WS-072⃣

日高敏隆「里山物語」からの出題。日高敏隆の著作は、「ホモ・サピエンスは反逆する」が攻玉社(2022国際)、大妻多摩(2021①午後)、「人間はどういう動物か」が逗子開成(2022①)、「動物はなぜ動物になったか」が灘(2022)、「世界をこんなふうに見てごらん」が鎌倉学園(2015)、早稲田(2016)、青山学院横浜英和(2020A)で出題。

問題としては、春期講習でも出題があった説明記述が問六、文章テーマ的に62A-07コトノハで扱った「自然」の内「里山」なので、このあたりとリンクできると良い。

問一 説明抜き出し。12字指定。類義表現。要約・換言の接続語<つまり>を根拠に線が引けていれば瞬殺。「里山」をキーワードに読み進める。また、問い方が「どのようなところ」なので「ところ」か名詞で終わっているはず。線部に「『里山』はけっして『自然』ではない」とあり、これと似た表現がL25に「<つまり>里山は『里山』という『山』ではなく、人と自然が交錯するところ、基本的には人里なのである」が見つかる。「山」は「自然」を具体化したもの。

問二 適語補充抜き出し。5字以内。類義表現。線部延長すると「もともとの自然の中に人間が入っていき、木を伐ったり、草を刈ったり、いろいろな ② をしていることによって生まれたもの、それが里山である」となる。「自然の中に人間が入っていき」と似た表現がL28「人は自然の中に入っていって」なのでこの周辺を探す。又は具体的な動作である「木を伐ったり、草を刈ったり」をキーワードに読み進めると、L31「木も伐るであろうし、草も刈る。」がある。以上からL28「人は自然の中に入っていって、自然に何らかの働きかけをする」から抜き出す。

問三 適語補充選択。対比。線部延長すると「こうして生まれた里山は、もともとの深く暗い林<とちがって>、人間が ③ を覚える場所になる」となる。<~とちがって>で接続していることから、「深く暗い林」と「 ③ を覚える」が対比。よって ③ の中にはプラスの表現が入るので、マイナス側の「悲しみ」を含むイ、「迷いと不安」を含むウは外せる。
「深く暗い林」はL11「もともとの自然は深くこんもりした林であっただろう。そこはあまり日もささず、薄暗くひんやりしていて、あまり快適な場所ではなかったに違いない」と具体的に説明されている。これと対比される表現が、続くL13「そこに腰をおろし、のんびり弁当でも開いてくつろごうという気になる場所」。以上から ③ には「のんびり」や「くつろごう」といった表現と親和性が高いものが入ることが分かる。
ア   × 「里山」にいって「興奮」というのが不適。
イ   × 「悲しみ」というマイナスを含む。
ウ   × 「迷い」と「不安」というマイナスしかない。
エ   ○ 里山を評価するL12「快適」やL79「安らぎ」といった表現を根拠としても良い。

問四 理由選択。対比。問一、二と連関。直後が接続語<たとえば>なので線部延長。「奇妙なこと」の具体例として「里山への人の立ち入りを禁止したり、規制したり」することが挙げられている。「里山」は問二で見た通り、人がL28「自然の中に入っていって、自然に何らかの働きかけをする」ことで成立するL26「人と自然が交錯するところ(問一の解答)」=L53「自然と人間のせめぎあいの産物」である。それなのにL40「人の立ち入りを禁止、制限する」のでは里山が成立しないので「奇妙」と言っている。
ア   ○
イ   × 「里山を荒廃させる」ことが目的ではない。
ウ   × 「里山を敬遠している」わけではない。
エ   × 「積極的に里山を荒廃させ」てはいない。

問五 語彙。むーみんのひふ(無未非不)。非現実的と不自然。

問六 ⑩説明記述。まず線部の「両極端」が何を表しているのか掴む。「極端」という語をヒントに、これがL54「徹底した自然と徹底した人工」だと分かる。「徹底した自然」についてはL57~59の形式段落、「徹底した人工」についてはL60~64の形式段落がL60<一方>を介して対比で表現されている。
<両極端>
 L54「徹底した自然と徹底した人工を求める」
 →徹底した自然と、徹底した人工
<徹底した自然>
 L47「自然の美を求めている」
 L57「地球上で徹底した自然というのは~人間にとって恐ろしいもの」
 L62「その反動が自然礼賛の気持ちの源である」
 →人は一切人間の手の加えられていない自然の美を求め、礼賛する⑤
 ※L37「里山賛美」/L46「里山の美への憧れ」は不適。「里山」は「徹底した自然」ではない。
<徹底した人工>
 L60「人工物を徹底的に発達させ、その利便さを享受している」
 →人間が人工物を徹底的に発達させ、その利便さを享受する⑤
<間をさまよっている>
 自然と人工の調和した里山ではなく、それぞれの極端な状態を求める気持ちが今の人間にはある
A.人間が人工物を徹底的に発達させ、その利便さを享受する生活を送る一方で、一切人間の手の加えられていない自然の美を求め、礼賛する気持ちを持っているということ。

問七 ⑩説明記述。筆者が述べている里山の良さを説明する。線部延長すると「自然を追い払ってすべてを人工的に管理することより、身のまわりに自然とのせめぎあいの場を残した人里に生きるほうが楽しいのではなかろうか」となる。「自然とのせめぎあいの場を残した人里」のメリットについて、L78~86の形式段落で説明されているので、ここをまとめる。
論説文・説明文の結論は最初か最後にあることが多く、今回は後者。よって最終意味段落となるL78~86の内容をまとめると考えても同じ。
<良さ①>
 L79「そこでは何らかの安らぎを感じることができる」
 →里山の動植物の姿に安らぎを感じることができる
<良さ②>
 L82「そういう危険を予見するトレーニングは生きていく上で不可欠である」
 →里山で発生する危険を予見することで、生きていく上で不可欠なトレーニングができる
A.里山にあふれる動植物の姿からは安らぎを感じることが出来、そこに発生する危険を予見することで、生きていく上で不可欠なトレーニングができること。

問八 漢字

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