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幻の二店舗目

大吾のカードショップは順調に客を増やしていった。
ある日、「2店舗目を出そうと思う」と相談された。
まんだらけ風のお店の時も2店舗目を出したが、結局手が回らなくなって、バイトに任せっぱなしになっていたので、やらない方がいいと助言した。

一旦は、話を聞いてくれて、諦めてくれたが、ある日不動産屋さんから勧められた物件を気に入り、2店舗目の話が再燃した。
そうとなると、行動が早い。契約を済ませ2店舗目オープンに向けてとんとん拍子に事が進んで行った。

双子妊娠中にも関わらずワンオペ育児が始まった。
と言っても、働きながら育児していた頃に比べれば、楽で苦痛はなかった。ただ、忙しくなると大吾のご機嫌が悪くなって、モラハラ度が上昇するので、妊娠中の2店舗目オープンは本当に迷惑だった。

1ヶ月かけて2店舗がオープンした。
近隣にチラシを撒いたが、反応が鈍かった。少し郊外の大きな通りに面していたが、商業施設はあるものの、住宅地ではなかったので、こんな場所で大丈夫なんだろうかと一抹の不安があった。
何より裏に川があったので、負のオーラが漂った感じがしていた。

大吾が気に入った物件なので遠回しに嫌がってみたが、聞く耳を持たなかった。
オープンしてはじめて、周りの状況に気付き、2週間が過ぎた頃には、はっきりと失敗に気づき出した。

半年続けていたら、繁盛店になっていたかもしれないが、そんな未来が想像できなかった。
1ヶ月過ぎた頃に、辞めた方がいいんじゃないと言ってみた。誰かにそう言ってもらいたかったのか、あっさり店を閉めてしまった。

資金300万円ドブに捨てた。でも、家賃が50万円だったので半年して赤字なら、もっと捨てなければいけなかったのかもしれない。
そこにあったのか、なかったのかだらかの記憶に残ったのかもわからない、幻の2店舗目は、その後マンションになっていた。

幻の2店舗目でバタバタしていたら、双子出産までのカウントダウンが始まっていた。

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