第15回 3問 28問 妄想性障害(感応性精神病 敏感関係妄想など)

3.妄想性障害において良好な予後を予測させるのはどれか、2つ選べ。
a. 女性
b. 中高年発症
c. 社会的孤立
d. 潜行性発症
e. 誘因の存在
解答:a e  


28.持続性妄想性障害について誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 中年期の発症が多い。
b.考想伝播の既往があってもよい。
c.幻聴はあっても一時的なものである。
d.敏感関係妄想とされるものが含まれる。
e.妄想の内容は生活環境と関連するものが多い。
解答:b


第4回 73問
1)妄想性障害について誤っているのはどれか、2つ選べ。
a.女性の方が予後が良い。
b.有病率は統合失調症よりも低い。
c.発症年齢は統合失調症よりも高い。
d.統合失調症の家族歴があることは妄想性障害発症のリスクである。
e.妄想性障害の家族歴があることは統合失調症発症のリスクである。
解答:d e
DSM-IV-TRに従えば、妄想性障害の診断は、奇異でない妄想が最低1か月持続し、しかもそれが他の精神疾患によるものではないときになされる。「奇異でない」が意味するところは、妄想が実生活においてもありうる内容であるということである。例えば、追跡されている、毒を盛られる、遠く離れた人に愛されるなどであり、患者はこれに対して、実際にそのようなことはないにもかかわらず、通常ありうることとして対処している。
○a. 妄想性障害の長期経過をみると、約50%が寛解し、20%、が軽快、30%は不変である。予後良好の因子として、仕事や社会機能面での適応水準が高いこと、女性、発症年齢が30歳以下、突然の発症、症状の持続期間が短期、誘因が存在することなどが挙げられる。
○b. 妄想性障害の有病率は、米国では0.025~0.03%と見積もられており、有病率が約1%の統合失調症や、約5%の気分障害に比して、極めて稀な疾患といえる。
○c. 平均発症年齢は約40歳であるが、その範囲は18~90歳代までに及び、統合失調症よりも発症が遅いことが知られている。
×d. 家族研究の結果に基づくと、妄想性障害の家族歴には同障害がみられる確率が高いこと、同障害に関連した性格(例えば疑い深さ、嫉妬深さ、秘密主義)が多くみられることが指摘されている。また、妄想性障害血縁には、統合失調症も気分障害も高率にはみられるず、統合失調症の家族でも妄想性障害が高率にみられることはなかったことが報告されている。
×e. dの解説参照。

妄想性障害に関連する危険因子(カプラン p.374)
・高齢
・感覚障害あるいは遮断
・家族歴
・社会的孤立
・パーソナリティ特徴(たとえば、並外れた対人過敏)
・最近の移住


第5回 48問
2)妄想性障害の発症に関連する危険因子で誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 高齢
b. 社会的孤立
c. 感覚機能の低下
d. 統合失調症の家族歴
e. 対人過敏や猜疑心などの人格特徴
解答:d
 妄想性障害の病因について、中心的な概念となることは、統合失調症や気分障害との相違である。この障害は、統合失調症や気分障害に比して極めて稀であり、発症年齢が統合失調症よりも高く、女性の占める比率が気分障害よりも極めて低い。この障害の家族歴には、妄想性障害やこの障害に関連した性格(疑い深さ、嫉妬深さ、秘密主義など)が多くみられること、統合失調症も気分障害も高率にはみられないこと、統合失調症の家族歴でもこの障害が高率にみられることはなかったことが報告されている。長期追跡調査では、この障害の診断はは変更されることは少なく、最終的に統合失調症として再分類されたものは25%以下、気分障害として再分類されたものは10%以下であることが示されている。これらの所見は、この障害が単に統合失調症や気分障害のどちらかの、もしくは両者の初期発達段階ではないかという見解を支持する。
 妄想性障害に関連する危険因子として、社会的孤立や感覚の断絶、社会経済的損失、パーソナリティ障害などの因子が挙げられる。聴覚障害者や視覚障害者、最近移民した者で新たな言語に適応する能力に限界がある者も、一般の人々に比べて妄想形成への脆弱性をもっている。またこの脆弱性は高齢であるほど強くなる。妄想性障害や他の妄想的特徴は高齢者では珍しくない。


