第15回 10問 薬剤性パーキンソニズム

10.薬剤性パーキンソン症候群について正しいのはどれか、2つ選べ。
a.筋固縮の左右差は目立たない。
b.特発性に比べて粗大な振戦が多い。
c.原因薬剤の中止により数時間で消失する。
d.予防のために抗コリン薬の併用が望ましい。
e.原因薬剤の開始後、数日から数週間後で出現することが多い。
解答:a b
○a. パーキンソン病の診断では症状の左右差が初期に目立つことが重要である。しかし、薬剤性パーキンソニズムでは症状の左右差が目立たないことが多い。診察上は筋固縮に左右差が目立たないことが重要である。
○b.丸薬丸め様振戦(pill-rolling tremor)は稀であるが、本態性振戦に類似した律動的で粗大な振戦は認められる。(カプランp.1038)
×c.抗精神病薬を中止後でもパーキンソン症状は2週間までみられ、高齢者においては3か月まで継続することがある。(カプランp.1039)そのような患者では、抗精神病薬を中止後も、抗コリン薬をパーキソン症状が完全に消失するまで使用する。
×d.抗パーキンソン病薬(抗コリン薬)は抗精神病薬による錐体外路症状を軽減するが、長期的な併用で遅発性ジスキネジア発現のリスクを高めることがある。したがって、抗コリン薬の併用はできるだけ短期間にとどめ、抗精神病薬の用量調節で錐体外路症状を回避できない時のみ使用するほうがよい。
→よって予防のための抗コリン薬の併用は誤り。
e.×抗精神病薬による錐体外路症状作用が治療開始から出現するまでの通常の期間は、急性ジストニアで数日、アカシジアで数日~数週間、パーキンソニズムで2~3週間、遅発性ジスキネジアで数年といわれる。


第2回 39番
1)抗精神病薬によるパーキンソニズムの特徴として誤っているのはどれか、1つ選べ。
a.症状の左右差が目立たない。
b.レボドーパの投与は推奨されない。
c.振戦は、筋固縮や寡動に比べて目立たない。
d.抗精神病薬開始2~3週間後に出現することが多い。
e.動作時振戦や姿勢振戦よりも安静時振戦の頻度が高い。
解答:e
○a.パーキンソン病の診断では症状の左右差が初期に目立つことが重要である。しかし、薬剤性パーキンソニズムでは症状の左右差が目立たないことが多い。診察上は筋固縮に左右差が目立たないことが重要である。
○b.薬剤性パーキンソニズムの治療は、統合失調症の治療に同効で、パーキンソニズムをよりきたしにくい薬剤に変更することが原則であるが、これが不可能な場合はパーキンソン病治療薬の併用が行われる。抗精神病薬誘発性パーキンソニズムに対するレボドパの投与は無効ないし、抗精神病薬作用を拮抗するのみであるため、推奨されない。
○c.振戦はパーキンソン病の主徴で薬剤性パーキンソニズムでもよくみられる症状であるが、筋固縮・寡動に比べて目立たない場合が多い。振戦は通常手指に目立つことが甥が、下肢や下顎、舌にみられる場合もある。
○d.抗精神病薬による錐体外路症状作用が治療開始から出現するまでの通常の期間は、急性ジストニアで数日、アカシジアで数日~数週間、パーキンソニズムで2~3週間、遅発性ジスキネジアで数年といわれる。
×e.薬剤性パーキンソニズムでは、パーキンソン病の特徴である安静時振戦よりも、動作時振戦、姿勢振戦などの頻度が高い

