GS-021⃣

三浦綾子「泥流地帯」 大妻多摩、鎌倉学園、香蘭、成蹊、田園調布学園などで出題。近年では普連土(2021①)で出題されている文章。

問一 適語補充選択。線部延長すると「床を掃きながら、耕作は内心 1 していた」となる。その理由は直後L7「いつ先生が現れるかわからない。手伝っているのを見つけられたら、何と言って叱られるだろう」と考えており、L15「叱られるのは嫌だ」と思っているから。よって心情は緊張/恐怖。ゆえに「びくびく」を入れる。プラス属性のエ「うきうき」は論外。
ア   × 「いらいら」=思いどおりにならなかったり不快なことがあったりして、神経が高ぶるさま。いらだたしいさま。
イ   × 「おろおろ」=驚きや悲しみなどの衝撃でうろたえるさま。
ウ   ○ 「びくびく」=絶えず恐れや不安を感じて落ち着かないでいるさま。
エ   × 「うきうき」=楽しさで心がはずむさま。うれしさのあまり落ち着いていられないさま。

問二 ⑥理由記述。理由は直前L25「権太の言った言葉を、耕作は胸の中でくり返した」から。「権太の言った言葉」とはL22「わかってもわからんくても、することだけはするべ」。この権太の発言に対し、耕作自身はL18「今日は机拭きやめておこうや」、L21「拭き掃除しなくてもわからんよ」と言っており対比。心情表現は線部に「恥ずかしい気がした」とあるため不要。
<理由/「恥ずかしい気がした」原因/抽象/まとめの言葉>
自分の卑怯な面に気がついた/自分の悪いところに直面した気がした/自分のずるいところが出てしまった③
<背景/「卑怯な面」の説明/具体>
L18「今日は机拭きやめておこうや」
L21「拭き掃除しなくてもわからんよ」
→他人に分からなければ手を抜こうと考えてしまう/他人にばれなければ、拭き掃除をしなくても良いと考えた③
<対比/権太の考え>※解答欄の大きさより不要。配点もしない。
L22「わかってもわからんくても、することだけはするべ」
→他人に分かっても分からなくても、手を抜かない/他人にばれようがばれなかろうが、拭き掃除をする
A.他人にわからなければ手を抜こうと考える、自分の卑怯な面に気がついたから。

問三 理由選択。「後まわし」をキーワードに戻る。L29「いつもなら、先生の教卓を真っ先に拭くのだ。それが今日は後回しになった。何となく後まわしにしたい気持ちが、耕作の中にあった」となる。指示語「それ」が指すのは「先生の教卓を真っ先に拭く」こと。「いつも」と、今回が対比。先生に対してL94「叱る先生が無理だ」と思っているから「後まわし」にする。その理由は、母親の世話をしていて学校に遅れてしまう権太を叱る先生にわだかまり/非難めいた気持ちがあるから。
ア   × 「自分を否定されたように思い、不機嫌になってしまったから」ではない。
イ   ○
ウ   × 「怒りがあったから」ではない。
エ   × 「叱られることを恐れていたから」「後まわし」にしたというのはつながらない。

問四 ③適語補充。4字指定。線部延長すると「のろのろ歩いていて、先生に見つかったら、 4 ことがわかるだろう?」となる。耕作が先生にばれたくないことを記述する。同義の表現がL8「手伝っているのを見つけられたら、何と言って叱られるだろう」なのでこれを利用して書く。
A.手伝った③

問五 心情理由選択。L41「わかったら叱られるからな」という耕作の発言を聞いて、「権太は黙っていた」。続けてL46「耕ちゃん、お前そんなに叱られるのいやか」と問うている。この背景にはL49「叱られるからするとか、叱られないからしないというのは、ダメ」や、L66「叱られても、叱られなくても、やらなきゃあならんことはやるもんだ」という考え方がある。これに対し、耕作はL83「叱られるということは、いつもほめられている耕作には、耐えがたい恥ずかしさであった」とあり、叱られることばかり気にしている。以上から権太と耕作は考え方が違う。ゆえにL46「お前そんなに叱られるのいやか」というセリフに表れているように、権太には耕作がそれほど叱られるのを嫌がる理由がわからない。
ア   × 「耕作まで先生に叱られたらどうしようと不安だった」わけではない。
イ   ○
ウ   × 若浜のことを気にしてるのは耕作であって権太ではない。
エ   × 耕作は「一人で帰ろうとした」わけではないし、権太も「腹が立った」のではない。

