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海を巡る旅

1日目 紀州白浜から始め

今日も今日とて羽田空港第1ターミナル、朝の出発ラッシュを概ね終えたとはいえ各所に朝イチの便で飛び立った飛行機たちが帰ってくる頃合いで何かと賑やか。早速あれこれと撮影する…おおジンベエジェットも来たじゃないか。

JAL Airbus A350-941 JA13XJ
JAL Airbus A350-941 JA04XJ
JAL Boeing787-8 JA847J
JTA Boeing737-8Q3 JA05RK
JAL Boeing787-8 JA846J

JTA機のプッシュバックまでたっぷり眺めているとそろそろ保安検査を通らないとならない時間、危ない危ない。保安検査を通り足早に搭乗口に向かう。既に搭乗予定の便はスポットインしており、乗り込むは南紀白浜空港行きのボーイング737、2年ぶりの南紀白浜空港になる。

JAL Boeing737-846 JA340J

🛫DEP:HND/RJTT
RWY05
🛬ARR:SHM/RJBD
RWY33
JAL JL215
(HA5909,AM7748)
Planned:1130-1245
Actual:1155-1244
Japan Airlines
🛩Boeing737-846 B738
JA340J 39190 /3882

目的地近くまで概ね曇りで地上はあまり見えなかったが富士山はバッチリと、それにしても南紀の海は美しい…

すっかり雪化粧の富士山
山の緑と海の青さ

南紀白浜空港は一昨年既に羽田への帰りで訪れたのだが夕暮れに白浜に着いてすぐに真っ暗な中を飛び立ったとなるとほとんど周りの状況も分からずじまい、気分としては初訪問とそこまで変わらない。

空港ターミナルビル
折り返し待ちの737

ここからは白浜駅方面のバスに乗りとれとれ市場、そこで昼食として駅に行き列車で和歌山を目指す。バスはICカードが使えない点に要注意だがそれ以外は一般的な路線バス、バスロケも見やすく利用するうえで困ることはあまり無いだろう。

ところがこのバスが道中でガードレールに擦ってしまい思わぬ足止めに、先を急ぐ行程ではなかったが列車接続の乗客に時間を確認したりと大変な状況になってしまった。結局列車接続はバス会社の車で先に白浜駅に急ぎそれ以外は回送されてきたバスで改めて向かう。30分程度の遅れと相成った。そんなハプニングがありつつも無事とれとれ市場に。

市場入口

ここは市場だが観光客向けの飲食設備も充実しておりそのバリエーションも豊富、この地域で観光するならチェックしておいて損はないだろう。和歌山で海沿いとなるとどうしても海産物、それもマグロはぜひ頂きたいしめはり寿司も久々に食べたい…しかし食堂のメニューに流石にドンピシャのものはないしさてどうしたものかと市場内をうろついていると鮮魚コーナー、そして近くの惣菜コーナーでは白飯がある…そうか自分で創ればいいのか。

そうなると後はもう行動が早いもので飯を最後に買おうと決めて鮮魚コーナーを歩き回って地元で獲れたと思しき刺身を買い集めついでに和歌山ならとみかんジュース、最後に白飯にめはり寿司と朝食を結局食べていなかったこともあり大ボリュームの昼食となった。味も量も大満足だったが、しかし11月下旬に屋外のテラス席はいささか冒険が過ぎたようだ…
印象的だったのはマグロの頭肉と真鯛、この食べごたえはかなりのものだった。食事を終えて時計を見てみるとそろそろ駅に向かわないとならない時間だ。

堅田漁港

白浜駅からまずは和歌山駅に向かう、利用するのは特急くろしお。指定席は流石にガラガラでゆったりと乗車することが出来た。

乗車した8号車(和歌山駅で撮影)
モハ286-108
車内の様子

白浜から和歌山となると紀伊半島の西岸に沿って走ることになる、しかもこの列車は日没時間に掛かっている列車でうまくすれば太平洋あるいは紀伊水道に沈む夕陽を望めるのではないかと期待していたのだが果たして…

沈む夕陽

比較的低いところまで雲が立ち込めていたが、日没寸前に遂にその姿を見せてくれた。暖色系の車内と夕焼けの色、そして空と海の青、それぞれ似ているようで全く異なる色の間にいるのはなんとも不思議な感覚。これを眺めてしばらくうとうとしていると列車は宵闇の和歌山駅に到着した、ここからは見慣れた227系ロングシート車で和歌山市駅に。

