WS-141️⃣

高槻成紀・南正人「野生動物への二つの視点」からの出題。62A-07読解演習と同じ文章の別箇所。光塩、栄光、東京学芸大世田谷、横浜共立、品川女子、東京農大一、立教女学院などで出題。
 
問一 適語補充選択。線部延長すると「当然それは『 X 』なる」となる。指示語「それ」の内容はL11「横」。その説明は定義文L11「『横』とはただ名前を確認し、そのことを延々と水平に展開してゆくことをいう」にある。 X の中にはL13「見た種類を増やし」ていく、「横」の持つ性質であるエ「広く浅く」を入れる。

問二 説明選択。問一と対比。スズメとオオバコの共通点。形式段落の内容は「縦」の説明。「縦」の視点ではL16対象とする動植物は一種類でもよい、ありふれた種類でもよい」とあるので、「オオバコ」も「スズメ」も「ありふれた」ものの例。またはオオバコとスズメの具体例を受けてL39「このように身近な動植物」とまとめているので、ここを参照しても良い。「ありふれた」や「身近」を言い換えた「当たり前」を含むイが正解。
ア   × 「大きさ」の問題ではない。
イ   ○
ウ   × 「植物か動物のどちらかから選ぶのがよい」とは言っていない。
エ   × 「お金」の話はしていない。

問三 理由選択。不適選択であることに注意。オオバコの分布についてはL19~31の形式段落に説明がある。
ア × 因果関係が逆。L24「実際オオバコの葉はたいへん丈夫で、踏みつけられてもびくともしない」とある。つまり「丈夫」だから「人に踏まれ」ても平気だということ。
イ ○ L28「これは水に濡れるとジェリー状になって粘着性をもつ」とある。指示語「これ」が指すのはオオバコのL28「種子」。
ウ ○ L22「オオバコは明るくてほかの競争相手がいないような環境を好む」とある。
エ ○ イの選択肢の根拠に続きL29「このため人の靴などについて別の場所に拡がってゆく」とある。

問四 線部③に関する問題。
(1)  説明抜き出し。問二と関連。ここより前で「縦」について話題にしている箇所は問二で見たL16~18の段落。設問文で「こと」を問うているので、文末は「こと」または名詞で終わる。「縦」の定義文であるL16「『縦』とは対象とする動植物は一種類でもよい、ありふれた種類でもよい。だがその対象をよく観察し、調べ、深く理解することをいう」とあるので、ここから「対象をよく観察し、調べ、深く理解すること」を抜き出す。なお「見る」と「観察する」が類義表現となっている。

(2)  理由選択。線③の意見文に続いてL45「それは横のアプローチでは視点を掘り下げることができないからである」とあり、これを裏から表現すると「縦のアプローチなら視点を掘り下げることができる」となる。また、これを具体化した表現がL47「生物が長い進化の過程で環境やほかの生物と関係を保ちながら変化し、今、存在し、生きていることの意味に迫ることが難しいから」。そしてL50「視点」がL50「違うからこそ、自分の視点で見えなかったことの意味も理解でき、建設的な質問や批判もでき、相手の言うことも深く理解できる。そのことによって初めて動植物の複雑さや、生き様の面白さが実像を結ぶように理解できる」とまとめられている。
ア   × 「たくさんの種類の動植物を知る」のは「横」の見方。
イ   ○
ウ   × 「多くの動植物を幅広く見る」は「横」の見方。
エ   × 「自分だけのしっかりした意見を持つことができる」が根拠なし。