問六 ⑧心情記述。問五と関連。解答欄が大きいので詳しい説明になる。心情変化の型を用いると書きやすい。線部延長すると「権太の言葉に納得した途端、耕作はがんと頬を殴られた思いがした」となる。「がんと頬を殴られた思い」から心情はショック/衝撃を受ける。「権太の言葉」の内容は問五で見たL66「叱られても、叱られなくても、やらなきゃあならんことはやるもんだ」。これにL70(そうか。先生に叱られても、自分で正しいと思ったことは、したほうがいいんだな)と納得している。背景としてL83「叱られるということは、いつもほめられている耕作には、耐えがたい恥ずかしさであった」という以前の耕作に関する内容がある。
<変化前/背景/これまでの耕作>
L80「耕作の心の中には、よりほめられたい思いが渦巻くようになった。ほめられたいと思うことは、また叱られまいとすることであり、誰にも指をさされまいとすることでもあった。叱られるということは、いつもほめられている耕作には、耐えがたい恥ずかしさであった」
→褒められたいと思うあまりに叱られることを恐れていた②
<きっかけ/問五の内容>
L66「叱られても、叱られなくても、やらなきゃあならんことはやるもんだ」
L70(そうか。先生に叱られても、自分で正しいと思ったことは、したほうがいいんだな)
→権太の言葉により、人の評価にかかわらず正しいと思うことはやるべきだということに気づく②
<変化後①/「がんと頬を殴られた思い」の言い換え/心情①>
衝撃を受ける/ショック②
<変化後②/自分が気づいたこと/心情②>
L85「自分のどこかが間違っていることに気がついた」
L92「耕作は内心恥ずかしかった」
→自分の考えの過ちを思い知らされる/これまでの自分を反省する/恥ずかしい②
A.褒められたいと思うあまりに叱られることを恐れていたが、権太の言葉により他人の評価に関わらず正しいと思うことはやるべきだということに気づくとともに、自分の考えの過ちを思い知らされ、衝撃を受けている。

問七 説明抜き出し。指示語の展開。問三と連関。線部延長すると「叱る先生が無理だとは思いながらも、そう思うことがあった」となる。直前のL93「母親の肥立ちが悪いのはわかっているが、何とか遅れないクフウはないのかと、耕作は内心思うこともあった」で、「思うことがあった」と「思うこともあった」が重複していることがヒントになる。なお抜き出しなので「クフウ」はカタカナのまま。勝手に漢字に変えた場合は不正解。

問八 知識。L6、125の郭公は5月の鳥。種まきの時期を知らせる。またはL98「二人はいつしか市街を出て、両側の田んぼの緑のすがすがと見える道を行く。青い忘れな草が、畦にこぼれるように咲いている」の田んぼが緑であることから初夏(なお、春は田植え)。忘れな草の季節を考えても良い。

問九 ③脱文挿入記述。Aから解く場合はL12「先生に言ってやるぞ。叱られるぞ、お前も」という若浜に対する大見得。直後に逆説の<が>があり「やっぱり叱られるのはいやだ」とあるので、これとの対比で考える。Bから解く場合はL118(叱られても、いいことはするもんなんだ)と思ってL121「はっきり口に出して言った」こと。L121「清々しい心持ち」から言っていることもヒント。
A.叱られても良い/叱られても構わない③ 

問十 ⑧説明記述。「耕作の性格の良いところ」を説明。設問指示に「できるだけ具体的に」とあるので理由となる具体的な出来事を理由とする。L5「罰当番の井上権太に手伝って」いることから、心優しいことが分かる。L56「耕作が三十五銭落とした時」、権太がお金を貸してくれ、L60「そのありがたかったことは、今も忘れてはいない」ことから、誠実であることが分かる。また問六で見たとおり権太を見て、L70(そうか。先生に叱られても、自分で正しいと思ったことは、したほうがいいんだな)と、今までほめられようとばかりしていた自分を反省する素直さもある。以上の三内容のうち二つ書ければ満点とする。
<性格①>
優しい/心優しい②
<理由①>
L5「罰当番の井上権太に手伝って」
→権太の罰当番を手伝う②
<性格②>
誠実②
<理由>
L60「そのありがたかったことは、今も忘れてはいない」
→権太がお金を貸してくれたことで助けられたことを忘れずに感謝の気持ちを持って接する②
<性格③>
素直/思慮深い②
<理由③>
L70(そうか。先生に叱られても、自分で正しいと思ったことは、したほうがいいんだな)
→権太の考えにふれて自分の考えを反省している②
A.権太の罰当番を手伝ってあげていることから心優しい性格。また、権太がお金を貸してくれたことを忘れずに感謝の気持ちを持って接することができるので誠実な性格。更に、権太の考えに触れて自分の考えを反省することのできる、素直で思慮深い少年である。

問十一 漢字

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