WS-162️⃣

三浦綾子「この重きバトンを」から。攻玉社で出題。

<分析>
①   場面分け(心情に着目 ※時間や場所などに着目しても分けられる)
1    L1~40(マイナス)
   母と別れ、年季奉公に出された→寂しい
   仕事もできず、味方もいない→悲しい
2    L41~86(プラス)
   お嬢さんが味方だと分かった→うれしい

②   設定
   時代背景:明治三十一年
   境遇:「私」は年季奉公に出されている←家が貧しい
   特徴:「私」は幼い(小学四年生)→成長(三年経つ)
   人間関係:「私」←♡→お嬢さん

③   因果関係
(全体)
<変化前/幼い>
   年季奉公に出され、母との別れ→寂しい
   仕事もできず、誰も慰めてくれない(味方がいない)→悲しい
<出来事>
   お嬢さんの部屋に呼ばれる
<変化後/成長>
   お嬢さんが味方だと知る→うれしい→仕事に張りが出る

(個別/問六)
1    L54「『鶴吉、ちょっと、わたしの部屋にいらっしゃい』と連れて行った」
→L55「私はびっくりした」(驚き)
→L55「胸がどきどきした」(緊張)
2    L63「なぐられないような仕事をなさい」
→L65「胸に、ぴしりとこたえた」(衝撃)
→L68「心のなかで大きくうなずいた」(納得)
3    L69「鶴吉が叱られると、わたしも口惜しい」
→L70「思いがけない言葉だった」(意外)
4    L71「お嬢さんの目に、涙がきらりと光っていた」
→L73「味方がいたと、まったく勇気百倍の思い」(感動)

問一 漢字

問二 語句指定作文。「目と鼻の先」=ほんの近く、わずかな距離。「私」と「あなた」を使うのを忘れない。語彙として「目と鼻の先」は必須レベルだが、線部延長すると「いまでこそ、江別と札幌はほんの目と鼻の先<だが>、生まれて初めて江別の街を去る私には実に遥かなる彼方へ汽車は自分を運んでいく」となり、逆説の<だが>で繋がった先が「遥かなる彼方」と遠いことを表現しており、その対比として「近い」というニュアンスを読み取ることも可能。なお、「目と鼻の先」が「近い」という意味を持つので答案に「近い」という語を入れるのは不適。
A.(例)私の家の目と鼻の先にあなたの家がある。⑤

問三 文法。主述の関係。擬人法が用いられている。「私」に「切実な悲しみだけを与えた」のが何か考える。主語は「汽車は」。三字指定なので「汽車」は不可。

問四 理由抜き出し。部分指定。次の段落でL46「実のことをいうと、それにはひとつのわけがあった。こんな気持ちになった陰に、実はそれなりに理由があったのだ」とあり、「それ」が線③を受けている。「わけ/理由」がここより前にないため、以降を探す。キーワードは線③に含まれる「仕事」。L76「私はめそめそと、母を恋するこどもから、ようやくこのとき脱皮したのだった。仕事に張りが出た。叱られても苦にならなかった。いっしょに口惜しがってくれるお嬢さんのいることが、私の大きな慰めとなった」とある。
(別解)線③直前の一文の「変わっていった」や線部の「なろう」、L43「私は負けん気な少年になっていった」といった表現から「私」が変化することが分かる。線エの「だっぴ」やL78「いっしょに口惜しがってくれるお嬢さんのいることが、私の大きな慰めとなった。私はきびきびとよく働くようになった」といった表現から、ここが変化後だと分かる。この内変化のきっかけ(=わけ/理由)に当たる部分を抜き出す。

問五 語彙。「かげ」=原因となる背景。比喩的表現。
ア   × 影=人の形。
イ   × 陰=対象となる人がいないところ。
ウ   ○ 陰=表に現れない背景。
エ   × 陰=内面の暗さ。
オ   × 影=光によってできるものの形。

問六 心情選択。本文で線部⑤から順に気持ちの変化を追う。
L55「びっくりした」→驚き
L55「胸がどきどきした」→A緊張←L59「私はお嬢さんの部屋に初めてはいった」
L65「冷たいほど厳しい声だった。その言葉が、十三の私の胸に、ぴしりとこたえた」→衝撃
L67「(なるほど、なぐられないような仕事をすればいいんだ) 心の中で大きくうなずいた」→B納得
L70「思いがけない言葉だった。自分が叱られると、どうしてお嬢さんも口惜しいのだろう」→意外
L72「そのとき私は、ああここに一人の味方がいたと、まったく勇気百倍の思いだった」→C感動←L75「そう思うと、私は何とも言えず、幸せだった」

問七 適語補充選択。問六Aと関連。線部延長するとL69「『鶴吉、鶴吉が叱られると、わたしも口惜しい』 思いがけない言葉だった。自分が叱られると、どうしてお嬢さんも口惜しいのだろう。私はそう思って、   お嬢さんの顔を見た」となる。この時点で鶴吉はユキの気持ち(好意)に気づいていない。また主人の娘と使用人という立場の違いから、問六でみたとおり鶴吉は緊張している。ゆえに「恐る恐るお嬢さんの顔を見」ることになる。
ア   × 「だましだまし」=その場を何とか取り繕いながら。ようすを見ながら。
イ   ○ 「おそるおそる」=恐れからひどく緊張して事を行うさま。
ウ   × 「かわるがわる」=順番に代わり合って。交代に。
エ   × 「やすみやすみ」=時々休みながら続けるさま。
オ   × 「とぎれとぎれ」=何度もとぎれるさま。とぎれながら続くさま。                                                                                                                                                                                                                                               

問八 説明抜き出し。問七と連関。L70まで鶴吉はユキの気持ちに気づいていないので、探すのはこれより後。L72「そのとき私は、ああここに、ひとりの味方がいた」と気づいている。指示語「そのとき」が指す内容がきっかけ部分となるので、L71「お嬢さんの目に、涙がきらりと光っていた」が答え。なお部分指定なので「。」を含めないことに注意。

問九 脱文挿入選択。問四と関連。「あたたかい言葉」によって鶴吉が「一変」したところを探す。鶴吉の変化の理由は問四の内容。本文において「あたたかい言葉」はお嬢さんが鶴吉にかけたもの。よって具体的にはL69「鶴吉が叱られると、わたしも口惜しい」が「あたたかい言葉」。また直後L70「思いがけない言葉だった」で「言葉」がキーワードになっている。L76「私はめそめそと、母を恋するこどもから、ようやくこのとき脱皮したのだった」の「脱皮」は鶴吉の変化の比喩なので整合する。
 

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