第9回 76問
3)妄想性障害について正しいのはどれか、2つ選べ。
a. 嫉妬妄想は女性に多い。
b. 幻聴はあるとしても一時的なものである。
c. 感応性妄想性障害は一過性のことが多い。
d. 妄想の内容は被害的、心気的なことが多い。
e. 妄想にもとづいて自傷や他害の行動におよぶことは稀である。
解答:b d 
×a. 妄想性障害の嫉妬妄想は男性に多い。
b. 妄想性障害では幻聴は認めないことが多いが、あるとしても一時的である。
×c. 感応性妄想性障害は二人組精神病と呼ばれることがあり、一人は統合失調症などの真の精神病性障害に罹患しており、もう一人の妄想は感応されて生じる。二人の間の依存や献身などの親密な情緒的つながりを背景としていることが多いため、一過性のことは少ない。
○d. 妄想性障害の妄想の内容は被害的、心気的なものが多い。
×e. 妄想性障害においては被害妄想や嫉妬妄想にもとづいて自傷や他害の行動におよぶことがある。

*妄想性障害の類型
a)被害型:被害妄想は、統合失調症にみられるそれと対照的であり、明快で理論的、そして被害主題が精巧に体系化されており、このことがこの障害における注目すべき特徴である。
b)嫉妬型:通常男性、しかも多くは精神疾患歴のない者に起こる。妄想は、突然出現することが多く、配偶者の行動に関する現在および過去の出来事を説明する役割を果たす。この状態の治療は困難で、配偶者との離別、離婚、配偶者の死が唯一の軽快への道となる。
c)被愛型:通常自分より社会的地位の高い上の人が、自分を愛しているという妄想的確信をもつ。
d)身体型:単一症状的心気精神病(monosymptomatic hypochondorical psychosis)と呼ばれてきたもの。
e)誇大型:
f)混合型:
g)特定不能型(unspecified type):ある種の人物妄想、例えば替え玉妄想を提唱したカプグラ症候群(Capgras syndrome)をあげることができる。また、迫害者や親しい人が、見知らぬ人の外観を装っているかもしれないという妄想(フレゴリの錯覚)もある。これらは稀であるだけではなく、統合失調症、認知症、てんかん、その他の器質性精神障害と関連することがある。
さらに、コタール症候群(財産、地位、能力のみならず心臓、血液、腸までも失ってしまった訴える)もある。

*感応性妄想性障害=共有精神病性障害
共有精神病性障害(shared psychotic disorder:これは歴史的に共有妄想性障害(shared paranoid disorde),感応性精神障害(induced psychotic disorder),押しつけられた狂気(folie impose)、そして二重の狂気(double insanitiy)と呼ばれてきた。1877年にラセグとファルレの2人のフランス人精神科医によって記述され、2人組精神病と命名された。
この障害は、妄想がある人からもう1人の人に移されることを特徴とする。その際両者は長年緊密な関係にあり、ともに暮らし、社会的に比較的孤立しているのが典型的である。この障害の最も一般的な類型では、最初に妄想を持った者(発端者)は、慢性的に病んでおり、また典型例では、暗示にかかりやすく同様の妄想をもつにいたる者(継発者)と緊密な関係をもち、かつ優位に立っていることが多い。継発者は発端者に対して、しばしば知的に劣り、愚鈍であり、より受動的、より自信に欠けている。両者が分離されると、継発者の妄想は消失することが多いが、必ずそうなるとは限らない。この独特な形態の精神病性障害に関連する因子として、高齢、知能の低さ、感覚障害、脳血管性障害、アルコール依存などがあげられる。

第10回 
39.感応性妄想性障害について誤っているのはどれか、2つ選べ。
a. 幻覚をしばしば認める。
b. 妄想は通常は慢性である。
c. 他者から孤立したなかで生じやすい。
d. 感応の対象に依存的や献身的であることが多い。
e. 感応の対象から分離しても症状が持続することが多い。
解答:a e
感応性妄想性障害(F24)は、二人組精神病folie a deuxとしても知られています。ごく近い関係にある妄想的な人物に影響され、別の人物に妄想が発展することです。妄想の共有は男性よりも女性に多く、家族内で発生することが多いようです。社会的な孤立が一因とされています。妄想の内容はそれほど奇異でないことが多く、第一の患者から離れることによって、影響されたもう一人は改善することもありますが、そうならないこともあります。妄想に感応した方の人物は、通常、真の精神病に罹患している人物に依存的であったり、献身的であったりします。感応性の幻覚はまれですが、それによって診断が否定されることはありません。
第1回 
2)92.感応精神病について誤っているのはどれか、1つ選べ。
a.男性より女性に多い。
b.3人以上が巻き込まれることがある。
c.当の人物たちは、外界から孤立していることが多い。
d.当の人物たちを互いに切り離しても妄想が持続することが多い。
e.妄想に感応した人物は、感応させた人物に依存的であることが多い。
解答:d
○a. Kashiwaseら(1997)の総説によれば、わが国では母子、夫婦の間で生じることが多く、したがって女性が多く含まれていると報告されている。
○b. 二人組精神病とも言われるように、一般的には2人が多いが、3人以上のこともある。
○c.当の人物たちは親しく同居していて、しばしば外界からは言語的、文化的、地理的に孤立している場合が多い。
×d. 感応精神病が現れる前から精神病状態にある人物から感応されて類似の精神症状が出現していた被感応者は、通常、原因になっていた人物から切り離されることで症状は間もなく消失する。
○e. 被感応者は、原因になっている精神病状態にあった人物に対して依存的、献身的、従属的で被暗示性が高いことが多い。


