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トッケイに噛まれた話

 壁にむかってチマチマと作業をしていた。上手く取り切れなかったシールの粘着をきれいにせん! と爪でカリカリやっていた……

ら、物陰から何かがばっと現れて、カリカリやってる私の手を甘噛みして消えた。

 あんまりな早業だったので何者かの特定は出来なかったが、おおかたの予想はついている!

 お前は……お前は……トッケイだろ!

 トッケイ……。ゲッコーともいうあいつ!
XLサイズのヤモリ!

 何日か前もこの部屋で見かけたから、おそらく間違っていない。
 けど、けど、まだおったんかいな!!

 数日前に見たやつと同一トッケイならば、かなりの大物である……。
 とても片手に乗るサイズではない……。

 そんなやつに手を甘噛みされた!?

 改めて考えると、気持ち悪さに背筋が寒くなる!!!! 

 うわあああ!!!! 体中の血の気が引く!

 グレーがかった水色のボディに、全身が赤い水玉模様という毒々しい柄の、デカいヤモリに噛まれたなんて、それこそ全身寒イボものですやん!!!!

 あーイヤだイヤだイヤだ気持ち悪い!
 
 何もケガなんてしてないけど、そういう問題じゃない!

 手の皮が剝けるぐらい手を洗って消毒したい! うきゃあああああ……!

 と、もう上を下への大騒ぎが展開されたわけだが、トッケイがもし、小指ぐらいのサイズであったらおそらくこんなことにはなっていなかったのだろうなあ……と考えたりする。

 同じようにゴキブリやネズミがもっと大きいサイズだったら、我々の毎日はもっとスリリングだったんだろうなあ、嫌なスリリングさ。でもって、トッケイがさらに大きなサイズであったりしたら、猫や小型犬ぐらいなら食べられてしまっているのかもしれない。

 そんな風に考えてみると、トッケイに噛まれた噛まれた、気持ち悪いと騒いでいたが、あのサイズはもしかしたら、生態系の頂点である人間と共存するための、トッケイなりの遠慮のあげくなのではないか。

 ペットは食べないし、なるべく迷惑かけないようにするんで、どうか大目に見てくだせえ。

 そんな風に訴えかけてきているように思える。

 そう言えば、私の手を噛んですぐに引っ込んだやつも、「あ、やべ……!」という雰囲気だったなあ。

 今日はもうカンベンしてやる。もうこれ以上キモチワルイとは言わないでおくから、二度とするんじゃないよ。ワカッタネ。

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