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れなぁとグループと一期生。それぞれの「桜月」

櫻坂46の5thシングル「桜月」が発売されて翌日、とりあえず気づいたことと思ったことを下の記事に書き連ねました。

その後、「100万回再生させよう」ということでひたすらMVを見まくっている中で、その時感じたこととは違うことを思いついたり、前の記事自体が少し雑で筋道立てて考えられていなかったり、考えが浅かったりした部分があったので、もう一度改めてまとめたいなと。このMVを通して、制作した皆さんやグループが何を伝えたかったのかを、自分なりに整理しなおしました。

そこで見えてきたのは、秋元先生の詞をもとに、TAKAHIRO先生をはじめ製作陣がこの5thで何を伝えたいのか、とことん考え抜いて緻密に作られた驚愕のダンスと映像の構成でした。今回のセンターである守屋麗奈さん、そして今のグループ、卒業していったこれまでのメンバーへの果てなき愛情がそこにはありまして。1つ1つの事実に気づくたびに「ほんとうにすごい…」ってあまりに感動して本当に泣きながら描いたのが、この記事です。
以下、少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです(ここからは敬称を省略させていただきます)。

これは守屋麗奈の失意と再生の物語

5thシングル「桜月」の発売日は2月15日。
2020年2月16日に新2期生が入って3年目となる、その最後の日。このMVで綴られる物語は、時計がそこから4年ほど遡ったところから始まる(円形、12等分に並ぶメンバーが差し出す手は、桜ポーズの4を指している)。

まず1コーラス目で語られるのは、れなぁ自身の物語。
 オーディションに合格してその未来に夢を抱くもどこにも配属されず、一旦研修生として表舞台から退場せざるを得ないれなぁ。

 1年半の月日を得てようやく配属された、そのことを示すシーンがここ。本MVでは「椅子」が「櫻坂メンバーとしての資格」を象徴する存在としての舞台装置として機能しており、ここでは、その椅子に座る=配属を暗に示している。

櫻坂の一員になるも…

 しかし、先行する旧2期生への気後れもあり、一員としての自覚を持つことができない。そして元来の人見知り(本人談)により前に出ることができず、新2期の他のメンバーにも先を越され、そしてバラエティーでも自分を出すことができない。

完全に空気

そんな中、さまざまな奮闘をして殻を破ろうとするのがここからの描写となる。

例えば先輩(今は櫻坂にはいない守屋茜、ここではその守屋茜の意思をついだ全員)からのパイ投げに始まり、

あかねんの意思を継いで全員でパイ投げする様子
終始手のひらを顔の前に置き続けてかわいかったな

ぶりっ子、コツコツ、テーブルクロス引きの「と見せかけて、行きません」、そして天然が高じてまつりに見つかってしまった「いっちに、いっちに」など、数々の持ちネタを見出して、自己を確立していく。

殻を破った守屋麗奈は強かった
ぶりっ子
ぐうこた
コツコツ
ちなみに増本のコツ可愛いから見て
( ᐛ)グー
( ᐛ✌️)チョキ
( ᐛ✋)パァ
1分55秒からさらに「いっちに💓いっちに」のリズムで可愛いフリ入れてくるTAKAHIRO先生天才
元ネタはこれ
さらに「と見せかけて行きません」まで再現。ぶっ込みすぎだろ
ちゃんと左手が前

1コーラス目は、そんなれなぁ自身の物語である。
そして桜月のMV中には、このように、こうした持ちネタをダンスのさまざまな部分に組み込んでいる。

さらにオープニングの皆が寝転ぶシーンでメンバーが盛り込んできたのが、2種の「キャラメリゼ」とぶりっ子。もはやこれは新手のれなぁごっこと言っていいだろう。

大園に注目
ほのす!
完全にれなぁごっこしてるまつり

2コーラス目は櫻坂の物語。前半は「卒業」がテーマ

そして2コーラス目、れなぁはグループと少し距離を置き、ここからはそのグループが経験してきた葛藤の物語へと移行する。

関係ないけどここるんちゃんだけDead Endなのほんと好き。土生ちゃんは櫻坂の歌だし

ラヴィットで世間に知られてかられなぁはエイトとして相応しい実力を身につけるため牙を研ぎつつ、一方で写真集やバラエティでグループを離れて単独で活動することが増えていく。
そしてその間、グループにはさまざまな出来事が降りかかる。まず2コーラス前半で語られるのは「卒業」だ。このコーラスの冒頭2分2秒で唐突にインサートされる、桜の花びらに座面が覆われた椅子。これが意味するものは何か。

