忘れられない友達、ユカちゃん

新年早々、友人の人間関係の愚痴を聞いてきた。お世話になった先輩が今年度で退職するのだが、その送別会に呼ばれていないのがショックらしい。
私は職場の人間関係には興味が薄く、実を言うと殆どの人の顔と名前が一致しない。
現時点で付き合いのない先輩のことをちゃんと覚えていて、気に留めている友人に素直に感心した。
そうして新年会(友人の愚痴を聞く会)を終えた後、今でも自分が覚えている過去の知り合いを思い出そうとして、最初に思い出したのが「ユカちゃん」だった。

ユカちゃんは小学校のクラスメイトだ。
私は小学5年生の時に転校してきて、ユカちゃんのいるクラスに入った。
私は内向的な性格で、一方のユカちゃんはハッキリとした性格の女の子だったため、そこまで仲の良い友達になった訳ではない。
放課後の校庭で、何人かで集まり高鬼をして遊んだ記憶がある。そのくらいの友人関係だった。(ちなみにその時鬼のユカちゃんは、小石の上に乗っているのでセーフを主張していた女の子に、激怒していた)

そうして小学校を卒業し、ユカちゃんと私は同じ中学に進学した。
クラスは別々となり、それを私もユカちゃんも特に気にすることなく、それぞれの中学生活を送ることになった。

そんなある日、私は自分が鼻毛が出ている事に気付き、学校のトイレの個室でそれを抜いていた。
適当に「この辺かな?」というところを指で纏めて抜き、ある程度の量を抜いて気が済んだのでトイレから出る。
そこでユカちゃんと出くわした。
ユカちゃんはハッとして、私の両肩を掴んだ。
そうして真っ直ぐに私の目を見つつ、「◯◯ちゃん!辛いことがあったら、ユカに言ってね!」と言ったのだ。

その当時、私はイジメを受けていた。
トイレから出てきた私の目が真っ赤だったのを、ユカちゃんは「辛くて泣いていたんだ」と誤解したのだろう。本当は鼻毛を抜いていたからなのだが。
私は「う、うん…」とオロオロするばかりだったが、ユカちゃんは「ね!絶対だよ!」と更に言い募った。私は最後まで明瞭な返事ができなかった。

その後、特にユカちゃんについての思い出はない。私は徐々にクラスに馴染み、気の合う友人を見つけて穏やかな中学生活を満喫し、ユカちゃんに頼ることはとうとう無かった。
でもユカちゃんはあの日、特別仲が良かった訳でもない、もう別のクラスの私にすぐに声をかけてくれた。経緯も聞かずに、自分は味方だと表明してくれたのだ。
なんてありがたいことか。

ユカちゃんが卒業後どこの高校に進学したのか、今どこでどうしているのかは全く分からない。
相変わらず内向的な私では、卒業アルバムやらなんやらで手を尽くして消息を辿り、あの時のお礼を伝えることはもちろんできない。
なのでせめて、優しいユカちゃんが元気に幸せに暮らしていてくれるよう、ひっそりと祈ってみることにする。

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