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【異世界転移ドキュメンタリーBL】

異世界転移ドキュメンタリー

「どれが当たりだったんだ、まぁ、いいか」
 俺は、異世界に降り立った。
 まずは、ジモトーで譲り受けた、ビデオカメラの電源を入れた。消去されずに残っていた、子供の誕生日会らしき動画を、秒で削除した。
「せ、先輩! ここは何処ですか⁉」
「異世界だろ」
「いや、いや! ご冗談を」
 一人で騒ぐ後輩の顔をアップで撮り始めた。コイツは高校の後輩だ。絵に描いたようなオタクだ。長方形の黒縁眼鏡に、妙にダサいポロシャツと、変なチノパンをはいている。
「成功だな」
 動画配信で一発当てる。
 高校を中退し、働いていた土建屋での仕事に嫌気が差した。
 熱すぎるのだ。夏、俺を殺しに来てやがる。
「お前、すげぇな」
 俺は、高橋の肩を叩いた。
 高橋には、ネットで大人気だという、異世界転移について教えを請うた。
「そんな、馬鹿な……」
 高橋は、眼鏡を顔に押し当てている。
 俺の日当は、一万八千円だ。三十二歳にして、現場のじじぃ達を纏めてた。
 そんな、汗水垂らした金から、高橋に三千円渡して週一で色々試した。

 トラックに体当たりした事もある。
 いけ好かねぇ、ライバル会社のトラックにだ。
「てめぇ、コノ野郎なにしやがる!」
「てめぇが、突っ込んで来たんだろうが!」
 吹っ飛ばされても、転移しなかった。
 普通に乱闘になった。

 変な宗教団体の祈りの会に参加した事もある。
「人間界の紙幣は呪われています。貴方は救われる為に、お金を手放さなければなりません」
「俺からカツアゲする気か? ああ?」
 俺は日当、一万八千円だぞ。
 一日、一万五千円しか使わねぇって決めてんだ、馬鹿野郎。

「らちがあかねぇ、一気に全部やるぞ!」
「本気ですか⁉」
 高橋に軽トラックを運転させ、呪いのアイテムを体中に巻き付け、呪われし紙幣をピリピリに破いて、口に入れた。
「うおおおおお!」

「なんか、色々無くなってるな」
 口の中もすっきりしている。アイテムも数個消えている。
「あっ……ああ……ど、どうするんですか、これから! なんですか、あのRPGみたいな城下町は!」
 高橋は、目の前に広がる城壁と、奥にそびえ立つ白いキャッスルを指さして喚いた。
「ラブホより本物っぽいな」
「か、帰りましょうよ!」
 高橋は、周囲を忙しく見回っている。
「トラックは? アイテムは? あああ!」
「まぁ、落ち着けよ。さっさと撮影しようぜ、異世界転移ドキュメンタリーってやつをよ」
 焦る高橋が面白いので、余すことなく撮影した。
「落ち着いていられますか! 帰れなかったら、動画なんて撮ってもしょうがないじゃないですか!」
「あー、帰れるだろ」
「なんで、そう思うんですか⁉」
「それは、おまえ。わかるだろ。だいたい。これは、イケるってのがよ」
「意味分かんない!」
 高橋が糞を踏ん張るように暴れている。
「まぁ、とにかく俺は行くぞ」
 俺はカメラをキャッスルに向けて、高橋に別れの手を振った。
「えっ……」
「じゃあな」
「ま、ま……待って下さい!」
 高橋は俺の前に回り込んだ。
「なんだよ、邪魔くせぇな」
「あの! 分かりませんよね!」
「何がだよ」
「異世界転移の何がウケるのか! ぼ、僕は知ってますよ!」
「……」
「一緒に、行きましょう」
「しょうがねぇな」

 まずは、仕事を探す事になった。
「ギルドだあああ」
 高橋が、職安でなにか興奮している。いいか、大体、こういう所は、鼻で笑われて腹が立つところだぞ。
「で、貴方は何が出来るんですか?」
「あー? 何ってあれだ。色々やって来た。大工、足場、解体、掘削。ガラの処理業者に」
「……ちょっと良くわかりませんが、城壁の作り替えが実施されていますが如何でしょうか?」
「ここは、夏、殺しに来るか?」
 受付の中年が、呆けた顔をしている。
「この国は、どちらかと言いますと、冬が大変です」
「よし! それでいい! 日当は幾らだ? 俺は、一万八千円の男だ」
「二万コルです」
「ああ?」
「……先輩、宿屋は一泊、六千らしいですし、一食は六百らしいんで、日本円と感覚同じかと……」
 隣に座って、撮影している高橋が囁いた。受付のおやじは、高橋が持つカメラを、訝しげにみている。
「よし、交渉成立だ!」

「先輩、お金が貯まったら、奴隷を買うのがセオリーですよ」
「はあ? てめぇ、パシリは良いけど、奴隷は違うだろ! 人間のクズか!」
 職安を出てたら、広場では、人間が檻に入れられていた。
「いや、何と言うか、奴隷を買って、人間らしい扱いをして、手懐けるというか……あわよくば、好かれるというか」
「……お前、モテねぇだろ」
「うぐぅ⁉ 言ってはいけないことを……いいですか! 異世界転移ドキュメンタリーで、一発当てるんですよね⁉ 買われた奴隷に不利益がありますか⁉ ありませんよね⁉」
「そういう、逆らえねぇ立場の奴に、したり顔で、デカイ顔するのは好きじゃねぇな」
 俺が、そういうと、近くで檻に入っていた男が笑った。
「……なんだ、てめぇ」
「いや、すいません。感心しただけです」
 男は、銀色の長髪で、CGみたいな見た目の男だった。
 すげぇ、偉そうな奴が奴隷だな。
 あれか、ホストとかやってて、店でやばい事やらかしたのか?
「うわぁ、くっそ美形、滅びろ」
 高橋が道端の汚物を避けるように檻から離れた。
「俺は、奴隷なんて買わねぇ。他にないのかよ、他に」
「えー、可愛い女の子の奴隷は定番ですよ」
「そもそも、女の奴隷いなくねぇか?」
「……確かに、いや……むしろ、まだ一人も女の子を見ていません。宗教的に外出禁止かな?」
「お前らが話しているのは、絶滅したメスの話か?」
「「⁉」」


BLファンタジー 軽率に女性絶滅させがち。(個人の見解)
前回は、BLウィルスで女性を絶滅させたのち、ゾンビ世界BL書いたなwww

3700字減らさないといけないのに、全然へらなくて、現実逃避して遊びました。はい。頑張ります。字減らし。

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