第15回 34問 統合失調症の心理社会的治療 第5回

統合失調症の心理社会的治療と、期待される主要な効果の組み合わせとして正しいのはどれか、2つ選べ。
a.心理教育ー生活機能の改善
b.認知行動療法ー遂行機能の改善
c.援助付き雇用ー一般就労率の向上
d.社会生活スキルトレーニング(SST)ー顕在発症の予防
e.包括的地域生活支援プログラム(ACT)ー生涯入院期間の短縮
解答:c e
×a.家族の感情表出(expressed emotion:EE)が患者の再発と有意に関係していることが明らかにされており、家族心理教育は感情表出の改善などを通じて再発率を低下させる効果を有する。生活機能の改善効果の報告もみられるが数は少ない。
×b.統合失調症の認知行動療法は難治性の精神病症状の改善や治療効果の継続、治療脱落率の低さなどが明らかにされている。
○c.現場でジョブコーチなどの支援を行う援助付き雇用を実施することで、健常者と同じ職場で同様の賃金を受給する一般就労の可能性が高まることが知られている。
×d.生活技能訓練(SST)は急性期・回復期に比べて安定期で適応が拡がり、重度の患者で最も効果的といわれる。薬物療法が奏効しない生活技能の乏しさを改善し、全体的な社会適応を高めることを目指す。
○e.包括的地域支援(ACT)は、重度の精神障害者を対象とする統合型ケアマネジメントである。入院期間の短縮と入院費抑制による費用対効果やサービスの満足度などに関する効果が明らかにされている。
統合失調症などのケースマネージメントのうちでも、受け持ち数を減らし、直接のサービス提供なども併せて行う集中的ケースマネージメントや包括的地域生活支援(assertive community treatment: ACT)では地域生活の日数が増え、再入院率が減少することがわかっている。

第2回22問
1)統合失調症の心理社会的治療について正しいのはどれか、1つ選べ。
a.援助付き雇用によって、一般就労率を高めることができる。
b.ケースマネージメントによって、再入院率を減らすことができる。
c.家族心理教育を行うことで、社会機能を向上させることができる。
d.認知療法により、家族の高い感情表出を低下させることができる。
e.社会生活技能訓練(SST)により、抑うつ症状を改善することができる。
解答:a
心理社会的治療については、それぞれのプログラムによって標的となるアウトカムがあり、介入研究によるエビデンスが報告されている一方で、それ以外のアウトカム指標については効果がみられないことがあるため、どのような目標でプログラムを実施するのかをまずは考える必要がある。
○a. コクランデータベースの体系的レビューによれば、あらかじめ就労のためのトレーニングを長く行うのではなく、なるべく早い段階で一般の職場への就職を実現させ、現場でジョブコーチなどの支援を行う援助付き雇用を実施することで、健常者と同じ職場で同様の賃金を受給する一般就労の可能性が高まることが知られている。
×b. 統合失調症などのケースマネージメントのうちでも、受け持ち数を減らし、直接のサービス提供なども併せて行う集中的ケースマネージメントや包括的地域生活支援(assertive community treatment: ACT)では地域生活の日数が増え、再入院率が減少することがわかっている。
×c. 統合失調症の家族心理教育によって、家族の批判的傾向や感情的な巻き込まれが改善することによって、再発率が減少するとのエビデンスがあるが、本人の精神症状の改善などは報告されていない。
×d. 統合失調症の認知療法では幻覚や妄想などの陽性症状の改善や自己対処能力の向上が報告されているが、家族への影響は報告されていない。
×e. SSTでは練習したスキルが獲得されることが示されており、その結果社会参加の向上が期待されるが、精神症状への効果は実証されていない。