1コーラス目、開始52秒では、れなぁは椅子に座ることで「櫻坂の一員になった」。その反対に、誰も座らない椅子が示唆するのは、その椅子にはもういない「櫻坂ではなくなった」人たち。ここでは櫻坂として卒業したメンバーにフォーカスが当たり、時にれなぁと関連の深いエピソードが振りに入りながらストーリーは進行する。
2分7秒、田村と森田のフリは明らかに「ブルームーンキス」からの引用だ。

2021年6月のBACKS LIVEでれなぁがセンターを勤めた曲で、このライブを象徴する存在としてここでは語られている。れなぁ、そして増本ら新2期生と守屋茜との関係が深まり、その良好な関係がファンの間で愛された。今や櫻坂を象徴するキーワードとなった「絆」が生まれたライブでもある。このフリの中で、田村が森田に一瞬ぶつかる様子があるが、これはこのライブ中に大沼が守屋茜にぶつかる、というエピソードから来ていると思われる。

その次の山﨑、大園、藤吉の3人のフリが象徴するのは、渡辺梨加。そこさくでの「おバカ女王決定戦」でのワンシーンを取り入れたもの。

同様に次のシーンでの山﨑、大園、藤吉の3人の3人が見せる物憂げな表情は、実はそこさくで見せた、武元の滋賀話に「ガチ」で興味がなかった原田が元ネタ。

その後の松田、土生、増本の3人による、妙に可愛い表情だけど全然揃っていないフリが違和感を覚えさせるそれは、尾関の不器用なフラフープを暗喩している。

これわざとフリ揃えてないと思うんだ

このように、櫻坂として卒業をした1期生たちが残した爪痕をここではトレースし、この曲の2コーラスで次々とたたみかけてくる。「背中を押す」のフリは、れなぁと渡邊理佐との卒コンでのやりとりが発想の元となり、

そして最後の武元と井上は、れなぁと菅井による摩擦係数のシンメである。

コロナ禍の葛藤を経て、ようやく回り出す歯車
櫻坂に訪れた出来事は「卒業」だけではない。次からのシーンは、コロナ禍で思うようにいかないグループの状況を描いたものだ。そこさく年末の恒例のCMで一人黙々と踊るれなぁの姿を重ね合わせつつ、リモートでレッスンをせざるを得なかった状況は、思うようにライブができない閉塞感をここでは描く。

曲中突然現れる全員のマスク姿は、文字通りマスクをつけざるを得ないコロナ禍の状況そのままだ。パフォーマンスをファンに見てもらう。そのライブを重視する櫻坂にとっては、本当に苦しい期間だったはず。
しかし、それを克服し、その辛い状況を跳ね返し、彼女たちはひたむきに踊り続ける。

2分51秒からはじまる「ずっと咲き続ける花がないように こうしていられないのなら」から「ゆっくり落ちていけ」この2サビの力強いダンスは、過去の櫻坂の楽曲からの引用を続けながら紡がれている。「buddies」「半信半疑」「流れ弾」に始まり、「Nobody’s fault」「BAN」の振り付けを少しずつアレンジして曲を繋げながら、グループとして思い通りにいかない葛藤や力強くもがき続ける様子を描写している。

buddiesからの
半身半疑からの
BAN
ノバフォなど
これは半信半疑かラヴィットか。ラヴィットを通じて躍進するメンバー

やがて、こうした葛藤を経て歯車が噛み合って動き出すグループ。時計のように一列に回転し、メンバーが個別にターンするダンスで、うまく回るということを表現している。

1期生たちが残してくれたもの

そして場面は変わる。れなぁのソロから始まる落ちサビは、グループとしてようやく前に進み出しつつも、これまで櫻坂を支えてくれていた先輩たちがいないことの寂しさ、不安、そして偉大さを改めて噛み締める場面である。
このシーンで置かれている椅子は6つ。その数は櫻として卒業した1期生と同じ数で、いくつかはその席が空いたまま、そしていくつかの椅子にはメンバーが座っている。座るのは増本、山﨑、土生。特に卒業生たちと関係の深かった3人だ。

椅子の数は6つ。卒業した一期生も6人

ただ残されていたのは、寂しさだけではなかった。2コーラス目の冒頭の椅子の場面を思い返してみよう。その空いた椅子の上には、卒業した1期生たちが「美しく散った」あとに残された花びらがあった。彼女たちが散った後にも、その花びらは残り、今もなおそこで咲き誇ろうとする櫻坂のメンバーたちのいる風景を美しく彩っている。そしてその物語をクライマックスとして、3分48秒からの一転明るいシーンとして盛り込んできた。

