WS-131️⃣

石田衣良「火を熾す」からの出題。浦和明の星、品女で出題。

問一 漢字

問二 説明抜き出し。設問条件よりL123以降。「筋の良さそうな」はプラスの表現なので探す説明もプラス。設問文より「光弘」が「壮太」を「見ている」場面を探す。L128に「光弘は不登校の少年の顔をよく見た」とあり、「不登校の少年」とは「壮太」のことなので、これに続くL129「煤ですこし黒くなっているが、実に利発そうな顔をした子どもだ。」が光弘による壮太の評価。問われ方が「表現」と曖昧なので、「実に」の有無、「だ。」の有無は問わない。ただし線部が「人間」という名詞で終わっており、題意も「壮太」の言い換えを探す問題と捉えられるため、「利発そうな顔をした子ども」が適切と思われる。また線部に「実に」に相当する強調語句はないので、不要と考えられる。
(別解) 実に利発そうな顔をした子ども/実に利発そうな顔をした子どもだ/利発そうな顔をした子どもだ。

問三 線部②に関する問題。
(1)  理由選択。主語は治朗。設問文より「目配せ」は「光弘に黙っているようにという意味の合図」であり、この後の治朗の行動を追うと、壮太に火熾しの仕方を聞いている。このことから対象は壮太。具体的には、光弘はL19「壮太、焚き火を自分で熾してみよう」と壮太に声をかけている。このときのL20「壮太の声はひどく細く頼りなかった」とあり、自信なさげ。しかし続ける内にL27「男の子の顔には笑みが浮かんでいた」と変化している。つまり壮太に自力で火熾しをさせることによって壮太に自信を持たせたいという意図。
ア   × 「壮太と二人だけで」とあるが、治朗は「壮太一人に」やらせたいので不適。
イ   × ここでの治朗の気持ちの中心は、光弘ではなく壮太に対するもの。また「光弘に認めさせたい」という意図も読み取れない。
ウ   × 治朗が「光弘が気落ちしている様子を見て」取ったという根拠なし。
エ   ○

(2)  説明抜き出し。(1)で答えた選択肢エの内容から推定する。壮太が自信を持てたことが分かる表現を探す。壮太に心情変化が起きているのでこれを読み取る。変化前はL20「壮太の声はひどく細く頼りなかった。」が、治朗の質問には全て答えられている。そして変化後ではL27「男の子の顔には笑みが浮かんでいた。歌うようにいう」とあり、壮太に自信が芽生えたことが読み取れる。

問四 理由選択。直前の形式段落で光弘はL32「大切なことを一つか二つ、次の世代に伝え死んでいく。人間などそれだけでいいのではないだろうか」と考えている。治朗は光弘に教えられた火熾しを壮太に教え、壮太はそれを受け止めているので「このふたりはだいじょうぶ」と判断している。もしくは前書きにおいて、治朗は会社に行けず、壮太は不登校であったが、そんな二人が協力して火熾しをしている。つまり、二人は孤独ではなくなった、居場所を見つけられたのだと思い、「だいじょうぶ」と考えたという解釈でも良い。選択肢エの「ふたりが学校や会社への不安を乗り越えて」は言い過ぎ。またこの時点では(特に壮太が)「組織に戻って」いくことは想定していない。
ア   × 光弘が「気が楽になった」ことで、「この二人は大丈夫」とは判断できない。因果の誤り。
イ   × 「わずらわされなくてよい」とあるが、光弘は治朗と壮太を煩わしいとは思っていない。
ウ   ○
エ   × 「学校や社会への不安を乗り越えて」いる訳では無い。

問五 説明抜き出し。比喩的な表現なのでまずは直喩を想定。設問条件より〈中略〉より後から探す。「壮太にとっての小学校の様子」と「光弘にとっての会社の雰囲気」はどちらもマイナス。また両者に共通する表現になる。主語の片方が「光弘」である(治朗ではない)ことに気づくと易問。「学校」、「会社」をキーワードに〈中略〉以降を読む。壮太のセリフL48「でも、ぼくは学校が苦しくって。クラスで座ってると、息ができなくなっちゃうんだ。ほんとにへたくそな焚き火の煙をずっと吸わされているみたいなんだよ」と光弘の内心L51「光弘は自分の最後の会社員時代を思った。確かにあそこは、焚き火の煙のように空気の悪いオフィスだった」で共通するのは「焚き火の煙」。「ように」・「みたい」といった直喩表現が付いているのも手がかりとなる。

問六 語彙。「爆ぜる」=草木の実などが熟しきって裂ける。また、割れて飛び散る。はじける。「爆」の字を当てるが原義は火に必ずしも関係しない。よって「焚き火が爆ぜる」等は比喩的表現と言える。

問七 心情選択。「青年」とは治朗のことなので、直後の治朗のセリフを中心に読み取る。背景としてL76「ぼくは一昨日ここにくるまで、もう死んでしまおうって思っていた。会社にもいけないダメ人間なんて生きていてもしかたないって」と考えていた。そんな治朗がL79「火の粉が飛んだくらいで、熱いっておおさわぎだ。死ぬんなら、ちょっとくらいの火傷なんてなんでもないはずなのに」と言っており、ここが理由。そんな自分が滑稽だと思ったということ。また、死のうとまで思っていたということを笑い、人に話せるということは、その死のうという思いから解き放たれたということ。選択肢は抽象化されている。プラス属性の笑いだと気づくだけで二択にはなる。
ア   × 「壮太と自分の共通点」は「不登校/出社拒否」であり「面白く感じる」ものではない。また、これは「ささいなこと」でもないので、「愚かさに呆れ果てる」こともない。
イ   × ここでの気持ちの原因は光弘が「救ってくれた」ことでも、「おいしいものを食べることで心もお腹も満たされ」たことでもない。因果の誤り。
ウ   ○
エ   × 「意志の弱い自分が、とても腹立たしい気持ち」で「笑った」訳では無い。

