もっと言えば>、本によって自分の知っていることや考えていることを権威付けしてもらいたいと、どこかで思っているからではないだろうか」とあり、こちらが二つ目の理由になっている。文末に理由の「~から」が付いて同じ形をしている。またL89<もっと言えば>が追加の接続語を同じ機能をしているのに気づけば列挙だと分かる。
ア   × 「こういう要素」の指示内容になっていない。問われているのは「本を拾い読みして適度に知っていることやわかっていることが書かれている」と、L82「買おうと思う」が、それは「本」にどのような要素があるからなのか、が問われているので論点ズレ。
イ   × 「本を拾い読みして『知らない』、『わからない』という否定的な感じを持つ」ならば、その本はL85「多分買わない」。
ウ   ○ L87と一致。
エ   ○ L89と一致。
オ   × 「疑問に思わせられること」が「こういう要素」の指示内容ではない。
カ   × 「その本を買う」という決断をする理由が「こういう要素」の内容なので論点ズレ。

問九 ⑨説明記述。筆者の考え。「自己確認」が指定語句となっており、ヒントになる。設問文にある「読書感想文」、「学校空間」と指定語句「自己確認」をキーワードに本文を読む。結論はL116「そういう自己確認のための読書とは違った読書を行うから、教育になるのである」、L110「成長を求めない学校空間は、ふつうはない」とある。これは言い換えれば「学校空間は、ふつうは成長を求める」ということなので、筆者は「学校空間」で求められる「読書感想文」に肯定的。その理由をL117「ふだんは自己確認のための読書、学校空間では理想の自分のための読書」を対比的にとらえて説明する。線部⑥から最後までを読めば要素はそろう。なお上述のとおり筆者は「学校空間」のあり方に肯定的なので否定的内容にしてはいけない。
<結論/「学校空間」で求められる「読書感想文」に対する筆者の考え>
L110「成長を求めない学校空間は、ふつうではない」
L116「そういう自己確認のための読書とは違った読書を行うから、教育になるのである」
→学校空間では、成長を目的とした読書をすすめるのが当然/学校が、子供たちの成長を目的とした読書をさせることを肯定している/筆者は読書感想文に対して肯定的である③
<理由>
L108「学校空間は成長物語が好きだから、あるいは子供を成長させるのが学校空間のしごとだから、読書感想文にまでそれを求める」
L117「学校空間では理想の自分のための読書である」
→学校空間は教育する場だから/理想の自分のための読書は、子供にとっての教育となるから/学校空間は子供を成長させようとするから③
<背景/「学校空間」との対比/「自己確認」に関連する内容/「ふだん」の読書について>
L112「ぼくたちがともするとふだんは自己確認のための読書に傾きがちなことを雄弁に物語っている」
L117「ふだんは自己確認のための読書」
→人は自己確認のための読書ばかりする傾向がある/人は自分を肯定する自己確認の読書をしがちである③
A.人は今のままの自分を肯定しようとする自己確認のための読書に傾きがちなので、教育する場である学校空間では、成長を目的とした読書を勧めるのが当然だと考えている。

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