第11回 1問
4)妄想性障害において良好な予後を予測させるものはどれか、2つ選べ。
a. 男性
b. 高齢発症
c. 急性発症
d. 社会的孤立
e. 誘因の存在
解答:c e 

第11回 88問
5)妄想性障害について誤っているのはどれか、2つ選べ。
a. 通常は青年期に発症する。
b. 幻聴はあっても一時的なものである。
c. 敏感関係妄想とされるものが含まれる。
d. 妄想の内容は生活環境と関連するものが多い。
e. 被支配妄想や考想伝播の既往があっても診断される。
解答:a e 

*敏感関係妄想(クレッチマー) 現代臨床精神医学p.364
クレッチマー(1918)の提唱した妄想性障害の一型。
敏感な人格の持ち主、すなわち一方では内気でひかえめで、相手の気持ちや対人関係に敏感で傷つきやすいが、他方では道徳観や名誉心が強い人格の者が、ある困難な状況におかれ、その状況から長期間逃れることができないときに、体験反応としてある程度了解可能な関係妄想を生じ、その臨床像は統合失調症の妄想型やパラノイアと区別しにくいものをいう。妄想には関係妄想、被害妄想、被愛妄想などがある。

第2回 82問
クレッチマーが統合失調症の病前性格としてあげた統合失調質(分裂病質)の特徴として適切でないのはどれか、1つ選べ。
a.敏感
b.頑固
c.無頓着
d.非社交的
e.自然と書物の愛好者
解答:b
 クレッチマーは、統合失調症の病前人格はるいは近親者に見られる人格傾向として、正常範囲内の統合失調気質(分裂気質)と異常人格の程度に達している統合失調質(分裂病質)を挙げ、後者として次の3群を記載している。

①(自閉傾向)非社交的、無口、控え目、生真面目、変人
②(精神的感受性の亢進、敏感性)内気、臆病、繊細、敏感、神経質、興奮性、自然と書物の愛好者
③(精神的感受性の低下、鈍感性)従順、善良、温和、無頓着、鈍感
①の特徴は自閉傾向、②は精神的感受性の亢進、③はその低下を示し、統合失調質では自閉性とともに敏感性と鈍感性という相矛盾する傾向が同居することになる。クレッチマーは軽い統合失調質から重い統合失調質を経て統合失調症に至る移行があり、統合失調質が亢進すると統合失調症になりうると考えた。

第3回 4問
敏感関係妄想(クレッチマー)について誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 被害妄想にまでは発展しない。
b. 重症な場合も人格は維持される。
c. 体験反応としてある程度了解可能な関係妄想を呈する。
d. 困難で逃れたい状況に置かれるという環境作用が関係する。
e. 相手の気持ちや対人関係に傷つきやすい人格が関係する。
解答:a
×a. 敏感関係妄想の臨床像は、統合失調症の妄想型やパラノイアと区別しにくく、妄想内容には関係妄想、被害妄想、被愛妄想などがある。
○b. 敏感関係妄想の経過の特徴は、その病気を通じて心理反応性が活発で、比較的軽症例は治癒傾向を示し、重症の場合にも人格は維持されていることである。
○c.d.e. 敏感関係妄想は、クレッチマーが提案した妄想性障害の一型で、敏感な人格の持ち主、すなわち一方では内気で控え目で、相手の気持ちや対人関係に敏感で傷つきやすいが、他方では道徳観や名誉心が強い人格の者がある困難な状況に置かれ、その状況から長時間逃れることができないときに、体験反応としてある程度了解可能な関係妄想を生じるものである。

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