第3回 41番
2)抗精神病薬によるパーキンソニズムについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a.女性に出現しやすい。
b.高齢ほど出現しやすい。
c.抗精神病薬開始2~3週間後から出現する。
d.中脳辺縁系ドパミンD2受容体遮断により出現する。
e.同様量の抗精神病薬を継続していても消失することがある。
解答:d
a.○
パーキンソン病の診断では症状の左右差が目立つが、薬剤性パーキンソニズムでは症状の左右差が目立ないことが多い。診察上は筋固縮に左右差が目立たないことが多い。
b.○
aの解説参照。
c.○
抗精神病薬による錐体外路症状作用が治療開始から出現するまでの通常の期間は、急性ジストニアで数日、アカシジアで数日~数週間、パーキンソニズムで2~3週間、遅発性ジスキネジアで数年といわれる。
d.×
抗精神病薬によるパーキンソニズムは、黒質線条体系のドパミンD2受容体遮断作用によって引き起こさせれる。
e.○
パーキンソニズムは抗精神病薬の用量を減らすことによって抑制できることがある。減量すると抗精神病薬作用が弱くなる場合には、抗パーキンソン病薬を併用する。維持治療の際、抗精神病薬の用量が変わってないのにパーキンソン病症状が消失することがある。抗パーキンソン病薬は、遅発性ジスキネジアのリスクを高めることがあるので、定期的に抗パーキンソン病薬の継続投与が必要かどうかを確認する必要がある。


第4回 82問
3)統合失調症患者に抗精神病薬を処方してパーキンソニズムが発現した場合、中止後もパーキンソニズムが最も長く持続する可能性が高い抗精神病薬はどれか、1つ選べ。
a.リスペリドン
b.クエチアピン
c.オランザピン
d.ブロナンセリン
e.アリピプラゾール
解答:e
パーキンソニズムは、抗精神病薬の投与初期からみられるが、出現時期は急性ジストニアよりはやや遅れ、投与開始2~3週間以降にかけてみられやすい。
 抗精神病薬中止後に副作用がどの程度持続するかは、その薬剤の血中半減期に影響される。血中半減期がが長い抗精神病薬ほど、副作用として発現したパーキンソニズムが長く持続する可能性が高い。各第二世代抗精神病薬(錠剤)の血中半減期は以下の通りである。
ペロスピロン 2.3時間
クエチアピン 2.9時間
リスペリドン 3.9時間
ブロナンセリン 12時間
クロザピン 16時間
パリペリドン 23時間
オランザピン 28.5時間
アリピプラゾール 62時間


第8回 79問
4)抗精神病薬によるパーキンソニズムについて正しいのはどれか、2つ選べ。
a.筋固縮に左右差が目立たない。
b.治療開始から数日以内に出現することが多い。
c.振戦は、下肢や下顎に出現することは稀である。
d.安静時振戦よりも動作時振戦や姿勢振戦の方が頻度が高い。
e.抗パーキンソン病薬を継続投与しないと、遅発性ジスキネジアが惹起されやすい。
解答:a d
 抗精神病薬によるパーキンソニズムは、パーキンソン病と同様に、安静時振戦、寡動、固縮、姿勢保持障害を主徴とするが、黒質神経細胞の脱落に起因するパーキンソン病とは臨床上の出現に差異がある。

○a.パーキンソン病の診断では、症状の左右差が初期に目立つことが重要である。しかし、薬剤性パーキンソニズムでは、症状の左右差がほとんど目立たないことが多い。診察上は筋固縮に左右差が目立たないことが重要である。
×b.抗精神病薬による錐体外路系副作用が治療開始から出現するまでの通常の期間は、急性ジストニアで数日、アカシジアで数日~数週間、パーキンソニズムで2~3週間、遅発性ジスキネジアで数年といわれる。
×c. 振戦はパーキンソン病の主徴で、薬剤性パーキンソニズムでもよくみられる症状であるが、筋緊張異常・寡動に比べて目立たない場合が多い。薬剤性パーキンソニズムの振戦は通常手指に目立つことが多いが、下肢や下顎、舌にみられる場合もある。しかし、パーキンソン病の特徴である安静時振戦よりも動作時振戦、姿勢振戦などの頻度が高い。
○d.cの解説参照。
×e.抗パーキンソン病薬(抗コリン薬)は抗精神病薬による錐体外路症状を軽減するが、長期的な併用で遅発性ジスキネジア発現のリスクを高めることがある。したがって、抗コリン薬の併用はできるだけ短期間にとどめ、抗精神病薬の用量調節で錐体外路症状を回避できない時のみ使用するほうがよい。



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