WS-151️⃣

河合隼雄「泣き虫ハァちゃん」からの出題。桐朋ベース。桜美林、横浜共立、西大和、かえつ有明、成城学園でも別場面の出題あり。

<分析>
①   場面分け(心情に着目)
1    L1~94(マイナス)
   嘘を書いた作文でほめられた→いたたまれない/後悔/罪悪感
2    L95~119(プラス)
   兄弟が自分の気持ちを分かってくれて、笑い飛ばしてくれた→感動/うれしい

②   設定
   時代背景:昭和初期
   境遇:ハァちゃんは広田先生と気が合わない
   特徴:ハァちゃんは作文が得意
   人間関係:広田先生―×→ハァちゃん←○―兄弟

③   因果関係
(全体)
<変化前>
嘘を書いた作文でほめられた→いたたまれない(マイナス)
※「いたたまれない」は「その場にいられない。がまんできない」という意味。
<出来事>
ミト兄ちゃんが笑い飛ばしてくれた
<変化後>
兄弟が自分の気持ちを分かってくれた→感動(プラス)

 (個別/問三)
1    (背景)ハァちゃんは広田先生とうまくいっていない
広田先生は、作文は感じたままを書くのが良いと言う
2    (出来事)広田先生に作文を褒められた
    褒められたのは嘘を書いた部分だった
3    (心情)複雑=うれしい+後ろめたい

問一 語彙。「難を逃れる」=災難に巻き込まれずに済む、厄介な目に遭わずに済む。「難」とは「災い」のこと。

問二 説明抜き出し。30~35字指定。線部延長すると「それまでは、ハァちゃんは作文を上手に書こうと思ったし、こう書くと、先生がほめてくれはるやろな、と思いながら書いたし、それはだいたい思ったとおりにうまくゆくことが多かった」となる。設問文で「高城山の作文では」とあるので、「高城山の作文」に関し、ハァちゃんが上手に書こうとしている部分を探す。「高城山」はL25「ハァちゃんは、高城山の坂道で苦労するが、戦地で頑張っている従兄弟の博兄ちゃんのことを思うと、こんなことは何でもないのだ、というようなことを書きかけたが、筆がとまってしまった」が見つかるが、文字数オーバー(37字)。また「書きかけたが、筆がとまってしまった」とあるので書いていない。「坂道」、「苦労」、「戦地」、「博兄ちゃん」をキーワードに類義表現を探す。L35「ところが先生が読まれたところは、戦地にいる博兄ちゃんの苦労を思い、必死になって坂道を上がってゆくところだった」とあり、32字で条件を満たす形で抜き出せる。

問三 ⑩心情記述。考え方は「複雑な気持ちの記述」と<分析>参照。線部延長すると「それを見て、ハァちゃんは何とも言えぬ複雑な気持になった」となる。指示語「それ」の内容はL36「返したもらった作文には、先生の読まれたあたりに、赤インクの丸が一杯ついていた」こと。ここでの心情とその理由については線部の直後に書いてあり、背景だけが離れている。<背景②>を除いて線②を含む形式段落の内容で書ける(<心情②>は推定)ので、目標点は9/10点。
<気持ち①>
 L40「嬉しい」
 →嬉しい/喜ぶ②
<理由①>
 L39「広田先生にほめられた」
→広田先生に作文を褒められたから②
<背景①>
 L1「ハァちゃんは何となく広田先生とは気が合わなくて、うまくゆかない」
→広田先生と関係がうまくいっていない①
<気持ち②>
 L64「ハァちゃんはたまらなかった。なんとも情けない気持ちが先立って嬉しいなどまったく感じないのだ」
L76「自分が嫌」
→たまらない/情けない/自己嫌悪/後ろめたい/とまどう②
<理由②>
L27「それは今勝手に考えたことで、そのときに『感じたまま』ではない。言うなれば、嘘のことだ」
L40「しかし、先生が認めて下さったところは、先生の言われる『感じたまま』を書いたのではなく、普通の大人の人なら喜びそうなことを後で考えて書いたものだ」
→褒められた部分は嘘を書いた部分だったから/つくりものの部分を褒められてしまったから/普通の大人の人なら喜びそうなことを書いてほめられてしまったから/後で考えて書いた部分をほめられたから②
<背景②>
 L6「見たまま、聞いたまま、感じたままをそのまま書くとよい作文になります」
L41「先生の言われる『感じたまま』を書いたのではなく」
→広田先生は感じたままを書くのが良いと言っていた/ハァちゃんは感じたままを書いていない①
A.関係がうまくいっていない広田先生に作文のできを認められたことは嬉しかったが、特に丸をつけてくれた部分はほめられようと嘘を書いた部分であり、先生に言われたように感じたままを書いたわけではないので、後ろめたい気持ちになっている。

問四 「れる・られる」の四用法。設問文は受け身
A    ○ 受け身
B    × 可能
C    × 尊敬

問五 脱語挿入選択。空欄が二箇所ある。後者を線部延長すると「昨晩の兄たちの   が嘘のようだ」となる。「昨晩」のL68の「一同(=兄たち)」の様子と、「今」のL111の「兄たち」の様子が対比。「昨晩」はL68「一同   をしてお父さんの言葉を聞いている」とあり、「今」はL110「これらすべての思いをこめてミト兄ちゃんは、ここでうまくジョークを飛ばしてくれたのだ。昨晩の兄たちの   が嘘のようだ」とある。「ジョークを飛ばして」いるのだから、これと逆の雰囲気の表現が入ることになるので「神妙な顔」。ここでの「神妙」は態度がおとなしく、すなおなこと。