第3回 90問
2)統合失調症に対する生活技能訓練(SST)について誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 再入院率を減少させる。
b. 宿題は原則として出さない。
c. 薬物療法との併用が有効である。
d. 受信、処理、送信の3技能を取り扱う。
e. 脆弱性・ストレスモデルに基づいている。
解答:b
 統合失調症患者は種々の生物学的異常を有し、これに基づく心理学的欠陥のために、外界、自分自身および自己を取り巻く人間関係などを正しく認知することができないという、心理的・生物学的な脆弱性をもっている。この脆弱性に環境的ストレスが加わると、統合失調症症状が出現するとする考え方を脆弱性・ストレスモデルという。このモデルに従って、抗精神病薬使用によって生物学的過敏性を調整しながら心理的な欠陥を計画的な訓練によって矯正し、社会・環境的ストレス状況にうまく対処する能力を養成すれば、統合失調症の発症ないし症状増悪の防止に役立つ。このような治療法を生活技能訓練(social skills training: SST)という。
○a. SSTは、入院の必要性を指標とした再発率を減少させることが知られている。
×b. SSTは、リーダー、コリーダーと患者からなる十数名のグループで行う。患者は、それぞれのモジュール(訓練基準)について、治療場面ではビデオテープなどを用いた模倣や実演(ロールプレイ)、治療場面で学習したことを社会の中で実際に実行してみること、学習したことに関連した宿題を出して帰宅後復習することなどにより具体的に技能の訓練を行う。
○c. 解説参照。
○d. 人は周囲とのコミュニケーションを行う上で、受信技能、処理技能、送信技能という3段階の異なった技能を用いている。受信技能は情報を受け止める認知プロセス、処理技能は受信された情報を解釈し、その解釈に基づいてどの情報を採用するかを決め、メッセージの送り出し方をコントロールする技能、送信技能とは自分の気持ちや意見を他人に伝えるための行動である。これらのいずれかあるいは全てに欠陥があると、対人的コミュニケーションがうまくできない。こうした患者に対し、受信、処理、送信のどの技能に障害があるかを分析し、行動理論と社会的学習理論に基づいて患者の認知・学習障害に対応して訓練を行う。
e. 解説参照。

第4回 22問
3)統合失調症に対する認知機能リハビリテーションにおいて、認知行動療法と最も異なる技法はどれか、1つ選べ。
a.具体的な教示
b.課題の細分化
c.認知内容の修正
d.動機づけの強化
e.正のフィードバック
解答:c
 統合失調症の認知機能障害の直接的改善のための介入は、具体的な教示、課題の細分化、反応直後の正のフィードバックや動機づけの強化といった認知行動療法の技法や、過剰学習(over learning)と誤りなし学習(errorless learning)によって注意維持、遂行機能などの個々の認知機能の改善がめざされる。こうした認知機能リハビリテーションは、cognitive remediation,cognitive rehabilitation,cognitive training,cognitive therapyなどと呼ばれ、認知機能の直接的な改善、もしくは低下している機能を代償する方略の獲得をめざすものであり、機能障害があっても生活しうる生活環境の調整と対比される。欧州では神経心理学的な概念でとらえられる一方、米国では脳の神経ネットワークの改善といった、より直接的な脳機能へのアプローチとしてとらえられる傾向がある。
 認知行動療法と認知機能リハビリテーションは、正のフィードバックや動機づけの強化、errorless learningなどの学習を促進する技法を用いる点では共通しているが、認知を内容とプロセス(情報処理過程)とに分けるならば認知行動療法は主に前者を対象とし、認知機能リハビリテーションは主に後者を対象としている。また、認知機能リハビリテーションでは事物の処理機能を主な対象とし、認知行動療法では社会的認知や自己に関する認識も対象とする違いがある。表情認知など社会的認知のトレーニングは両者の中間に位置するものと考えることができる。精神症状の認知療法は、まさに認知内容の修正を図るものであるが、セルフモニタリングや自己認識の生涯、つまり作動記憶の中央実行系の機能へのアプローチとも考えられる。


第5回 70問
4)統合失調症の心理社会的治療とその効果について正しい組み合わせはどれか、2つ選べ。
a.心理教育ー生活機能の改善
b.援助付き雇用ー再発の防止
c.認知行動療法ー精神病症状の改善
d.生活技能訓練(SST)ー顕在発症前の介入
e.包括的地域生活支援(ACT)ー生涯入院期間の短縮
解答:c e
 統合失調症は様々な精神症状とともに社会機能の障害を有し、患者の目標達成にはしばしば多くの困難を伴う。薬物療法と心理社会的治療を適宜組み合わせることが重要である。
×a. 家族の感情表出(expressed emotion:EE)が患者の再発と有意に関係していることが明らかにされており、家族心理教育は感情表出の改善などを通じて再発率を低下させる効果を有する。生活機能の改善効果の報告もみられるが数は少ない。
×b.援助付き雇用では患者の希望する職種や職場を斡旋し、ジョブコーチが職場で実際に必要な支援を行う(職場内訓練、on the job training: OJT)、就職率、雇用期間などで他の治療に優る効果がある。
○c. 統合失調症の認知行動療法は難治性の精神病症状の改善や治療効果の継続、治療脱落率の低さなどが明らかにされている。
×d. 生活技能訓練(SST)は急性期・回復期に比べて安定期で適応が拡がり、重度の患者で最も効果的といわれる。薬物療法が奏効しない生活技能の乏しさを改善し、全体的な社会適応を高めることを目指す。
○e. 包括的地域支援(ACT)は、重度の精神障害者を対象とする統合型ケアマネジメントである。入院期間の短縮と入院費抑制による費用対効果やサービスの満足度などに関する効果が明らかにされている。