227系車内
特急は後ろの編成がパンダカラー

和歌山市駅からは一駅だけの南海線で和歌山港へ、乗車するのは銚子電鉄への譲渡が話題を呼んだ2200系だ。元々高野線の「大運転(→極楽橋直通)」に使用する21001系の増結用に造られた22000系から支線用(改造直後は大運転にも使用)に3編成が改造された形式だが1本は観光列車「天空」に、そしてもう1本が銚子電鉄に旅立ったので原型を保った車両は遂にこの1本のみになっている。
しかも南海は今後2000系を支線区用ワンマン運転車両として改造することで置換えを行っていくとしているためこの伝統的な車両との別れの時は刻一刻迫りつつある。

和歌山市駅で発車待ち
フェリーを向こうに望み
ゆったりとした雰囲気の車内

ここからは南海フェリーで徳島に向かう、きっぷは和歌山市駅で「とくしま好きっぷ」を購入しているため手元のきっぷを和歌山港駅の改札に入れて、そのまま出てきたきっぷを持ったまま船に向かえば問題ない。なお「とくしま好きっぷ」は南海線のほとんどの駅で販売しているのだが、その価格は和歌山市で買っても難波で買っても、果ては高野下(ここから極楽橋方面は自動券売機が無いため販売されていない)で買っても2,500円均一。この値段は南海フェリー和歌山港から徳島港の徒歩乗船価格と同額なので徒歩で南海フェリーに乗る場合、乗船前後の南海電鉄線は今回のように和歌山市までどころか難波や高野線方面まで無料で利用できる*という大盤振舞いとなっている。
*:徳島港のターミナルで逆方向の利用ができる「好きっぷ」が販売されている。

フェリー乗船口
駅から続いてきた通路

筆者にとって南海フェリーはもう3回目の利用になる、これまでの2回は上記の「好きっぷ」のメリットを活かした大阪ー徳島移動で使ってきた。なにしろこれに特急サザンの指定席券を加えればフェリーで風を浴びるもよしカーペットに寝そべるもよしに加えて電車でもリクライニングシートが約束される。鉄道連絡船の雰囲気を最大限楽しみつつ実用的にもメリットが大きいルートとして今後も何度も使うかも知れない。

夜の和歌山港

といっても夜間の乗船は実は初めて、夜間のデッキでエンジン音と波の音を聴くのも新鮮な体験だ。もう一つ意外だったのは過去2回より乗客数が明らかに多かったこと、流石に2020年3月下旬と2022年3月上旬では社会情勢的なアレコレなのかあるいは純粋に需要が多い便なのか…カーペット席にはコンセントがあるのだがそれにありつけそうもなかったので椅子席に腰掛け持参してきた本を読み進めていたら徳島港も近い。

徳島港にて
ホテルの客室

徳島港着は21時半、まだまだ移動ができるような時間ではあるが明日の朝が早い、今宵の宿であるビジネスホテル アバァンティにチェックインして急いで眠りに就く。

2日目 その者姿を変えて

目が覚めると4時半過ぎ、しめしめ期待通りの時間に目が覚めた。早々にホテルをチェックアウトしてまだまだ未明の徳島駅に向かう。

まだ真っ暗な徳島駅

今日はここから5時半の牟岐線を乗り通し、お目当てが待つ阿波海南駅に向かう。おまけとしてはその牟岐線乗車に際して券売機に向かうこともなく、改札が開いたら駅員さんにスマートフォンの画面を見せる。JR四国が最近リリースしたアプリ「しこくスマートえきちゃん(スマえき)」によるチケットレス乗車のお試しが裏テーマだ。

スマートフォンから任意の場所・タイミングでキャッシュレス購入出来るのが旅行者目線では実に魅力的、またQRコード式のため交通系ICカードに比べても地上側で必要な準備が容易ということで展開しやすいというのも地域事情を反映したサービスとなっている。

1500形と運転所の気動車たち
道中の朝焼け
1500形車内

本を読みつつ寝つつ、朝焼けの中を走りさらに南に走って8時過ぎに終点の阿波海南駅に到着した。ここからがお目当てのDMVとなる、まずはモードチェンジが行われる場所(モードインターチェンジ)を見学とする。

駅全景
レールは完全に独立している
ここまで来た牟岐線1500形
モードインターチェンジ付近のバス停
バス停側から見る駅舎
甲浦方面の待機場所
モードチェンジはここで行われる

