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1級FP技能士が考える医療保険の必要性について

 みなさんは医療保険に加入していますか?日本はアメリカに次いで世界第2位の保険大国ですので大多数の方が加入しているものと思われます。

しかし、最近はユーチューバーやSNSの影響もあり医療保険は必要ないとの考え方がよく聞かれるようになってきました。私が思う医療保険の必要性について考えていきたいと思います。

保険のことは全然わからないけど保険に入ったほうがいいのかどうか悩んでいるかたは多少独断と偏見はありますが参考していただけたら幸いです。

そもそもなぜ保険に加入するのか

そもそもですがなぜ医療保険に限らず「保険」に加入するのでしょうか?

「保険」とはあるリスクや損害に対して、保険契約者が一定の保険料を支払い、保険会社がそのリスクや損害を補償する制度です。具体的には火災、盗難、交通事故、病気、死亡など様々なリスクがあります。

そのリスクや損害が起きた時に自分で対処ができるのか、損害額を支払うことが可能なのか、仮に支払った場合に生活に影響はないのか等様々な視点から検討を行う必要があります。自分で対処することが不可能な場合にそのリスクを回避するため、今後の生活が破綻しないようにするために「保険」に加入するんですよね。

つまり「破綻」の恐れがないのであればそこまで保険にこだわる必要はないとの考えもありますね。

実際医療費ってどのくらいかかる?

日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入することになっているため病気のときや事故にあってしまったときの高額な医療費負担を軽減してくれます。

下図のとおり年齢や所得によって負担割合が違いますが、一番層が多い6歳以降70歳未満の方は3割負担ですね。
なお3割負担になったのは2003年からです。以前は2割負担でした。これだけ少子高齢化が進んでも20年も3割負担を維持しているのは素晴らしいですね。まあ物価や他の税金は上がってますが(泣)
例えば3割負担の場合ですと1ヶ月に100万かかったとしたら請求額は30万ですね。

出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-37.html

 
 でも実際は30万も支払う必要はないですよね?健康保険には高額な医療費がかかる場合に一定の範囲内で自己負担額を上限にして医療費を支払ってもらえる「高額療養費制度」といわれる制度があります。

出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-37.html

実際に病院に支払うは医療費は30万円もかかりません。
年収により違いますが、370万円から770万円の場合自己負担額は
80,100円+(1,000,000円ー267,000円)×1%=87,430円となります。
300,000円ー87,430円=212,570円←これが高額療養費としてあとからもらえるのです。医療費が高額になることが事前にわかっている場合はあらかじめ限度額適用認定証を加入している健康保険に申請しておくと自己負担上限額の87,430円だけ支払えば良いのです。

また高額療養費制度には「多数該当」という制度があり直近12ヶ月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下げになる特例があります。(370万~770万のかたは44,400円)

食費(基本的に1食460円。)や差額ベッド代(1人〜4人部屋の個室に入る場合に請求される。ちなみに自ら個室に入りたいと希望しない限り請求されません。病院の都合で個室にした場合などは原則支払う必要はない。)は別途請求されるので高額療養費限度額までの請求の場合は雑費等込み込みで10万以上はかかると思っていいでしょう。

公務員や大企業にお勤めのかたは確認を

公務員や大企業にお勤めのかたは「付加給付」と呼ばれる健康保険が独自で行っている給付制度が利用できる可能性があります。

ご加入の健康保険に確認が必要ですが上限額25,000円が一般的かと思われます。

付加給付が受けられるのであれば加入の必要性が低いと考える人が少なくないと思われます。

なぜ医療保険は不要と言われるのか?

掛け捨てであれば数千円で手軽に掛けられるため加入者はたくさんおられると思いますが、必要性を感じないため不要と考えの方も当然いらっしゃると思います。不要と考える理由を考えてみました。
①健康保険制度が充実しているため
②充分な貯蓄があるため
③支払った保険料に対して将来受け取る保険金の方が少ない

①については前述したとおり高額療養費制度により自己負担の上限額が決まってますので貯蓄で準備ができている場合はそんなに心配ないかもしれません。しかし年収が高い人は上限額が変わりますので注意が必要ですね。

②充分な貯蓄があり医療費はそこから支払うと決めている人も合理的ですね。保険には全く入らないと決めた場合の医療費用の貯蓄としていくら貯めるのかは難しいところですね。

③保険会社は慈善事業ではありませんので契約者からいただく保険料に人件費や事務費など(予定事業費といいます。)をあらかじめ見込んで計算をしております。つまりどう転んでも保険会社が儲かるような仕組みになっているということですね。要するに自己負担分を貯蓄から支払ったほうが一番合理的なわけです。(一定数得をする人はいますが。)
そもそも損得で考えると保険には加入しないほうが良いでしょうね。

まとめ 

前述のとおり健康保険制度のお陰で医療費は天井知らずでかかるわけではありません。そのため保険に加入しない人も一定数いらっしゃいますが加入しないとなると当然支払う保険料は浮きます。当たり前ですが保険事故がおきたとしても一銭ももらえません。
浮いた分は保険料を払ったものとして貯金や投資をするなどして生活費の口座から避けておかないとよほど意思の固い方でなければ日々の生活費で使ってしまう方が多いと思います。
また、浮いた分を貯金したとしても緊急の出費の必要性が起きた時に使ってしまう可能性はゼロではありません。
保険に加入していた人は多額の給付を受けられ、加入していない人は当然給付金は受けられませんがその分保険に加入している人より多くの貯蓄が出来ていなければ意味がありません。(日々の貯蓄を増やす必要がないほど現時点で貯蓄がある人は除く。)

また入院や手術などの保険事故は決して喜ばしくないことではあるが多額の給付金を受け取ることによる経済的、精神的に安心感を得られるメリットは大きいと思います。入っておいて良かったと思う方が多数だと思われます。

数百万の貯蓄がある人や教育費や住宅ローンや頭金、老後資金など将来かかるであろう資金の目途がついているもしくは子供がいない等そもそも用意する必要がない人を除いて何らかの保障があったほうが安心ではないでしょうか。

また物事を合理的に考えられることができ、医療用の貯蓄としてきちんと毎月継続して行い、かつ如何なる時にも手を付けない強靭な精神力をお持ちの方以外も最低限加入したほうが無難だと個人的には思います。

感情は抜きにして考えるべき事ですが実際保険事故が起きたときこそ感情的になってしまうのが人間ではないでしょうか。いくばくかの貯蓄はあるが医療費は全て貯蓄から出し、入ってくる保険金はゼロだとしたらやはり精神的にこたえる人もいると思います。

そして医療保険だけに頼るのではなく同時に貯蓄や投資に励み、加入の保険での保障が足りなければ必要に応じてそこから支払っても良いのです。必要最低限の保険であれば(理想は掛け捨て)保険料もそんなに高くないので貯蓄や投資もあわせて行うことができるはずです。要はバランスが大事なのです。精神衛生上においても良いのではないでしょうか。
実は投資も絡めて考えたいところですが長くなりそうなのでそれはまた別の記事にて書いていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!





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