第5回 81問
5)生活技能訓練(SST)で用いられる技法として適切でないのはどれか、2つ選べ。
a.宿題
b.モデリング
c.フラッディング法
d.ロールリハーサル
e.バイオフィードバック
解答:c e 
 生活技能訓練(SST)は社会学習理論に基づいて、対人行動などの社会的な生活技能の再学習を行うものであり、機能評価に基づき、モデリング、教示、ロールリハーサル、フィードバックを組み合わせて行う。
○a. SSTでは訓練によって獲得された技能が実生活に般化するように、宿題を課して実行を促すことが特徴的である。
○b. モデリングとは手本となる振る舞いを見せて学ばせることである。
×c.フラッディング法は行動療法技法の一種で、不安や恐怖を感じる場面に一気に患者を曝露して、回避や逃避の条件反射を消去していく方法で、強迫性障害などに用いられる。
○d.ロールリハーサルは場面と役割を設定して練習することである(ロールプレイ)。
×e.バイオフィードバックは、筋電図や皮膚温度計などを用いて患者が自らの生理的状態や変化を知り、それをもとに生体現象を自己コントロールしようとするもので、心身症などに有用である。

第8回 82問
6)生活技能訓練(SST)で用いられる主な技法はどれか、2つ選べ。
a.シェービング
b.インプロージョン
c.オペラント条件付け
d.バイオフィードバック
e.ポジティブ・フィードバック
解答:a e
 生活技能訓練(social skills training : SST)は社会的学習理論に基づいて、対人行動などの社会的な生活技能の再学習を行うものであり、機能評価に基づき、モデリング、教示、ロールリハーサル、フィードバックを組み合わせて行う。
○a.シェービングとは、目標とする行動を獲得するために、その行動をステップに分けて段階的に獲得に導く方法でありSSTで用いられる
×b.インプロージョンは、避けようとしている対象をイメージして不安を最大限に引き起こさせて不安を除去していく。
×c.オペラント条件付けは、報酬や罰を用いて、自発的に適した行動をとれるように学習させる。
×d.バイオフィードバックは、筋電図や皮膚温度計などを用いて患者が自らの生理的状態や変化を知り、それをもとに生体現象を自己コントロールしようとするもので、心身症などに有用である。
○e.ポジティブ・フィードバックは肯定的な評価を与えて行動変容を促す。

第9回 83問
7)統合失調症について正しいのはどれか、2つ選べ。
a.家族心理教育には患者本人も交えることが望ましい。
b.援助付き雇用における目標は障害者枠での就労である。
c.多くのガイドラインで認知行動療法は推奨されていない。
d.多職種支援では、サービスを担当者の専門分野に限定することが重要である。
e.包括的地域生活支援プログラム(ACT)では、支援者1人が10名程度の患者を担当する。
解答:a e 
○a.家族心理教育は統合失調症の心理社会的治療として有効性が高いものであるが、家族だけを対象とするのではなく患者本人も交えた家族を対象とすることでより有効性が高まる。
×b.援助付き雇用における目標は健常者枠での就労である。
×c. 多くのガイドラインで認知行動療法の有効性が認められている。
×d.多職種支援では、提供するサービスを担当者の専門分野に限定せずに、それぞれのスタッフが可能なことを実施することが重要である。
○e.包括型地域生活支援プログラム(ACT)では、支援者1人あたりのケースロードを10名程度に制限しないと、提供するサービスの質と量を維持できないことが経験的に知られていることから、そのようにルール化することが多い。


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