タイヤと車輪とも乗り入れできる併用軌道状の箇所に停車して鉄軌道上のガイド車輪を出し入れする。阿佐海岸鉄道の公式ウェブサイトでも記載があるが、この鉄軌道用の車輪はあくまでもガイド及び鉄軌道でのゴムタイヤの圧力調整用なので動力の伝達には使用されない。ゴムタイヤから鉄軌道に動力を伝達する構造はかつて戦間期に仏Michelin社が開発してフランスやマダガスカルで導入された"Micheline"に通じるものがある。

さて見ているうちに甲浦方面(鉄道区間)からDMVが走ってくる時間だ。モードチェンジがどんなものか見てみようじゃないか。走ってきたのは坂本龍馬と土佐の太陽をイメージした赤色の車両、DMVは全てマイクロバスをベースに造られた車両である。

鉄道区間を走ってきた
この状態から…
前のタイヤが接地し
車輪を畳んで
それが終わると…
バスとして道路へ

構造上マイクロバスなので運転台は当然前にしか無い、鉄道モードで方向転換する運用は現在存在しないし仮に他路線で導入されてそのような運用が求められた場合でも一旦道路に出ることだろう。ちょっとしたオーバーラン程度ならバックで事足りる…すなわちこのDMVは鉄道車両としては軽便鉄道の時代とともに消えて行ったと誰もが信じて疑わなかった「単端気動車」が令和に蘇ったものと言うこともできる。

緑色の車両がモードインターチェンジに入る

この時間には甲浦方面から2便立て続けに走ってきて阿波海南文化村に向かい、それが折返して甲浦方面に帰っていく。つまり比較的短時間で立て続けに双方向のモードチェンジを見られるメカ好きにはたまらない時間になるわけで、今度は鉄道モードに変わるのを見る。

モードインターチェンジで停車
まず前部車輪を出して…
前側が持ち上がる
後輪も準備して…
鉄道モードで発車

モードチェンジの際には地元高校の生徒による太鼓囃子のBGMが流れ、また車内の通常運賃表示などを行うディスプレイでもモードチェンジを紹介する映像が流れる。厳しく言えば通常の地域公共交通としての利用がほぼなく、観光客誘致に注力しなければならないという同社の置かれた状況を表しているものではあるのだが見応えのある景色ということは確か。
モードチェンジの際には必ずと言っていいほど何人かが見学しており、なるほど地域におけるアトラクションとして期待されているというのもうなずける。また普通鉄道時代は海部駅と甲浦駅の間を走る路線だったがDMV化を機に阿波海南駅近くの阿波海南文化村から阿波海南駅で鉄道区間入り、甲浦駅から再び道路上を走って道の駅宍喰温泉(土日祝日の1往復のみ室戸岬経由で海の駅とろむ)まで運行する観光施設への利便性を重視したルートとすることができるようになった。

阿波海南文化村の停留所
阿波海南文化村の入口から

さていよいよDMVに乗ることとしよう。今回乗車するのは阿波海南文化村から土日祝日の1往復限定で室戸岬を回る便、DMVは当日空席があれば飛び乗りも可能なのだがこの便のチケットは完売。始発の阿波海南文化村では自分以外誰も乗らなかったのだが、阿波海南駅でおそらく台湾からの団体観光客とその他個人客がもう1人で満員御礼という流れに。座席指定時運良く窓際が空いていたのだが、その隣に個人客の人が居てそれ以外は全てその団体だった。台湾からの日本旅行熱が凄まじいとは聞いているがしかしここまでになるとは…

乗車口にはステップも
入線(?)してきたDMV
案内ディスプレイ
車内全景

先述の通り阿波海南駅からどっと人が乗り込むのだが、17人乗り込もうとなると停留所の人の多さもかなり迫力を感じる。これで満車になってしまうとなると立席不可のマイクロバス仕様にはいささか厳しさを感じないでもなく、理想としては臨時便を柔軟に出せることなのだろう。とはいえそのような状況は合理的には考えにくいようにも思えるが…

停留所を出て少し動くとモードインターチェンジに差し掛かり、早速モードチェンジとなる。その間は車内のディスプレイで外部でどのような操作が行われているのか、別撮りの動画で見られるようになっている。しかしモードチェンジ完了時の「フィニッシュ」という音声がなんともシュール。

