「またの名をグレイス」読み終わり〰読書感想文

久しぶりに大作を読みました。マーガレットアトウッドの「またの名をグレイス」上下巻です。

1843年にカナダで実際に起こった殺人事件を題材にして書かれています。16才で事件に関わり約30年服役したカナダで最も悪名高い女性犯グレイスマークスの物語です。

グレイスは、女中として働いてた家で、馬屋番として働いていた男性と共謀して、女中頭の女性と雇い主の男性の二人を殺害した罪に問われました。馬屋番の男性は主犯として絞首刑に処されましたが、グレースは年もまだ若く、馬屋番の方がグレースを引き込んだと思われたので、終身刑となりました。
しかし、馬屋番の男性が刑を執行される寸前に「全てグレースにそそのかされてやったことだ」と言ったことから、若くて美しいグレースは悪魔のような女か、あるいは汚名をきせられたかわいそうな少女だったのかと、長い間人々の興味を引きました。アトウッドはこの事件を入念に調査し、一部は創作ながら、この時代の女性の不平等さに端を発したこの事件は非常に壮大な物語になりました。

この時代(19世紀半ば)というのは、女性が貧困から抜け出すのはほとんど困難で、もし恋愛をして妊娠してしまい、男性に捨てられたならば、子供を抱えて売春婦になるしか道はなく、或いは産むにしても中絶するにしてもお金がなければ、まともな医者に頼めなかったことから、命を落とす女性が多かったそうです。

そんなこともあり、グレイスも周囲の人たちも女性であるがゆえに、理不尽な扱いを受けていました。

話は精神科医であるジョーダン先生が、グレイスの支援団体みたいな人から、彼女が事件のことを覚えてないのは、本当かどうか、詳細を聞き取りして、診断してほしいと頼まれ、医学的に興味はあったものの、段々グレイスに翻弄されてしまう…という話です。

グレイスが魅力的すぎて、周りの男性はメロメロになっちゃうし、女性は嫉妬しちゃうんだよね。ジョーダン先生の方がよっぽど世間知らずのお坊っちゃまだし、ちょっとかわいそうな気もしてしまいます。

実際にこんな事件が起こっていたなんて、まさに事実は小説より奇なりですね。

マーガレットアトウッドといえば、ドラマのハンドメイドテイルズー侍女の物語の原作で有名ですが、こちらは完全SFです。しかしここでも、時代は変わっても女性の不遇みたいなものを描いています。

去年、やはりアトウッドの「オリクスとクレイグ」という、これまたSFですが、読みました。当時、都市伝説的なことにすごく興味があったので、コロナが蔓延してる現在とリンクしておもしろかったです。

それにしても、今年は韓国ドラマのウェイトが大きすぎて、本を読む時間がめっきり減りました。この本も上巻の半分くらいまでがなかなか進まず、そこまで1週間くらいかかりました(笑)そのあとは一気に2晩くらいで読みました。マラソンみたいで🏃💨達成感がありました❗

ここまでの大作でなくても、ゆっくりペースで読書はしていきたいと思っています。いまは、イラストのかわいい詩集みたいのを読んでますので、また感想を書きたいと思います。



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