漢方特有の薬理学 (漢方の入り口)

米大リーグの大谷翔平選手が
自身2度目の最優秀選手に選ばれた。

彼が打つホームランには
地球の重力がかかってない
のかと思わせるほど素晴らしい
アーチを描いてスタンドに放り込んだ。

多くの子供たちがわくわく
させられただろう。

同時に大人の私もわくわく
させてもらった。

薬の世界でわくわくするような
過大な評価や期待は禁物だ。

過大評価も、過小評価もせずに
正しく証を見極めて、適切な
量のお薬を加減する。

大谷選手の様に壮大なショーの
派手さはないが、効果があった時の
感動は変えられぬ喜びです。


漢方薬に用いられる薬物

漢方薬に用いられる薬物の
薬理・薬効を記載した書物に
「神農本草経」というのが
ある。

本草とは「薬の本になる草」


という意味であるが、
この書物には植物だけでなく、
薬として鉱物や動物も
記されている。

たとえば鉱物では「石膏」


がある。

石膏はギブスの材料などに
使われているが、
漢方では大切な内服薬の
一つである。

動物薬でおもしろいものに
「䗪虫」(しゃちゅう)がある。

これは別名サツマゴキブリという。

ゴキブリが薬になるのか、
と驚かれるかもしれないが、
最近これが慢性肝炎によいとの
研究報告があった。

䗪虫には瘀血を取り除く
効果があるので、慢性肝炎
などの血流のわるくなった
病気に効くのであろう。

しかし、最初にゴキブリを
口にして効果を確かめたのは
だれだろう?

古書には「神農は百草をなめて、
一日七十の毒を発見した」とある。

つまり、最初に薬の効能を
発見したのは、古代中国の
皇帝であった神農だった
ということである。

そのため、世界最古の
薬物書を「神農本草経」といった。

この話を聞いた江戸時代の
人が「神農は毎日吐いたり
下したり」と川柳を詠んだ。

一日に七十種もの薬を
なめるのなら、その中には
毒も下剤もあるだろうから
吐いたり下したりするで
あろうと、いうのである。

もちろん神話、伝説の世界
であるが、古代人の中には
神農のような人がいたかもしれない。

そのような人は、薬の効果を
確かめるのに何を手がかりと
したのであろう?

片っ端から食べてみた
わけではないだろうに。

漢方医学には、
「似たものは似たものを治す」
という考え方がある。

たとえば、ラッキョウの形は心臓
に似ている。そこで心臓病に
用いるのです。

科学的検査方法も何もない
古代の人は、このような
考えで各薬物の薬理、薬効を
推察して使ったものと思われる。

もちろん、いくら似ていても
効果がなければ使わなかった
であろう。

このように形から薬理を
考える方法を象形薬理学
といった。

またその物の性質から
薬理を決めたのである。

たとえば、虻虫(ぼうちゅう)や
水蛭(すいてつ)は血を吸う
小動物です。

とくに水蛭に吸い付かれた
傷口はなかなか血が
止まらないのだ。

そんなところから、水蛭
には血を溶かす作用が
あるのではないかと考え、
駆瘀血剤として使われたのです。

また、各薬物の味も薬理、薬効
を決める手がかりになっている。

たとえば辛味性の物を食べると
からだが温まり、場合によっては
汗が出る。

そんなところから、ニッケイ
(桂枝)やショウガ(生姜)
などは辛味の薬物で、
陽気を多くする作用がある、
と考えたのです。

そうして、そこから発展し
たとえ味が辛味でなくても
からだが温まる物は
辛味剤だと決めたのです。

辛味のほかに、甘味、苦味
塩味、酸味などで各薬物を
分類し、その働きをしめして
いる。

現代科学からみれば幼稚な
考え方かもしれないが、
東洋医学の考え方に従って
薬を用いる場合には、
すこぶる便利な薬理学なのです。


ここから先は

0字

定額で掲示板も読めるプラン

¥5,000 / 月
このメンバーシップの詳細

漢方の奥深い世界に触れたことで、ますます興味が湧いていることと思います。漢方には、体質改善や健康維持に役立つ素晴らしい効果があります。ぜひ、漢方を学び続け、自身や周りの人々の健康に役立てていただければ幸いです。 今後とも、🦓シロ/漢方相談薬局にご期待ください。