座席拡大

鉄道区間といえば海を見ながらトンネルを越えていくのだが車内が混んでいてかつ山側だったので写真は撮れず、途中駅でもこれまでの鉄道とは明らかに異なる床面高さ故にホームが大きく変わっていたのが前回来たときとの変化を感じるポイントだった。しかしこの中間駅、何人程度使うんだろう…と考えていると甲浦駅到着。元からの鉄道駅箇所がモードインターチェンジとなっており、そこから新設されたスロープを下ると甲浦駅の停留所となる。そのまま次の海の駅 東洋町で団体は全員下車したため車内は一気にガラガラになり、その後予約がないからと運転手さんのご厚意で席の移動をさせてもらった。さあオーシャンビューを楽しもう。

太平洋の眺め

室戸岬で残りの1人も降り、遂に筆者だけで終着。およそ1時間の待ち時間で奈半利行きのバスが出るのでその間に昼食としよう。今回のチョイスは海の駅とろむ内にある「室玄」にてカツオのたたきをいただく、藁焼きならではの香ばしい風味がしっかりと付いており薬味が多い高知風のたたきは食べごたえ十分。

カツオのたたき定食

食後は少し離れた高知東部交通の室戸営業所まで歩き、そこから奈半利行きのバスに乗車。バスはコミュニティバスとして見慣れた(筆者の地元含め)日野ポンチョで約1時間の乗車。前回(2017年8月)は高知側から奈半利に入り甲浦までの直通バスから阿佐海岸鉄道、牟岐線の乗継だったため今回で逆方向かつDMVのビフォーアフターを制覇ということになる。奈半利からは土佐くろしお鉄道で高知駅に。

奈半利駅で発車待ち

高知駅に着いたのだが今日中に松山に行きたい、普段の筆者なら特急南風で多度津まで出てしおかぜ・いしづちを待つのだろう(この乗継は経験済み)が、今回はバス乗り場へ向かいJR四国バスの「なんごくエクスプレス」に。

この区間は鉄道に対してバスの優位性が特に高い区間といえ、土讃線の速度が出しにくい区間+多度津までの遠回り+高縄半島周りと揃った結果高知駅から松山駅の2点間移動ですら鉄道だとバスの所要時間の1.5倍近い4時間超えで料金は倍以上。車内設備もトイレが狭いのは玉に瑕だが全席に電源があり2700系で揃った南風はまだしもしおかぜ・いしづちはこの整備がされていない8000系が不利になってしまう。
この時で言えば後免乗継ですら松山駅着はバスの1時間後、更に言えば松山駅は街の中心部からいささか離れているので松山市駅や大街道で見るとこの時間差は更に開いてしまう。

ホテル室内

大街道でバスを降りて今日のホテル「チェックイン松山」に、明日も早いしさっき買ってきた弁当を食べたら早く寝るか…あっでも大浴場がある、明日朝から道後温泉に行くつもりだが、それはそうとしてやっぱり大浴場があるのは嬉しい。

https://www.apahotel.com/hotel/partners/shikoku/ehime/checkin-matsuyama/

3日目 駆け足瀬戸巡り

世間は平日月曜日だがまだ旅は終わらず、昨日ほどではないがまだ暗い中ホテルをチェックアウトして松山の街中を松山市駅に向かって歩く。お目当ては10分くらいあとに来る電車、今日については乗り遅れたとしてもいくらでも取り返しが付くのだがそれでも取れる手段は多い方が良い。

早朝の松山市駅
今日最初の電車

これから乗車するは市内電車6系統、市内電車の中で唯一本町線を経由する系統だ。そしてその6系統だが、現在は平日の朝および昼専用になっており土日祝日は終日運休で平日すら松山市駅12:38発が終電である。
何故ここまで本数が少ないのか、メインの環状線の停留所からほとんど500mも離れていないエリアを走っており(特に本町一丁目は西堀端と同じ停留所でないのが不思議なほど)、しかも単線で行き違い設備もないので増発にも制約があまりにも大きいのが一因か。

終点の本町六丁目にて
車内、早朝だけに無人

全線単線で交換設備もないとはいえそこは路面電車、停留所は上下それぞれが用意されている。各停留所の造りの違いを見て楽しんでいたらあっという間に終点の本町六丁目、運転士に申し出て1日乗車券を買い求めてから降りる。アプリで買えるご時世ではあるがなにしろ紙の1日乗車券は年内をもって販売終了となってしまう。記念品としての狙いが大きい。