問八 理由選択。線部の「ぼくと壮太の約束」とはL84「ぼくが会社にいけるようになったら、壮太も小学校にいってみないか」というもの。線部は治朗のセリフにあるので、これ以降の治朗のセリフに注目。L101「この三日間、ほんとうにお世話になりました。~ぼくはいつか会社を辞めて、リタイアする日がきたら、磯谷さんみたいなプレイマスターになりたいと思います」という表現から、治朗の光弘への信頼が読み取れるのでイ。また、そんな光弘に見守っていてもらえたら心強いと思い、線⑥のセリフの後にL91「だけど、自分のためじゃなくて、誰か人のためだったら、会社にもいけるような気がしてきたんです。」とあることから、この場合の「人」は主に壮太のことだが、同時に光弘にもこの約束に参加してもらえれば「決心したことを強固なものにする」ことができると考えたと推定できるのでオが選べる。消去法の方が早い。
ア   × 約束は「成り行きで」したものではない。また光弘に「戒めてほしかった」というのも根拠がない。
イ   ○
ウ   × 「自分が会社に行くことは、壮太や光弘にとっても喜ばしいこと」とは言い切れない。また「会社に行くこと」で「三人の絆がより強くなる」とする根拠もない。
エ   × 「責任がある」とあるが、治朗は光弘に責任を押し付けたい訳では無い。
オ   ○

問九 説明抜き出し。設問条件より線⑥より後から探す。まず設問文にある「治朗の感謝の言葉」を探す。これは当然、治朗のセリフの中にある。L101「お世話になりました」が見つかる。これに光弘が「感激」するのはここよりも後ろになるのでL106以降が探索対象。「気持ちの読み取れる表現」なので気持ちそのものではない。感激する気持ちの表れとしてL106「光弘は目に涙がにじんで困った」という動作がある。問われているのは「照れ隠しをする光弘の気持ちが読み取れる表現」なので、「涙」を感激のせいではなく、煙のせいにしてごまかそうとしている表現、つまり「涙がにじんで」の直前のL106「煙が目にしみたようだった。」が答えになる。
問十 心情選択。ここまでの話の流れをおさえる。光弘の焚き火は、治朗と壮太の二人に前向きな気持ちを持たせた。そのうえ二人は自分のことを慕ってくれている。光弘の自信や喜びの気持ちが、「じっとしていられなくなって、手元にあった小枝を炎のなかに投げこんだ」という行動に表れたと考えられる。消去法の方が早い。
ア   × 「落ち着かない気持ち」にはなるかも知れないが、その理由は「多くの人が参加すると思う」からではない。
イ   × この時点で治朗と壮太の存在により「孤独」ではない。
ウ   ○
エ   × 「プレイマスターという役割が注目」されるかは不明。また「肩書きへの誇りが持てる」も根拠なし。

問十一 ⑩説明記述。「焚き火」の「すごい力」について本文全体を踏まえて記述。ただし焚き火の効用についての記述は後半からなので、前半は無視。当然に「焚き火」はキーワード。線部を含む段落を読み、「火を熾す」をキーワードに加えるとL117~122の段落を加えることができ、ここに要素が固まっている。これに問八で見た治郎のセリフにある内容を足す。こちらも「焚き火」がキーワードになっている。
<「すごい力」①/L132~135/線部の直後>
「ここにきた三日間、誰にもなんにも相談もしなかったし、ずっと悩んでいたわけでもないのに、いつのまにか自分のなかにこたえがでている。なんだか火を熾すのが癖になっちゃいそうだ」
→自然に悩みの答えを出す手助けをする/悩みを解消する力②
<「すごい力」②/L117~119/「焚き火」がキーワード>
「十二月の三日間で、こんなふうにまるで他人の心が結ばれることがある。きっと焚き火の炎が人の心を溶かすからなのだろう。
→人の心を溶かし、他人の心を結びつける②
<「すごい力」③/L119/「火」がキーワード>
L119「火には人を深いところで変える力があるのだ」
→人を深いところで変える/人(の気持ち)を変える力②
<「すごい力」④/L120~122/「火を熾す」がキーワード>
L120「あのときも毎日新たな火を熾すことで、なんとか沈みがちな心を保てたのではないだろうか」
→沈みがちな心を保たせる力②
<「すごい力」⑤/L101~105/「焚き火」がキーワード>
「ここの焚き火はほんとうにあたたかかった。ただ身体をあたためるんじゃなくて、心の底まで照らしてくれる光でした」
→心を照らす/心をあたためる力②
A.沈みがちな心を保たせ、心の底まで照らし人の心をあたためてくれる力である。また、人の心を溶かし、人を深いところで変え、人と人とを結びつけることができ、さらに、いつのまにか人の心のなかにこたえをだしてくれる力でもある。/人の沈みがちな心を保たせ、自然に悩みの答えを出す手助けとなる。また、人々を集わせ、その人々の心を照らし、深いところで変えて、わずかな期間であっても他人の心を結びつける力。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?