問六 説明選択。線部の表現「要領よくやる奴は、だいたい誠意がないな」より、「誠意」は「正直に熱心に事にあたる心。まごころ」のことなので、「誠意がない」というのは「正直でない=嘘つきである」ということ。以上より語彙力で解ける。
他の解法として、少なくとも「要領よくやる奴」に対してマイナス評価であることを掴む。これはL74「馬鹿にしている」、L76「自分が嫌になってきた」といった表現からも読み取れる。また、ここでの「要領よくやる奴」とは具体的にはハァちゃん。ハァちゃんは、大人(先生や父)に褒めてもらえるように嘘の作文を書いた。これを抽象化すると、「人の評価をたくみに得ようとする者」となるので、「うまく事態を切り抜けようとする者」となっているア、イは不適。またハァちゃんは「人を傷つけ」てはいないのでエも不適。以上より消去法でも解ける。
ア   × 「うまく事態を切り抜けようとする者」は「要領よくやるやつ」の言い換えにならない。また「礼儀」の話でもない。
イ   × 「うまく事態を切り抜けようとする者」は「要領よくやるやつ」の言い換えにならない。また「約束」の話でもない。
ウ   ○
エ   × 「人を傷つけがち」が根拠なし。

問七 ⑤脱文挿入記述。線部延長すると「『隼雄の作文が上手なのは、 2 からですよ』と言われ、日曜日にも読書を許可しては、と陳情された」となる。「作文」と「読書」をキーワードにすると、形式段落内にどちらも出てくる。ゆえに形式段落の内容を把握して挿入内容を推定する。また 2 の後ろに「から」があるので、 2 には「隼雄の作文が上手な」理由が入る。「。」を付けないように注意。
A.よく本を読んでいる/読書が好きだ⑤

問八 心情選択。問五、六と連関。線部の「心は曇り勝ち」という表現から、ハァちゃんの心情はマイナス。この後プラスに転じる展開なので、心情変化。変化前のハァちゃんの「曇り勝ち」な気持ちは、前日の作文の話題を理由とする。ゆえに「読書」の話題ではない。L73「『ハァちゃんは要領のよいことを書きやがって』と兄さんたちが自分を馬鹿にしているのではないか、などと思えてきたのだ」からア。またL76「ますます自分が嫌になってきた」からエ。この場面では、ハァちゃんと兄弟しか登場しないので、それ以外の登場人物を原因とするウ、オは不適。
<変化前>
(      )
→「心は曇り勝ち」
<きっかけ>
L103「戦地におられる博兄ちゃんのことを思い、頑張って雑巾がけをしよう!」
→ミト兄ちゃんの発言
<変化後>
L110「これらすべての思いをこめてミト兄ちゃんは、ここでうまくジョークを飛ばしてくれたのだ」
→明るい気持ち
ア   ○ L73「『ハァちゃんは要領のよいことを書きやがって』と兄さんたちが自分を馬鹿にしているのではないか、などと思えてきたのだ」
イ   × 「大変つらい」が言い過ぎ。程度の誤り。
ウ   × この場面では「お父さん」が登場しない。また「広田先生と同じ」なら嬉しい気持ちを伴うので「心が曇り勝ち」というマイナス表現がそぐわない。
エ   ○ L76「ますます自分が嫌になってきた」
オ   × 「その望みも絶たれた」が言い過ぎ。
 
問九 ⑩説明記述。問三と関連。「兄弟」の「いい」ところをまとめる。線部の直前でL115「『あっ、みんなわかってくれてたんや』とハァちゃんはゲラゲラ笑いながらも、じーんとくるものを感じていた」とあるので、線⑤時点のハァちゃんの心情は感動。この理由が「兄弟」の「いい」ところ。L106~111が解答のベースになる。心情変化の型を用いて考えても良い。この場合<変化前>は問三の内容。また、変化後の心情は問われていないので不要な要素となる。
<変化前/それまでのハァちゃんの気持ち/問八の内容>
L64「ハァちゃんはたまらなかった。なんとも情けない気持ちが先立って、ほめられて嬉しいなどまったく感じないのだ」
L76「自分が嫌」
→いたたまれない/後ろめたい/気落ちしている/自己嫌悪②
<理由①>
L106「あの作文が『つくりもの』であり、それに感心されたお父さん」
→嘘を書いた作文をほめられた/お父さんが感心したのはつくりものの部分である②
<理由②>
L58「お父さんはハァちゃんの作文の、先生が赤丸をつけられてところを読みはじめられた」
L108「それにしても、あんなのを皆の前で読まれて」
→嘘を書いた作文をみんなの前で父に読まれた②
<きっかけ/兄弟のいいところ①>
L109「笑い飛ばしてしまえ」
L110「これらすべての思いをこめてミト兄ちゃんは、ここでうまくジョークを飛ばしてくれたのだ」
→冗談にして笑い飛ばしてくれたところ②
<変化後/線⑤におけるハァちゃんの気持ち>
 L116「じーんとくるものを感じていた」
 →感動
<理由/兄弟のいいところ②>
L115「あっ、みんなわかってくれてたんや」
→ハァちゃんの気持ちを理解してくれるところ/ハァちゃんの気持ちが分かるところ②
A.嘘を書いた作文をみんなの前で父に読まれたばかりか、ほめられてしまったハァちゃんのいたたまれない気持ちを理解し、冗談にして笑い飛ばすことで心配していた気持ちを吹き飛ばしてくれる思いやりのあるところ。
 

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