WS-122️⃣

いしいしんじ「調律師のるみ子さん」からの出題。

問一 ⑧理由記述。設問文に「できるだけ文中の言葉を用いて」とあるので写せる。「ピアノのチューニング」がキーワード。L13「『いつの間にかまた調整が必要となる』ピアノのチューニングのおかげ」とあるのでここを説明する。
<理由>
L12「仕事の注文が途絶えることはありませんでした」
→仕事が途絶えないようにするため/仕事が来るようにしたいから④
<方法>
L13「『いつの間にかまた調整が必要となる』ピアノのチューニングのおかげ」
→いつの間にかまた調整が必要になるように、一音外しておく④
A.いつの間にかまた調整が必要になるようにして、仕事が途絶えないようにするため。

問二 ⑥説明記述。設問に「いつ、どのようなとき」とあるので指示を守る。「いつ」については設問文の「指が失われた」の類義表現がL11「十年前に手指を失い」なので、ここから「十年前」だと分かる。「どのようなとき」は原因の言い換えなので、L53に「十年前」に着目し、それがL55「怪我」のせいであることを読み取る。具体的にはL53「十年前のお礼から、その手紙ははじまっていました。あの転覆した電車のなかで、見ず知らずのあなたに助けていただいて、まだ小学生だった私は、ろくにお礼も言えませんでした。お怪我は大丈夫だったでしょうか」を参照。
<いつ>
 L11「十年前に手指を失い」
→十年前②
<どのようなとき>
L53「あの転覆した電車のなかで、見ず知らずのあなたに助けていただいて、まだ小学生だった私は、ろくにお礼もいえませんでした」
→電車の転覆事故の際に小学生を助けたとき②+②
 ※「電車の転覆事故のとき/小学生を助けたとき」は説明不足で②とする。
A.十年前の電車の転覆事故の際に小学生を助けたとき。

問三 説明選択。比喩の理解。「ような」があるので直喩。「時計の針」とるみ子さんの「お辞儀」の共通点から考える。「時計の針」は機械。るみ子さんは人間であるにも関わらず機械のような動作をしている、ということ。これは「感情がこもっていない」ということを表している。消去法でも可。
ア   × 「緊張して」いない。
イ   ○
ウ   × 「頭を下げる時間と上げる時間が同じ」かどうか不明。それを「時計の針」に喩えるのもおかしい。
エ   × 「明るくユーモアを感じさせる」ことと、「時計の針」が共通点を持たない。

問四 語彙。慣用句。「肩をすくめる」=①はずかしい②どうしようもないと思う。本問では②。「肩をすくめて」いるのは老人なので、老人のセリフであるL32「お話になりませんな」やL35「ピアノはそのままにして、どうぞお帰りください」などから判断しても良い。
ア   × 「困らせてやろう」という思いはない。
イ   × 「強そうに見せたい」という思いはない。
ウ   × 「申し訳ない」という思いはない。
エ   ○

問五 心情選択。不適選択になっていることに注意。「真っ赤になる」は「顔を赤くする」を省略したもの。多義語なので注意。恥ずかしい、怒り、とまどいが考えられる。
ア   ○
イ   ○ L44「憤然としてるみ子さんは帰ります」。
ウ   ○ L37「でも」、L39「音は全部合っていますよ」
エ   × L37「でも」、L39「音は全部合っていますよ」とるみ子さんは老人に反論していることから、「反省」は適合しない。

問六 ⑧心情記述。25~35字指定。指定語句「仕事」を使うのを忘れないように注意。雨が情景描写に使われており、るみ子さんの心情を暗示している。「心の状態」が問われているが通常の気持ちの記述で良い。気持ちは線部や情景描写から分かる。L44「何日も雨が続きました」で「雨」が続いていることから、るみ子さんの心情も持続。「雨」はマイナス側なので「悩む」。
<るみ子さんの心の状態/現在の気持ち/線⑥の表現から分かる心情>
悩んでいる/悩み続けている/気が重い②
<結果/「仕事」との関連付け>
仕事に集中できない/仕事が手に付かない②
<原因となった気持ち>
L29「頬を打たれたような表情」
→衝撃/ショック②
※老人の言葉を聞いた直後はL44「憤然」としているが、「怒り」関係の気持ちは当初の気持ちであり、変化後の「悩み」につながらないので①
<理由>
L28「全然音が違っていますよ」
L42「これじゃあピアノがかわいそうです。あなたは本当のところ、ピアノのことがお好きではないようですね」
→老人の言葉/老人に自分の仕事を否定された/老人に音が違っていると言われた②
A.老人の言葉に衝撃を受け、仕事に集中できないほど悩んでいる。/老人の言葉がショックで仕事が手につかず悩む気持ち。

問七 理由選択。ただチョコレートケーキを焼くのではなく「工夫」をこらしているのは気持ちを込めているから。ここ込められた気持ちはL53、55、58「お礼」やL60「ほんとうに、ほんとうにありがとうございました」から感謝だと分かる。
ア   × 「成長」を伝えたいのではない。
イ   ○
ウ   × 「なかなか手に入らないものであることを伝えたかった」のではない。
エ   × 「最もおいしいケーキであることを伝えたかった」のではない。

問八 説明選択。情景描写による暗示だが、気持ちの変化と考えた方が分かりやすい。
<はじめ/問一の内容>
L2「チューニングを、いつも一音、わずかだけ外しておきます。」
L42「これじゃあピアノがかわいそうです。あなたは本当のところ、ピアノのことが、あまりお好きではないようですね」
→ピアノへの愛情を知らぬ間に失っていた
<ケーキによる暗示>
L62「ケーキを冷蔵庫にしまいました。元来、甘いものが好きではないのです」
→ケーキ=ピアノに(本当の意味で)関心を持っていない/真剣に向き合っていない
<きっかけ>
L64「学生の頃によく聞いたピアノソナタ」の演奏を「古いレコードを取り出し」て聞いた
L66「久しぶりに聞くその音は、以前と同じく、きらきらと光を振りまくように聞こえました。それでいて、どの演奏のピアノも、すべて、それぞれが違う輝きを放っているのでした。」
→自分は変わってしまったが、レコードのピアノの演奏は変わっていないという対比
→昔の自分(L10「ピアノ曲の演奏途中、突然曲をやめ、黙々と調律を始めたことがあります。」)を思い出す。
<変化後>
かつてのピアノへの愛情を取り戻した/本来のるみ子さんの気持ちに戻る/繊細な感性を取り戻す
<ケーキによる暗示>
L68「るみ子さんは冷蔵庫をあけ、チョコレートケーキをつまみました。」
→ケーキ(=ピアノ)に関心を持つ/真剣に向き合う

問九 ④×2適文補充記述。前回と今回の調律の違いを読み取り、まとめる。設問文で「~対し」となっているので対比。解答欄が小さいので「音叉」と「耳」の対比が取れていれば正解とする。模範解答にあるように、本来は言葉を補いそれぞれがどのような調律であるかも説明すべき。
<前回/対比A>
L20「音叉を出し、調律をはじめました」
→音叉を使って型通りに調律/音を合わせることを④
<今回/対比A’>
 L75「他のピアノにはない響き、それぞれの音が見せる表情を、一瞬でも聞き逃すまいと息をひそめて。ピアノのささやきは、はじめはおずおずと、その内大胆に、彼女の耳に流れ込んできました」
→自分の耳を(最大限に)使って(真剣に)④

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