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いっそ倒産しないか、ふと漏らした同僚の一言


 何が起きるかわからない時代が続く。100年に1度や未曾有の危機が平成から令和にかけて何度となく起きている。

危機的経済環境の変化の影響だけでなく、普通の企業はライフサイクルがあり「いい時もあれば悪いとき」もあるのがごく自然なことで、成長だけでなく必ず衰退のステージがある。 

長いビジネス人生の間には、自分の会社が倒産までは至らないものの、経営危機を迎えることはごくありふれたことである。

経営危機に陥った経験を振り返ってみよう。 

周囲を巻き込もうとする

 会社が経営危機に陥ると、社員は不安に駆られ落ち着きがなくなる。社員たちは会社の行く末の情報を求め、仕事に身が入らずあちこちで立ち話が多くなる。

 これまで会話がなかった人たちの間でも、立ち話をしている光景に出会うことになる。お互いに不安なので今後の会社の動向と自身の身の振り方を相談したり、何らかのヒントを得ようとしたりするわけだ。 

 そのときに出現するのが、自分の退社という決心や考えを確認するために周囲と巻き込む人たちである。「この会社にいても先がない」、「自分は見切りをつけた」などと、周囲の仲間に同意を求める。

 さらに、会議などの席で声高に会社や経営陣の批判をする。

 不安でいっぱいの自分の行動や決心への同意と確認を求めるのである。 

いち早く逃げ出すか最後まで残るか

 会社が経営危機に陥ったときの身の振り方の選択は、その後の人生の成り行きを左右するのでとても難しいだけでなく慎重にすべきである。

もちろん、ベテラン社員なのか、新入社員なのか、立場によっても選択の幅や余地は変わってくるものだ。 

 選択は基本的に2つとなる。つまり、いち早く新天地を見つけ転職するか、最後まで残るかである。

 年齢や立場によってどちらがいいか、それぞれの個人の置かれた状況によって悩みは深まるものだ。 

 会社の現実的な再建策を考えて実行する、それがうまくいかず、最悪のケースで倒産を迎えた場に倒産処理や仲間の次の展開をしっかり見届けてから、自分の身の振り方を考えるのも立場によってはもっとも有効である。

 最後まで残るという選択である。 

いっそ倒産しないか

何社目かの企業で深刻な経営危機に陥ったことがある。そのときには諸般の事情で会社再建策を立案し実行することになったが、厳しい時期が何年か続いた。

経営危機に陥った会社の再建には、どうしても企業規模を小さくするリストラによって、短期間で利益体質に変えるのが必至である。そのため、選択と集中により瞬間的には縮小均衡策と営業活動の活発化が要求されるため、職場の雰囲気は厳しいものとなる。 

そんな折、席が近い同僚が漏らした一言、「いっそこのまま倒産しないか」、今でも鮮明に記憶に残っている。

同僚は極めて現実主義、現実をよく見ていたわけだ。 

確かに、経営再建途中でリストラに遭い転職活動をするよりは、倒産とともに転職活動する方が個人の転職市場価値は高まることになるからだ。
                        その11:2022/11/13

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