問五 説明選択。設問文より、学生と「私」の比較だけでなく、「私」と「昆虫おじさん」との比較も必要。まず学生と「私」の比較。学生はL56「学生は田んぼにいるオタマジャクシを見つけたり、テントウムシなどを見つけて歓声をあげたりする」とあり、L59「学生は雑談をしながらかなりのスピードで歩く。それはハイキングのスピードである」と説明されている。これに対し「私」はL58「私の目にも、学生諸君の目にも同じように里山の景色が見えている」とあるので、「里山の景色」を見ているのは同じ。しかしL62「私の歩みは学生よりはるかにゆったりしている。周りの動植物を見るのに忙しいからだ」とあることから、「私」はオタマジャクシやテントウムシだけでなく他の動植物も見えている(「私」の方がより「横」の見方が広い)。よって見えているものが違う。
次に「私」と「昆虫おじさん」の比較。L84「私もチョウについてはある程度知っているつもり」だが、昆虫おじさんはL80「すごい速さで飛んでいるトンボの翅を見て見分ける」、L80「植物についてもチョウの幼虫の食草を見ている」といった例から、L88「昆虫おじさんには私には見えないものがたくさん見えていたのだ」とあり、筆者より深く動植物を見ている(「昆虫おじさん」の方が「縦」の見方が深い)。こちらもまとめると、見ているものが違うのだと分かる。
ア   × 学生と「私」で「かかる時間が全く違う」原因は、「経験の差」によるものではない。因果の誤り。
イ   ○
ウ   × 「私」は学生に「時間をかけて里山を歩いてほしい」という希望は持っていない。比較した事実を述べているに過ぎない。
エ   × 「ハイキングの楽しみを見つけた」が根拠なし。歩くスピードがL60「ハイキングのスピード」だったに過ぎない。

問六 接続語。問五と関連。直前にL58「私の目にも、学生諸君の目にも同じように里山の景色が見えている」とあり、「私」と学生に共通点が書かれている。[ ☆ ]の直後は「多くの場合、学生は雑談をしながらかなりのスピードで歩く」のに対し、L62「私の歩みは学生よりははるかにゆったりしている」とあるので両者の違いが書かれている。「同じこと」と「違うこと」の対比となる内容をつなぐので逆接の「しかし」を入れる。
問七 線部⑤「舌を巻いた」に関する問題。
(1)  語彙。「舌を巻く」=感心して驚く。あまりにもすぐれていて、ひどく驚く。感嘆する。 

(2)  理由選択。線部延長すると「私は舌をまいた」となるので、驚いているのは「私」。直後に「そのとき、私は自分の目が節穴だと思った」とあるので、この理由を探す。直前に具体的な体験、直後にL87「私の網膜にも同じように映っていた景色だが、昆虫おじさんには私には見えないものがたくさん見えていたのだ」とある。「私に見えないもの」とはL85「飛び方」やL85「高さ」からL83「ゴマダラチョウを識別」する起点。ここから、昆虫おじさんは観察眼が優れていることが分かる。これに「舌を巻いた」と考えられる。または直前の昆虫おじさんのセリフL85「あの飛び方がね。それとあの高さだとシロチョウ類とは違うから」に驚いていることから推定しても良い。
ア   × 「舌を巻いた」のは「昆虫おじさん」に対して。「チョウの奥深さ」に対してではない。
イ   × L80「植物についてもチョウの幼虫の食草としてみている」とあるが、これはL80「トンボの翅」やチョウのL85「飛び方」と並ぶ具体例に過ぎない。よって不足の選択肢。
ウ   × 「舌を巻いた」理由は「さらに時間をかけて歩くことができると気づいた」からではない。論点ズレ。
エ   ○

問八 ⑩説明記述。線部延長すると「『見える』ということは物理的に網膜に映ることではなく、そういうことなのだ」となる。指示語「そういうこと」の内容をつかむ。線部を単純化すれば「『見える』ということは、そういうことなのだ」となるので、「『見える』ということ」の内容を説明すれば良い。するとL95「それを入り口として、ひとつひとつの生き物の暮らし方を知り、疑問を持ち、生息地や人の生活との関係を考えることである」と説明されている。指示語「それ」を展開し、比喩である「入り口」を言い換えるのを忘れないように注意。
<「そういうこと」の内容>
L95「それを入り口として、ひとつひとつの生き物の暮らし方を知り、疑問を持ち、生息地や人の生活との関係を考えることである」
→ひとつひとつの生き物の暮らし方を知ること②
※「生き物を知る/暮らし方を知る」は説明不足。
→疑問を持つこと②
→生息地や人の生活との関係を考えること②
 ※「人の生活との関係を考える」のみでは説明不足。「生息地との関係を考える」という情報が不足。
<「それ」の内容>
 L95「名前がわかる」
 →名前がわかる②
<「入り口」の言い換え>
 きっかけ/はじまり②
A.名前がわかることをきっかけに、ひとつひとつの生き物の暮らし方を知り、疑問を持ち、生息地や人の生活との関係を考えること。

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