環状線が走ってくる

この区間は環状線も単線で、しかも専用軌道なので他の都市の路面電車とは大きく異なった雰囲気となる。しかもこの朝早い時間ながら小学生の通学にも使われているのが驚くポイント、多くの人の日常生活に定着しているということが実に印象深い。ニス塗りの床の電車に乗り込み道後温泉に向かいながらそんな頭の体操を続けているとその道後温泉方面への分岐点となる上一万停留所に到着、地下通路を使って乗り継いではみたものの殆どの人は停まっている電車の前後をすっと渡っていく、これにはびっくりした。

走っていく電車
新旧の離合
旧型電車もどっこい元気

路面電車を乗り換えて到着するは道後温泉、そもそも伊予鉄の市内電車自体が1895年にその前身たる道後鉄道によって現在の大街道付近から道後(現道後温泉)および道後から古町が開業したことに始まっている(ただし当時のルートは現在と異なる場所も)。当時は前年に当時の道後湯之町の町長だった伊佐庭如矢がまさに命懸けの大事業として完成させた道後温泉本館が完成した直後で、伊佐庭はその道後鉄道の設立にも深く関わっていた。それから130年、道後温泉は重要文化財に認められたその本館を中心に四国でも最有力の観光地の一つとして君臨しており国内外から広く観光客を惹きつけている。

道後温泉駅
到着した電車
留置されている坊っちゃん列車と

駅からしばらく歩くと道後温泉本館だ、そこまでの間に土産物屋や飲食店も多いが時間が時間、月曜の朝8時前ではどこも開いていないのも道理だろう。そんなわけで足早に本館を目指して行き、あの水曜どうでしょう最初の企画で大泉洋が臼杵行きを告げられた場所に着く。

母さん、僕は松山にいます。

ここで驚くはまたも台湾からの観光客の団体がいたということ、観光客と思しき人は日本人よりも多いくらいだ。数字の上ではコロナ前を超えるほどと知ってはいたにしてもインバウンド需要がここまで伸びたのかという驚きはやはり大きい。

道後温泉本館は修繕中

そんな道後温泉本館に来たのは他でもない、朝風呂をいただきに来たのである。交通系ICカードで決済が全て済んでしまうのはなんとも有り難いところ、朝からしっかり入浴を満喫して良い気分で本館を辞すと雨が降っていたのが惜しいところ、といっても駅までずっとアーケードの下なのでほとんど影響がないと言ってしまえば無いのだが。

単線区間を後ろから

その後は市内電車の路線を乗りつぶして、しばらく時間があるため松山城の見学に向かう。大街道で電車を降りて飲食店等が立ち並ぶ坂を登っていくとロープウェイおよびリフトに乗ることができる。雨が既に止んでいたこともあり待ち時間もゼロで済むリフトに乗り込んで中腹まで登るが、歩きでも問題なく登れることにリフトに乗ってから気が付いてしまった。事前に分かっていれば歩いて登ったのになあ…()

ロープウェイおよびリフトを降りるとここ

ここからは山を登っていく他無い、遠足の幼稚園児もいるあたり気軽な散歩先として定着している様子が見て取れる。一旦山の上まで着くとそこから先の天守までは別途有料となっている。昔なら天守を遠巻きに眺めて終わっていたであろうところせっかくならとチケットを買って入っていくのは成熟なのかはたまた…

城内を歩く
天守閣
天守から望む瀬戸内海

松山城見学を終えるとちょうど良い時間、この先の予定もあるのでふもとで昼食としよう。選ぶのはもちろん松山鯛めし。

松山鯛めし

実は昨年にも松山に宿泊したのだが、その時は特急「宇和海」乗りたさ半分に食事のためだけに宇和島にまで足を運び駅前で宇和島鯛めしを頂いたという過去があった。ということでこれが本場の松山鯛めし、一般的な鯛めしのイメージに近い炊き込みご飯タイプだ。しかし歩いてみてもこの近辺すら宇和島鯛めしの方が多いようにも見える、正直これは意外な事実だった。

対向列車と交換
古町にて
梅津寺にて

いよいよ四国から出る時が来た、高浜線とバスを乗り継いで松山観光港に向かう。ところでこの松山観光港だが、まさにこの前日に伊予鉄公式Xにて興味深い投稿があった。というのも松山観光港の2階は鉄道乗入れを想定したものなのだそうだ、現在すでに乗車券を一体で発売していたり利便性は十分確保していたように見えるがフェリーターミナル直結というのはインパクトのある言葉であり市内電車の空港乗り入れの可能性と併せて期待したいポイントでもある。


乗継はだいぶしやすい高浜駅
ここに鉄道で…!?