美しく散って花びらを残す1期生
3分48秒。そうして散っていった花びらが作った風景が、メンバーを彩る

メンバーがこのシーンの前後で歌う「あの花は僕が大好きった人だ」、そして「あんなに美しく散れたらいいのに」は、恋人のことを歌う歌詞である一方、このMVの世界では櫻坂のメンバーとして美しく卒業していった1期生のことを想う歌詞でもある。だかられなぁはこの落ちサビでこれまでの別れを思って涙するのだ。

この辺りのシーン、百回以上見たけど見るたびに一緒に自分も泣いてる

そして先輩たちの残してくれた風景のなか、彼女たちはパフォーマンスを続ける、というまでが、歌詞とは別にあるMVのストーリである。

椅子に隠された様々なメンバーへの思い

このMVには、他にも様々な意味が込められているシーンがたくさんある。
1期生たちを象徴していた椅子。だが、そのほかの場面では、また別の意味を持っていると見ることができる。
例えば下の3つの写真のシーン。倒れていなかったり、重なっていなかったりして「座ることが可能な椅子」は彼女たちがいる舞台の中に、奥に4つと手前1つで全部で5つある。ここでの椅子は「選抜されなかったメンバー」と考えていいだろう。今回はこの舞台には立てなかったけど、みんなの席は、きちんとここに用意されている。いつこの舞台に来てもいいように、席は取ってあるよ。製作側のメッセージとしての椅子だ。

舞台奥、柵内にある椅子は全部で8つ。うち、座ることができるのは4脚
舞台手前側に椅子は3脚。うち、座ることができるのが1脚。
手前左側にはさらに1脚。合計12脚で、座ることができるのは5脚。
なお今回選抜に入れなかったのは5人。卒業した人は7人。
入ってくる予定だった3期生は12人(うち1人辞退で11人に)。

そして倒れている7脚の椅子(松平を含めた櫻坂として去っていった人の数も7人)も含めて、舞台のメーンのスペースに置かれた椅子の数は全部で12。これはもともと入る予定だった3期生の数と一致する。
いる人、いない人、全員の思いを詰め込んで櫻坂は新たな出発を始める。そんな思いを象徴するのが、この椅子なのだ。

欅の世界と櫻の世界

ただ、MV全体を見渡すと、そのほかにも椅子が出てくるシーンがあることに気付く方もいるだろう。だがここで映る椅子が置かれているのは、このMVの舞台の、扉や柵で区切られた外の世界だ。

おそらく扉の向こうのそこは「欅」の世界を象徴している場所だ。
そしてその2つの世界は、扉を通じて行き来することができるようになっている。
とはいえ、例えば●のシーンでは、奥から歩いてきた田村と森田はこの扉を越えることができる立ち止まったままでいる。欅の最も苦しいその身に背負い、ファンとともに乗り越えた2人には、櫻の世界に簡単に飛び込んで完全に染まるのは難しい、どこか葛藤を持ちながら、おそらくどこかで欅に引き摺られていたのだろう。

そして実は今回のMVで、唯一この2つ世界を行ったり来たりと往復した人物がいる。それがれなぁだ。

軽やかに欅の世界に飛び込み
躊躇いなく櫻の世界に戻ってこれる

欅に引き摺られることなく、その2つの世界を軽々と飛び越えられる。だからこそ、新しい櫻の姿を表現できる。「どちらも愛して欲しい」そう言い残して卒業した菅井が残したのが、この開け放たれた扉。その菅井がグループを去った後、新たなスタートを切らなければならないこの時期に守屋がセンターに選ばれた理由は、そこにある気がしてならない。

製作側の愛が凄すぎる

この桜月というMVは、極めて緻密に作り込まれ、全てのフリや映像に多重の意味を持たせることで、見る人にさまざまなことを連想させる。異常な情報量が詰め込まれたMVだ。れなぁの、そして櫻坂というグループのあらゆることを理解し、そして愛を注いでくれなければここまでの意味をこめるのは難しい。
制作にこれだけの熱量を込めてくれるTAKAHIRO先生をはじめさまざまなクリエーティブに関わる人々が周りにたくさんいるのは、櫻坂のメンバー本人たちにそれだけの魅力があるから、そしてグループが常に感謝の気持ちを忘れることなく良いものづくりに邁進しているからだろう。本当にこのグループを知ることができて、そして好きでいられることがありがたくて仕方がない。

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