ここからは瀬戸内海汽船のSEA PASEOで広島に向かう、「海の散歩道」という名を持ち移動する公園というコンセプトにより鉄道ファンであれば馴染み深いGKインダストリアルデザインによってデザインされた。

到着するシーパセオ
レモネードと御船印

売店が開くが早いか御船印を購入、気が付いたら段々とこれを集めるのも旅の楽しみになりつつある。鉄道の乗りつぶし程の熱量を投入するつもりではなく、あくまでも乗ったものを…とは考えているものの気が付くとこれを追い掛けてしまう自分がいるのも確か。

屋上の「シャイン・デッキ」から
中庭の開放的な空間
船尾のガゼボ
瀬戸内海の海を満喫できる

航行時間はおおよそ2時間半なのだが、その間退屈を一切感じさせないのが素晴らしいところ。また疲れを感じたら休んだり逆に気分転換に外に出てみたり一人ひとりがそれぞれのニーズに応じて自分だけの時間を楽しめる…そういった場となっているのが旅の楽しさを考えての造りなのだと感心した。ちなみにコンセントもあり、船尾の「ひき波のHANARE」でスマートフォンなどの充電も可能。

建造中の"ONE INSPIRATION"
海王丸
自動車運搬船"ORCA ACE"
海上自衛隊のおおすみ型輸送艦(?)

瀬戸内海といえば様々な船を見られることも魅力だろう。今回の目玉は世界最大級の24,000TEU*級コンテナ船"ONE INSPIRATION"だろうか、この船はジャパンマリンユナイテッド呉事業所で建造されている船でアジア対欧州等に投入されるONEの基幹船隊として導入される。これ程の大型コンテナ船となるとアジアとはすなわち上海や釜山であって、もしかしたら一度日本を離れるともう二度と帰ってくることはないかもしれない。現代の国際的なコンテナ物流は想像以上にダイナミックでシビアな世界だ。
*TEU:物流でよく使われる単位で、ISO規格20ftコンテナ換算での積載キャパシティを示すもの。コンテナ貨車1両で概ね2TEUとなり、国内の輸送に使われる内航コンテナ船であれば概ね1,000TEU程度。

その他にも色々な船が行き交い、興味がある人であればAISのアプリ画面片手に飽きることはまず無いだろう。呉ということはまさかと期待した海上自衛隊の船も見ることができ充実の時間となった。

音戸大橋
日本製鉄呉跡地

音戸といえばかつて呉線を走った急行列車を思い出す、そして旧帝国海軍ゆかりの日本製鉄呉の跡地、ここは近く跡地活用の方向性を進みその景色もじきに失われてしまうだろう。新たに生み出されるものと失われるもの、それでも未来に向かって進んでいく。

博多へのさくら号
グリーンムーバーLEX

広島港からは広島駅に出て新幹線で一度福岡に向かう。広島電鉄も昨年完乗しており交通系ICカードでの全扉乗降も慣れたもの、それで無ければ難しかったであろうタイトな乗継を済ませて新幹線の大柄なシートに身を委ね、あなごの駅弁を楽しんでいたらもう新幹線は九州に入っていた。

JAL Boeing787-8 JA846J

空港混雑のため遅れとはいえそれ以外は実にスムーズなJALのボーイング787が帰り途をしっかりとエスコートしてくれる。実は9月の羽田から福岡で787だったのでエアバスA350が恋しくなりこの便がA350だと見て航空券を買ったのだが、冬ダイヤ入りと共に機材変更となってしまった。ますますTrentXWBが恋しくなるが国内線用機材として何ら不足を感じさせない上質な時間を提供してくれることには変わりが無い。

🛫DEP:FUK/RJFF
RWY16
🛬ARR:HND/RJTT
RWY34L
JAL JL330
(HA5163,MH4065)
Planned:2000-2130
Actual:2047-2206
Japan Airlines
🛩Boeing787-8 B788
JA846J 35435 /915


最終バスの時間
大宮行きも最終

到着が遅れたこともありここからは家路を急ぐ、柏駅行きのバスに乗れば乗換無しで流山おおたかの森まで直行だし、野田線ユーザーとしては最初におおたかの森というのも時短となって有り難い。首都高向島線の工事に伴う渋滞で少々遅れたが、無事に大宮行き終電に滑り込むことが出来た。

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